はじめに

企業の統合などの理由で Google Workspace からMicrosoft 365 に移行するケースがあります。
Google Workspace（以下GWS）で使っていたデータをMicrosoft 365（以下M365）に移行することが課題となりますが、データ移行サービスのMigration Wizを使ってみたので設定方法、制限事項などデータ移行の注意点をまとめてみます。
内容が多いため、この記事には Migration Wiz の概要やライセンスの情報、移行前の準備について記載します。Gmail、Googleドライブの移行手順については別の記事で紹介します。

Migration Wiz とは

BitTitan社が提供しているクラウドサービスで、GWS の Gmail、GoogleドライブのデータをM365 の Outlook、OneDriveに移行することやM365 の Teams データを別の M365テナントの Teams に移行をすることも出来ます。
データ移行はクラウド間で完結することが出来るため、社内ネットワークのトラフィックを増加させずに大量のデータ移行が出来ることがメリットになります。
また、大量なデータへのアクセスによるスロットリングを緩和するための設定も準備されています。

Migration Wiz のライセンスの種類

GWS から M365 へデータを移行する場合は、Mailbox Migration、User Migration Bundle（UMB）、Shared Document 50GB、100GBが必要となります。
それぞれのライセンスの特徴は以下の通りです。

ライセンスの種類	Mailbox Migration	User Migration Bundle	Shared Document
概要	ユーザーのメールデータ、個人の予定、アドレス帳を移行することが出来ます。	ユーザーのメールデータに加え、ドキュメントデータを移行することが出来ます。※Gmail、ドライブを両方移行する場合は UMB が必要です。	共有ドライブを SharePoint Online に移行することが出来ます。
移行容量制限	50GBまで	移行データの制限なし	50GB、100GBのライセンスがありますが、それ以上のデータを移行する場合は、ライセンスを複数購入する必要があります。
移行回数制限	10回まで	10回まで	10回まで
ライセンスの購入単位	ユーザー	ユーザー	共有ドライブ

通常のユーザーはGmail、ドライブを利用しているので、移行データの容量制限がないUMBライセンスがおすすめです。

警告
ライセンスは2023年11月時点の情報をもとに記載しています。購入を検討する場合は Bittitan 社のライセンス情報を確認して下さい。Migration Wiz ライセンスの価格

移行の準備：移行元（GWS）の設定

Bittitan Help Center の Google ドライブからOneDrive for Businessへの移行ガイドを参考に検証した手順を記載しています。
Gmail の移行も行う場合は、G Suite (Gmail API) から Exchange Online (Microsoft 365) への移行ガイドも合わせて確認して下さい。

Google Cloud Platform（GCP）コンソールに特権管理者でログインします。
GCP コンソールに初めてログインした場合は、利用規約に同意しプロジェクトを作成します。

3. 「メニュー」から「APIとサービス」をクリックし、「＋APIとサービスの有効化」をクリックします。

4. Google ドライブから OneDrive にデータを移行する場合は、「Google Drive API」と「Admin SDK」を有効化します。赤枠にキーワードを入れて検索したほうが便利です。
Gmail も移行する場合は、「Google Calendar API」、「Gmail API」、「People API」、「Contacts API」の有効化も必要になります。

5. 例では Google Drive API の画面となっています。「有効にする」をクリックします。
同様に「Admin SDK」も有効にして下さい。

6. APIの有効化が出来たらサービスアカウントを作成します。「メニュー」から「IAMと管理」→「サービスアカウント」をクリックし、「＋サービスアカウントを作成」をクリックします。

7. サービスアカウントの名前を入力し、「作成して続行」をクリックします。

8. サービスアカウントのロールは必ず「オーナー」に設定して下さい。「続行」→「完了」でサービスアカウントの作成が完了します。

9. 作成したサービスアカウントの「･･･」をクリックし、「鍵を管理」をクリックします。

10. 「鍵の追加」から「新しい鍵を作成」をクリックし、「JSON」を選択して「作成」をクリックすると JSON のファイル形式でダウンロードされます。※後でダウンロードしたファイルを使います。

11. 最後に作成したサービスアカウントの「一意のID」を書き留めておきます。
「一意のID」は列が隠れているので、「列の表示オプション」をクリックし、「一意のID」が表示されるように設定します。

12. GWS の管理コンソールに特権管理者でサインインし、「セキュリティ」→「アクセスとデータ管理」→「APIの制御」をクリックし、「ドメイン全体の委任を管理」をクリックします。

13. 「新しく追加」をクリックするとクライアントID、OAuth スコープを入力する画面になりますので、クライアント ID には一意のID を入力し、OAuth スコープは以下のスコープを追加します。
・https://www.googleapis.com/auth/admin.directory.group.readonly
・https://www.googleapis.com/auth/admin.directory.user.readonly
・https://www.googleapis.com/auth/drive.readonly
・https://www.googleapis.com/auth/admin.directory.domain.readonly

Gmail の移行も行う場合は、G Suite (Gmail API) から Exchange Online (Microsoft 365) への移行ガイドに記載されているスコープの URL も必要になります。

移行の準備：移行先（M365）の設定

Microsoft 365 管理センターにグローバル管理者でサインインします。サインインする管理者はデータ移行でも利用する管理者となります。もしデータ移行専用のアカウントを準備する場合は、あらかじめアカウントを作成し、グローバル管理者か OneDrive へデータ移行する場合は SharePoint 管理者の役割を設定して下さい。
リンク MigrationWiz-SharePoint-FullControl "MigrationWiz-SharePoint-FullControl") をクリックし、アクセス許可の画面が表示されましたら「承諾」をクリックします。

3. Microsoft Entra 管理センターから「エンタープライズアプリケーション」を開き、MigrationWiz-SharePoint-FullControl が追加されていることを確認して下さい。

4. Microsoft 365 管理センターを開き、「MigrationWiz」という名称にしたセキュリティグループを新規作成します。作成したセキュリティグループにはデータ移行で利用するグローバル管理者をメンバーに追加します。

以上でデータ移行前の準備が完了となります。

まとめ

冒頭にも記載しましたが、Migration Wiz はクラウドサービスのため、GWS から M365 のデータ移行をクラウド間で実現が出来ます。
社内のインターネットトラフィックを消費せずに移行出来ることは非常にメリットとなりますので、大量のデータを移行しないといけない場合は活用してみてください。
Google ドライブから OneDrive への移行であれば、Google ドライブで保持していたバージョン履歴、アクセス権限も設定次第で移行が出来ることもメリットです。
別の記事で Google ドライブから OneDrive へ移行する手順をまとめますのでよかったらそちらもご覧ください。