はじめに
第二種電気工事士を取ったので実際に工事をしています。
ですが、やってはいけないこともあるので、それを整理していこうかなと思います。
第二種電気工事士ってどういう資格なんだろう、という話にもつながってくると思うので
第二種電気工事士を取りたい人がもし居たら参考になればなというモチベーションで書いています。
本題:よくありがちなこと(主観)
「電気工事士があればこういうの(100均のソケットアダプターのようなもの)を買ってきて壁に固定できるじゃん!」っていう勘違い。
あくまでもこれは移動電線を使う製品なので「固定してはいけない」と言う前提の元で成り立っています。なので逆立ちしても資格があっても何をやっても「固定してはいけません」ということをこれから書いていきます。
まぁ電気工事士取ればこれ使わんでも普通に壁に固定できる適切な部材を使って施工できるので、適切なところで適切な部材を使いましょうって話です。
電気工事士と言う資格はどんな資格か
名称 | やれること | 資格要件 |
---|---|---|
第二種電気工事士 | 最大電力500kW未満かつAC 600V、DC 750V以下(低圧)で受電する場所の一般用電気工作物についての電気工事 | 第二種電気工事士試験を受け合格した後、免状申請すると免状が発行される。資格取得の前提条件なし |
第一種電気工事士 | 最大電力500kW未満かつAC 600V、DC 750Vを超えて(高圧、特別高圧)受電する場所の一般用電気工作物または自家用電気工作物についての電気工事 | 実務経験3年以上かつ第一種電気工事士試験に合格した後、免状申請すると免状が発行される。 |
特種電気工事資格者 | ネオン管や、非常用予備発電装置工事 | ネオン・非常用予備発電装置に関する工事の実務経験が5年以上かつ講習を受ける必要がある。 |
認定電気工事従事者 | 最大電力500kW未満かつ600V以下で受電する場所の自家用電気工作物に係る電気工事 | 第二種電気工事士の免状が発行されている場合は、講習を受けるだけでよい。 |
工事が可能な範囲
上記のサイトに有る表が表している情報を整理するとこんな感じ。
名称 | できること |
---|---|
第二種電気工事士 | 一般家庭の工事ができる。発電施設も50kW未満(太陽光50kW未満、風力・水力は20kW未満、火力その他10kW未満)であれば作れる。(ただし、高圧受電している商業ビルの低圧部やタワマン等の低圧部(専有部等)は含まない) |
第一種電気工事士 | 一般家庭、工場、商業ビル施設、タワーマンションの専有部、変圧器、電柱にかかってる電線等の工事ができる |
特種電気工事資格者 | ネオン管や非常用予備発電装置の工事ができる |
認定電気工事従事者 | 高圧受電しているタワマンや商業ビルや工場等の低圧部の工事ができる |
第二種電気工事士を取ったあと認定電気工事従事者の講習を受けると、タワマンの低圧部や商業ビルの低圧部、一般家庭の低圧部の工事はすべてできるようになると言った感じです。
第一種は確かに広いけど趣味でやれる範囲ではなく、普通に業務用スペックの資格なので趣味には向いていません。
「キュービクルとか弄ります!」とかはどっちにしたって電力会社への許可が必要です。
取り締まる省庁
経済産業省
電気設備に関する技術基準を定める省令
まぁここに全部書いてあるわけですが、これを基にできることやできないことを整理していきます。
第二種電気工事士にできることを掘り下げてみる
電気設備の設置・交換・増設、メンテナンスを含む様々な工事ができるようになります。
以下に工事の例を挙げます。
- コンセント(100V・200V)の工事
- エアコンの設置
- 配管の中に室外機と室内機をつなぐ電源線が入っているので、それの固定に資格が必要です
- ブレーカーの増設工事
- ダウンライトの工事
- 直付け型ダクトレールの工事
- 埋込み型USBコンセントの工事
- 人感センサースイッチの工事
- コンセントを使わない100V電源直結インターホンの工事
- 発電設備(合計50kW未満)の工事(2024年10月現在の法律において)
- 太陽光:50kW未満
- 風力・水力:20kW未満
- 火力:10kW未満
- その他(スターリングエンジン等):10kW未満
電気工事士になってもできないこと(資格種別不問)
ちょっと言葉の定義が入るのでまずはそこを説明します。
基本的には、電線にはケーブルとコードがあります。
ケーブルは固定して使うもの(一般の人はあまり馴染みがないものです)で、コードは移動することが前提になった電線を指します。コードは通称であり、正式には移動電線と呼ばれています。
移動電線の例
ケーブルの特徴
バチクソ硬い、かつ太いです。30cm位の長さに切れば物差しとして使えるレベルの硬さになってます。
例えばVVFケーブルがあります。
なお、低圧屋内配線の場合、基本的にはケーブル工事、合成樹脂管、金属管工事で施工することが求められます。
