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Strawberry Fieldsで光量子計算をする(その6) CV Bell State

Last updated at Posted at 2019-06-05

$$
\def\bra#1{\mathinner{\left\langle{#1}\right|}}
\def\ket#1{\mathinner{\left|{#1}\right\rangle}}
\def\braket#1#2{\mathinner{\left\langle{#1}\middle|#2\right\rangle}}
$$

はじめに

今回はお勉強会です。
光連続量の斜め読みをしながら連続量エンタングルメントに触れます。

まず、離散量のエンタングルメントを確認しておきます。
超電導Qubitなど離散量のBell Stateは下の4状態でした。
Bell Stateはエンタングルが最大の状態であり、シュミット分解の係数(下の式では$\frac{1}{\sqrt{2}}$)が全て等しいという特徴がありました。

\ket{\phi^{\pm}} = \frac{1}{\sqrt{2}} (\ket{00} \pm \ket{11})\\
\ket{\psi^{\pm}} = \frac{1}{\sqrt{2}} (\ket{01} \pm \ket{10}) 

これの連続量版にあたるのがCV Bell Stateで、今回の目的地です。

Qumodeのおさらい

まずQumode(Qubitの連続量版)の体系をざっとまとめます。
(より丁寧な解説はこちらをご参照ください)

光の直交位相状態は位置演算子$\hat{x}$と運動量演算子$\hat{p}$の組、または消滅演算子$\hat{a}$と生成演算子$\hat{a}^{\dagger}$の組で表されます。

生成・消滅演算子はそれぞれ光子数状態(Fock state)$\ket{n}$に対し以下のように作用します。

\hat{a} \ket{n} = \sqrt{n}\ket{n-1} \\
\hat{a}^{\dagger} \ket{n} = \sqrt{n+1}\ket{n+1}

Fock stateは光子数状態の別名の通り光子の数に相当します。
無限に大きな値をとりうる離散状態で、互いに直交しかつ完全系を成します。

\braket{n}{m} = \delta_{nm} \\
\sum_{n=0}^{\infty} \ket{n} \bra{n} = \mathbf{I}

また、$\hat{x}$, $\hat{p}$ は $\hat{a}$, $\hat{a}^{\dagger}$ と次のような関係にあります。

\hat{a} = \hat{x} + i\hat{p} \\
\hat{a}^{\dagger} = \hat{x} - i\hat{p}

$\ket{x}$は、位置演算子$\hat{x}$に対する固有値$x$の固有状態です。
運動量演算子についても同様に運動量状態が存在します。

\hat{x}\ket{x} = x \ket{x} \\
\hat{p}\ket{p} = x \ket{p} \\

位置状態、運動量状態は連続的な値をとり、無限次元の直交基底を張りかつ完全系です。

\braket{x}{x'} = \delta(x-x') \\
\int^{\infty}_{-\infty} \ket{x} \bra{x}dx = \mathbf{I} \\
\braket{p}{p'} = \delta(p-p') \\
\int^{\infty}_{-\infty} \ket{p} \bra{p}dp = \mathbf{I}

$\ket{x}$と$\ket{p}$はフーリエ変換で結ばれます。

\ket{x} = \frac{1}{\sqrt{\pi}} \int^{\infty}_{-\infty} e^{-2ixp} \ket{p}dp \\
\ket{p} = \frac{1}{\sqrt{\pi}} \int^{\infty}_{-\infty} e^{+2ixp} \ket{x}dx

また、ある状態ベクトルの位置状態基底への射影は以下のように書けます。

\ket{\psi} = \int dx \ket{x} \braket{x}{\psi} = \int dx \psi(x)\ket{x}

$\ket{x}$が完全系をなすため真ん中の式では$\ket{\psi}$に恒等演算子がかかっています。
(左側の等式が成立する理由です。)
$\psi(x)$はposition wave functionなどと呼ばれるそうです。

CV Bell State

以上の説明は、これから天下り的に与えられるCV Bell stateを受け入れる準備です。

2つのQumodeによるCV Bell statesは以下のように書けます。

\ket{\psi(u,v)} = \frac{1}{\pi} \int dx e^{2ixv} \ket{x}\ket{x-u}

右辺で積分されている2つのケットベクトルがエンタングルしている2つのqumodesに対応します。
CV Bell statesは各qumodeの直交位相ではなく新たな変数$u$, $v$で定められます。
$u$, $v$の意味ですが、それぞれ演算子$\hat{x_1} - \hat{x_2}$, $\hat{p_1}+\hat{p_2}$に対する$\ket{\psi(u,v)}$の固有値に対応します。

数式的には以下が成り立つことが確かめられます。
($\hat{x}$と$\hat{p}$のフーリエ変換関係と位置/運動量演算子が位置/運動量状態の固有演算子であることを使って愚直に計算すればいけます。)

e^{2it(\hat{x_1} - \hat{x_2})}\ket{\psi(u,v)} = e^{2itu}\ket{\psi(u,v)} \\
e^{2it(\hat{p_1}+\hat{p_2})}\ket{\psi(u,v)} = e^{2itv}\ket{\psi(u,v)}

演算子同士の和差関係が成り立つことが相関を表しているようですね。
位置状態同士のエンタングルメントはどことなく畳み込みとフーリエ変換の合いの子のようで少し異なる式で記述されました。

ついでに、直交位相状態に対する並進演算子も似た計算で確かめられます。

e^{2is\hat{x}}\ket{p} = \ket{p+s} \\
e^{-2is\hat{p}}\ket{x} = \ket{x+s}

Bell stateは$\hat{x}$, $\hat{p}$のエンタングルの強さが無限大であることに相当します。
無限の精度で$\hat{x}$, $\hat{p}$を求めるには無限の光子数(=エネルギー)が必要なのと同様、無限にエンタングルした状態を作るにも無限のエネルギーが必要に思えます。

Bell state以外のCVエンタングルド状態、有限の強さでエンタングルした状態はどう定式化されるのでしょうか。
EPR stateがそれに対応します。
EPR stateは上記のposition wave functionの形式で以下のように表します。

\psi_{TMSS}(\hat{x_1}, \hat{x_2})=\sqrt{\frac{2}{\pi}}\exp{\left[ -e^{-2r}(x_1 + x_2)^2 /2 - e^{+2r}(x_1 - x_2)^2 /2 \right]} \\
\psi_{TMSS}(\hat{p_1}, \hat{p_2})=\sqrt{\frac{2}{\pi}}\exp{\left[ -e^{-2r}(p_1 - p_2)^2 /2 - e^{+2r}(p_1 + p_2)^2 /2 \right]}

$r$が相関の強さを表していて、$r\to \infty$とすると$u=v=0$ のCV Bell stateと等価になります。

添字のTMSSはTwo Mode Squeezed Stateの事で、これは2 Qumodesのエンタングルド状態が2つの真空スクイーズド状態の重ね合わせと等価であるという事実から来ています。
(なので光CVエンタングルド状態は2つのスクイーズド光をビームスプリッタで重ね合わせることで生成可能なのでした)

まとめ

CVエンタングルメントは離散qubitのエンタングルメントと比較して数式的に複雑に感じます。
また位置/運動量"状態"と、位置/運動量"固有値"、位置/運動量"演算子"の考え方に慣れる必要があります。私も慣れた気がしないです。
状態はあくまで基底であって、実際の値は位置/運動量演算子を作用させた時の固有値であるという考え方は離散量量子計算と同じだと思います。

参考にした文献

Akira Furusawa, Peter van Loock, "Quantum Teleportation and Entanglement: A Hybrid Approach to Optical Quantum Information Processing", WILEY

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