14
33

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?

More than 5 years have passed since last update.

MSYS2によるWindows 10でのBash環境構築メモ

Last updated at Posted at 2019-04-20

目的

今日日(2019年4月)、BashとPythonは、Windows、Linux、macOSを含む主要なOSで動作する共通の環境であり、BashとPythonで処理を書くことでOSへの依存を避けることができる。そこでWindowsでBashとPythonが動作する環境を構築する。具体的な要件は以下の通りとする。

  • 64-bit Windows 10で、BashとPythonの対話およびバッチ実行を行う。
  • BashからWindowsのファイルシステムを直接扱う。
  • Unix/Linuxの各種ツールをWindowsで利用する。
  • 文字コードはUTF8とする。

方針

現在、WindowsでのBashシェル環境で、主要なものは以下の通り。

  1. Cygwin
  2. MSYS2/MinGW
  3. Git for Windowsの付属のBash
  4. Windows Subsystem for Linux (WSL)
  5. Docker等を利用した仮想的なLinux環境

BashからWindowsのファイルシステムに直接アクセスしたいので、4. WSL と 5. Docker は選択肢から外す。仮想的な環境はストレージの容量を消費することも問題だ。1. Cygwin はよく知られている。GUIのパッケージ管理ツールがあり、長年保守されている。3. Git for Windowsは導入が楽であるが、パッケージ管理の仕組みはない。

今回は、将来にWindowsネイティブアプリのフリーな開発環境を整備することを視野に入れ、2. MSYS2 を採用する。開発環境が必要なら、MSYS2からMinGWを導入する。MSYS2にはPacmanと呼ぶパッケージ管理の仕組みがある。

【参考】Windowsで使えるターミナルとシェルのまとめ
https://qiita.com/Ted-HM/items/9a60f6fcf74bbd79a904

インストールと設定

Windowsのユーザー名の確認

まず、Windowsのユーザー名が空白文字を含まない半角英数字のみであることを確認する。空白文字や日本語文字がユーザー名やユーザーフォルダのパスに含まれると、後々トラブルを抱えることになる。その場合は、Windowsのユーザーをローカルアカウントで作り直す。

Miniconda/Anacondaのインストール

Pythonには環境分離の仕組みが欲しい。今回はWindowsで広く採用されているMiniconda/Anacondaを採用する。Miniconda/Anacondaは、Linux版やmacOS版もあると聞く。公式サイトからMinicondaのインストーラをダウンロードして実行する。インストーラで、環境変数PATHを通すように指定する。
https://docs.conda.io/en/latest/miniconda.html

Miniconda/Anacondaの管理ツールであるCondaの設定を行う。Condaの古い一部のバージョン(例えば4.6.11)はMSYS2との相性が悪いので、最新版にアップグレードする(4.6.14ではfixされている)。詳細は以下のURLを参照。
https://github.com/conda/conda/issues/8486

コマンドプロンプト(Windows管理者権限で)
conda upgrade conda
conda --version     # バージョン確認

MSYS2のインストールと設定

続いてMSYS2に進む。公式サイトから MSYS2 のインストーラーをダウンロードして実行する。
https://msys2.github.io/

MSYS2インストーラーのデフォルトでは、MSYS2の /home の実体は、C:\msys64\home となる。Linuxから移植された様々なWindowsネイティブのツールが、C:\Users 下のユーザーフォルダに設定ファイルを置くことがあり、それをシェル環境でも使いたい。そこで、MSYS2のホームディレクトリをWindowsのユーザーフォルダとするように設定を変更する。テキストエディタで以下のように編集する。

C:\msys64\etc\nsswitch.conf
#db_home: cygwin desc   # コメントアウト
db_home: windows        # 追加

