はじめに
この記事は何が書いてあるのか
この記事は、ERP導入SEだった私が社内人事異動でERPパッケージのB2Bカスタマーサクセス担当になってから経験・学習した内容を踏まえ、B2Bカスタマーサクセス活動で取り組んでいることや、その活動に参画することでエンジニアにとってどんないいことがあるか、などを雑多に記したものです。
この記事を書いた人のプロフィール
旅行・ご飯・夏フェス・ゲームが好きな話の長い陽キャ属性エンジニア
- 職歴
大手IT企業2社と某商社が立ち上げたIT企業に新卒入社、インフラ屋さん2年→アプリ屋さん1年
アプリ屋さんで働いてみたくなり、ビジネスエンジニアリング株式会社(当時は東洋ビジネスエンジニアリング株式会社)に転職
商品開発2年→プロジェクト16年→カスタマーサクセス2年
カスタマーサクセス活動とは?
カスタマーサクセス活動の定義
カスタマーサクセス活動はお客様の成功を目標とした活動です。
販売した製品をお客様が使い、素晴らしい体験をする。製品のファンになり、次も製品を購入いただく。
そんな好循環を作ることを目指すのがカスタマーサクセス活動です。
なぜ今カスタマーサクセス活動が必要なのか?
ソフトウェアも最近はサブスクリプション型の製品が増えてきました。
私が担当している自社開発ERPパッケージにも買い切り型のライセンスだけでなく、サブスクリプション型のライセンスの販売方式も導入しております。
サブスクリプション型で販売する場合は、(一般論として)最初に多額の費用を投じて購入するわけではありません。よって、納得感がある製品でなければ、お客様は契約を解除して離れていってしまいます。
納得感が得られない理由が「製品の正しい使い方が浸透していない」「製品の本来の魅力が伝わっていない」といったものであれば、正しい使い方や魅力を伝える活動をすることで、お客様が納得・満足してくれる可能性があります。
こういった部分をサポートすることができれば、解約率(カスタマーサクセス活動ではチャーンレートと言います)は低い基準で抑えることができ、売上を引き続き確保できます。さらには、そういった姿勢を通じてファンになってくださるお客様がいらっしゃれば、アップセル・クロスセルの機会も得られるかもしれません。
サブスクリプション型のビジネスモデルが多い今の時代だからこそ、カスタマーサクセス活動はとても大切なのです。
(あと、一般的にはSNSなどの口コミが強い時代だから、良い口コミを得るためにカスタマーサクセスを、みたいな風潮もあるようには思いますが、これはB2Bだとあまり関係ないと思うので割愛)
カスタマーサポートとカスタマーサクセスの違い
主観も入りますが、まず以下の違いがあると思っています。
- カスタマーサポートは受動的
- カスタマーサクセスは能動的
カスタマーサポートはお客様からの発信が起点になりますが、カスタマーサクセスはお客様の状況をこちらが見極めて発信する動きが必要だと思います。
カスタマーサポートはお客様が困ったことを問い合わせてくるのに対して、適切な回答をしてお客様の悩み事を解消する仕事です。とても大事なお仕事ですが、お客様が困っていることを検知して先回りするような動きは基本的には取っていないと思います。
これに対して、カスタマーサクセスはお客様のビジネスの成功を願い、何ができるかを考えて自律的に行動するという点が異なっていると思います。私の所属する部署では、ここまでの活用度やアンケートの内容などからコンタクトをすべきお客様を抽出して、主体的にアプローチする動きを取ることを目指して活動をしています。
また、対象期間の違いもあるかと思います。
- カスタマーサポートのスタートは稼働後
- カスタマーサクセスのスタートは購入前からずっと
使い始める前からカスタマーサポートを求めるケースは基本的にはないと思います。使い始めてからの様々な悩みを解決するのがカスタマーサポート。
