この記事は TinyGo Advent Calendar 2024 初日の記事です。
TinyGo を使った組み込み開発に欠かせないシリアル通信ツールの一つとして、 tinygo monitor
の使い方を紹介します。
組込開発時、マイコンとのシリアル通信のやり取りには以下のようなソフトがよく使用されます。
- コマンドライン
- GNU screen
- minicom
- picocom
- GUI
- PuTTY
- Tera Term
- Arduino IDE 付属のシリアルモニター
ここでは TinyGo のサブコマンドである tinygo monitor
を紹介します。
詳細な使い方やオプションについては、公式ドキュメントを参考にしてください。
TinyGo とは
組み込みマイコンの開発ができたり Wasm 開発が出来たりする Go コンパイラーです。
詳しくは拙著の 「基礎から学ぶ TinyGoの組込み開発」 を参照してください。
TinyGo のシリアルモニター機能
TinyGo で以下のようなバイナリをマイコンに書き込んだ場合、シリアルモニターを使うと hello world!
という出力を確認することができます。
// $TINYGOROOT/src/examples/serial
package main
import "time"
func main() {
for {
println("hello world!")
time.Sleep(time.Second)
}
}
書き込みから確認までは以下の通り。
$ tinygo flash --target wioterminal --size short examples/serial
code data bss | flash ram
7052 108 6688 | 7160 6796
$ tinygo monitor
Connected to COM18. Press Ctrl-C to exit.
hello world!
hello world!
hello world!
シリアル通信可能な複数の候補が存在する場合などは以下のようなエラーになります。
$ tinygo monitor
multiple serial ports available - use -port flag, available ports are COM18, COM81
その場合は --target
を指定するか --port
を指定してください。
--port
に設定する値は tinygo ports
で調べることができます。--target
を指定するときも、複数の同じターゲットボード (以下だと wioterminal
) があると失敗するので、その場合は --port
を使用してください。
// --target を指定する場合
$ tinygo monitor --target wioterminal
Connected to COM18. Press Ctrl-C to exit.
hello world!
hello world!
hello world!
// --port を使用する場合
$ tinygo ports
Port ID Boards
COM18 2886:802D wioterminal
COM81 2E8A:0003 waveshare-rp2040-zero
$ tinygo monitor --port COM18
Connected to COM18. Press Ctrl-C to exit.
hello world!
hello world!
hello world!
書込みとシリアルモニターの同時実行
環境によりますが、 tinygo flash -monitor
を使う事で tinygo flash
で書き込むと同時に tinygo monitor
することもできます。
うまく動作しない場合は、個別にコマンドを実行してください。
$ tinygo flash --target wioterminal --size short --monitor examples/serial
code data bss | flash ram
7052 108 6688 | 7160 6796
Connected to COM18. Press Ctrl-C to exit.
hello world!
hello world!
hello world!
シリアル通信での値の送受信
以下はシリアルに書き込まれた値をオウム返しする例です。
tinygo monitor
で Enter / Return
キーを押しても反応しません。
これは、 Go の fmt.Scanf
や bufio.Scanner
が LF
を受け取らないと読み取り完了しないため、です。
Enter / Return
キーを押しても tinygo monitor
では CR
しか送信されません。
LF
を送るには C-j
(Ctrl
を押しながら j
キー) を押す必要があります。
// $TINYGOROOT/src/examples/echo2
package main
import (
"bufio"
"fmt"
"os"
)
func main() {
fmt.Printf("Echo console enabled. Type something then press enter:\r\n")
scanner := bufio.NewScanner(os.Stdin)
for {
msg := ""
fmt.Scanf("%s\n", &msg)
fmt.Printf("You typed (scanf) : %s\r\n", msg)
if scanner.Scan() {
fmt.Printf("You typed (scanner) : %s\r\n", scanner.Text())
}
}
}
うまく実行できれば以下のように表示されます。
$ tinygo flash --target wioterminal --size short --monitor examples/echo2
code data bss | flash ram
76440 1740 6672 | 78180 8412
Connected to COM18. Press Ctrl-C to exit.
You typed (scanf) : hello
You typed (scanner) : world
ボーレート設定方法
ボーレートの設定が必要な場合がありますが、その場合は --baudrate 9600
等を指定してください。
TinyGo 環境では 115200bps がデフォルトですが、 AVR マイコンなどの場合は指定が必要です。
$ tinygo monitor -baudrate=9600
tinygo flash
からも使用できます。
$ tinygo flash -target arduino-nano -monitor -baudrate 9600
まとめ
TinyGo がインストールされていたら使用可能な tinygo monitor
を紹介しました。
必ずしも相手のマイコン等は TinyGo で作られている必要はないので、適宜ご使用ください。
おまけ
tinygo monitor
は arudino-cli monitor
をイメージ移植したものです。
ちなみに arduino-cli
も Go で書かれています。
Linux および macOS 環境は minicom で、 Windows 環境で Tera Term で、というような説明が煩雑であったため tinygo monitor
が作られました。
なお、書籍 「基礎から学ぶ TinyGoの組込み開発」 の現行にはぎりぎり間に合ったぐらいのタイミングだったので minicom / Tera Term も紹介されているし tinygo monitor
も少し紹介されている、という感じです。