細かい話は 電気設備の技術基準の解釈 第5章 電気使用場所の施設及び小規模発電設備 第2節 配線等の施設 156-1表 を参照してください。
コード(移動電線)の特徴
端をつまんで持つと、反対側は垂れ下がる程度には柔らかいものです。
例えばVFFコード(VVFではない)があります。このVFFコードは一般的な電化製品のコードとして使われています。
一般のご家庭で使っている様々な機器(充電器、空気清浄機、固定電話機、ドライヤー等)のコードで使われているはずです。
VCTFコードは延長コードやデスクトップPCやノートPCのアダプタ、消費電力が高めだったり踏まれやすい場所に置かれそうな電源コードで使われていたりします。
話を戻して、できないことを整理していきます。
固定の定義
電気設備の技術基準の解釈や電気設備に関する技術基準を定める省令、またはその解釈の資料では固定方法の具体的な言及はなかったものの、具体的な言及がないということは一般的または辞書的な意味であるという前提があるはずなのでここは国語辞典に頼ろうと思いました。
定義1. 一定の位置に止まって動かないこと。また、動かないようにすること。「支柱を固定する」「ねじで固定する」
ここから読み解けることとしては、結束バンドだろうが、ネジであろうが、サドルだろうが、ステップルだろうが何を使おうと「そこから容易に動かなくすること」と言う結果になれば固定と言う形になります。
容易に動く(手で簡単に外せる)ということは仮止めと解釈できるので、S字フック(3Mの粘着フック)やモールは固定に入りません。
仮止めは容易に取り外せる事を指しますが、強い振動や長年使う中での劣化(弾性の変化)等の影響をステップル等での固定よりも受けやすく脱落する可能性もあります。安全上の観点から仮止めの状態はいつでも点検できる場所のみとして、隠蔽箇所に施設するのはやめましょう。(仮止めでの内線工事は電気設備の技術基準を満たしません)
ここで怪しいのが、ネジをゆるく締めて手で取れればいいという言い訳っぽい解釈ですが、それはそれでしっかりと電線が保持されない方法(仮固定と同等)ですし、ネジが振動等で脱落する恐れがあります。危険なのでやめましょう、我が国は地震大国です。
※適当な言い訳を考えてる暇があるなら普通に資格取ったほうが明らかに早いっすよw
電気工事士であってもできないこと。
「できないこと」というのは生命に関わる物理的な現象を起こさないことだとかそういうのが本質になりますが
一応法律や省令でも定められているので以下に共有します。
これらを、作業者が第二種電気工事士を持っている(またはその範囲で作業する)と言う前提で、行間を読みつつまとめると、次のようになるはずです。
電気工事士が一般用電気工作物を作るときは、電気設備に関する技術基準を定める省令に適合していなければならない。
できないこと1:コードの固定
端的に言うと、コードは柔らかいので固定すると点圧や張力がケーブルよりも掛かってしまい、被覆の損傷や電線の損傷(断線や接触不良)が起こるから。と言う形です。
一発で断線が起これば良いんですが、大体は接触不良から始まるんですよね。
接触不良が起こっているということは抵抗値が上がります。抵抗値が上がるということは、そこでコードの設計よりも高いジュール熱が発生することもあります。膨大なジュール熱が発生するということは火災の原因になるということです。
電気設備に関する技術基準を定める省令の解説より引用
第3章 電気使用場所の施設 第1節 感電、火災等の防止 第56条【配線の感電又は火災の防止】 第2項 によると
第2項は、移動電線と電気機械器具の接続に関する規定である。移動電線は、造営物に固定しないで使用する電線であるため、(移動用の)電気機械器具との接続点に張力等の外部からの力が加わり、接続不良が生ずるおそれがあるため、これを防止するため規定している。
できないこと2:コードを壁の中に配線する(隠蔽配線)
電気設備に関する技術基準を定める省令の解説より引用
第3章 電気使用場所の施設 第1節 感電、火災等の防止 第57条【配線の使用電線】 第1項 によると
第1項は、配線の使用電線には、強度及び絶縁性能が必要であることを規定している。
電線に必要な強度は、施設場所の状況(前条解説参照)に関連している。また、絶縁性能は絶縁体の種類及び厚さにより異なることから、電線の選定にあたっては、これらのことを考慮した上で電線の種類を決める必要がある。
電気設備の技術基準の解釈の解説より引用
第171条【移動電線の施設】第四号 によると
第四号は、移動電線と屋内配線との接続方法について規定している。本来、移動電線は一定の場所に固定しない電気使用機械器具と屋内配線との接続に使用されるので、電気使用機械器具の使用中には、部分的には常に移動し、張力等の外部からの力が加えられている。したがって、屋内配線との接続点には衝撃が加わることがあり、また、現場の作業では電気機械器具の取扱いが乱暴なので誤って極端な張力を与えた場合でもその接続点に損傷を生じることがなく、その他移動機器による事故の発生を防止し、かつ、事故発生時にはただちに屋内電路から接続を断つためにも、差込み接続器等を使用することを原則とした。
