前提
- 公式サイトのBookにある説明を読んでいるものとしています
- この記事は公式の説明pack-formatを参考に
Gitのソースコードを読んで確認した内容を示しています - あえていうまでもありませんが、内容は保証しません
参考文献
- 上記Bookとpack-format
- Gitのソースコード
Packfileの記事に書かれていること
- Packfileにはコミット・ツリー・Blobのいずれも含まれている
- よく似たオブジェクトは差分化して保存されている
pack-formatの記事に書かれていること
-
pack-*.pack
には次のデータがある-
char[4]
: マジックナンバー"PACK" -
uint32_t
: バージョン -
uint32_t
: オブジェクト数 - 差分化されていないデータ
- $n$バイトのヘッダ: $3$-bitのタイプ+${(n-1)\times7 + 4}$-bitのサイズ
- 圧縮データ
- 差分化されたデータ
- 上記と同じようなヘッダ。ただし、タイプは
OBJ_REF_DELTA
(7)または
OBJ_OFS_DELTA
(6)である。
このタイプは基準となっているデータを指し示す方法を表す。- 圧縮された差分データ
- 上記と同じようなヘッダ。ただし、タイプは
-
.pack
のチェックサム
-
- 差分データの中身は次の二つ
-
0b1xxxxxxx ...
: 基準となっているデータからコピーする0b11111111 offset1 offset2 offset3 offset4 size1 size2 size3
-
offset
、size
はリトルエンディアン - 直前の操作のあとに、直前のコピーで読み出した位置から
offset
バイト読み飛ばして
size
バイトコピーする -
0b0nnnnnnn ...
: データを追加する- 続くnバイトの値を直前の操作の後に書く
-
-
pack-*.idx
には次のデータがある(バージョン2の場合)-
char[4]
: マジックナンバー "\377tOc" -
uint32_t
: バージョン -
uint32_t[256]
: ハッシュ値の第1バイトがidx以下であるpack内のオブジェクトの数
(※公式サイトの図参照) - packに格納されたハッシュ値の配列。昇順にソートされている。
-
uint32_t[n_obj]
: CRC32チェックサム(オブジェクトのハッシュ値昇順) -
uint32_t[n_obj]
: オフセット(.pack
のサイズが4GB以下の場合) - (
.pack
のサイズが2GB以上の場合、ここにオフセットの続きが入る) -
.pack
のチェックサム -
.idx
のチェックサム
-
-
pack-*.rev
やMIDX
については、現物を見たことがないので略
実際に見てみる
- 適当に作ったGitリポジトリのオブジェクトを実際に読み取ってみる
- この記事の内容を格納したリポジトリを作って試した。
git fast-import用のリポジトリデータ(タブがコピペでスペースに化けるので再現できませんが、本旨には関係ないので許してください)
% git fast-export --all
blob
mark :1
data 954
GitのPackfileの中身を見てみる
# 前提
* 公式サイトのBookにある説明を読んでいるものとしています
- [10.2 Gitオブジェクト](https://git-scm.com/book/ja/v2/Git%E3%81%AE%E5%86%85%E5%81%B4-Git%E3%82%AA%E3%83%96%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%AF%E3%83%88)
- [10.3 Gitの参照](https://git-scm.com/book/ja/v2/Git%E3%81%AE%E5%86%85%E5%81%B4-Git%E3%81%AE%E5%8F%82%E7%85%A7)
- [10.4 Packfile](https://git-scm.com/book/ja/v2/Git%E3%81%AE%E5%86%85%E5%81%B4-Packfile)
* この記事は公式の説明[pack-format](https://git-scm.com/docs/pack-format)を参考に
Gitのソースコードを読んで確認した内容を示しています
* あえていうまでもありませんが、内容は保証しません
# Packfileの記事に書かれていること
* Packfileにはコミット・ツリー・Blobのいずれも含まれている。
* よく似たオブジェクトは差分化して保存されている
reset refs/heads/master
commit refs/heads/master
mark :2
author Takashi Sakai <sakai@localhost> 1640850064 +0900
committer Takashi Sakai <sakai@localhost> 1640850064 +0900
data 15
initial commit
M 100644 :1 a.txt
blob
mark :3
data 3127
