かなり遅くなってしまいましたが 第6期 科学技術・イノベーション基本計画(以下、基本計画)についてまとめてみたいと思います。
注釈
あくまで個人的なまとめなので、内容については保証しません。
内容を知りたい方は 原文 を読んでください。
科学技術・イノベーション基本計画とはなんですか?
これです。
1996年の第1期科学技術基本計画から始まって、2021年3月に第6期科学技術・イノベーション基本計画が閣議決定されています。
前提知識
そもそもの内容を説明する前の前提知識について説明します。
Society 5.0
Society 5.0 とは第5期 科学技術基本計画で打ち出された、世界に先駆けた超スマート社会の実現のことです。
サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会を実現させます。
バージョン | 内容 |
---|---|
Society 1.0 | 狩猟社会。 |
Society 2.0 | 農耕社会。 |
Society 3.0 | 工業社会。 |
Society 4.0 | 情報社会。 |
Society 5.0 | 人間中心の社会。 |
っていうのはだいたい ここ に書いてあります。
AI戦略20191
2019年6月の統合イノベーション戦略推進会議で決定。
世界規模の課題の解決や日本の社会課題の克服のためのAI利活用の環境整備と方策が示してある。
第6期 科学技術・イノベーション基本計画の内容
要は 概要 を読めばよいのですが、ごちゃごちゃしているので下記にまとめます。
要は何がやりたいのさ?
第5期で打ち出した Society 5.0 を実現したい
基本計画の中では第6期の方向性として2、第5期基本計画の中で掲げた Society 5.0 の具体化の必要性と、日本独特の価値観や信頼性、技術力による未来社会像の提示、国際社会へのプレゼンスが書かれています。
Society 5.0 で実現するもの
それで、Society 5.0 で実現したいことは、我が国が目指す社会3という項目で、以下の2点を中心に述べられています。
- 国民の安全と安心を確保する持続可能で強靭な社会
- 一人ひとりの多様な幸せ(well-being)が実現できる社会
ここでも「サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステム」という言葉が出てきて、Society 5.0 での重要な技術要素だということが分かります。また、SDGs と歩調を合わせる動きにも言及されており、国内だけでなく世界動向を意識した内容となっています。
そのためには何をやるのさ?
基本計画の中では、Society 5.0 の実現に必要なもの4として、以下のことがまとめられています。
- サイバー空間とフィジカル空間の融合による持続可能で強靭な社会への変革
- 新たな社会を設計し、価値創造の源泉となる「知」の創造
- 新たな社会をさせる人材の育成
この後、政策の話や推進強化の体制の話が出てくるのですが、長いので、ここからは、特にIT関連の内容で個人的に気になったところを中心にまとめていきます。尚、量が多いので色々と取りこぼしがあるのはご容赦を。
データ活用分野
AI分野
AI分野に関しては、諸外国が国際戦略を策定している中、多大な便益と大きな影響力を踏まえ、適切な開発及び社会実装の実現の必要性が書かれています。
このため、AI戦略20191で掲げた具体的目標を実現するために、関係省庁で各取り組みを進めていくことと、次世代の機械アルゴリズム、高度な自然言語処理、信頼性の高いAIなどの諸外国に伍する技術の進捗・進展の状況を見直し、国民一人ひとりがAIの具体的な便益を実感できるように戦略を推進していきます。5
量子計算分野
量子計算分野は、国家間・企業間の競争が激化しており、日本及び世界の社会、経済、産業、安全保障に大きな変革をもたらす可能性を秘めた、戦略的な取組が求められる技術です。
このため、量子技術イノベーション戦略6に基づいて、主要技術の強化・促進と、利活用・社会実装に至るまでの幅広い取り組みを推進してきます。7
通信分野
データやAI活動に適した次世代社会インフラを実現するため、5Gの地域カバー率98%(2023年度末)と光ファイバ未整備世帯数17万世帯への減少(2021年度末)を見込んでいます。
また、5G の性能を超える Beyond 5G の実現に向けて、2025年頃の順次要素技術の確立に向けた研究開発を促進します。8
地域社会・都市・行政分野
地方と都市部の違いに関係なく同じレベルの行政サービスを享受できるように、かつオンラインでも手続きを行えるようにします。
そのため、政府情報システムの統合・一体化を促進し、地方公共団体の17業務に関わる情報システムの標準化・共通化を進めます(2025年まで)。また、運用費用等の削減効果を、政府情報システムで3割削減(2020年→2025年)、地方公共団体の標準準拠システムでも3割削減(2018年→2026年)を目指します。9
災害対策・社会インフラ分野
レジリエントな社会を目指すため、SIP4D(基盤的防災情報流通ネットワーク)を核とした情報共有システムの展開を図り、DIAS(データ統合・解析システム)を活用したビッグデータの利用による意思決定の支援、防災・減災システムの構築を促進します。
