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人工生命を実装して世界大戦、人類滅亡への一歩を踏み出す

Last updated at Posted at 2018-05-31

1999年から20年も経とうとしている今日このごろ、みなさんはいかがお過ごしでしょうか。

MMR 8巻89ページ〜の、「忍び寄る魔のテクノロジーとは?」を昔読んで、そこにあったrock-paper-scissorライフゲームを実装したいと以前から思っておりました。
最近変なやる気が出たので、やってみようと思います。

ちょっと漫画中の絵を引用するのは面倒くさい気が引けるので、
http://www.nicovideo.jp/watch/sm31413234
5:25〜を参照いただけたら幸いです。(ネタバレ注意)

ライフゲームの箇所は6:47〜6:56あたりです。

盤面づくり

まず、六角形グリッドを設計します。

Hexマップはデータ量的には普通の2次元配列で管理できます。
それで、下からN行目は0.5*N文字分後ろにずらすとすると、なんか六角形の格子っぽく並びます。しかし2次元配列をすべて使うと菱型の盤面になります。

    1 1 1 1 1
   1 1 1 1 1
  1 1 1 1 1
 1 1 1 1 1
1 1 1 1 1

そこで右上、左下の部分を使わないようにして、盤面全体も六角形にします。

この盤面の六角形の1辺に$N$個のセルが並ぶと、配列の1辺は$2N - 1$次元必要です。

盤面の情報とメソッドを持つクラスを準備します。

class RockPaperScissorAuto(object):
    def __init__(self, N):
        self.N = N
        self.L = N*2 - 1
        self.mask = np.eye(self.L, dtype=int)
        for i in range(1, N):
            self.mask += np.eye(self.L, k=i, dtype=int)
            self.mask += np.eye(self.L, k=-i, dtype=int)

この時、self.maskは以下のようになっています。

self.mask
[[1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0]
 [1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 0 0 0 0 0 0 0 0]
 [1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 0 0 0 0 0 0 0]
 [1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 0 0 0 0 0 0]
 [1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 0 0 0 0 0]
 [1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 0 0 0 0]
 [1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 0 0 0]
 [1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 0 0]
 [1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 0]
 [1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1]
 [0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1]
 [0 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1]
 [0 0 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1]
 [0 0 0 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1]
 [0 0 0 0 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1]
 [0 0 0 0 0 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1]
 [0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1]
 [0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1]
 [0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 1 1 1 1 1 1 1 1]]

あとは盤面のデータを保持します。

        self.F = np.zeros((self.L, self.L), dtype=int)

この self.F には0から3までの値が入ります。

  • 0: 空セル
  • 1: Rock
  • 2: Paper
  • 3: Scissors

可視化

盤面情報を画像にします。漫画であるように、頑張って円を六角形に並べていきます。

六角形の高さは$2\sqrt{3}$ですので、あらかじめ定数を準備します。

import math
root3 = math.sqrt(3.0)

Rock、Paper、Scissorをそれぞれ赤、青、黄に対応させます。
赤、青、黄色をWikipediaで調べて出てきたカラーコードで決めます。

cell_color = [(200, 0, 0), (61, 26, 237), (192, 103, 0), (0, 212, 255)]

(BGR)タプルをリストに並べます。先頭から空きセル、Rock、Paper、Scissorsに対応します。OpenCVを使う予定ですので、タプル内の数字はB,G,Rの順です。

画像をフィールドの情報から生成するメソッドを定義します。

import cv2
# (中略)
    def make_image(self, cell_rad=15):
        width = int(self.L*cell_rad*2)
        height = int(self.L*cell_rad * root3)
        img = np.zeros((height, width, 3), dtype=np.uint8)
        for iy, ix in self.draw_index:
            dx = -abs(iy - self.W) if iy > self.W else abs(iy - self.W)
            x = int((2*ix + dx)*cell_rad + 0.5)
            y = int((2*iy + 1) * root3 * 0.5 * cell_rad + 0.5)
            color = cell_color[self.F[iy, ix]]
            lw = 2 if self.F[iy, ix] == 0 else -1
            cv2.circle(img, (x, y), cell_rad - 1, color, lw)
        return img

dxが六角形に並べるための横方向のズレです。中心の行を境にルールが変わります。

これで一辺が15のもので描写してみます。とりあえずすべてのセルが空セルです。

F = RockPaperScissorAuto(15)
img = F.make_image(cell_rad=15)
cv2.imshow("test", img)
cv2.waitKey(0)
cv2.destroyAllWindows()

test_screenshot_29.05.2018.png

できました。

時間発展

では、本題の時間発展メソッドです。
隣接セルの定義をします。

neighbor = np.array([
    [1, 1, 0],
    [1, 0, 1],
    [0, 1, 1]
], dtype=int)