GitのPackfileの中身を見てみる
# 前提
* 公式サイトのBookにある説明を読んでいるものとしています
- [10.2 Gitオブジェクト](https://git-scm.com/book/ja/v2/Git%E3%81%AE%E5%86%85%E5%81%B4-Git%E3%82%AA%E3%83%96%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%AF%E3%83%88)
- [10.3 Gitの参照](https://git-scm.com/book/ja/v2/Git%E3%81%AE%E5%86%85%E5%81%B4-Git%E3%81%AE%E5%8F%82%E7%85%A7)
- [10.4 Packfile](https://git-scm.com/book/ja/v2/Git%E3%81%AE%E5%86%85%E5%81%B4-Packfile)
* この記事は公式の説明[pack-format](https://git-scm.com/docs/pack-format)を参考に
Gitのソースコードを読んで確認した内容を示しています
* あえていうまでもありませんが、内容は保証しません
# Packfileの記事に書かれていること
* Packfileにはコミット・ツリー・Blobのいずれも含まれている
* よく似たオブジェクトは差分化して保存されている
# pack-formatの記事に書かれていること
* ```pack-*.pack```には次のデータがある
- ```char[4]```: マジックナンバー"PACK"
- ```uint32_t```: バージョン
- ```uint32_t```: オブジェクト数
- 差分化されていないデータ
- nバイトのヘッダ: 3-bitのタイプ+{(n-1)*7 + 4}-bitのサイズ
- 圧縮データ
- 差分化されたデータ
- 上記と同じようなヘッダ。ただし、タイプは```OBJ_REF_DELTA```(7)または
```OBJ_OFS_DELTA```(6)である。
このタイプは基準となっているデータを指し示す方法を表す。
- 圧縮された差分データ
- ```.pack```のチェックサム
* 差分データの中身は次の二つ
- ```0b1xxxxxxx ...```: 基準となっているデータからコピーする
- ```0b11111111 offset1 offset2 offset3 offset4 size1 size2 size3```
- ```offset```、```size```はリトルエンディアン
- 直前の操作のあとに、直前のコピーで読み出した位置から```offset```バイト読み飛ばして
```size```バイトコピーする
- ```0b0nnnnnnn ...```: データを追加する
- 続くnバイトの値を直前の操作の後に書く
* ```pack-*.idx```には次のデータがある(バージョン2の場合)
- ```char[4]```: マジックナンバー "\377tOc"
- ```uint32_t```: バージョン
- ```uint32_t[256]```: ハッシュ値の第1バイトがidx以下であるpack内のオブジェクトの数
(※[公式サイトの図](https://git-scm.com/docs/pack-format#_original_version_1_pack_idx_files_have_the_following_format)参照)
- ```uint32_t[n_obj]```: CRC32チェックサム(オブジェクトのハッシュ値昇順)
- ```uint32_t[n_obj]```: オフセット(```.pack```のサイズが4GB以下の場合)
- (```.pack```のサイズが2GB以上の場合、ここにオフセットの続きが入る)
- ```.pack```のチェックサム
- ```.idx```のチェックサム
* ```pack-*.rev```や```MIDX```については、現物を見たことがないので略
commit refs/heads/master
mark :4
author Takashi Sakai <sakai@localhost> 1640851556 +0900
committer Takashi Sakai <sakai@localhost> 1640851556 +0900
data 14
add some text
from :2
M 100644 :3 a.txt
-
対象のオブジェクトを決める。
