こういうニュースを見かけました。
一つの土地に二つの住所?地番と住居表示のことかと思ったらそうではない。行政が割り振っている住居表示と、郵便局が作成している町域とで不一致が見られるケースがあるそうです。
つまり、ある土地に対して住居表示だと「ほげ市ふが」となってるけど、郵便局では「ほげ市ぴよ」になっていると。地番と住居表示の場合は「ふが」までは一致していてそのあとの番地/番の数字が違うのですが、そうではなくて町・字のレベルで一致してないと。これはややこしそう。
より詳細な話は福知山市住所等に関する検討会の資料にまとまっています。
実際のところどうなっているのか、アドレス・ベース・レジストリと郵便番号データで比較してみました。使用したデータはアドレス・ベース・レジストリ(京都府福知山市町字マスター)が2023年1月25日更新分、郵便番号データが2023年9月29日更新分です。
記事内にあった「字天田」を確認すると、アドレス・ベース・レジストリには以下のデータがあります。
262013,0003000,1,京都府,キョウトフ,Kyoto,,,,福知山市,フクチヤマシ,Fukuchiyama-shi,,,,字天田,アザアマダ,,,,,,,,0,0,0,0,0,0,0,1,1947-04-17,,0,,
262013,0003101,3,京都府,キョウトフ,Kyoto,,,,福知山市,フクチヤマシ,Fukuchiyama-shi,,,,字天田,アザアマダ,,,,,小字イナリ山,コアザイナリヤマ,,0,0,0,0,0,0,0,1,1947-04-17,,0,,
262013,0003102,3,京都府,キョウトフ,Kyoto,,,,福知山市,フクチヤマシ,Fukuchiyama-shi,,,,字天田,アザアマダ,,,,,小字カラカラ蓮池,コアザカラカラハスイケ,,0,0,0,0,0,0,0,1,1947-04-17,,0,,
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(以下省略)
一方、郵便番号データには「字天田(アザアマダ)」はありません。「大江町天田内」はありますが、これはアマダウチと読むので全く別の住所です。字天田内の小字「イナリ山」「カラカラ蓮池」なども郵便番号データにはありません。
一方、郵便番号データにある「内田町」や「大野」などはアドレス・ベース・レジストリにはありません。
全ての差分を取ってみますと以下になりました。これだけ町、字、小字、町域に違いがあるとかなり大変そうですね。
一つ注意しないといけないのは、郵便番号データには「以下に掲載がない場合」として省略されている町域がありますから、その影響のデータも含まれるということです。
阿良須,井ノ奥,稲垣,稲葉,羽合,羽白,駅前,奥,奥ヶ市,奥山,奥水坂,奥谷,奥地,岡部,下ノ段,下千原,下川合,下中,下町,下報恩寺,佳屋野,河内野,荷稲,柿本,岩戸,久保小杉野,久保地,桐差,琴ヶ瀬,金重,金谷,金尾,九日,栗尾,桑
村,桑谷,見安,現世,古地,戸倉,五日市,公庄下,公庄上,口田野,向,広畑,高橋,黒石,今西,今里,才谷,坂浦,坂梨,三ヶ村,三軒屋,三軒家,三谷,山谷,山中,市場,寺谷,寺尾,寺尾山田,鴫谷,室尾谷,蛇ヶ谷,蛇ヶ端,小笹,小寺,小松ヶ丘,小谷ヶ丘,小峠,小畑,小野,小野原,小路,松村,菖蒲越,上ノ段,上安場,上千原,上谷,上地,上中,上町,新橋,新町,新田,森安,森野,水坂,水上,清水,西ノ谷,西垣,西石,西谷,西田ノ谷,先山,千束野,泉谷,前地,草山,多谷,台頭,大原
野,大内山田,大平,大岶,谷村,旦,段,池内,竹石,中ヶ市,中ノ谷,中央,中出,中千原,中村,中村団地,中津戸,中田,中島,仲蔵,町,長宮,長田野工業団地,天王地,天座一区,天座二区,天照,田谷,田谷垣,田野山田,登尾,菟原下一,菟原
