今回の書籍
今回の書籍は「失敗の科学 失敗から学習する組織、学習できない組織」です。
現在、私はDevOpsについていろいろ勉強しています。
その中で「失敗を恐れずに、失敗から学ぶ」ということが大事だと思っているので、この本を読んでみました。
本書の概要
人の失敗から学びましょう。自分で全部経験するには、人生は短すぎます
本書は人はなぜ失敗するのか?そして失敗を繰り返す組織とそうでない組織は何が違うのか?
という観点で多数のエピソードを描いています。
失敗をどう捉えるか、どう学ぶかを科学的に解き明かした本であり、非常に参考になりました。
一部、少々強引なエピソードもありましたが、大半のエピソードには共感し、失敗から学べる組織の凄さを感じることができました。
一見、「なぜそんなことになるんだ・・・?」と感じるような事例でも、その後になぜそのような状況に陥ったのかが詳細に書かれており、納得することができました。
引象に残ったキーワード
避けようがありませんでした。
本当はそんなことはないのだが、自分の落ち度を認められないために、このような言葉を発してしまう。
なぜ、航空業界は奇跡的に安全なのか?
あれほど大きな機械がなぜ日々事故を起こさずに運航できるのか?
実は頻繁に事故は起きているものの、そこから徹底的に学んでいるため、安全に運航が続けられているのだ。
クローズド・ループ現象
失敗や欠陥にかかわる情報が放置されたり曲解されたりして、進歩につながらない現象や状態を指す。
「瀉血」(しゃっけつ)という治療法の話がわかりやすいです。
「瀉血」が効果があるか?という調査して、ある!と結論づけたのだが、
そもそも「瀉血」の後、回復しなかった人は亡くなっていてアンケートできない。
助かった人にしかアンケートしてないので効果があった!という答えしか返ってこない。
RCTとても大事!とのこと。
RCT
この本ですごい推されてる分析方法です。
わかりやすくいうと、「やったグループとやってないグループで結果を比較する」です。
やった方だけで検証するのは、やったことが効果に繋がっているかはわからないということ。
「完璧」な集中
緊迫した状況だと、視野が狭くなり周りの声も届かなくなる。
そして、時間感覚も狂う。
故に判断ミスをするのだ。
この本で一番共感できる部分です。
何にでもあてはまるものは科学でない
あらゆるものが当てはまるということは、何からも学べないことに等しい。
少し難解な章ではありましたが、
非常に重要な考え方を提示していると感じました。
ミスを「忙しいから」で済ませていたら何も学べないし、進歩もない・・・そんなところですかね。
考えるな間違えろ
世界は複雑なので、専門家でも正確に未来は見通すことはできない。
だから超高速で失敗と学習を繰り返すのがベストだと述べています。
やっぱアジャイルということか。
「物語」が人を欺く
服役囚が不良少年に刑務所暮らしの辛さを説いたら犯罪が減った!良い話!
と思ったらそうでもなかった・・・。
データに「単純で誰でも共感しやすい物語」が紛れていると、曲解されやすい。
海外でもこんな事態が起こるんですね。
卒業文集を一方的に引用したり、事件に都合の良いストーリーを作り上げてしまうのは日本だけだと思っていました。
成長が遅い人は失敗の理由を「知性」に求める
固定型マインドセットの子は、いともあっさりと自分の能力を過小評価し、失敗を自分の知性のせいにしはじめた。「きっとボクはあまり頭がよくないんだ」「前から記憶力が悪かったから」「こういうのはもともと苦手なんだ」
耳が痛い・・・言葉です。
記憶力がどうのこうのと言えるほど勉強していないかも・・・。
自分のSIer人生に当てはめてみる
この本を読んだ上で私のこれまでSIerの仕事・・・つまり過去の担当プロジェクトはどうだったかを考えてみました。
結論から言うと、失敗を十分に活かせてないですね。
シナリオありきの障害報告
一応、障害が起きたらそれの原因と対策を考えて、対策を少しずつ実践はしていたと思います。
ただそれは、上司や顧客に報告しなくてはならないから、という側面が強いですね。
しかも、障害発生からあまり間をおかずに報告しないといけないことが多かったので、無難で実践できそうな対策を立てることが多かったです。
それで効果があったかは正直検証したことはありません。
これは、失敗から学んでるとは言い難いですね・・・。
後からこの原因と対策は違ったな・・・と思っても、もう一度考えたり話あったりするのは「蒸し返す」という感じでできなかったです。
ウォーターフォール中心の環境だと間違えることができる場所がない
ウォーターフォールのプロジェクトで、リリース作業を思い浮かべてみます。
- 手順作成
- 検証環境でリハーサル
- 本番
工数的にこんなもんにせざるを得ないのですが、
リハーサル1回で失敗を洗い出せてるか・・・?と言われたらNoです。
大体本番で何か起きますよね・・・。
これを頻繁に繰り返してるならまあそのうち慣れてくるかと思いますが、
ウォータフォールだとそんなにリリース作業を頻繁にしないですよね。
たまにしかしなくて、しかも失敗が許されない作業だと、どうしても安牌を選びます。
なんか良い方法を思いついても試そうとは・・・思わないですね。
非公式な反省会
これは私の周りだけがおかしかったのかもしれません。
思い起こせば障害の原因と対策は大体一人で考えてました。
けど、じゃあ孤軍奮闘してたのかというとそうとも言い切れない。
飲み会の二次会で先輩たちと反省会していた時期があります。
気持ちはありがたいけど、体力的にきつかったですね。
よくよく考えたらお酒飲んで冷静な議論ができるとも思えないし、このやり方は間違っていたと思います。
反省会は、昼間、ちゃんと工数つけて開発サイクルに組みこまなければならないと思います。
お酒の場に来ない人は失敗から学ぶ機会がないというのは違うかなと思います。
まとめ
本の最初の方の章では、話に出てくる組織に対して、なんだこのダメ組織は・・・自分のとこはさすがにここまで酷くないよ
と思って読んでましたが、
冷静に考えると自分も全然ダメだな、見習おうという内容でした。
SIerのプロジェクトってとにかく前に進めなくちゃいけないんですよね。
プロジェクト終わって次が始まったら前のプロジェクトなんて本当に振り返る暇がない。
じゃあどうすれば良いかはすぐに言えないけど考えるきっかけになる本でした。