% git verify-pack -v .git/objects/pack/pack-6b39329aed24190aa8358b85f10d1c0e528451d7.pack bd662ac2ac6b1225be7772779424870aae89fdfb commit 224 154 12 2e3d72440b11dbb1d4ec46ff75d7bc4a550cfdc5 commit 177 121 166 44126f1961c05cf7c640a1da57128dac91007668 blob 3127 1355 287 7721218b8e626bd5fb8510df87e5b3d070e548c9 tree 33 44 1642 3431f58b1fdac86856bbf5a6dd9ed5186646d9fa tree 33 46 1686 a4ebaf4caaf976aac558dcacfa4ec9d692cafaf3 blob 15 26 1732 1 44126f1961c05cf7c640a1da57128dac91007668 non delta: 5 objects chain length = 1: 1 object .git/objects/pack/pack-6b39329aed24190aa8358b85f10d1c0e528451d7.pack: ok
-
差分化されたものを例にしたいので
a4ebaf4caaf976aac558dcacfa4ec9d692cafaf3
を
使う -
前節の説明より、
.pack
の方をいきなり見ても、ほとんどの部分は圧縮データなのでデータの起点が特定できない(頭から順に読んでいけば読み出せるが面倒なのでやらない。)
インデックス編
- まず
.idx
で目的のデータを探す
.idxの内容
# t O c ver. 2
0000000 ff 74 4f 63 00 00 00 02
# 4バイト整数256個
0000008 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00
(snip)
00000a8 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00
00000b8 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 00 01 00 00 00 01
00000c8 00 00 00 01 00 00 00 01 00 00 00 01 00 00 00 01
00000d8 00 00 00 02 00 00 00 02 00 00 00 02 00 00 00 02
(snip)
0000108 00 00 00 02 00 00 00 02 00 00 00 02 00 00 00 02
0000118 00 00 00 03 00 00 00 03 00 00 00 03 00 00 00 03
(snip)
00001d8 00 00 00 03 00 00 00 03 00 00 00 03 00 00 00 04
00001e8 00 00 00 04 00 00 00 04 00 00 00 04 00 00 00 04
(snip)
0000288 00 00 00 04 00 00 00 04 00 00 00 04 00 00 00 04
0000298 00 00 00 05 00 00 00 05 00 00 00 05 00 00 00 05
(snip)
00002e8 00 00 00 05 00 00 00 05 00 00 00 05 00 00 00 05
00002f8 00 00 00 05 00 00 00 06 00 00 00 06 00 00 00 06
0000308 00 00 00 06 00 00 00 06 00 00 00 06 00 00 00 06
(snip)
00003f8 00 00 00 06 00 00 00 06 00 00 00 06 00 00 00 06
# オブジェクトハッシュ(6件、昇順、各20(0x14)バイト)
0000408 2e 3d 72 44 0b 11 db b1 d4 ec 46 ff 75 d7 bc 4a
0000418 55 0c fd c5
000041c 34 31 f5 8b 1f da c8 68 56 bb f5 a6 dd 9e d5 18
000042c 66 46 d9 fa
0000430 44 12 6f 19 61 c0 5c f7 c6 40 a1 da 57 12 8d ac
0000440 91 00 76 68
0000444 77 21 21 8b 8e 62 6b d5 fb 85 10 df 87 e5 b3 d0
0000454 70 e5 48 c9
0000458 a4 eb af 4c aa f9 76 aa c5 58 dc ac fa 4e c9 d6
0000468 92 ca fa f3
000046c bd 66 2a c2 ac 6b 12 25 be 77 72 77 94 24 87 0a
000047c ae 89 fd fb
# CRC32(6件、同順、各4バイト)
0000480 96 64 8d b1 5c b3 6c 97 a2 f3 5d 6e 08 fc a5 8a
0000490 40 d2 d9 59 9d 23 99 de
# オフセット(6件、同順、各4バイト)
0000498 00 00 00 a6 00 00 06 96 00 00 01 1f 00 00 06 6a
00004a8 00 00 06 c4 00 00 00 0c
# packハッシュ
00004b0 6b 39 32 9a ed 24 19 0a a8 35 8b 85 f1 0d 1c 0e
00004c0 52 84 51 d7