下二,島田,東田ノ谷,堂本,奈良原,内田,南島,二箇下,二箇上,日吉ヶ丘,日後,日向,柏田,尾藤奥,尾藤口,副谷,仏坂,仏谷,平石,平野,北地,門垣,夜久野,野間仁田,野原,野際,野毛,矢津,柳瀬,梨ノ木,立岩,林,冷田,渕脇,天田,イナリ山,カラカラ蓮池,キラキラ,コエラ,コエラ谷,コホヤ谷,ゴンボレ,サンマイ,セト山,ビワクビ,ユリ,ユリケ下,ヲコリキ,ヲチヨ谷,安宅,井龍田,一盃水,一本橋,稲荷山,稲葉畑,姥ケ懐,榎ケノ段,榎原口,榎原口外,奥谷,奥谷友治郎屋敷,横縄手,岡ノ町,岡口,下長戸,柿ケ坪,柿畑,柿木下,額田,掛川,釜戸,釜戸口,釜谷,勘兵衛町,観音,丸山,丸坪,丸田,丸渕,雁谷,吉良,橋ノ本,九反田,九郎兵衛川,桑ケ畑,犬丸,犬丸広道,源太兵衛,狐塚,五位坂,後割,広道,荒
木宮ノ下,荒木山,荒木谷,紺屋谷,堺谷,堺谷口,崎山,山ノ神,山浦,山浦谷,山浦谷口,四郎右衛門町,寺ノ段,治郎佐野,種田,樹木,出口,松ケ下,上ノ橋,上ノ段,上ノ町,上地,上長戸,上澤,新小屋,新切,清水,清水上,生念塚,西五位坂,西川,西川水道,西沢,西長戸,西畑,善蔵屋敷,村西,村中,太助屋敷,大橋,大呉正,大谷,大谷口,大塚,大道畑,棚田,谷林,樽井,樽井口,樽井山ノ下,樽井寺ノ段,樽井大道畑,樽井谷,樽井谷上,樽井八右衛門塚,談畑,池町,築土居,中ノ段,中長戸,中島,忠左衛門,忠左衛門町,鋳物師町裏,長戸,長谷,長茶エン,塚ケ坪,塚間,塚畑,田津,土取谷,東五位坂,藤次郎畑,八右衛門塚,武者ケ谷,平兵衛町,法川,堀山,堀端,箕腰,木山,木村,木村口,木村口外,木村山下,木村前,木村中,弥兵衛塚,矢見所,薬師上,薮畑,欄干外,櫻ケ馬場,澤,糀ヤ田,與左衛門谷,蝮谷,荒河,裏ノ,榎原,岡ノ,長田,上天津,上小田,上柳,篠尾,中ノ,西,西長,東長,堀,和久市,猪尾田,横座,宮ノ段,宮ノ内,金ケ,桑畑,口舟,向山,寺
坂,舟井,小枕,松ケ端,新田,真道,青城,石持,打屋,大栗,谷田,段,仲ノ谷,猪守,的場,天王,天領,田屋敷,堂屋敷,馬場,平野,牧山,和泉,鶯,サカイ,下一本木,下深田,河原田,皆木,釜石,間ノ山,亀ノ甲,宮ノ下,宮内殿,栗田,五反田,
上り立,上深田,新開,新久,深田,清ノ山,西ケ端,西稲葉,西五反田,川原田,打溝,中山,鳥井下,東稲葉,東五反田,入町,尾林,稗田,立石,櫻谷,ハサキ,ミノ,ミミカ子,芦ケ坂,芦ケ迫,安田,井ノ奥,井領田,稲荷,引田,浦酒屋,縁ノ結,
岡ノ段,下後山,下野原,夏目,葛尾,宮前,金屋敷,桂尾,向甲田,高倉,高龍寺,今福,鯖ノ脇,三坂,市場,耳鐘,篠迫,酒ノ尻,宗人,出合,所迫,小寺,上後山,上野原,城ノ内,新芦ケ迫,新稲荷,新引田,新縁ノ詰,新岡ノ段,新夏目,新後山,
新広野,新黒田,新今福,新左織,新千倍,新多谷,新大風呂,新美濃,新坊,新野原,新和田,西黒田,西左織,西植田,青代,赤馬,千倍,船井,惣田,多谷,袋,大久,大田和,大風呂,滝ケ谷,段ノ下,竹ノ浦,中才,仲ケ坪,鳥縄手,田千倍,田二反,登り尾,土井越,東黒田,東左織,東植田,湯上,藤尾,二反,畑千倍,畑二反,美濃,野原,柳ケ坪,油谷,林,和田,籠坂,浅谷,瓜生迫,竿折,銀山,向福田,荒堀,枝ケ谷,小谷,上浅谷,新出口,新深田,新福田,清水ケ谷,石原田,丹生谷,段ノ谷,段ノ尾,地藏ケ谷,中ケ坪,栃ノ木,八石,福田,崩,大江町佛性寺,萩原新町,土師新町,土師宮町,東羽合町,緑ヶ丘町
荒河ヒルズ,内田町,大江町仏性寺,大野,大野上,大野下,岡ノ一町,岡ノ二町,岡ノ三町,岡ノ上町,小田,小野脇,北岡町,北小谷ケ丘,北栄町,北羽合,北本町一区,北本町二区,小松ケ丘,篠尾(上篠尾),篠尾(北羽合),篠尾(篠尾新町),篠尾(下篠尾),篠尾(西羽合),篠尾(東羽合),篠尾(南羽合),篠尾(夕陽が丘),さつきケ丘,蛇ケ端,正坂,つつじケ丘,中ノ町,西佳屋野町,西小谷ケ丘,西中ノ町,西長町,西羽合,西本町,西町,野家,土師(新町),土師(宮町),東岡町,東佳屋野町,東小谷ケ丘,東中ノ町,東長町,東羽合,東本町,日吉ケ丘,丸田ケ丘,緑ケ丘町,南天田町,南佳屋野町,南小谷ケ丘,南栄町,南土野町,南羽合,南本町,南本堀
