産業用自家消費型太陽光・蓄電池経済効果シミュレーションAPI 高圧電力対応APIについて
こんにちは、今回は、急速に注目を集めている産業用自家消費型太陽光発電システムと、それを支える高圧電力対応APIについて深掘りしていきます。
はじめに:なぜ今、産業用自家消費型太陽光発電が熱いのか
2022年以降、日本の産業用太陽光発電の導入量が急増しています。特に自家消費型の需要が伸びている背景には、以下の要因があります:
- 電気代の高騰
- 脱炭素化の流れ
- 事業継続計画(BCP)の強化
こうしたトレンドの中で、高圧電力を使用する施設向けのAPIが重要な役割を果たすことになりそうです。
高圧電力対応APIの必要性
高圧電力とは、受電電圧が6,000V以上の電力供給形態のことで、主に工場やオフィスビル、大規模商業施設などで使用されています。
これらの施設が自家消費型太陽光発電や蓄電池を導入しようとする際の最大の課題は、経済効果の予測です。高圧電力を使用する施設は電力の使用パターンが複雑で、電力料金体系も複雑です。そのため、導入効果を正確に予測するのは非常に困難なタスクとなります。
ここで、高圧電力対応・産業用の太陽光・蓄電池シミュレーションAPIの出番です。
エネがえるBiz APIの特徴と仕様
エネがえるBiz APIは、高圧電力を使用する施設向けに、自家消費型太陽光発電や蓄電池の経済効果を診断するためのものです。
APIの主な機能
- 電力使用量データの解析
- 最適な太陽光発電システムの提案
- 蓄電池導入による経済効果のシミュレーション
- 電力料金の最適化提案
電力使用量の計算方法
エネがえるBizでは、以下の2パターンで設備負荷・電力使用量の計算を実施します:
-
30分値デマンドデータがある場合:
- 指定のCSVフォーマットで365日分のデータをインポート
- 自動で自家消費診断を実行
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30分値デマンドデータがない場合:
- 12ヶ月分の電力使用量(kWh)と対象年・月を入力
- 1日の24時間の電力使用量比率(%)を入力してロードカーブパターンを登録
- カレンダー(稼働・非稼働)を登録し、ロードカーブパターンを割り当て
- 365日・1時間値の電気使用量(kWh)に分解・計算
発電量推定のロジック
発電量推定は、JISC8907:2005の太陽光発電システムの発電電力量推定方法を参照しています。
計算式:Ep = K' × K × P × H ÷ G
Ep: 時間システム発電発電量
K': 基本設計係数(エネがえるBizの初期値は0.85)
K: 温度補正係数
P: 太陽電池アレイ出力
H: 時間別傾斜日射量
G: 標準試験条件における日射強度(1)
太陽光パネルの設定
- 設置面は3面まで設定可能
- 余剰率をグラフで確認しながら、太陽光パネルとパワコンの出力値(kW)を調整可能
- 発電量推計は1時間毎に計算され、Web画面では月単位でグラフ表示
必須入力項目
- 日射量観測地点
- 太陽光パネル出力値(kW)
- 方位角(度)
- 傾斜角(度)
- 基本設計係数(初期値0.85)
- 太陽電池素材
- 設置形態
- PCS出力値(kW)
- PCS変換効率(%)
任意入力項目
- 年間予想発電量(kWh):別途メーカーシミュレーション等の数値がある場合、入力すると精度が向上
日射量データベース
NEDO MET-PV20のデータベースを参照:
- 統計期間:2010~2018年
- データ種別:代表年の時別値(1時間値)
- 地点数:全国835地点
- 日射量の推定方法:日照時間等から全天日射量を推定するモデル
エネがえるBizでは、MET-PV20の平均年のデータを採用しています。
APIの活用シーン
このAPIは、様々な業態で活用できます。例えば:
- 工場:工場屋根上に自家消費型太陽光を設置し、電力ピークカットを含めた電気代最適化
- 物流倉庫:季節変動を考慮したデマンドデータ解析と設置する再エネ設備の最適化
- 病院:24時間稼働を前提とした屋根上太陽光+蓄電池での安定的な電力供給システムの構築
- 地方自治体施設:公共施設の脱炭素計画の策定支援(自治体施設屋根上への自家消費型太陽光)
エネルギーフローの理解
産業用自家消費型太陽光発電システムのエネルギーフローを理解することは、APIの活用において重要です。以下は基本的なフローです:
- 太陽光パネルで発電された電力は、パワーコンディショナー(PCS)を通じて変換されます。
- 変換された電力は、以下に分配されます:
- PV自家消費(施設内で直接使用)
- 蓄電池充電
- 余剰電力(売電または捨て電力)
- 蓄電池は充電と放電を行い、必要に応じて設備負荷に電力を供給します。
- 系統(電力会社)からの購入電力も、必要に応じて設備負荷に供給されます。
このフローを最適化することで、電力コストの削減とCO2排出量の削減を同時に達成できます。
APIの技術的な特徴
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高度な計算処理:電力会社の複雑な料金体系、気象データ、設備の効率など、多岐にわたるデータを考慮した計算を高速で実行します。
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蓄電池対応:単なる自家消費型太陽光の効果額計算だけでなく、蓄電池を併用した場合の試算にも使えます。
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柔軟性と拡張性:様々な業態に対応できるよう設計されており、将来的な機能拡張も容易です。
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リアルタイムデータ連携:常に最新の電力料金データや気象データを使用しているため、高精度なシミュレーションが可能です。(必要に応じて外部スマートメーターや電力実データとの連携処理などもサポートするAPIを提供)
おわりに
産業用自家消費型太陽光・産業用蓄電池の導入シミュレーションができる高圧電力対応のAPIは、再生可能エネルギーの普及に大きく貢献する可能性を秘めています。特に日本のように電力システムが複雑で、かつ急速に再エネへのシフトが進む市場では、このようなツールの重要性がますます高まっていくでしょう。
エネがえるBiz APIを活用することで、今後はさらに新しいアイデアと組み合わさることで、エネルギー分野に新たなイノベーションを起こすことができるかもしれません。例えば:
- リアルタイムの電力需給予測システムの開発
- AIを活用した最適な太陽光パネル・蓄電池の運用制御システム
- ブロックチェーンを利用した分散型エネルギー取引プラットフォーム
みなさんも、このAPIを使って新しいアプリケーションやサービスの開発に挑戦してみませんか?お気軽にご相談ください。
エネルギー分野のデジタル化は、まだ始まったばかりです。このAPIを起点に、私たちエンジニアがエネルギーの未来を変えていけると信じています。
参考リンク
- エネがえるBiz API 公式ドキュメント
- エネがえるAPI プレゼンテーション資料
- エネがえるEV・V2H API ドキュメント
- エネがえるAI Sense API ドキュメント
- NEDO MET-PV20 仕様書
- JISC8907:2005 太陽光発電システムの発電電力量推定方法
以上、高圧電力対応のAPIについての詳細解説でした。エネルギー分野のデジタル化に興味を持っていただけたでしょうか?このAPIを使って、皆さんがどのようなイノベーションを起こすのか、とても楽しみです!