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MSYS2によるWindows 10でのBash環境構築メモ

Last updated at Posted at 2019-04-20

目的

今日日(2019年4月)、BashとPythonは、Windows、Linux、macOSを含む主要なOSで動作する共通の環境であり、BashとPythonで処理を書くことでOSへの依存を避けることができる。そこでWindowsでBashとPythonが動作する環境を構築する。具体的な要件は以下の通りとする。

  • 64-bit Windows 10で、BashとPythonの対話およびバッチ実行を行う。
  • BashからWindowsのファイルシステムを直接扱う。
  • Unix/Linuxの各種ツールをWindowsで利用する。
  • 文字コードはUTF8とする。

方針

現在、WindowsでのBashシェル環境で、主要なものは以下の通り。

  1. Cygwin
  2. MSYS2/MinGW
  3. Git for Windowsの付属のBash
  4. Windows Subsystem for Linux (WSL)
  5. Docker等を利用した仮想的なLinux環境

BashからWindowsのファイルシステムに直接アクセスしたいので、4. WSL と 5. Docker は選択肢から外す。仮想的な環境はストレージの容量を消費することも問題だ。1. Cygwin はよく知られている。GUIのパッケージ管理ツールがあり、長年保守されている。3. Git for Windowsは導入が楽であるが、パッケージ管理の仕組みはない。

今回は、将来にWindowsネイティブアプリのフリーな開発環境を整備することを視野に入れ、2. MSYS2 を採用する。開発環境が必要なら、MSYS2からMinGWを導入する。MSYS2にはPacmanと呼ぶパッケージ管理の仕組みがある。

【参考】Windowsで使えるターミナルとシェルのまとめ
https://qiita.com/Ted-HM/items/9a60f6fcf74bbd79a904

インストールと設定

Windowsのユーザー名の確認

まず、Windowsのユーザー名が空白文字を含まない半角英数字のみであることを確認する。空白文字や日本語文字がユーザー名やユーザーフォルダのパスに含まれると、後々トラブルを抱えることになる。その場合は、Windowsのユーザーをローカルアカウントで作り直す。

Miniconda/Anacondaのインストール

Pythonには環境分離の仕組みが欲しい。今回はWindowsで広く採用されているMiniconda/Anacondaを採用する。Miniconda/Anacondaは、Linux版やmacOS版もあると聞く。公式サイトからMinicondaのインストーラをダウンロードして実行する。インストーラで、環境変数PATHを通すように指定する。
https://docs.conda.io/en/latest/miniconda.html

Miniconda/Anacondaの管理ツールであるCondaの設定を行う。Condaの古い一部のバージョン(例えば4.6.11)はMSYS2との相性が悪いので、最新版にアップグレードする(4.6.14ではfixされている)。詳細は以下のURLを参照。
https://github.com/conda/conda/issues/8486

コマンドプロンプト(Windows管理者権限で)
conda upgrade conda
conda --version     # バージョン確認

MSYS2のインストールと設定

続いてMSYS2に進む。公式サイトから MSYS2 のインストーラーをダウンロードして実行する。
https://msys2.github.io/

MSYS2インストーラーのデフォルトでは、MSYS2の /home の実体は、C:\msys64\home となる。Linuxから移植された様々なWindowsネイティブのツールが、C:\Users 下のユーザーフォルダに設定ファイルを置くことがあり、それをシェル環境でも使いたい。そこで、MSYS2のホームディレクトリをWindowsのユーザーフォルダとするように設定を変更する。テキストエディタで以下のように編集する。

C:\msys64\etc\nsswitch.conf
#db_home: cygwin desc   # コメントアウト
db_home: windows        # 追加

C:\msys64\home フォルダはもう不要なので削除する。

ついでに、パッケージ管理ツールPacmanの設定ファイルを編集する(任意)。

C:\msys64\etc\pacman.conf
Color   # コメントアウト

さて、Windowsのスタートメニューで MSYS2 64-bit のフォルダを見ると、以下の3つのアイコンを確認できる。

  • スタートメニュー
    • MSYS2 64-bit
      • MSYS2 MinGW 32-bit
      • MSYS2 MinGW 64-bit
      • MSYS2 MSYS

これらはそれぞれ独立した環境を指しており、パッケージも別に管理される。以降、使用するのは MSYS2 MinGW 64-bit とする。他の環境は使用しない。(間違って起動しないように、使わないアイコンを削除しても良いかもしれない。)

MSYS2のパッケージを整備する。スタートメニューから MSYS2 MinGW 64-bit を起動し、以下を実行する。

Bashコンソール
### Download fresh package databases from the server
pacman --sync --refresh

### Upgrade installed packages
pacman --sync --sysupgrade

### Install GNU toolchain, including a MinGW-version of Git (Optional)
pacman --sync base-devel
#pacman --sync mingw-w64-x86_64-toolchain # もし必要なら

### Install Git
pacman --sync ca-certificates
pacman --sync git
git --version # バージョン確認

### Remove old packages from cache directory
pacman --sync --clean

なお、MSYS2 64-bitパッケージの一覧は、以下で確認できる。
http://repo.msys2.org/msys/x86_64/

些末な話だが、util-linuxパッケージの最新版(2.26.2-1)には、script コマンドが移植されていない。経緯は以下のURLを参照。
https://github.com/Alexpux/MINGW-packages/issues/4497
どうしても欲しければ、以下のようにscript コマンドを含む過去の版から取得する方法がある。なお、完全な動作確認はしていない。

Bashコンソール
wget http://repo.msys2.org/msys/x86_64/util-linux-2.26.2-1-x86_64.pkg.tar.xz 
pacman --upgrade util-linux-2.26.2-1-x86_64.pkg.tar.xz 
mkdir -p /usr/local/bin
cp /usr/bin/script.exe /usr/local/bin/
pacman --sync --sysupgrade