ちなみに同じ処理を東京都新宿区で行うと以下になりました。霞ヶ丘町/霞ケ丘町は表記揺れですし、郵便番号データにあるビル名は郵便番号特有のデータですから無視して大丈夫。実質的に差分となるのは「牛込見付,坂町,本塩町,霞岳町,三栄町」の5つだけですから、いかに福知山市の差分が大きいかがわかります。
牛込見付,霞ヶ丘町,坂町,本塩町,霞岳町,三栄町
霞ケ丘町,西新宿小田急第一生命ビル,西新宿新宿アイランドタワー,西新宿新宿NSビル,西新宿新宿エルタワー,西新宿新宿スクエアタワー,西新宿新宿住友ビル,西新宿新宿センタービル,西新宿新宿野村ビル,西新宿新宿パークタワー,西新宿新宿三井ビル,西新宿新宿モノリス,西新宿住友不動産新宿オークタワー,西新宿住友不動産新宿グランドタワー,西新宿東京オペラシティ
ちなみに福知山市のウィキペディアの記事には以下の文章があります。
旧福知山市内には地名(字・小字)、自治会名、通称など複数の街区名が存在し、なおかつ自治会名は必ずしも別名称の街区の範囲と一致しないため非常に複雑である。 (例:自治会名「岩井新町」の街区は字「岩井」と「荒河」にまたがる。通称「かしの木台」で呼ばれる地域には「岩井新町」「荒河」が含まれ、その組合わせ名で住所が表記されることがあり、更に自治会名「かしの木台○丁目」も存在する。など多数。)
これは、昭和期に入り旧城下町周辺に急激に新市街地が広がったのに対し、それらの字名を整理しないまま街区名や自治会名をつけていった結果である (例:「字天田小字木村」には、通称「末広町1丁目」の街区があり、自治会名「南本町」で呼ばれる住所がある)。
このため7桁郵便番号は自治会名の街区で分類されふられているが、自治会名を用いない住所で検索すると該当するものを探すことができないという不便が生じている。
おそらく同様の市街地化は全国あちこちに自治体で発生したと思われます。これまでに住所整理を行った自治体では現在は混乱は少ないでしょうが、整理当時は混乱したでしょうし歴史的地名の廃止もあったのだろうと思われます。
住所・地名というと現在だけを対象としても複雑なのですが、こうした時間的変化も含めて考えると、さらにややこしいことになりますね。
最後に差分を抽出した手抜きスクリプトを貼っておきます。
require 'csv'
#yubin = CSV.read("utf_all.csv").select{|e| e[7] == "福知山市"}.map{|e| e[8]}.uniq
#abr = CSV.read("mt_town_city262013.csv", headers: true).map{|e| [e["大字・町名"], e["小字名"]]}.flatten.compact.uniq.map{|e| e.sub(/^(字|大字|小字)/, "")}
yubin = CSV.read("utf_all.csv").select{|e| e[7] == "新宿区"}.map{|e| e[8]}.map{|e| e.sub(/(.*)/, "")}.uniq
abr = CSV.read("mt_town_city131041.csv", headers: true).map{|e| [e["大字・町名"], e["小字名"]]}.flatten.compact.uniq.map{|e| e.sub(/^(字|大字|小字)/, "")}
p "=== yubin ==="
print yubin.difference(abr).join(",")
print "\n"
p "=== abr ==="
print abr.difference(yubin).join(",")
print "\n"
(2024/10/13追記)
似たような例が、大分市や別府市でもあるそうです。
大字の住所と通称住所の2種類が使われていて、しかも通称住所には珍しい「組」という表記があるとのこと。
ただ、別府市大分市では住居表示への移行を進めているということなので、将来的にはこちらは二重住所が解消されるのではないかと思われます。珍しい「組」がなくなってしまうのはちょっと残念ですけどね。
(2024/10/13追記終わり)