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「いい感じ」を創るツールへの想い

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どうも、老害です。老害は大体回顧録を書くのが相場です。去年長年いた東京から石川県の金沢に移住しちゃいました。

黎明期「いい感じ=BASIC」

 思えばパソコンがマイコンと呼ばれていた小学低学年の頃から、ソフトウェア開発と出会っていた。当時は行番号を書いたBASICだったし、はじめてのソフトは小2の時にGO TO 行番号を駆使したテキストアドベンチャーで、なんか洞窟とか海賊とかハリーハウゼン的な影響を多大に受けたものだった。
コモドール社PETというパソコンでプログラムを独習して、こんな感じで書いてた。最近だとIchigoJam BASICがこんな感じみたいだね。

10 PRINT"あなたは今、洞窟にいます。北と西に道があります。"
20 INPUT A$
30 IF A$="N" GOTO 100
40 IF A$="W" GOTO 200
100 PRINT"北にすすみ、草原に出ました。トロールが焚き火をしてこちらに気づいていません。"
200 PRINT"西にすすむと、地底の海にでました。海賊船が停留しています!"

 ほんで、家でもソードM5というまた癖の大きいMSXの前身みたいなパソコンを買ってもらって、BASIC-Gという言語で一生懸命ゲームの破片(小学生なのでゲームは多分いっこも完成しなかった)をひたすら作ってた。マリオ風にジャンプするだけのキャラ、背景スクロールと自機の移動とビーム発射だけ出来る敵の出てこない縦スクロールシューティングなどをつくってた。よくよく思い出してみたら方眼紙にドット打ちしてそれを一生懸命16進に直して絵を表示したり、ベーマガとかに希に載ってるM5向けのコードをひたすら打ってみたりしてた時間がほとんどだ。

 当時は処理速度の速いことは全部機械語で書かないとダメだったんだけど、そんなことを小学生が理解できるワケないので、試しに書いてはフリーズしたりしてたけど、やっぱり「いい感じ」に捗るのはBASIC-Gだった。
ニューヨークにいたけど、小学校にPET以外にTRS-80Commodore 64Mac plusApple IIなどもあったので、恵まれていた小学生だったとは思う。

大学時代「いい感じ=THINK C」

 高校の頃はポケコンを買って、BASICとかアセンブラとかちまちまと勉強しながら色んなゲームをひたすら作っていた。ロープレからシューティング、パズルまで結構色々つくっていた記憶がある。

 んで、大学に入った時にMacが研究室にあったのでバイト代稼いで、Color Classicと比較的安価なThink Cを買った。2万しないくらいだったと思う。アキバに買いに行ったと思う。

 当時のMac開発は大変で、Toolboxと呼ばれている処理速度が速い、チップに埋め込まれた命令セットを駆使して作る仕様になっていたんだけど、これがややこしくて、OS自体もCで書いてるくせに、ToolboxはPascalという別の言語で書かれていたり。まあなんていうかプログラムを書いてるけど途中でデータベースはSQLのコードを交ぜないと検索出来ないのに似てるかも。これがわかりにくくてかなり悩んだ。んでもいつも使える言語だし、卒論を終わらせるためのツールを書いたり、かなり活用してた。一番作りたいものを作ってくれる「いい感じ」の開発環境だった。

 とは言え、C++以前のCは本当にややこしくて、アプリを作るのにまずウィンドウを開くためのコードを書いて、そのウィンドウにあるボタンの意味も書かなければならなかった。例えばOSで決められたウィンドウをクローズするためのボタンに、「ウィンドウをしめたまえ」と書かないと機能しない。「え?そんくらいしてよ」って当時思ったわ。逆に言えばクローズボタンの記述に「音楽を再生」と書いたら音楽が再生される。良くも悪くもフリーダム。だからゲーム作ろうと思っていても、ウィンドウを構築したり上のメニューを定義している間に「何つくりたいんだっけ?」って気持ちは萎え萎えになってしまい、簡単なツールしか作らなかった。

 この頃、この後にも出てくるDirectorの3.1あたりを先輩に見せてもらったことあるけど、「Lingoなにそれ」とかキャストとかステージとか色々ややこしそうなソフトだな、オーサリングって何?って思ってた。先輩曰く「ソフトをつくるためのソフトなんだよ」だと。でもなんか20万くらいしてたと思うし到底買おうというイメージが沸かないソフトだった。それにカラクラは画面が512x384なので、DirectorやDirectorで作られたCD-ROMコンテンツがこぞって640x480の画面サイズを要求して来たので、どちらかと言うと恨みしかなかった。後の出たLCの人たちが13インチモニタで640x480対応で羨ましかった。

