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「Why Blockchain?」という問いに対する私の考え

Last updated at Posted at 2023-12-06

ブロックチェーンの技術普及推進活動を進めているNPO法人 NEM技術普及推進会 NEMTUS(ねむたす) の松岡靖典です。

今年はNEMTUSの活動で、ブロックチェーンについて各種オンラインイベントで説明させて頂いたり、リアルイベントでのブース出展で来場者の方に説明させて頂く機会が多くありました。その中でたくさん聞かれた「Why Blockchain?」という問いに対して、主に金融的な側面以外の観点について、自分自身の考えを整理してみたいと思います。

これが絶対的な正しい答えというつもりは全くなく、あくまでも一つの考えとして、参考にして頂けると嬉しいです。

ブロックチェーンとはそもそも何か?

「Why Blockchain?」という問いに答えるためには、まずブロックチェーンとはそもそも何?という理解が必要です。色々な定義や説明があると思いますが、私自身は、技術的に重要なポイントを列挙した、以下のような説明をさせてもらうことが多いです。

  • 様々な取引や情報の記録を、
  • ブロックという単位ごとにまとめて、
  • 定められた仕様(秘密鍵, 公開鍵, 電子署名, ハッシュ, コンセンサスアルゴリズムなど)の元、
  • 各ブロックの前後関係を連鎖的に関連づけたデータを、
  • 参加者各位が(何らかのインセンティブの元で)相互に保持・検証しあうことで、
  • 一貫性のあるデータを、
  • 過去データの改ざんが技術的にとても難しい(≒ほとんど不可能な)状態で、
  • 特定の組織や個人の管理者に依存せず、
  • 結果としてデータを透明性高く・堅牢に、維持・管理していける仕組み

既存のデータベースとの違いは?

このような説明をさせて頂くと、データベース的な側面が強く感じられると思います。すると、次の問いとして「既存のデータベースと何が違うのか?」という質問を頂くことが多いです。それに対する答えとしては、以下のようにそれぞれの特徴を回答させてもらうことが多いです。

既存のデータベースの特徴

  • 一般的なデータベースでは、極論するとデータベースの管理者用IDとパスワードがあればデータを如何様にも変更できる(≒改ざんできる)ので、利害関係の衝突が往々にして存在する実社会の挙動をデータベース上で表現するには、別途適切な管理が必要です。(≒信頼できる管理者となりうる組織や個人が管理する必要があります。)
  • 一般的なデータベースでは、データの公開可否は柔軟に制御可能です。(≒データを非公開としておくことが可能です。)
  • 当たり前ですが、データベースを管理する管理者がデータベースの維持・管理コストを継続的に負担する必要があります。

ブロックチェーンの特徴

  • 過去データを変更(≒改ざん)することは原則不可能です。
  • データは基本的にすべて公開されます。
  • ブロックチェーン上のデータの維持に対するコストは、インセンティブを求めてブロックチェーンネットワークを構成するコンピューターを管理している参加者が負担する構図です。(ここはブロックチェーンの種類によって温度差があります。Symbolブロックチェーンの現時点の状況はこうなっているとご理解ください。)

Why Blockchain?

このあたりまで情報が整理されてくると「Why Blockchain?」という問いへの答えがだいぶ見えてくるのではないでしょうか?

1. データ維持コストの外部化によって大規模なサービスでも安価にサービス提供可能な可能性が生まれること

私自身が一番大きいと感じている「Why Blockchain?」への答えは、サービス提供者や開発者が、データの維持・管理コストを(ブロックチェーンネットワークを構成するコンピューター(=ノード)の管理者に)外部化できることです。

大規模なサービスになればなるほど、データを扱う箇所でのクラウドサービスでのコストは大きなものになりがちだと思いますが、例えばSymbolブロックチェーンのメインネットでは、全世界に分散した数百以上のAPIエンドポイントが公開されており、サービス開発者はゼロコストでそれらAPIを利用してブロックチェーン上のデータにアクセスできます。

クラウドサービスで大量のデータベース用インスタンスを利用するコストと運用の大変さを考えると、ゼロコストで数百以上のAPIエンドポイントでデフォルトでスケール済の全世界分散型DBにアクセスできることにロマンを感じませんか?私自身の「Why Blockchain?」に対する答えの最も根幹に位置するのはこれかなと思っています。

ノードリスト: https://symbolnodes.org/nodes/

2. 社会的な需要はあるがコストがかかるためにビジネスとして成立させるのが難しかったサービスを維持できるようになる可能性

1の利点によって低コストで大規模なサービスが実現可能となることで、コスト的にこれまで実現が難しかったであろう、社会に良いインパクトを与えるサービスの実現可能性が高められることにも、可能性を感じています。

3. 各種サービスの継続性が高まる可能性

サービス提供組織や開発者によるサポート終了後もブロックチェーン上のデータに継続してアクセス可能であることで、推しのサービスや、社会的に失われてはならないサービスを継続的に利用可能とできる可能性が高まることにも魅力を感じています。
(変化の速い現代において、何度、推しのサービスがサービス終了する悲しさを味わってきたことか...)

4. データの透明性と改ざん耐性がもたらす証明能力の高さ

もう一点、ブロックチェーン上のデータが原則公開されていることや、過去のデータを変更(≒改ざん)することが極めて難しいことによって生まれる「そのタイミングで、そのデータを、そのアカウントが知っていた事実の証明」の力が、今の世の中で色々な人が色々な頑張りで証明している事柄を、もっと単純に、楽にできる可能性を持っているのではないかと感じています。

まとめ

まとめると「Why Blockchain?」への自分なりの考えとしては、ブロックチェーンを活用することで以下のような可能性が生まれることに魅力を感じているから... ということになると思いました。

  • データの維持コストの外部化
    • それによってもたらされる新しいサービスの可能性
    • それによってもたらされるサービスの継続性
  • データの透明性と改ざん耐性がもたらす証明能力の高さ

なお、この記事では、ブロックチェーンの良さの側のみに主に焦点を当て、なおかつ、ブロックチェーンの中でもSymbolブロックチェーンの現状に着目して情報を整理した側面はあり「ここはフェアではないんじゃ?」とか「でもブロックチェーン活用するにはここはつらいよね」とか「ほかのブロックチェーンだとここは事情違うよ」とか「Symbolブロックチェーンで今後もその状況を維持していけるの?」といった別の論点は絶対あると思います。

とはいえ、私自身が、今この瞬間、ブロックチェーンのどういう部分に魅力を感じて、ブロックチェーンの技術普及推進に取り組んでいるかは、しっかり明文化できたかなと思っています。

ブロックチェーン自体は、まだまだ壮大な社会実験の最中だと思っており、今後、社会にどのような形で残っていくか?消えていくか?はまだまだわからないと思います。社会に良い影響を与えるような形で今後も活用されていく未来につなげられるよう、今後も技術普及推進活動に取り組んでいきますので、どうぞよろしくお願いします。

最後に

NPO法人 NEMTUSでは、年に1回、ブロックチェーンを用いた開発をテーマにしたハッカソンを開催しています。今年は、NEM/Symbol以外にも、どんなブロックチェーンを使ってもOKという形で、キックオフイベント(各種ブロックチェーンの開発ノウハウの勉強会等も予定)や開発合宿イベントやピッチイベントなどのイベントも開催予定です。ブロックチェーンを用いた開発に興味を持ってくださった方がもしいらっしゃいましたら、ぜひ、お気軽にご参加くださいますと幸いです。

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