そのために、SIP4Dと都道府県災害情報システムの連携の順次実施(2021年)、防災チャットボットによる市町村及び住民との情報共有システムの稼働(2023年)に取り組みます。10
また、資源・環境・エネルギーに関する問題や、健康・医療、自然災害などの課題解決に向けたスマートシティの構想が世界で提案されています。日本では、Society 5.0 の先行的な実現の場として先進技術の実証・実装の取り組みが広まりつつあります。しかし、それらの多くは個別の分野や都市の枠内にとどまっているのが現状です。11
この問題を解決するために、都市OSというデータ連携基盤の整備及び開発を進め、他地域との連携促進のためにデータ連携APIを公開し、先導的地域によって開発されたサービスを他地域にも展開します12。また、国家戦略特別区域法の改正及び国家戦略特区基本方針の見直しによってスーパーシティ13と呼ばれる特区を指定し(2021年)、先進的なサービスの実装を行い、スマートシティと合わせて事例の集約、情報の共有や連携を図ります。14
人材育成
デジタル社会を担う人材が活躍できるよう、数理・データサイエンス・AIについての教育プログラム認定制度の普及の方策を通じて、産官学の教育から雇用・採用への共通認識を醸成します。15
参考情報
- 第6期科学技術・イノベーション基本計画
- 第6期科学技術・イノベーション基本計画 本文
- Society 5.0
-
「科学技術・イノベーション基本計画」より 第1章 基本的な考え方 / 2.「科学技術・イノベーション政策」としての第6期基本計画 / (3)第6期基本計画の方向性 ↩
-
「科学技術・イノベーション基本計画」より 第1章 基本的な考え方 / 3. Society 5.0 という未来社会の実現 / (1) 我が国が目指す社会(Society 5.0) ↩
-
「科学技術・イノベーション基本計画」より 第1章 基本的な考え方 / 3. Society 5.0 という未来社会の実現 / Society 5.0 の実現に必要なもの ↩
-
「科学技術・イノベーション基本計画」より 第3章 科学技術・イノベーション政策の推進体制の強化 / 2. 官民連携による分野別戦略の推進 / ① AI技術 ↩
-
「科学技術・イノベーション基本計画」より 第3章 科学技術・イノベーション政策の推進体制の強化 / 2. 官民連携による分野別戦略の推進 / ③ 量子技術 ↩
-
「科学技術・イノベーション基本計画」より 第2章 Society 5.0 の実現に向けた科学技術・イノベーション政策 / 1. 国民の安全と安心を確保する持続可能で強靭な社会への変革 / (1) サイバー空間とフィジカル空間の融合による新たな価値の創出 / (c) 具体的な取組 / ④ デジタル社会に対応した次世代インフラやデータ・AI利活用技術の整備・研究開発 ↩
-
「科学技術・イノベーション基本計画」より 第2章 Society 5.0 の実現に向けた科学技術・イノベーション政策 / 1. 国民の安全と安心を確保する持続可能で強靭な社会への変革 / (1) サイバー空間とフィジカル空間の融合による新たな価値の創出 / (c) 具体的な取組 / ② データプラットフォームの整備と利便性の高いデータ活用サービスの提供 ↩
-
「科学技術・イノベーション基本計画」より 第2章 Society 5.0 の実現に向けた科学技術・イノベーション政策 / 1. 国民の安全と安心を確保する持続可能で強靭な社会への変革 / (3) レジリエントで安全・安心な社会の構築 ↩
-
「科学技術・イノベーション基本計画」より 第2章 Society 5.0 の実現に向けた科学技術・イノベーション政策 / 1. 国民の安全と安心を確保する持続可能で強靭な社会への変革 / (5) 次世代に引き継ぐ基盤となる都市と地域づくり(スマートシティの展開) ↩
-
「科学技術・イノベーション基本計画」より 第2章 Society 5.0 の実現に向けた科学技術・イノベーション政策 / 1. 国民の安全と安心を確保する持続可能で強靭な社会への変革 / (5) 次世代に引き継ぐ基盤となる都市と地域づくり(スマートシティの展開) / (c) 具体的な取組 / ① データ利用を円滑にする基盤整備・データ連携可能な都市OSの展開 ↩
-
「スーパーシティ・デジタル田園健康特区について」によると、スーパーシティ型国家戦略特区として選ばれたのはつくば市、大阪(府・市)、デジタル田園健康特区として選ばれたのは加賀市、茅野市、吉備中央町。 ↩
-
「科学技術・イノベーション基本計画」より 第2章 Society 5.0 の実現に向けた科学技術・イノベーション政策 / 1. 国民の安全と安心を確保する持続可能で強靭な社会への変革 / (5) 次世代に引き継ぐ基盤となる都市と地域づくり(スマートシティの展開) / (c) 具体的な取組 / ② スーパーシティを連携の核とした全国へのスマートシティ創出事例の展開 ↩
-
「科学技術・イノベーション基本計画」より 第2章 Society 5.0 の実現に向けた科学技術・イノベーション政策 / 1. 国民の安全と安心を確保する持続可能で強靭な社会への変革 / (1) サイバー空間とフィジカル空間の融合による新たな価値の創出 / (c) 具体的な取組 / ⑤ デジタル社会を担う人材育成 ↩