社会人なりたて「いい感じ=Macromedia Director」

 そんなこんなと大学ではC言語を使って化学式を計算したり、その結果をPhongシェーディングされた3DオブジェクトをOpenGLで表示させたりしてたのだが、とにかく面倒だった。ところが社会人になって数年経った1996年に、転職して「メディアダイレクトCD-ROMマガジン」の付録用に、当時流行っていたCD-ROMをオーサリングすることになった。そこで当時Macromedia社Directorの4.1に本格的に出会う。衝撃的だったのが、入社して1ヶ月、毎日コンテンツが生まれたこと。見よう見まねで色々作ったのだが、1.5ヶ月でもうCD-ROMをオーサリングしていたし、数ヶ月後にはメインメニューの仕組みを設計したりゲームなどもつくっていた。動画もQuickTime2.0あたりで貼り込んで表示させていた。C言語の様にウィンドウを表示させるのに何時間も掛かるみたいなことがなく、「ステージ(メインウィンドウ)」に「キャスト(素材、読み込んだ画像など)」を配置するだけで、1行もプログラムを書くことなく表示するところまでができちゃう。そしてキャストを選んで、その対象のプログラムを書くだけで動く。タイムラインになっている「スコア」にパーツを配置したり、時間軸をベースに画面を替えたり。HyperCardなどでも同じように直感的にコンテンツをつくることが出来ていたが、なんと言ってもフルカラーだし(厳密にはフルカラーにするとクソ重いので256色に減色などをして軽量化が必要な時代。DeBabelizerって覚えてる?)色んなメディアを貼るのも簡単だったし、タイムライン(スコア)があるのでアニメーションも出来たし、本当に簡単にコンテンツが出来て行くのが楽しくてハマってた。またこの頃、インターネットやHTMLやDirectorのコンテンツをそのままブラウザで再生できるShockwaveとも出会っている。

Flashとの出逢い

 この頃、Director/Shockwaveラブだったもんで、Flashの前身FutureSplash Animatorも触ったりしていた。へーベクターグラフィックスね。きれいだねー、結構複雑だと再生は重いねー、アニメだけなのね、でもファイルサイズは無いに等しいねー。みたいな感じだった。その後Macromediaが開発元買収するので、もらったのか買ったのか覚えてないけどFutureSplash Animatorって書いてるロゴをシールで隠したFlash 2を購入。でも正直使って無かった。フリーランスになり、Directorを使ってコンテンツをバリバリ作っていたからだ。Webの仕事もこの頃受注するようになり、スクウェアの「クロノ・クロス」の公式サイトなどを作っていたけど、スペシャルなコンテンツはShockwaveで作っていた。ビッグコミックスピリッツのWebサイトもグラビアアイドルやタレントの生声をShockwave Audioで聴けるようにしたりしていた。
 ようやく使い出したのは、何かは思い出せないのだが、Flashが3になった時。透明度に対応したとかそんな頃にWebサイトのメニューを作ったくらい。UIもDirectorに似てるけどいちいち動作が慣れず、本格的に使い始めるのはスクリプトが組めるようになった4からかな。この頃ImageDiveやらEye4Uやらyugopやらが出てきてなんかすげーなおいって感じだったけどDirector仕事で忙しくてあまり触ってなかった。

「Flash=いい感じ」にするべく作った自分のサイト

 色々仕事が忙しくなっている中、三軒茶屋のコロラドにMacromediaの太田氏が出向いて来て、なにやらMacromediaのサイトで5週間に渡って記事を連載して欲しいというお仕事の依頼をいただいた。そこで、たまたま自分のプロジェクトとしてつくりはじめていた「Flash 5(β版)による疑似オンラインOS」のアイディアとデザインスケッチを見せた。喜んでいただいたし、こちらとしてもお金をもらいながら4週間は既存の仕事の報告みたいな記事を書きながら、5週間後に「自分のプロジェクト」を作ることが出来るので、「ウィンウィンやん」的に2001年版「SABURI.COM」のサイトを作った。かなり変態仕様で作ったけど要するにやりたいことを工夫したら割と出来たってこと。Flashとはこの頃本当に仲良くなってたし、どんどん世の中もFlashサイトになっていた時代。SABURI.COMは今も活躍中の当時若手クリエーターたちと一緒に書いた「FLASH LAB」という本にも載せてもらった(いまなら1円)。ちなみにこのサイトが赤いのが最初だからね(何が)。

「いい感じ」が失われて来た昨今

 なんとなくだけど、この頃がFlash的には一番「いい感じ」のMAXだったように思える。というのもプログラムがActionScript 1とか2なのでそんな難しくない上、色々なライブラリなどが生まれ、プログラムでの制御も豊富に対応し出した。タイムラインやオニオンスキンなどアニメ機能が充実してるしリアルタイム再生エンジンも十分速かった(もともとアニメソフトだから)。また、ブラウザのJavaScriptやサーバサイドのテクノロジー、動画などを駆使して実現したいことを様々なバランスのクリエーターが各々工夫してせめぎ合っていた。色々なテクノロジーを組み合わせてブレンドできる人が量産され、コミュニティでもお互いに情報交換して研ぎ澄まされて行った。
 だがこのあと、良くも悪くもAS3はスピードやガチプログラマーへの対応を実現し、Flashの最盛期を支えて行くのだが、どうも何かを無くして行った時期だと感じてしまった。今まで、どんなバックグラウンドの人でも「いい感じ」に使えていたソフトウェアが、ある程度プログラム寄りじゃないとモテはやされなくなり、高度なものが生まれる反面、敷居は高くなってしまい、「いい感じ」という緩さが消えて行ったのだ。そしてジョブスの文章とか色々なにがしがあって、今はWebサイトはHTML5で作られ、スマホが発明され、PCから主役の座を奪った。Flashは「死んだ」とされたのだ。