# idxハッシュ
00004c4 9d 10 22 6c 21 e5 7a 12 55 d3 e4 b5 08 10 0f ff
00004d4 db ed 77 cb
- 今回探すのは
a4ebaf4caaf976aac558dcacfa4ec9d692cafaf3
なので
0xA4(164)-1番目の整数を見てみる。- 0xA3 × 4 = 0x28c。起点が0x8なので0x294を見る。
0000288 00 00 00 04 00 00 00 04 00 00 00 04 00 00 00 04
^^^^^^^^^^^
0000298 00 00 00 05 00 00 00 05 00 00 00 05 00 00 00 05
(略)
00003f8 00 00 00 06 00 00 00 06 00 00 00 06 00 00 00 06
-
00 00 00 04
である。
よって、a4〜〜
というハッシュのオブジェクトは4番目から始まるとわかる。- また、データの総数もわかる。最後(256番目)の整数が
00 00 00 06
なので
総数は6である。
- また、データの総数もわかる。最後(256番目)の整数が
-
この情報を参考に、
a4ebaf4caaf976aac558dcacfa4ec9d692cafaf3
を探す。-
4バイト整数256個が終わるのは0000408。ここからハッシュ値の配列が続く。
-
このリポジトリのハッシュ値はSHA-1なので20バイト(160 bits)。20×4 = 80(0x50)バイト読み飛ばす。
-
0000458をみるとちょうどそこに
a4 eb af 4c ... fa f3
がある。
a4ebaf4caaf976aac558dcacfa4ec9d692cafaf3
は5番目である。``` 00003f8 00 00 00 06 00 00 00 06 00 00 00 06 00 00 00 06 # オブジェクトハッシュ(6件、昇順、各20(0x14)バイト) #0 0000408 2e 3d 72 44 0b 11 db b1 d4 ec 46 ff 75 d7 bc 4a 0000418 55 0c fd c5 000041c 34 31 f5 8b 1f da c8 68 56 bb f5 a6 dd 9e d5 18 000042c 66 46 d9 fa 0000430 44 12 6f 19 61 c0 5c f7 c6 40 a1 da 57 12 8d ac 0000440 91 00 76 68 0000444 77 21 21 8b 8e 62 6b d5 fb 85 10 df 87 e5 b3 d0 0000454 70 e5 48 c9 #4 0000458 a4 eb af 4c aa f9 76 aa c5 58 dc ac fa 4e c9 d6 ^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^ 0000468 92 ca fa f3 ^^^^^^^^^^^ 000046c bd 66 2a c2 ac 6b 12 25 be 77 72 77 94 24 87 0a 000047c ae 89 fd fb ```
-
-
これでついに
.pack
内のアドレスが得られる。
1. ハッシュ値の配列は0000408から始まって、20バイト×6個、120(0x78)バイトである。
よって、次のデータは0000480から始まる。
2. 続くのはCRC32のチェックサムである。これは今回使わないので読み飛ばす。
4バイト×6個=24(0x18)バイト読み飛ばして、次は0000498から始まる。
3. 次がまさに求めている.pack
内のアドレスである。
この5番目を読みたいので4個=16(0x10)バイト飛ばす。00004A8
4. 00004a8には00 00 06 c4
と書いてある。アドレスゲットである。``` # CRC32(6件、同順、各4バイト) 0000480 96 64 8d b1 5c b3 6c 97 a2 f3 5d 6e 08 fc a5 8a 0000490 40 d2 d9 59 9d 23 99 de # オフセット(6件、同順、各4バイト) 0000498 00 00 00 a6 00 00 06 96 00 00 01 1f 00 00 06 6a 0 1 2 3 00004a8 00 00 06 c4 00 00 00 0c 4^^^^^^^^^^ 5 ```
-
同じ要領でこのオブジェクトの元のオブジェクト
44126f1961c05cf7c640a1da57128dac91007668
のアドレスも取得すると、0x11fである。- わかりやすさのため、まずこの0x11fを読んでみる。
普通オブジェクトの中身
-
先ほどのインデックスのオフセットのリストを見てみると0x11fの次は0x66aから始まるとわかる。
```txt 0000498 00 00 00 a6 00 00 06 96 00 00 01 1f 00 00 06 6a 00004a8 00 00 06 c4 00 00 00 0c ```
- (0x11fの次に小さい値は0x66aになっている。)
-
.packから0x11fから0x66a(1642)を取り出してみる
