皆様、お久しぶりです。不定期に上げると宣言してはいますが、3か月ぶりの投稿です。
今回はDynamics 365 Financeの消費税対応について共有します。
正直いきなりニッチな話題かと思いますが、これには2つメッセージがあります。
1.Dynamics 365は意外とローカライズしている
2.Dynamics 365は消費税対応に帳票まで用意している
海外ベンダーのERP製品は大半はローカライズ対応していますが、その深さは各社で異なります。
消費税対応している、といっても「○○を△△のようにカスタマイズすればできますよ」等のケースはままあります。
また、パートナー様のテンプレートでカバーしているというケースも数多くあります。
しかしながら、Dynamics 365は日本の消費税対応にベンダーとして対応しています。
今回の投稿では、
①消費税の基本的な仕組み
②Dynamicsではどのような対応をしているか
で共有したいと思います。
①消費税の基本的な仕組み
消費税とは、商品やサービスの販売価格に10%(飲食料品などは8%の軽減税率)の税金を上乗せし、購入者や受益者に税を負担させることです。
正直よく分かりませんね・・・
普段、コンビニなどで買い物をするときには品目の代金に加え、消費税を支払っていると思うのですが、厳密には我々一般消費者は消費税を納付していません。
この時、小売店などの事業者は、購入者から消費税を預かっている状態です。
小売店は、この預かっている状態の消費税から、商品を仕入れる際に小売店から(例えば)問屋さんに支払っている消費税を差し引いて、税務署に報告・納付しています。
式にすると下記の通りになります。
事業者が納税する消費税の金額 = 販売にかかる税額 ー 仕入にかかる税額 *仕入額控除という
イメージ図は下記のとおりです。
参考:改訂版 Q&Aでよくわかる 消費税 インボイス対応 要点ナビ 単行本 – 2021/10/19 熊王 征秀 (著)
消費税の申告の計算には、売上と仕入の双方を把握しておく必要があるというお話をしてきました。
さて、消費税ですが、皆さんご存じの通り、標準税率は10%ですが、食料品などは軽減税率として8%です。
ここで税務署に申告する申告書を見てみましょう。
6.3%??? 7.8%???何でしょうか、この数値は。
ここで申告税率の仕組みについて、もう1つポイントがあります。それは消費税には国税と地方税で分けて申告する必要がある、ということです。
標準税率10%であれば、内訳:国税7.8%、地方税2.2%、
軽減税率8%であれば、内訳:国税6.24%、地方税1.76%
となっています。
さらに、ややこしいのですが、消費税は一定のルールで旧税法の経過措置が認められており、
旧税法における8%であれば、内訳:国税6.3%、地方税1.7%、
旧税法における5%であれば、内訳が国税4%、地方税1%となっています。
旧税法3%(もう、あまりないと思いますが・・・)の頃は国税と地方税を分けて報告する仕組みになっていないので、これはそのまま3%のみ報告します。
そろそろ、嫌になってきたかもしれませんが、もう少しだけお付き合いください。
仕入額控除の算出方法には3つの方法があります。
①全額控除
②個別対応方式
③一括比例配分方式
全額控除には、
1.当課税期間中の税抜課税売上高が5億円以下の場合、
2.当課税期間中の課税売上割合が95%以上の場合
という要件が必要となり、Dynamicsの想定顧客には当てはまらないので、ここでは個別対応方式と一括比例配分方式について説明します。
どちらの方法を採用してもよいのですが、下記のようなチャートで分けることができます。
個別対応方式を採用するには、課税仕入れの区分整理をしているかどうかがポイントです。
個別対応方式では、課税仕入を区分できること、課税売上割合が確認できること、が前提となります。
下記が計算例です。
同じ内容を一括比例配分方式で計算した例は下記のとおりです。
一般的に一括比例配分方式での計算の特性上、
非課税売上対応の課税仕入れ等が多い業種の事業者の方が、有利になることが多いと言われています。
ただし、有利になることが多いだけで、絶対ではない点には注意が必要です。
さて、ここまで消費税の仕組みについてお話してきました。
ここからようやく(本当にようやく。。。)Dynamicsでの消費税対応について説明します。
②Dynamicsではどのような対応をしているか
まず冒頭でも述べたようにDynamicsでは帳票に至るまでローカライズされています。
Dynamicsでは消費税申告のメニューから、申告書第一表および第二表を出力することができます。
申告書は、税金>申告>消費税申告書のメニューパスで出力することができます。
下図は実際にDynamicsで出力した申告書のPDFです。
ここで計算されてくるトランザクションは、
・販売データ
・購買データ
・一般仕訳
のデータから集計され計算されます。
今回は説明を省きますが、Dynamicsでは、
・取引先に対する消費税グループ
・品目に対する品目消費税グループ
・勘定科目に対する品目消費税グループ
・起票時期
によって、消費税コードならびに消費税コードに割り当たった消費税率が決定されます。
*これは消費税率が同じでも軽減税率の8%と旧税法の8%で内訳が違うからです
まとめていってしまうと、事前に設定しておけば自動で消費税申告に必要なトランザクションデータは色分けされて記録される、ということです。
最後に計算方式ですが、先ほど挙げた申告のメニュー実行時に選択することができます。
全額控除は選択できないのですが、一般的な企業で全額控除は考えにくいので、ご了承ください。
さて、いかがだったでしょうか。
Dynamicsでは消費税の他、固定資産関連でも帳票も含めたローカライズをしています。
個人的には、別会社のERPコンサルタントだった身として、ここまでローカライズしているのは驚きでした。
外資のERPだから、と倦厭されず、是非検討の参考としていただけると幸いです。
それでは、次の投稿でまたお会いしましょう。
(次はもう少し短い間隔で投稿できるように頑張ります)