乱立の時代

 僕はまだFlashを使ってる。なんか最近アニメイトとか言うアニメ関連のお店のような名前に変わったようだけど、これでスマートフォン向けのアプリも作られるし、プログラムによる映像やちょっとした手描きアニメーションも、全部これで素材を作っている。そのくらい元々柔軟で、多くの人を受け容れてきただけあって、色んな素材を作れたり、アプリなど主役級のコンテンツも未だに作成できるのだ。アプリはAndroidもiOSも対応しているし、そんなんWindowsとMacの間を取り持ってきただけあって、多数のプラットフォーム間のハイブリッド開発をするのに、楽チンなのだ。8K相当のプロジェクションマッピング奥田さん作)も、Flashで独自の動画書き出しエンジンまで作って出力している。なんだかんだ「いい感じ」につくるのが早いのだ。
 ただ、どうしてもパフォーマンスなどの目的によってはopenFrameworksを使ったり、3Dゲームコンテンツの「いい感じ」に特化したUnityでやった方が早かったり、Swiftなどでネイティブ開発したり、と色々なソリューションが出てきている。Web制作まわりも毎年開発環境の「常識」が替わったり、なんかかつでひとつの業界にいた色々な人が、いまはそれぞれ違う世界に分散している感じがするのだ。ひとつの「ソフトウェア」が束ねるクリエイティブ世界じゃなくなってしまった。感覚的には、Director以前のC言語の時代に戻った「だけ」なので、まあ作り続けるんだけど、手軽に「いい感じ」に色々模索できるツールを失ってしまった感じがある。Origamiあたりは面白そうだけど。
 ひとつ言えるのは、元Flashの人たちは、色々な要素が折り混ざったコンテンツ作りになれているのか、この時代の最新の流れに負けず、ドローンだったり映像だったり新しい言語や開発環境でも素晴らしいコンテンツを作り続けている人が多い気がする。色々と鍛えられているのか、それぞれもはや違う分野の開発にいるのに、お互いのやってる内容やコンテンツを気にしてるし、勉強しつづけてる。最初からアプリだけとか、最初から今のWeb制作とかの人は、柔軟に全容を捉えて、俯瞰したコンテンツを習っていけるのかなぁ。この後、こういう「いい感じ」の開発環境ってまた出てくるのかなぁ。色々乱立していて、それぞれがそれなりに深いので、「いい感じ」にコンテンツのことに集中しにくい時代に入ったような気がするんだけど、それは俺が老害なだけなのかなぁ。XamarinとかUnityってC#だしそこらへんで頑張る方がいいのかなぁ。

「いい感じ」

 ひとつの開発環境がコンテンツをリードしていく時代はこれから先もう来ないかもしれない。一人のクリエーターが全部を担当して、みたいなやり方が「いい感じ」を掴むオンリーな方法論だと言いたいわけじゃないし、大きな企業の大きなプロジェクトだと分業が大事だったりするのもわかる。でも、やっぱり名コンテンツは、より多くの分野の「いい感じ」を「いい感じ」にバランスが取れる人が手綱を引いていると思う。ソフトウェアの話みたいになったけど、映像だろうとゲームだろうと広告キャンペーンだろうと、良い落としどころを見つけられる人がリードしていくのは変わらない。そして対人間を「いい感じ」にすることが実は一番大事かもしれない(笑)
 DirectorやFlashは本質的な「いい感じ」に時間を掛けることができる存在だった。すぐに検証が出来るしスピード感があるのでモックを出すタイミングでかなりクオリティの高い状態で出せた。そしてそれが進行上政治的にも伝えやすかったりしたのも強みだった。映画で言うところのプリビジュアライゼーションがワークフローの中に組み込まれていた。まだ仮の状態でも、こんなに「いい感じ」なのが伝わるでしょ?って伝えやすかったが、最近は想像上のコンテやパワポやワイヤーフレームに舞い戻っている感があって、正直Flashが「終わって」制作工程が退化した感じはしている。だから僕はまだFlashでサッと検証をしてみたりしてる。ひとつの制作環境としてシェアを減らしたとしても、まだまだ使う価値がある。
 ともかく、あらゆるもの、たとえスタートアップハードを作る人だろうと、何かアナログのコンテンツを作っているとしても、様々な制限の中で「いい感じ」になることを追求しなければならないので、詰めるところに時間を掛けられる、自由自在に使える、自分に取っての「Flash」を見つけて、世の中に「いい感じ」のものを増やして行こう。

株式会社メタルレッド
代表取締役社長
サブリンこと佐分利仁

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