% head -c 1642 .git/objects/pack/pack-6b39329aed24190aa8358b85f10d1c0e528451d7.pack | hexdump -s 0x11f 000011f b7 c3 01 78 9c ad 56 6b 53 1a 57 18 fe 1c 7e c5 000012f 8e 19 66 c4 0c 20 17 85 fa 0d 0c 3a e9 65 cc a4 (snip) 000064f 51 5f fa 8d 7f fd 67 94 4f 07 b6 83 d8 49 4b 85 000065f 27 5b df d8 37 fc 05 5a c3 3b c7
-
b7 c3 01
は「3127バイトのBlob」を表している-
b7
(0b1_011_0111
): タイプ=3(OBJ_BLOB), サイズ=0b...0111
-
c3
(0b1_1000011
): サイズ=0b...1000011_0111
-
01
: サイズ =0b0000001_1000011_0111
= 0xC37(3127)
-
-
中身
- この後はDeflate圧縮したデータが入っている。例えば
pigz
コマンドをインストールして、
これを使うことで伸長できる- 今回のリポジトリはこの記事のテキストの序盤を入れて作っているので、このような内容が出てくる。
% dd bs=1 skip=0x122 count=0x548 \ if=.git/objects/pack/pack-6b39329aed24190aa8358b85f10d1c0e528451d7.pack \ 2>/dev/null | pigz -dc GitのPackfileの中身を見てみる # 前提 * 公式サイトのBookにある説明を読んでいるものとしています (snip)
- looseオブジェクトにおける```blob (サイズ)\0```のヘッダはついていない。 これは、type情報と重複するためと考えられる。
- この後はDeflate圧縮したデータが入っている。例えば
差分オブジェクトの読み出し
-
先ほど取得したアドレス0x6c4をpackファイルから読み出してみる。
% cat .git/objects/pack/pack-6b39329aed24190aa8358b85f10d1c0e528451d7.pack | hexdump -s 0x6c4 00006c4 6f 8a 25 78 9c db 2e b1 8b 7d 43 1e 33 f3 e3 86 00006d4 a6 c9 79 cc 9e 00 31 91 05 e7 6b 39 32 9a ed 24 00006e4 19 0a a8 35 8b 85 f1 0d 1c 0e 52 84 51 d7 00006f2
-
.packの末尾20(0x14)バイトは.pack自身のチェックサムなので今回はいらない。削る。
0x6f2 - 0x14 = 0x6de = 1758% head -c 1758 .git/objects/pack/pack-6b39329aed24190aa8358b85f10d1c0e528451d7.pack | hexdump -s 0x6c4 00006c4 6f 8a 25 78 9c db 2e b1 8b 7d 43 1e 33 f3 e3 86 00006d4 a6 c9 79 cc 9e 00 31 91 05 e7 00006de
-
たった26バイトで差分が表現されている。
-
-
こちらも最初はヘッダである。
-
6f = タイプ6(OBJ_OFS_DELTA), サイズf(15)
- 見ての通りこのデータのサイズは15バイトではない。
- このサイズは伸長後のサイズなので、一致しない。
- Deflate圧縮をかけているのだが、今回の差分は単純すぎるので、逆に容量が増してしまっている。
-
OBJ_OFS_DELTAの場合、元になっているオブジェクトとこのオブジェクト自身のアドレスの差が
続いて書かれている。:8a 25
-
この値は、offset encodingで符号化されている。
ドキュメントにも説明されているが、たぶんソースを見たほうがわかりやすい。-
8a
: 最上位ビットが1である場合、この7ビットで値が表しきれないことを示す。 - まずは、このバイトで表すビットを取り出す。
0x8a & 0x7f = 0xa
- 表しきれないのだから、ここに1を足す。
0xa + 1 = 0xb
- 7ビット左シフトする。
0xb << 7 = 0x580
-
25
: 最上位ビットが0である場合、これが最後であることを示す。 0x580 | 0x25 = 0x5a5
-
-
この値を今見ている項目のアドレスから引く。
0x6c4 - 0x5a5 = 0x11f
先ほどの0x11fのオブジェクトのデータがこの差分の元になっていることを確認できた。
-
6f
及び8a 25
は「これが差分であること」と「元データは0x11fにあること」を示すのに
使われているので、差分データ本体ではない。
続く0x6c7〜0x6deが差分を表している。 -
差分データ本体はDeflate圧縮されている。伸長し表示してみる。
