1. そもそも RVTools って?
Dell Technologies
社の支援のもと無償で提供されている VMware 仮想環境のアセスメントツールです。
2008 年に個人開発ツールとして公開されて以降 VMware コミュニティで世界中で利用されており、2023 年に Dell Technologies
社が買収しました。現在までに 200 万以上がダウンロードされています。
何ができるの?
対象の VMware 仮想環境 (オンプレミス、ホスティング、クラウド) のリソース利用状況、IP アドレス設定、個々の仮想マシンへのリソース割り当ておよび使用率、ライセンスなどの構成情報をわずか 1-2 分で取得できます。
VMware vCenter Server
配下の仮想マシンの定点データを読み取り、1 つの Excel ファイルにまとめて出力します。
この出力データは VMware 仮想環境の棚卸しにも役立つとともに、Amazon EC2
など異なるプラットフォームに移行する際のサイジングに活躍します。
2. 実際に RVTools で VMware vSphere 仮想環境の構成情報を取得してみた
対象 VMware 仮想環境の VMware vCenter Server
にアクセス可能な Windows マシンに RVTools をインストールします。RVTools アプリケーションは VMware vCenter Server
に読み取り権限
でアクセスし、構成情報を取得します。
ダウンロードしてみる
まずは次の公式サイトから、RVTools をダウンロードします。
8 MB 程度の軽量ファイル です。
インストールしてみる
ダウンロードしたファイル (.msi) を実行し、RVTools をインストールします。
インストールにあたっては、デフォルト設定で進めていきます。
シンプルなアプリケーションなのでインストールもサクサク進みます。
インストールが完了しました。
使ってみる
RVTools のショートカットがデスクトップに作成されているので、早速実行します。
VMware vCenter Server
のアクセス情報を入力します。
今回は管理者ユーザーでログインしていますが、本来は読み取り権限
のあるユーザーで十分です。
「File」 タブから 「Export all to Excel」 を選択し、構成情報を Excel ファイルに出力します。
もちろんアプリケーション内でも構成情報の詳細を確認可能です。
収集したデータをみてみる
出力した VMware 仮想環境の構成情報は次のようにエクセルファイルで確認できます。
例えばそれぞれの VM を Amazon EC2 に移行を検討しているとした場合、サイジングの際に特に注目するのは「vInfo」シート内の CPUs
Memory
Total disk capacity MiB
あたりになります。
以下、関連する代表的なパラメーターを紹介します。
列の情報は RVTools のバージョンによって今後変更されるかもしれませんのでその点はご留意ください。
CPUs (O 列)
対象の VMware 仮想マシン (VM) に割り当てている vCPU コア数です。
VMware 仮想環境では通常、オーバーコミットによって物理 CPU コア数以上に仮想 CPU を割り当てます。そのため別の環境に移行する際には、それぞれの環境でのオーバーコミットのポリシーや CPU 性能を考慮してサイジングする必要があります。
Memory (P 列)
対象の VM に割り当てている RAM 容量です。
単位が MiB
(メビバイト、mebibyte)であることに注意が必要です。
1 GiB = 1,024 MiB (= 1,024³ bytes), 1 GB = 1,000³ bytes
VMware vCenter からみると VMware 仮想環境のパラメーターは GB
で表示されていますが、実際には GiB
を意味しています。
Total disk capacity MiB (S 列)
対象の VM に割り当てている ディスク容量です。
こちらも単位が MiB
(メビバイト、mebibyte)であることに注意が必要です。
ディスク関連では同じく「vInfo」シート内の In Use MiB (AT列)
の値も確認する場合があります。こちらは対象の VM が実際に使用しているディスク容量を示しています。
OS according to the VMware Tools (CW 列)
対象の VM のオペレーティングシステム (OS) 情報を表しています。
VMware Tools が読み取った情報であり必ずしも実際の利用 OS と一致しているとは限らないため、確実を期すためには各 VM をそれぞれ確認することを推奨します。
RVTools を利用する際の前提条件
以下に前提条件を記載します。
ハードルは高くないため利用にあたって意識することもない気がしますが、念の為。
- Windows マシンが 対象 VMware 仮想環境の
VMware vCenter Server
に HTTPS (443) で疎通可能である -
VMware vCenter Server
の読み取り権限を持つユーザー情報がある - Windows マシンは対象バージョンの
.NET Framework
に対応している
RVTools は .NET Framework
をベースとしており、執筆時点 (2024/8/14) の RVTools では .NET Framework 4.6.2
が利用されています。
基本的に Windows OS 7 以降あるいは Windows Server 2008 以降であれば動作しますのでご安心ください。
詳細が気になる方は次の 「.NET Framework のシステム要件」をご参照ください。
VMware vCenter Server
が存在しない環境では、VMware ESXi
ホストへのアクセスでも RVTools を実行可能です。ただしその場合、対象のVMware ESXi
ホスト上で稼働している仮想マシンのデータしか入手できない点はご留意ください。
RVTools で取得できるデータの見方
こちらに概要が記載されています。
より詳細な各パラメータの解説はこちらの公式ドキュメントをご参照ください。
3. さいごにちょっと補足
RVTools はあくまで特定時点のデータ取得であるため、時系列でのリソース使用率や平均利用率を知りたい場合は別のツールの利用が適している場合があります。
例えば Dell Technologies
社が提供する他の無償アセスメントツールとしては Live Optics もあります。RVTools と異なり初回ユーザー登録やインターネット経由での取得データのアップロードが必要だったりと一手間かかりますが、CPU/RAM の時系列での使用率や平均使用率などのデータを取得できます。
時系列データなど含む高度なアセスメントには Live Optics が適しますが、簡易的あるいはスピード優先でまず構成情報を取得したい場合には RVTools が向いています。
個人的には使いやすく便利なので、ざっくり構成情報を把握するためにまずは RVTools を利用することが多いです。