カスタマーサクセスは購入前から寄り添っていくお仕事です。買ったらこんないいことがあるという体験を営業と共に伝え、導入中は他のお客様事例のご提供などプロジェクトメンバーとは別な目線でお客様の活動をサポート。稼働後も他のお客様との交流や保守担当のSIerさんのフォローなどで顧客満足度を高めるべく活動を続けます。
カスタマーサクセス活動を通じて成果を得られた事例
私の所属する部署では、自社製ERPパッケージのカスタマーサクセス活動として「導入したお客様への情報発信」「ユーザ会運営を通じたお客様同士での交流・課題解決」「アンケート収集と改善・フィードバック」「お客様とのビジネス協業・共創」といったことに取り組んでいます。お客様がファンになってくれることで、お客様がお客様をご紹介してくださる好循環も生まれてきております。
当社でカスタマーサクセス活動を実施したことによる業務的な成果の一例を以下に記します。
- お客様キーマンの退職でERPパッケージの活用度が著しく下がったことからリプレースを検討していたが、パッケージの標準的な使い方のデモを実施しトレーニングのご提案など行った結果、一転して活用の方向に転じた(お客様の取締役からもフォローに対してのお褒めの言葉をいただく)
- お客様とSIer様との関係が悪化していたことをコミュニケーションの中で捉えたので、SIer様と情報を共有し、問題の改善に取り組んでいただいた結果、お客様から改善の方向に転じたご報告をいただくことができた
- 状況が分からないお客様のところにアポイントを取ってご訪問させていただき、当社がライセンサーとして展開するサービスのご紹介をしたところ、さっそく活用したいというお話になり、お客様のファン化が進んだ
また、私がカスタマーサクセス活動を実施したことによってエンジニアとして得られた成果の一例を以下に記します。
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業務範囲の拡大
私の担当業務はエンジニア時代には販売領域とインフラ領域がメインでしたが、お客様は私の得意領域なんてお構いなしに生産領域や原価領域、会計領域、周辺システムなど様々な話を繰り出してきます。それらをさも知っているかのように受け答えしながら、その傍らで必死に検索したり社内の有識者にチャットで質問したりしながら乗り越えてきました。おかげで、その道のプロとは言い難いですが、いろいろな領域の言葉に慣れ親しみ、表面的な機能の話くらいはできるようになりました -
全体設計能力の向上
表面的とはいえ、業務範囲が拡大したわけです。そのおかげで、インターフェース設計や機能間連携の設計を行う際にはプラスになったなと感じます。相手が何をするものなのかがわかるのとわからないのとでは、設計のしやすさは大きく異なります。 -
トレンドの把握
いろいろなお客様とお話をしますので、時代ごとのトレンドなども感じることができます。例えば、10年以上前にシステム本稼働したお客様はカスタマイズの嵐になっていることが多いですが、ここ数年でシステム本稼働したお客様はFit to standard(F2S)志向が高まっていることを感じます。
システム全体像についても、ERPパッケージをカスタマイズして全てを網羅できるようにするのか、ERPパッケージはあくまでデータストアを主目的として細かな日常業務は周辺システム(MES、PLM、MDM、CRMなど)を活用するのか、など会社によって色が出ます。こういった違いを知ることができるのも良い経験となります。
あとはその時のIT業界のトレンドなんかも会話に出てきます。DX推進、ローコード・ノーコードツール、生成AI、IoTみたいな話がここ数年はよく出てきますね。ローコード・ノーコードツールを導入したら業務部門がいろいろ作って活用しているけど、作った担当者が異動や退職で不在になったらそのフォローを情シスが求められて辛い、みたいな現場の生々しいお話も伺うことができます。
エンジニア目線でカスタマーサクセス活動の経験が役に立つと感じること
一言で言えば、お客様から信頼されるエンジニアになれる、ではないかと思います。
自分の都合と同じくらいお客様の都合も想像できるようになるためです。
ゴールの違いを理解する