% dd bs=1 if=.git/objects/pack/pack-6b39329aed24190aa8358b85f10d1c0e528451d7.pack skip=0x6c7 count=0x17 2>/dev/null | pigz -dc | hexdump 0000000 b7 18 ba 07 b0 6e 03 03 e3 80 82 93 6e 03 49 000000f
差分データの中身
-
差分データそのものの構造は前掲のドキュメントがわかりやすい
-
今回の差分オブジェクトで表されている差分をdiffで表すと次の通りである。
この差分に対応するdiff
diff --git a/44126f1961c05cf7c640a1da57128dac91007668 b/a4ebaf4caaf976aac558dcacfa4ec9d692cafaf3
index 44126f1..a4ebaf4 100644
--- a/44126f1961c05cf7c640a1da57128dac91007668
+++ b/a4ebaf4caaf976aac558dcacfa4ec9d692cafaf3
@@ -1,48 +1,14 @@
GitのPackfileの中身を見てみる
# 前提
* 公式サイトのBookにある説明を読んでいるものとしています
- [10.2 Gitオブジェクト](https://git-scm.com/book/ja/v2/Git%E3%81%AE%E5%86%85%E5%81%B4-Git%E3%82%AA%E3%83%96%E3%82%B8%E3%82%A7%E3%82%AF%E3%83%88)
- [10.3 Gitの参照](https://git-scm.com/book/ja/v2/Git%E3%81%AE%E5%86%85%E5%81%B4-Git%E3%81%AE%E5%8F%82%E7%85%A7)
- [10.4 Packfile](https://git-scm.com/book/ja/v2/Git%E3%81%AE%E5%86%85%E5%81%B4-Packfile)
* この記事は公式の説明[pack-format](https://git-scm.com/docs/pack-format)を参考に
Gitのソースコードを読んで確認した内容を示しています
* あえていうまでもありませんが、内容は保証しません
# Packfileの記事に書かれていること
-* Packfileにはコミット・ツリー・Blobのいずれも含まれている
+* Packfileにはコミット・ツリー・Blobのいずれも含まれている。
* よく似たオブジェクトは差分化して保存されている
-
-# pack-formatの記事に書かれていること
-* ```pack-*.pack```には次のデータがある
- - ```char[4]```: マジックナンバー"PACK"
- - ```uint32_t```: バージョン
- - ```uint32_t```: オブジェクト数
- - 差分化されていないデータ
- - nバイトのヘッダ: 3-bitのタイプ+{(n-1)*7 + 4}-bitのサイズ
- - 圧縮データ
- - 差分化されたデータ
- - 上記と同じようなヘッダ。ただし、タイプは```OBJ_REF_DELTA```(7)または
- ```OBJ_OFS_DELTA```(6)である。
- このタイプは基準となっているデータを指し示す方法を表す。
- - 圧縮された差分データ
- - ```.pack```のチェックサム
-* 差分データの中身は次の二つ
- - ```0b1xxxxxxx ...```: 基準となっているデータからコピーする
- - ```0b11111111 offset1 offset2 offset3 offset4 size1 size2 size3```
- - ```offset```、```size```はリトルエンディアン
- - 直前の操作のあとに、直前のコピーで読み出した位置から```offset```バイト読み飛ばして
- ```size```バイトコピーする
- - ```0b0nnnnnnn ...```: データを追加する
- - 続くnバイトの値を直前の操作の後に書く
-* ```pack-*.idx```には次のデータがある(バージョン2の場合)
- - ```char[4]```: マジックナンバー "\377tOc"
- - ```uint32_t```: バージョン
- - ```uint32_t[256]```: ハッシュ値の第1バイトがidx以下であるpack内のオブジェクトの数
- (※[公式サイトの図](https://git-scm.com/docs/pack-format#_original_version_1_pack_idx_files_have_the_following_format)参照)
- - ```uint32_t[n_obj]```: CRC32チェックサム(オブジェクトのハッシュ値昇順)
- - ```uint32_t[n_obj]```: オフセット(```.pack```のサイズが4GB以下の場合)
- - (```.pack```のサイズが2GB以上の場合、ここにオフセットの続きが入る)
- - ```.pack```のチェックサム
- - ```.idx```のチェックサム
