アジャイル開発において、見積もりは重要なプロセスの一つです。タスクの規模を見積もることで、チームの計画やリソース配分が適切に行えます。
しかし、見積もりが複雑化すると、精度やチーム全体の合意形成が難しくなりがちです。
そこで、今回はシンプルかつ直感的に見積もりができるTシャツサイズ見積もりについて紹介します。
Tシャツサイズ見積もりとは?
Tシャツサイズ見積もりは、タスクやユーザーストーリーの規模を Tシャツのサイズ(S, M, L, XLなど) に例えて見積もる手法です。数値に基づく見積もり(例えばストーリーポイントや工数)よりも大雑把に見積もりを行い、規模感をチーム全体で素早く共有することを目的としています。
なぜ、Tシャツサイズで見積もりをするのか
Tシャツサイズ見積もりは、不確実性が高いプロジェクト初期段階において有効な手法です。
数値見積もりの正確さが重要なプロジェクトもありますが、プロジェクト初期段階では不確実性が高く、見積もりがばらつきがちです。そこで大雑把な分類を用いることで、詳細が不明なタスクでも大まかな規模感を把握できます。これにより、初期段階でもチームが迅速に見積もりを行うことができるようになります。
Tシャツサイズ見積もりと数値見積もりの比較
Tシャツサイズ見積もりと数値見積もりを比較してみます。
項目 | Tシャツサイズ見積もり | 数値見積もり |
---|---|---|
概要 | 規模感を「S」「M」「L」「XL」などのサイズで見積もる手法 | 作業時間やリソースを具体的な数値(時間、ポイント)で見積もる手法 |
メリット | ・見積もりが簡単でスピーディー ・不確実性が高いタスクにも対応できる ・チーム全員が同じ感覚を持ちやすい |
・正確で具体的な見積もりができる ・プロジェクトの進行やリソース管理に適している |
デメリット | ・精度が低い ・数値的な根拠がなく、大まかすぎることがある |
・初期段階では正確さに欠け、誤差が大きくなる可能性 ・見積もりに時間がかかることがある |
相性の良いプロジェクト | ・要件や詳細が不確実なプロジェクト ・迅速に見積もりを進める必要があるプロジェクト ・短期間で見積もりや計画が頻繁に変わるプロジェクト |
・安定した要求や詳細な仕様が確定しているプロジェクト ・長期的な計画や厳密なリソース配分が求められるプロジェクト ・見積もり精度が重視されるプロジェクト |
Tシャツサイズ見積もりのメリット
1. 迅速な意思決定
Tシャツサイズ見積もりは、数値を使わないため感覚的にタスクの規模感を捉えることができます。これにより、素早く見積もりを完了させることができるため、特に短いスプリントサイクルでのプロジェクトでは有効です。
2. 直感的でわかりやすい
特に新しいメンバーや経験が浅いメンバーにとって、数値での正確な見積もりはプレッシャーになることがあります。Tシャツサイズなら「このタスクはSかな?」という感覚的な判断ができ、見積もりプロセスに参加しやすくなります。
3. 負担が少ない
数値を用いると「本当に正しい見積もりなのか?」と疑問が湧き、チーム全体で議論が長引きがちです。Tシャツサイズなら「ざっくりとした規模感」を確認するだけなので、議論が短くなり見積もりプロセスの心理的な負担も軽減されます。
Tシャツサイズ見積もりのデメリット
1. 正確さに欠ける
数値での見積もりと比べると、Tシャツサイズは正確な予測が難しいです。特に、プロジェクト全体のリソース管理や細かいタスクの調整が必要な場合には、後で詳細な見積もりが必要になることがあります。
2. 境界にあるタスクの扱いが難しい
たとえば、「SかMか」のように、微妙なサイズ差のタスクがある場合、評価がぶれることがあります。このため、チーム内での基準を定めておくことが重要です。
3. チームの経験が求められる
Tシャツサイズ見積もりに慣れていないチームでは、最初のうちは基準が一致せず、意見が割れることもあります。定期的に振り返りを行い、共通の認識を持てるように調整することが必要です。
Tシャツサイズ見積もりの効果と実践方法
Tシャツサイズ見積もりを導入する際の具体的なステップは以下の通りです。
1. 見積もり対象の選定
ユーザーストーリーやタスクをチームに提示し、メンバーそれぞれがTシャツサイズ(S, M, L, XLなど)で評価します。
2. チームでサイズ感をすり合わせる
メンバーの意見を集め、サイズ感が一致しない場合はディスカッションを行います。この際、過去の類似タスクとの比較や、そのタスクが他のタスクと比べてどの程度の規模かを議論します。
3. 最終的なサイズに合意する
全員が納得した段階で、最終的なサイズを決定します。その後、タスクが進行するにつれて必要に応じて再評価や調整を行うこともあります。
よくある質問
Q.「数値をTシャツサイズに変えただけで、実質変わらないのでは?」
A. この疑問に対する答えは、Tシャツサイズ見積もりは単なる数値の置き換えではないということです。
実際の効果
直感的で迅速な合意形成を助け、見積もりプロセスのスピードが上がります。
特に初心者や新しいメンバーでも参加しやすく、チーム全体でのディスカッションが活発になります。
数値見積もりに比べて心理的負担が少ないため、ストレスフリーで見積もりが可能です。
このように、Tシャツサイズ見積もりは数値を使う場合とは異なる心理的・実践的な効果が期待できます。
まとめ
Tシャツサイズ見積もりは、特にアジャイル開発の初期段階や、チームの規模感を迅速に共有する必要がある場合に有効な手法です。もちろん、正確な数値見積もりが必要なプロジェクトでは、Tシャツサイズを補完的な手法として活用することもできるのかなと思います。以下のような場面に遭遇した場合、Tシャツサイズ見積もりの導入を検討してみても良いかもしれません。
- チームメンバーが見積もりに慣れていない
- 初期段階で大まかな規模感を把握したい
- スピーディに意思決定を行いたい
ぜひ、試してみてください!
参考
https://asana.com/ja/resources/t-shirt-sizing
https://www.linkedin.com/pulse/agile-estimation-how-brian-will