SIerのゴールはお客様のスタートです。
SIerが導入完了してほっと一息ついている時、お客様は導入されたシステムをどのように活用して業務効率化や精度向上を目指すかの本番がスタートします。
お客様からしたら「保守に入ってSIerが急に冷たくなった」と思うかもしれません。もちろん、契約形態の変更もあるわけで、SIerからしたら保守フェーズに入ったらそんなに手厚いサポートなんて費用的に難しいし、いくら業務の話を聞いたとはいえ、本当の意味で業務をしているわけではないのだから、業務の細かいことには答えられないよ、というのがSIerの立場ですので、そうなるのは両社にとって必然なわけです。
目指すゴールが異なるのはこういったビジネスモデル上仕方のないことではありますが、お互いのゴールが異なることを頭に入れてお客様と接するだけでも、他の人より頭一つ抜け出した「気の利いたエンジニア」になれるのではないでしょうか。
お客様事例の蓄積がお客様からの信頼を生む
カスタマーサクセス活動の中で、他のお客様が困っていたことや改善した事例なんかを収集していれば、お客様目線での悩みにもちょっとしたヒントくらいは出せるようになり、よりお客様からの信頼を獲得できるであろうと推察します。
例えば、A社さんで「実際原価を使ってるけど標準原価も使いたい、どうしたら進められるかな」という相談を受けたとしましょう。別にここで具体的な解決策を出すのは他の人でもいいんです。そういう悩みの事例があったということを掴んでいればOK。
その後、B社さんで「標準原価は使ってるけど実際原価も使いたい、どうしたら進められるかな」という相談を受けたとしましょう。回答の前に「別のお客様では実際原価は使ってるけど標準原価は使ってなくて導入したいという話がありました、今回は逆のケースですね」なんて一言挟むだけでも、なんか経験豊富そうじゃないと思っていただけるわけです。
いろいろ知ってるから頼りになるなあという信頼感の醸成。ハッタリかもしれませんが、ないよりはあったほうが武器になると思います。
営業より深く、エンジニアより浅く、それでいて数をこなせるカスタマーサクセスは自身への事例の蓄積にはピッタリだと思います。
お客様の様々な困りごとが成長のチャンスになる
お客様の困りごとを「自分ならどうする?」と思考し助言することで、自分自身の成長のチャンスが増えます。
例えばローコード・ノーコードツールの野良アプリに悩んでいるという話を受けて、そのアプリを見せてもらい、自分ならこういう風に修正するとアドバイスをするとか、お客様の原価の悩み事に対して自分ならこういう形で検討を進めるとか。
言い方はあまりよくないのですが、自分自身が責任を持たない状態で自分の思考をフル回転させ、最適解を導き出すチャンスはそうそうありません。答え合わせをして、間違っていれば検証をして次に活かすことができます。当たっていれば一つの知見・経験になり、自分自身のエンジニアとしての引き出しが一つ増えることになります。
自身の成長機会の創出としてもカスタマーサクセス活動は有効ではないでしょうか。
まとめ
- カスタマーサクセスとは、お客様に寄り添い、お客様に製品のファンになってもらう活動
- カスタマーサクセスは営業より深くエンジニアよりも浅め、多くのお客様に関わる活動
- エンジニアがカスタマーサクセス活動に携わることでお客様事例の蓄積が進み、お客様からの信頼も得やすくなる
カスタマーサクセスを経験してからエンジニアに戻るもよし、そのままカスタマーサクセスの道に進むもよし、なんなら営業になるのもよし。総合格闘技であるカスタマーサクセスを経験することで、エンジニアのキャリアパスに深みが出ること請け合いです。
この記事が何かの気づきになれば幸いです。
最後に
実は今、当社カスタマーサクセスチームでは一緒にお客様の成功を目指して活動する仲間を大募集しております。
もしご興味がありましたら是非仲間に加わっていただけると嬉しいです!
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