はじめに
単相3線交流回路の中性線を何故インダクタの真ん中から取らないといけないのかということについてまとめた。
どこの話?
※出展
電力会社から6600Vで送電される電気を100Vもしくは200Vに変換する役割がこいつ。
んで、この中身がどうなってるかの話。
結論
変圧トランスの真ん中から取らないといけない理由は対地電圧を150V以内に収めるため。
電気設備の技術基準の解釈から引用
【電路の対地電圧の制限】(省令第15条、第56条第1項、第59条、第63条第1項、第64条)
第143条 住宅の屋内電路(電気機械器具内の電路を除く。以下この項において同じ。)の対地電圧は、150V以下であること。
検証1
真ん中を中性線=アースにすると、アースからL1とL2を見たときは位相が180度異なる電圧が端子にかかっている。(実際には、L1からL2に流れている。でも、アース視点で電圧のかかり方を見ると、180度逆位相に電圧が印加されているように見えているだけ)
L1と中性線間、もしくはL2と中性線間で100Vが取れる。
中性線を一旦無視してシンプルに回路全体のコイルの巻数だけで見ると、以下のような回路になる。
回路全体のコイルの巻数はL1とL2の巻数を合計したものと等しくなる(巻数は2倍になる)からL1とL2間の電圧も倍の単相200Vになる。(コイルのど真ん中=1/2の位置から取る理由は言わなくてもいい気はするけど、中性線から見たときにL1とL2を同じ電圧にしたいから)
なので、線間電圧と対地電圧をまとめると以下のようになる。
線間電圧
線1 | 線2 | 電圧 | 理由 |
---|---|---|---|
L1 | L2 | 200V | 回路全体の電圧がそのままかかるため200Vが電位差として出てくる。 |
L1 | N(中性線) | 100V | コイルの巻数が1/2になる位置を中性線(N)としている。 従って回路全体の電圧は200Vなのでその半分の100Vがここで示す線間電位差になる。 |
L2 | N(中性線) | 100V | 上記同様 |
対地電圧
線 | 電圧 | 理由 |
---|---|---|
中性線 | 0V | 中性線がB種接地されているため、対地電圧=中性線になる。 |
L1 | 100V | 中性線がB種接地されているため、中性線に対する電圧と対地電圧は同じになる。 |
L2 | 100V | 上記同様 |
検証2
では、中性線側でなく仮に先程の図のL2が中性線だったらどうなるか。(以下の図ではNとしている)
L1とNの線間電圧はもちろん200V取れている。(緑色のサイン波)
L1とL2(本来中性線であるべき線(青色のサイン波))からも100V取れていることが分かる。
まとめると以下のようになる。
線間電圧
線1 | 線2 | 電圧 | 理由 |
---|---|---|---|
L1 | L2 | 100V | コイルの巻数が1/2になる位置をL2としている。従って回路全体の電圧は200Vなのでその半分の100Vがここで示す線間電位差になる。 |
L1 | N(中性線) | 200V | 回路全体の電圧がそのままかかるため200Vが電位差として出てくる。 |
L2 | N(中性線) | 100V | コイルの巻数が1/2になる位置をL2としている。従って回路全体の電圧は200Vなのでその半分の100Vが ここで示す線間電位差になる。 |
対地電圧
線 | 電圧 | 理由 |
---|---|---|
N | 0V | B種接地されているから地面と電圧が等しくなるため、対地電圧は0Vとなる。 |
L1 | 200V | 本来L2とすべき線を接地しているため200Vが対地電圧となる。 |
L2 | 100V | コイルの巻数が1/2になる位置をL2としているので、対地電圧は100Vとなる。 |
まとめ
- 中性線からみたL1とL2の電圧は100Vになる
- L2から見たL1への電圧、L1からみたL2への電圧は検証2の結果から200Vになる
- 合わせて、中性線への電圧は変わらず100Vになる(中性線はインダクタの巻数が1/2であるため)
- 中性線を変圧トランスの中央で取る理由は、対地電圧を150Vに収めつつ線間電圧で200V得るために真ん中で取っている
- どの線の視点から電圧を見るかによって電圧が変わる事がわかる
- アースをどの視点にすべきかという観点と対地電圧を150V以下にするという観点だと、真ん中の線をアースした方が良い事がわかる