C:\msys64\home フォルダはもう不要なので削除する。

ついでに、パッケージ管理ツールPacmanの設定ファイルを編集する(任意)。

C:\msys64\etc\pacman.conf
Color   # コメントアウト

さて、Windowsのスタートメニューで MSYS2 64-bit のフォルダを見ると、以下の3つのアイコンを確認できる。

  • スタートメニュー
    • MSYS2 64-bit
      • MSYS2 MinGW 32-bit
      • MSYS2 MinGW 64-bit
      • MSYS2 MSYS

これらはそれぞれ独立した環境を指しており、パッケージも別に管理される。以降、使用するのは MSYS2 MinGW 64-bit とする。他の環境は使用しない。(間違って起動しないように、使わないアイコンを削除しても良いかもしれない。)

MSYS2のパッケージを整備する。スタートメニューから MSYS2 MinGW 64-bit を起動し、以下を実行する。

Bashコンソール
### Download fresh package databases from the server
pacman --sync --refresh

### Upgrade installed packages
pacman --sync --sysupgrade

### Install GNU toolchain, including a MinGW-version of Git (Optional)
pacman --sync base-devel
#pacman --sync mingw-w64-x86_64-toolchain # もし必要なら

### Install Git
pacman --sync ca-certificates
pacman --sync git
git --version # バージョン確認

### Remove old packages from cache directory
pacman --sync --clean

なお、MSYS2 64-bitパッケージの一覧は、以下で確認できる。
http://repo.msys2.org/msys/x86_64/

些末な話だが、util-linuxパッケージの最新版(2.26.2-1)には、script コマンドが移植されていない。経緯は以下のURLを参照。
https://github.com/Alexpux/MINGW-packages/issues/4497
どうしても欲しければ、以下のようにscript コマンドを含む過去の版から取得する方法がある。なお、完全な動作確認はしていない。

Bashコンソール
wget http://repo.msys2.org/msys/x86_64/util-linux-2.26.2-1-x86_64.pkg.tar.xz 
pacman --upgrade util-linux-2.26.2-1-x86_64.pkg.tar.xz 
mkdir -p /usr/local/bin
cp /usr/bin/script.exe /usr/local/bin/
pacman --sync --sysupgrade

Bashの設定を行う。以下を追記した。

~/.bash_profile
# 自分好みのコマンドエイリアス
alias ls='ls --color=auto --show-control-chars --time-style=long-iso --human-readable --classify'
alias ll='ls -l'                        # long list
alias la='ls -A'                        # all but . and ..
alias grep='grep --color'               # show differences in colour
alias less='less --raw-control-chars'   # raw control characters
alias whence='type -a'                  # where, of a sort

# Miniconda/Anacondaの設定
#. 'C:/ProgramData/Anaconda3/etc/profile.d/conda.sh' # Anaconda3ならこちら
. '/c/ProgramData/Miniconda3/etc/profile.d/conda.sh' # Miniconda3ならこちら

利用方法

Bashの起動

Windowsと他の環境(Linux、macOS等)との差があれば、~/.bash_profile 等の設定で吸収する。

対話的にBashを利用するには、コマンドプロンプトで以下を実行する。コードページをUTF8としている点に注意。環境変数MSYSの意味は後述。

コマンドプロンプト
CHCP 65001
SET MSYS=winsymlinks:lnk
CALL "C:\msys64\msys2_shell.cmd" -mingw64 -defterm -here -full-path -no-start

WindowsのバッチファイルからBashスクリプトを実行するには、以下のようにする。

バッチファイル
CHCP 65001
SET MSYS=winsymlinks:lnk
CALL "C:\msys64\msys2_shell.cmd" -mingw64 -defterm -here -full-path -no-start TARGET_SCRIPT.bash
EXIT /B %ERRORLEVEL%

Windowsのバッチファイルから単独のMSYS2のコマンドを実行するには、以下のようにする。

バッチファイル
CHCP 65001
SET MSYS=winsymlinks:lnk
CALL "C:\msys64\msys2_shell.cmd" -mingw64 -defterm -here -full-path -no-start -c TARGET_COMMAND
EXIT /B %ERRORLEVEL%