第1章総則第1節通則【用語の定義】(省令第1条)11項より引用
屋内配線:屋内の電気使用場所において、固定して施設する電線
これらから、移動電線はそもそも「移動」が前提にある事がわかります。また電線は張力等を掛けないように施設する必要もあります。(転がし配線以外は造営材への固定が前提です)
隠蔽場所に配線するということは、屋内配線に用いるということなので第1章総則第1節通則【用語の定義】(省令第1条)11項より 固定することが前提となりますし、そもそも屋内配線の工事方法として明記されているものではないです。つまり移動電線(コード)を屋内配線に用いることは不適切になります。
まとめ
- 第二種電気工事士は電気入門の資格としてはかなり良い
- DIY(趣味)に使える
- 独学でも全然取れる
- できることやできないことはしっかり覚えて安全に工事をしよう
- ていうか全部安全側に倒しとけば趣味でやる分には全然OK
- できないところは無理しないで露出配線にしようとか選択肢は色々取れる
受験の概要(余談)
資格取りたい人向けのお役立ち情報になったら良いな系の情報ですね。
筆記試験や実技試験は申し込んで2ヶ月は余裕があるので2ヶ月ガッツリ以下をやりました。
筆記試験に申し込む(9月)→試験(10月末)
実技試験に申し込む(11月)→試験(12月末)
平日業務終了後の2~3時間と、毎週末8時間はひたすら勉強してればだいじょーぶだいじょーぶ
筆記対策
「いちばんやさしい 第2種電気工事士」っていうググったら出てくる一番安いのを買って第2種電気工事士をゆっくり解説見て計算問題を練習したり、第二種電気工事士過去問道場で毎日過去問を10問ずつ解くとかやってれば、覚えゲー部分は自然と身につくので参考書と過去問を試験日までループしとけばOKかなって思ってます。
計算問題は中学校レベルなので式の証明とかから入って納得するまでやっても余裕で間に合うかなと。並列の合成抵抗の部分とか証明してみるのも良いかもですね。
覚えゲー部分は画像だけだとあれなので、実技で使うやつを先に買っちゃって実物を見ながら勉強すればOKだと思います。(これがこのケーブルかーとか、コンセントってこういう種類があるんかーとか)
※基本的に、工具とセットになってる2周できるやつをAmazonで買えばよいです。
実技対策
2週分(13x2回=26問やる)だけ部材を買えばOKです。
2週目までちゃんとケーブルとかは規定の長さで用意して練習した後、三回目は端材で要点(芯線を剥く長さ)を押さえるくらいで実技はマジで普通に覚えますね。腰袋は用意しとくと良いですよ。ワークスペースを広く使えるしマジで効率上がるので。
複線図は書けるに越したことはないし、5分で書けるようになれば残りは全部作業なので書けるようになっとくといいです。
複線図書いても合計25分くらいで終わったからまぁ複線図に10分掛けてもいいくらいですかね。
途中退席不可だから暇でした。
※腰袋がないと多分倍は掛かるから腰袋は必須です。
実技の高速化
1周目は以下の縛りを導入してNo6くらいまでを黙々と目標時間とか無視して解きます。
2周目は縛り無しで行きましょう。
- 実技でシースを剥く作業についての縛り:被覆は問題の設計書通に従って、厳密に剥くことを常に意識します
- 誤差はケーブルの両端で合計5ミリ以内に抑えます。片側2.5ミリまで
- ワークスペースの縛り:ワークスペースを30cm x 30cm くらいに制限します
- その他縛り:腰袋なしで、ワークスペースに工具を展開します
この状態でNo4までは60分を目安に、No6までは50分を目安に解きます
この縛りを導入した後、No8位になってくると40分後半で頭打ちになってくるので腰袋を使います。実技試験ではケーブルやシースの長さは5割切ってなければセーフです。厳密にミリ単位で揃える必要はないので縛りを解きましょう。めっちゃ高速で作れるようになっています。(2周目は30分台前半くらいの速度で作れるようになるかなと)
もしここまでで作れなければ輪づくりとか、要素ごとの練習をひたすらやってそれらを高速化したり最適化しましょう。
大切なのは、1周目はとにかくよくありがちなミスがないかを徹底的に確認することと、その回路を遅くてもいいから丁寧に作り切ることを意識すればよいですね。
とかやってたら20分くらいで作り終わって最後の点検で5分使って終わって暇になったので割と有効だと思うんです。しらんけど。
受験費用
参考書(筆記対策):2300円くらい
工具と実技課題練習用キット(2週分):3万後半から4万くらい
受験費用:1万くらい
腰袋:5000円くらい
合計費用は大体5万5千円くらい
この中の1万5千円は工具なので、先々のこと考えると「受験費用」ではないんですよね。まぁ捉え方次第っすね。