読んだ本

コロナ禍で多くの企業が苦戦を強いられているなかでも、伸び続けている企業ワークマン。
本記事はその取り組みの中でも「第2章 大躍進の裏に「データ経営」あり」 に関しての書評をしました。
この本からの学び
- データ分析はプロに任せておけばいい
- なんてことはない
- 機械学習を用いた高度なデータ分析もいい
- でも、その前にやることがある
詳しく述べていきます。
データ分析はプロに任せておけばいいなんてことはない
ワークマンのデータ分析の方針の特徴は、少数のデータサイエンティストだけに任せず、全社員に広く浅くデータ分析の機会があることです。
ワークマンのデータ活用については、同社のHPや、メディア取材記事があります。
出典:「ワークマンは-商品を変えずに売り方を変えただけで-なぜ2倍売れたのか」
これは第2章に挙げられていた表です。
「d3」というのは同社が導入しているPOSデータ分析システムみたいです。
d3を用いたデータ分析とExcelを用いたデータ分析を、全社員が学ぶ体制が出来上がっているそうです。
なぜ、全社員がデータ分析にあたる必要性があるのか?
自分は以下のように考えました(本書では明言されておりません)。
- 店舗ビジネスなので、エリア毎、そして季節毎、様々な分析軸で分析が必要になる
- それに対して
- いちいち高度な分析は必要ない
- むしろ現場感を把握した社員がエクセルで仮説検証するほうが最短で物事の因果関係を見つけやすい
- それに対して
- 仮に、優秀なデータサイエンティストを採用して、データ分析に関する業務をその人に任せたとしてうまくいかないと感覚的に思っています
- なぜそう思うか?
- 会社の上位層にデータリテラシーがないと、その役割を活かしきれないでしょう(そもそも、何を言っているか理解できない)
- 現場社員にデータリテラシーがないと、決まった方針に納得感をもてないのでは(トップダウンが染み付いてるならいいけど)
- なぜそう思うか?
あくまでも、自分の感覚的な考察ですが、そういった現場を見てきた経験はあります
ビジネスに大事なのは相関関係よりも因果関係を見つけること
本書の項目「AIではなく、エクセルを推す理由」に
AIは思考のプロセスがブラックボックスになって見えないことが欠点として挙げられていました。
なぜ欠点か
AIは、たちどころに結果を教えてくれるので、社員が考えなくなってしまう
これがAIの懸念なのでしょう。
エクセルを推す理由は
AIは大量のデータから相関関係を見つけるのは得意だが、ビジネスで必要なのはむしろ因果関係を見極めること
AIは因果関係までは示してくれない
因果関係の検証は実際に人が仮説を立てて実験をしてみないとわからない
社内の課題解決ならエクセルで十分できる
一部抜粋:「ワークマンは-商品を変えずに売り方を変えただけで-なぜ2倍売れたのか」
ここまでで、以下のことがわかりました。
社員全員が因果関係を見つけること重視していること。
また、因果関係を見つけることはビジネスにおいても大事だということ。
因果関係を見つける過程は理系専攻で学位論文を書いてきた人なら誰しも経験したはず
本書を読んで感じたことは、ビジネス上のデータ分析で大事なのは、複雑なデータ解析などではなく、まず、科学論文を書くときの基本と同じということでした。
測定可能性、測定原理の存在 → データを計測可能な状態にすること
定量性 → 数値として取得できること
再現性
統計的な有意性
論理的整合性 → 得られた結果からネクストアクションを決める(戦略を決める)
→ 以降は、難しい表現の場合、ビジネスっぽく訳してます。
つまり、「科学的方法」に基づいてビジネスを回すということですね。
学位論文から修士論文まで経験してきた自分にとっては、慣れ親しんだ枠組みですが、そうでない人にとっては馴染みがないのかもしれません。
ビジネスにおいてなかなか科学的方法が根付かないのもそのせいかもしれません。
それを思うと、「科学的方法」を根付かせたワークマンの優位性は一定あると思います。
というか、そのステップがAI導入よりも先なのかもしれません。
ガートナーが示す「企業でのデータ分析の成熟度合い」
企業でのデータ分析の成熟度合いというものがあるそうです。
こっちの図の方がわかりやすいかも👇
ステップとして以下の通りです。
- Descriptive Analytics/記述的分析(何が起きたのか?)
- Diagnostic Analytics/診断的分析(なぜ起こったか?)
- Predictive Analytics/予測分析(何が起きるのか?)
- Prescriptive Analytics/処方的分析(何をすべきか?)
記述的分析(何が起きたのか?)に関して、ワークマンは小売業としては珍しくワークマンはEDI(電子データ交換)による電子取引を全ての取引先と結んで「在庫数量のデジタル化」を済ませており、データ活用の最初のハードルを超えています。
そして、次のステップに、診断的分析、なぜ起こったか?をエクセルを用いて全社員に考えさせる機会を設けたことは、ガートナー的な分類からいっても理にかなっていると言えます。
前述しましたが、このフェーズ(診断的分析(なぜ起こったか?))をすっ飛ばし、AI導入をしてしまうと
診断的分析フェーズがないので、「なぜ?」が説明できない組織になるのではないでしょうか?
(そうなると、行き当たりばったりの、行動量だけ多くして、なんとか現場の底力で目標達成する体育会系組織が勝つのもうなずけます)
「データサイエンス」は元々、ビジネスに科学的手法を持ち込むための一手段でしかなかったのに、いつの間にかそれ自体が目的になったように感じます。
企業側:なぜやるべきかはスキップ。流行ってるから乗り遅れずにとにかくAIだ
個人:給料高そうだからとにかくAIやろう
という感じで迷走して行ったのかもしれません。
この本を読んで次どんなアクションをするか
以下のサイクルを回すこと
- まずこの記事の啓蒙をする
- シンプルに科学的手法をビジネスに導入して成功事例を作る
- 発展的な因果推論のスキル向上させる
参考
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