上記で使用したものを含め、MSYS2関連の主な環境変数には以下がある。細かい挙動については、msys2_shell.cmd(これはバッチファイルである)の内容を参考のこと。

  • MSYS
    • ls -s 等のリンクに関する挙動を決める。 ここの設定は、msys-2.0.dll を利用するすべてのプログラムに影響する。 winsymlinks:lnk を指定すると、シンボリックリンクの作成は、Windowsショートカットの作成となる。 この環境変数が存在しないと、シンボリックリンクを作成しようとすると、ファイルがコピーされるようになる。
  • MSYSTEM
    • MINGW64 を指定すると、MSYS2 MinGW 64-bit 環境向けの環境変数PATHを構成する。 msys2_shell.cmd-mingw64 オプションに対応。 詳細は /etc/profile を参照。
  • MSYS2_PATH_TYPE
    • inheritとすると、シェル環境変数PATHの末尾にWindows環境変数PATHの項目を追加する。 msys2_shell.cmd-full-path オプションに対応。 AnacondaのPython含め、Windowsネイティブのコマンドを利用するには、これを使うのが便利である。 strictとすると、Windowsの環境変数PATHを継承しない。 詳細は /etc/profile を参照。
  • CHERE_INVOKING
    • 1 とすると、Bashログイン時に現在のディレクトリを変更しない(つまり、HOME環境変数の場所に移動しない)。 msys2_shell.cmd-here オプションに対応。
  • MSYS2_ARG_CONV_EXCL
    • 親切なことに、MSYS2は、Windowsネイティブなコマンドを実行するとき、 コマンド自身のパスとその引数に見つかった絶対パスを Windows形式(ドライブ文字付き)の絶対パスに変換する。 コマンド引数に指定したパスがこの値と前方一致する場合、この変換処理の対象から除外する。 複数指定する場合は、セミコロンで区切る。

MSYS2では、ルートディレクトリにWindowsのドライブが、ドライブレターの小文字でマウントされている。例えばC:\Usersを指定するには、/c/Usersとする。

参考までに、MSYS2コンソールからWindowsのプログラムを別ウィンドウで開くには、START コマンドを使う。以下に例を示す。

Bashプロンプト
START CMD                       # 別画面でコマンドプロンプトを開く
START CHROME                    # Chromeを起動する
START https://www.google.com/   # Windows既定のWebブラウザでURLを開く
START EXPLORER .                # カレントディレクトリをWindows Explorerで開く

Pythonの起動

PythonはBash上で使用する。BashでMiniconda/AnacondaのPython環境を切り替えるには、良く知られているように、condaコマンドを使う。

Bashプロンプト
conda activate base

参考までに、コマンドプロンプトでMiniconda/AnacondaのPython環境を切り替えるには、(これもWindowsユーザーにはよく知られていることと思うが、)conda.exeでなくconda.batを使う。

コマンドプロンプト
call conda.bat activate base

今後の調査

Proxy環境での設定を要確認。以下らしいが、今後検証する。

~/.curlrc
# 以下を追記
proxy-user = "user:passwd"
proxy = "http://proxy.com:8080"
/etc/pacman.conf
# 以下の行コメントを解除
XferCommand = /usr/bin/curl -C - -f %u > %o
/etc/pacman.d/gnupg/gpg.conf
# 以下を追記
keyserver-options http-proxy=http://user:passwd@proxy.com:8080/
~/.bash_profile
# 以下を追記
export HTTP_PROXY=http://user:passwd@proxy.com:8080/
export HTTPS_PROXY=http://user:passwd@proxy.com:8080/
export FTP_PROXY=http://user:passwd@proxy.com:8080/

おわり。

14
33
0

Register as a new user and use Qiita more conveniently

  1. You get articles that match your needs
  2. You can efficiently read back useful information
  3. You can use dark theme
What you can do with signing up
14
33

Delete article

Deleted articles cannot be recovered.

Draft of this article would be also deleted.

Are you sure you want to delete this article?