本記事では、組込みプログラミングでたまに使われるが重要な修飾子、ディレクティブ、構文に焦点を当てて解説します。これらの機能を理解し、適切に使用することで、効果的なコード記述が可能になり、品質や効率性の向上が期待できます。
1. volatile
volatile
修飾子は、コンパイラに対して変数が外部要因(例えば割り込み処理や他のスレッド)によって変更される可能性があることを伝えます。これにより、コンパイラは最適化を行う際に、volatile
変数に対して慎重にアクセスするようになります。例えば、volatile
変数の値は最適化によってレジスタにキャッシュされず、常にメモリから読み取られます。これにより、外部要因による変数の変更が正確に反映されるようになります。
以下に、割り込み処理によって変更されるflag
変数をvolatile
修飾子を使って宣言する例を示します。
#include <stdint.h>
volatile uint8_t flag = 0;
void interrupt_handler(void) {
flag = 1;
}
int main(void) {
while (!flag) {
// Do something
}
return 0;
}
この例では、割り込みハンドラ関数interrupt_handlerによってflag変数が変更されます。flag変数にvolatile修飾子をつけることで、main関数のwhileループが割り込み処理による変更を正確に検出し、ループを抜けることができます。volatile修飾子がない場合、コンパイラは最適化の過程でループを無限ループとして解釈し、割り込み処理による変更を検出できなくなることがあります。
volatile修飾子は、ハードウェアレジスタへのアクセスや、マルチスレッド環境で共有される変数など、外部要因によって変更される変数に対して使用することで、予期しない問題を回避できます。
2 attribute
__attribute__
修飾子は、GCCコンパイラに対して特定の属性を指定するために使用されます。これにより、関数や変数に対してコンパイラがデフォルトでは行わない最適化や振る舞いを指定できます。例えば、weak
属性やaligned
属性などがあります。
__attribute__((aligned(8))) int aligned_variable;
3. weak
weak
修飾子は、シンボル(関数や変数)が弱い束縛を持つことを示す属性で、リンカに対して他の同名シンボルを優先して使用させます。
__attribute__((weak)) void custom_function(void) {
// Default implementation
}
int main(void) {
custom_function();
return 0;
}
weak
属性が指定されたcustom_function
は、リンカが他の同名関数を見つけた場合に、その他の実装が優先されます。これにより、デフォルトの動作を提供する一方で、柔軟な実装を行うことができます。
4. __restrict__
__restrict__
修飾子は、ポインタが他のポインタと重複しないことを示すために使用されます。これにより、コンパイラは最適化を行いやすくなります。
void custom_function(int * __restrict__ ptr1, int * __restrict__ ptr2) {
// Do something
}
5. _Thread_local
_Thread_local
修飾子は、変数がスレッドごとに独立したインスタンスを持つことを示すために使用されます。C11およびC++11以降でサポートされています。
_Thread_local int thread_specific_counter;
6. #pragma
#pragmaディレクティブは、コンパイラに対して特定の動作を指示するために使用されます。これにより、コンパイラ固有の機能を利用したり、最適化や設定を制御することができます。#pragmaの後に指定されるトークンによって、ディレクティブの動作が決まります。
組込み開発では、割り込みベクターやメモリマップを制御するために#pragmaディレクティブが使われることがあります。例えば、#pragma locationは、特定の変数や関数を指定されたメモリアドレスに配置するために使用されます。
#pragma location = 0x20000000
uint32_t custom_memory_section[1024];
この例では、custom_memory_section配列が0x20000000アドレスに配置されます。
また、#pragma interruptディレクティブは、関数を割り込みハンドラとして指定するために使用されることがあります。
#pragma interrupt
void timer_interrupt_handler(void) {
// Interrupt handling code
}
この例では、timer_interrupt_handler関数が割り込みハンドラとして設定されます。
このように、#pragmaディレクティブは、組込み開発においてコンパイラに対して特定の動作を指示するために使用され、コードの品質や効率性を向上させることができます。
7. asm
asm
構文は、C言語やC++言語のコード内にアセンブリコードを埋め込むために使用されます。インラインアセンブリとも呼ばれます。
void custom_function(void) {
asm("nop");
}
8. offsetof
offsetof
構文は、構造体のメンバのバイトオフセットを計算するために使用されます。構造体のメンバへのポインタ操作を行う際に役立ちます。
#include <stddef.h>
struct CustomStruct {
uint8_t field1;
uint32_t field2;
};
size_t offset = offsetof(struct CustomStruct, field2);
まとめ
この記事では、組込みシステム開発におけるマイクロコントローラ(MCU)プログラミングでたまに使われるが重要な修飾子、ディレクティブ、構文について解説しました。これらの機能は、組込みエンジニアにとって、効果的なコード記述に役立ちます。