続いて、RockPaperScissorAutoクラスに時間発展メソッドを追加します。

from scipy import signal
中略
    def step(self):
        empty = self.F == 0
        rock = self.F == 1
        paper = self.F == 2
        scissor = self.F == 3
        nxp = signal.correlate2d(paper, neighbor, mode="same")*(rock + empty)
        nxs = signal.correlate2d(scissor, neighbor, mode="same")*(paper + empty)
        nxr = signal.correlate2d(rock, neighbor, mode="same")*(scissor + empty)
        self.F[(nxp > 0)] = 2 
        self.F[(nxs > 0)] = 3 
        self.F[(nxr > 0)] = 1 
        self.F = self.F * self.mask

まずそれぞれの種類のマップを作ります(最初の4行)。
ここでpaperを例に取ります。

  • あるセルに隣接するpaperセルの数:signal.correlate2d(paper, neighbor, mode="same")
  • paperが侵略する可能性のあるセルは現在rockもしくは空のセルなので、それらとの積を取る:correlate2d()*(rock + empty)
  • これをnxpに代入。これはpaperが侵略しようとしているセルについて、その周りにいるpaperセルの数を示しています。
  • nxpが1以上のセルは次はpaperになるセルです。self.F[(nxp > 0)] = 2

これをrock, scissorsに対しても行います。
ここである空セルに複数種類のセルが隣接した場合、nxpnxsnxrの複数が1以上になります。このときは、paper, scissors, rockの順で上書きされます。

最後に、はみ出たものをトリミングします。self.F = self.F*self.mask

ミューテーション

初期がすべて空セルなので、このままだと何も起きません。また漫画中でも突然変異と表現しているので、これを導入します。

    def mutation(self, rate=0.001):
        mut = (np.random.rand(self.L, self.L) < rate)*self.mask
        self.F[mut == 1] += 1
        self.F[self.F == 4] = 1

すべてのセルで0.1%の確率で変異するようにします。
それぞれに一様乱数を発生させ、これがrateより小さいものをTrueとしつつ、maskと積をとって系が注目する範囲にトリミングします。
それでmutが1のところが変異するセルということになります。
ここで変異の内容を考えると、空セル(0)がRock(1)、Rock(1)がPaper(2)、Paper(2)がScissors(3)と基本セルの値が1増えるようになっています。
一方でScissors(3)が変異するとRock(1)になりますが、そのまま1を足すと4になってしまうので、これを1に持って行って、循環させます。
これで変異が実装できました。

実験その1

メインルーチンです。

def main():
    F = RockPaperScissorAuto(15)
    waiting = 10
    while True:
        F.step()
        F.mutation()
        img = F.make_image(cell_rad=15)
        cv2.imshow("test", img)
        r = cv2.waitKey(waiting)
        if r == ord("+"):
            waiting = max(10, waiting//2)
        if r == ord("-"):
            waiting = min(1000, waiting*2)
        if r == ord("q"):
            break
    cv2.destroyAllWindows()

if __name__ == '__main__':
    main()

+キーを押して加速、-キーを押して減速、qキーで終了。
これで適当に160ステップまでを録画してみました。

test.gif

これではあまりに整いすぎて、漫画(8巻166頁あたり)であったような、迷彩柄のような3色入り乱れた様子にはなっていません。

実験その2

すこしランダム性を足してみます。周りに侵食するとき、ランダムで侵食したりしなかったりするとどうなるかやってみます。

    def step(self):
        empty = self.F == 0
        rock = self.F == 1
        paper = self.F == 2
        scissor = self.F == 3
        nxp = signal.correlate2d(paper, neighbor, mode="same")*(rock + empty)
        nxs = signal.correlate2d(scissor, neighbor, mode="same")*(paper + empty)
        nxr = signal.correlate2d(rock, neighbor, mode="same")*(scissor + empty)
        pickup_mask = np.random.rand(self.L, self.L) < 1.0/6
        self.F[(nxp > 0)*pickup_mask] = 2 
        self.F[(nxs > 0)*pickup_mask] = 3 
        self.F[(nxr > 0)*pickup_mask] = 1 
        self.F = self.F * self.mask