Bashの設定を行う。以下を追記した。

~/.bash_profile
# 自分好みのコマンドエイリアス
alias ls='ls --color=auto --show-control-chars --time-style=long-iso --human-readable --classify'
alias ll='ls -l'                        # long list
alias la='ls -A'                        # all but . and ..
alias grep='grep --color'               # show differences in colour
alias less='less --raw-control-chars'   # raw control characters
alias whence='type -a'                  # where, of a sort

# Miniconda/Anacondaの設定
#. 'C:/ProgramData/Anaconda3/etc/profile.d/conda.sh' # Anaconda3ならこちら
. '/c/ProgramData/Miniconda3/etc/profile.d/conda.sh' # Miniconda3ならこちら

利用方法

Bashの起動

Windowsと他の環境(Linux、macOS等)との差があれば、~/.bash_profile 等の設定で吸収する。

対話的にBashを利用するには、コマンドプロンプトで以下を実行する。コードページをUTF8としている点に注意。環境変数MSYSの意味は後述。

コマンドプロンプト
CHCP 65001
SET MSYS=winsymlinks:lnk
CALL "C:\msys64\msys2_shell.cmd" -mingw64 -defterm -here -full-path -no-start

WindowsのバッチファイルからBashスクリプトを実行するには、以下のようにする。

バッチファイル
CHCP 65001
SET MSYS=winsymlinks:lnk
CALL "C:\msys64\msys2_shell.cmd" -mingw64 -defterm -here -full-path -no-start TARGET_SCRIPT.bash
EXIT /B %ERRORLEVEL%

Windowsのバッチファイルから単独のMSYS2のコマンドを実行するには、以下のようにする。

バッチファイル
CHCP 65001
SET MSYS=winsymlinks:lnk
CALL "C:\msys64\msys2_shell.cmd" -mingw64 -defterm -here -full-path -no-start -c TARGET_COMMAND
EXIT /B %ERRORLEVEL%

上記で使用したものを含め、MSYS2関連の主な環境変数には以下がある。細かい挙動については、msys2_shell.cmd(これはバッチファイルである)の内容を参考のこと。

  • MSYS
    • ls -s 等のリンクに関する挙動を決める。
      ここの設定は、msys-2.0.dll を利用するすべてのプログラムに影響する。
      winsymlinks:lnk を指定すると、シンボリックリンクの作成は、Windowsショートカットの作成となる。
      この環境変数が存在しないと、シンボリックリンクを作成しようとすると、ファイルがコピーされるようになる。
  • MSYSTEM
    • MINGW64 を指定すると、MSYS2 MinGW 64-bit 環境向けの環境変数PATHを構成する。
      msys2_shell.cmd-mingw64 オプションに対応。
      詳細は /etc/profile を参照。
  • MSYS2_PATH_TYPE
    • inheritとすると、シェル環境変数PATHの末尾にWindows環境変数PATHの項目を追加する。
      msys2_shell.cmd-full-path オプションに対応。
      AnacondaのPython含め、Windowsネイティブのコマンドを利用するには、これを使うのが便利である。
      strictとすると、Windowsの環境変数PATHを継承しない。
      詳細は /etc/profile を参照。
  • CHERE_INVOKING
    • 1 とすると、Bashログイン時に現在のディレクトリを変更しない(つまり、HOME環境変数の場所に移動しない)。
      msys2_shell.cmd-here オプションに対応。
  • MSYS2_ARG_CONV_EXCL
    • 親切なことに、MSYS2は、Windowsネイティブなコマンドを実行するとき、
      コマンド自身のパスとその引数に見つかった絶対パスを
      Windows形式(ドライブ文字付き)の絶対パスに変換する。
      コマンド引数に指定したパスがこの値と前方一致する場合、この変換処理の対象から除外する。
      複数指定する場合は、セミコロンで区切る。

MSYS2では、ルートディレクトリにWindowsのドライブが、ドライブレターの小文字でマウントされている。例えばC:\Usersを指定するには、/c/Usersとする。

参考までに、MSYS2コンソールからWindowsのプログラムを別ウィンドウで開くには、START コマンドを使う。以下に例を示す。

Bashプロンプト
START CMD                       # 別画面でコマンドプロンプトを開く
START CHROME                    # Chromeを起動する
START https://www.google.com/   # Windows既定のWebブラウザでURLを開く
START EXPLORER .                # カレントディレクトリをWindows Explorerで開く

Pythonの起動

PythonはBash上で使用する。BashでMiniconda/AnacondaのPython環境を切り替えるには、良く知られているように、condaコマンドを使う。

Bashプロンプト
conda activate base

参考までに、コマンドプロンプトでMiniconda/AnacondaのPython環境を切り替えるには、(これもWindowsユーザーにはよく知られていることと思うが、)conda.exeでなくconda.batを使う。

コマンドプロンプト
call conda.bat activate base

今後の調査

Proxy環境での設定を要確認。以下らしいが、今後検証する。

~/.curlrc
# 以下を追記
proxy-user = "user:passwd"
proxy = "http://proxy.com:8080"
/etc/pacman.conf
# 以下の行コメントを解除
XferCommand = /usr/bin/curl -C - -f %u > %o
/etc/pacman.d/gnupg/gpg.conf
# 以下を追記
keyserver-options http-proxy=http://user:passwd@proxy.com:8080/
~/.bash_profile
# 以下を追記
export HTTP_PROXY=http://user:passwd@proxy.com:8080/
export HTTPS_PROXY=http://user:passwd@proxy.com:8080/
export FTP_PROXY=http://user:passwd@proxy.com:8080/

おわり。

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