-* ```pack-*.rev```や```MIDX```については、現物を見たことがないので略
- オリジナルバージョンと、「。」を消しいくらか文章を追加したバージョンの差分
- 差分の効率や最新版の読み取り性能を高めるためなどの理由で、gitはこれを追加版と追加版に対するパッチとして表したオリジナル版、
という形で保持している。
0000000 b7 18 ba 07 b0 6e 03 03 e3 80 82 93 6e 03 49
- 最初は差分適用前後のファイルサイズが書かれている。
- 元サイズ
b7 18 (0b1_0110111 0b0_0011000)
=0b0011000_0110111
= 0xc37 - 後サイズ
b0 07 (0b1_0110000 0b0_0000111)
=0b0000111_0110000
= 0x3b0
- 元サイズ
- 後はコピー命令か追記命令が並ぶ。
- 最初は
b0 6e 03
b0 = 0b10110000
- 最上位ビットが1のものはコピー命令。元データの一部をコピーする。
- これを逆順に並べてみる。
0000 110 (1)
- 最初(LSB)がオフセット量最下位バイト、2番目がオフセット量の下から2番目のバイト、
……の存在を示すので、オフセット量が0であることが読み取れる。- また、5番目(第4ビット)がサイズの最下位、6番目が下から2番目、7番目が下から3番目を示して、
コピーサイズが2バイトあることも読み取れる。
- また、5番目(第4ビット)がサイズの最下位、6番目が下から2番目、7番目が下から3番目を示して、
- 続く指定を読み取る。
-
6e 03
= コピーサイズ: 0x36e
-
GitのPackfileの中身を見てみる
(略)
# Packfileの記事に書かれていること
* Packfileにはコミット・ツリー・Blobのいずれも含まれている
- 次は
03 e3 80 82
- 3バイト即値で加える。
- e3 80 82 = UTF-8で"。"
-* Packfileにはコミット・ツリー・Blobのいずれも含まれている
+* Packfileにはコミット・ツリー・Blobのいずれも含まれている。
- 次は
93 6e 03 49
93 = 0b1_001_0011
-
6e 03
: オフセット = 0x036e -
49
: サイズ = 0x49
* よく似たオブジェクトは差分化して保存されている
-
-(略)
おまけ
-
.pack
の末尾20バイトは.pack
のそれまでの部分のチェックサムが書かれている。チェックしてみる。- 今回の
.pack
のサイズは0x6f2だから、チェックサムの始点は0x6de。 - これはファイル名(pack-6b39329aed24190aa8358b85f10d1c0e528451d7.pack)とも一致する。
% dd if=.git/objects/pack/pack-6b39329aed24190aa8358b85f10d1c0e528451d7.pack bs=1 skip=0x6de 2>/dev/null | hexdump 0000000 6b 39 32 9a ed 24 19 0a a8 35 8b 85 f1 0d 1c 0e 0000010 52 84 51 d7 % dd if=.git/objects/pack/pack-6b39329aed24190aa8358b85f10d1c0e528451d7.pack bs=1 count=0x6de 2>/dev/null | shasum 6b39329aed24190aa8358b85f10d1c0e528451d7 -
- 今回の
-
.idx
の最後から40バイト目〜20バイト目にも同じことが書かれている。
今回の.idx
のサイズは0x4d8だから、0x4b0+0x14を見れば良い% dd if=.git/objects/pack/pack-6b39329aed24190aa8358b85f10d1c0e528451d7.idx bs=1 skip=0x4b0 count=0x14 2>/dev/null | hexdump 0000000 6b 39 32 9a ed 24 19 0a a8 35 8b 85 f1 0d 1c 0e 0000010 52 84 51 d7
-
.idx
の末尾20バイトは.idx
のそれまでの部分のチェックサムが書かれている。
今回の.idx
のサイズは0x4d8だから、チェックサムの始点は0x4c4。% dd if=.git/objects/pack/pack-6b39329aed24190aa8358b85f10d1c0e528451d7.idx bs=1 skip=0x4c4 2>/dev/null | hexdump 0000000 9d 10 22 6c 21 e5 7a 12 55 d3 e4 b5 08 10 0f ff 000010 db ed 77 cb % dd if=.git/objects/pack/pack-6b39329aed24190aa8358b85f10d1c0e528451d7.idx bs=1 count=0x4c4 2>/dev/null | shasum 9d10226c21e57a1255d3e4b508100fffdbed77cb -