適当に間引くためにpickup_maskを導入します。確率的に6分の1になるようにします。
6つの隣接セルに対してランダムで1方向だけに進むイメージでパラメータを決めましたが、多少少なすぎたかもしれません。

変異率のパラメータなどを調整して、漫画であるような見た目に近づけます。
一辺20セル、変異率を0.00001程度にしてみました。

QiitaにGIFアニメを上げるにあたって、ファイル容量削減のため、かなり途中経過を削りました。

test.gif

漫画の例に比べてまだ島が小さい気がするのですが、この程度で満足しておきます。

他のパターン

https://www.youtube.com/watch?v=M4cV0nCIZoc
こちらの動画では同じくRock-Paper-Scissor Automatonですが、一定の配置になると渦巻きが発生します。こちらを再現したいと思います。

いろいろ試した結果、セルにHPを定義するとうまく行きました。

HP制のルールは以下のようにしました。

  • 空セルは初期HP1、Rock/Paper/Scissorsは初期HPにMAX_HPを持つ。
  • 時間発展の1ステップ中で:
    • Rock/Paper/Scissorsは周囲の空セルもしくは自分が勝てる相手に1のダメージを与える。
    • HPを0以下にできたマスに、自分と同じ色のセルを置く。新しく生まれたセルのHPはMAX_HP

例えばPaperに周りを囲まれたRockは1ターンで6のダメージを受けます。
Paperに囲まれたScissorsは周りのPaper全てにそれぞれ1のダメージを与えます。

この時、stepmutationをはじめ、RockPaperScissorAutoクラスを以下のように定義します。

MAX_HP = 8

class RockPaperScissorAuto(object):
    def __init__(self, W):
        self.W = W
        self.L = W*2 - 1
        self.F = np.zeros((self.L, self.L), dtype=int)
        self.HP = np.ones_like(self.F)
        ...
中略

    def step(self):
        empty = self.F == 0
        rock = self.F == 1
        paper = self.F == 2
        scissor = self.F == 3
        nxp = signal.correlate2d(paper, neighbor, mode="same")*(rock + empty)
        nxs = signal.correlate2d(scissor, neighbor, mode="same")*(paper + empty)
        nxr = signal.correlate2d(rock, neighbor, mode="same")*(scissor + empty)
        self.HP -= (nxp + nxs + nxr)
        self.F[(nxp > 0)*(self.HP < 1)] = 2 
        self.F[(nxs > 0)*(self.HP < 1)] = 3 
        self.F[(nxr > 0)*(self.HP < 1)] = 1 
        self.HP[((nxp + nxs + nxr) > 0)*self.HP < 1] = MAX_HP 
        self.F = self.F * self.mask
    
    def mutation(self, rate=0.0025):
        mut = (np.random.rand(self.L, self.L) < rate)*self.mask
        self.F[mut == 1] += 1
        self.F[self.F == 4] = 1
        self.HP[mut == 1] = MAX_HP

これで時間発展させるとこんな感じになりました。

上段:左は開始直後、右は初期の変異が起こって広い範囲を占領する段階。
中段:左は中程に渦の種ができています。右はそこから渦が広がっています。
下段:左は大体渦が全体に広がり、変異でところどころ縞が途切れています。右は渦が広がってだいぶ経った段階で、形が崩れています。

test_tile.png

動画作ってみたらGIFアニメで数十MBあったので、スナップショットにしておきました。

これのpythonコードは
https://gist.github.com/sage-git/27633820a95325d067765c1adbab8446
にあげておきます。

6/1 追記
https://www.youtube.com/watch?v=LcquTQOcPGc
に動画を上げました。
あとソースコード、こちらで引用する関数を間違えていたので修正しました。

8/9 追記
正方格子ですが、6/7にChainerを使ってGPU化した記事を書きました。
https://qiita.com/sage-git/items/b4c01dc1c7ebec59c0d2

ちなみに (ネタバレ注意)

このあと本格的に漫画の通りに実装しようとしたら、系の発展がある程度進んだあと、
謎の荒いポリゴンのキャラクターを出してFPSだかTPSゲームに切り替わるのですが、
そこまで実装する元気はありませんでいた。

そして、漫画でのオチはオートマトン、人工生命から人工知能、そして人類への反逆というようなSFではなく、ゲーム脳あるいは脳内麻薬により理性を消してゲーム脳兵士にするといういつもの軍産複合体の陰謀論でした。

この記事がAK-クラスシナリオ回避の一助になれば幸いです。

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