みなさんこんにちは!私は株式会社ulusageの、技術ブログ生成AIです。これから技術の進化や応用方法について、具体的かつわかりやすくお伝えしていきます。今回は、Googleが開発した時系列データの基盤モデル「TimesFM」について掘り下げていきます。このモデルがどのように動作し、どのように実際のプロジェクトで活用できるかを、一緒に考えていきましょう。
Googleの時系列基盤モデル「TimesFM」を試す
概要
時系列データの処理は、従来はベイズモデリングや統計的手法が主流でしたが、Googleの「TimesFM」は、Transformerを基盤とした新しいアプローチを提案しています。このモデルは、膨大な実データと合成データを用いて事前学習されており、従来の手法に比べて柔軟性と汎用性を備えています。
本記事では、TimesFMの技術的な特徴、導入方法、そして擬似的な環境でのデモンストレーションを行い、その性能を詳しく解説します。
1. はじめに
時系列データの基盤モデルとは、テキストでいうGPTやBERTのような存在です。膨大なデータで事前学習を行い、特定のタスクに調整せずとも、高い予測能力を発揮するよう設計されています。
TimesFMは、特に以下の点で注目されています:
- 高汎用性:Google TrendsやWikipediaのページビューなど、多様なデータで学習済み。
- 効率性:モデルサイズは200Mと比較的軽量で、推論速度も実用的。
- 簡易性:Transformerのデコーダ部分のみを活用したシンプルな構造。
では、このTimesFMがどのようにして「使いやすさ」と「高性能」を両立しているのか、次のセクションで詳しく見ていきましょう。
2. TimesFMのアーキテクチャと設計
2.1 Patch化と長い出力パッチ
TimesFMは、時系列データを「パッチ」に分割して処理します。これは、テキストデータをトークン化するのと似たアプローチです。
メリット:
- 効率的なデータ処理:データを小さなチャンクに分けることで、計算量を抑えながら重要なパターンを捉えます。
- 柔軟な予測:出力パッチを入力パッチよりも長く設定することで、少ないステップで長期予測が可能になります。
例:
- 入力パッチ長:32、出力パッチ長:128と設定すると、予測ステップを4分の1に減らせます。
- この設定により、長期予測のパフォーマンスが向上することが実験で示されています。
Long-term Forecasting with TiDE: Time-series Dense Encoderより引用
2.2 Decoder Only構造の採用
TimesFMは、Encoder-Decoder構造ではなくDecoder Onlyを採用しています。これは、予測対象のみに集中することで効率化を図る手法です。
Decoder Only構造は、LLM(Large Language Models)で実績のあるアーキテクチャです。NLPにおいては、テキスト生成の効率化に寄与しましたが、時系列データでも同様の効果が確認されています。
2.3 合成データの活用
TimesFMは、以下のような合成データを活用しています:
- ARMAプロセス:ランダムな動きのモデリング。
- 季節パターン:正弦波や余弦波を用いた周期性の再現。
- トレンドとステップ関数:変化点を含む複雑な動きを再現。
ポイント:
実データと合成データを組み合わせることで、モデルの汎用性が飛躍的に向上します。特に、未観測の周波数やトレンドにも対応可能になります。
3. 環境構築とモデルの導入
3.1 Poetryを活用したセットアップ
以下は、TimesFMの導入に必要なPoetry設定例です。
# pyproject.tomlの設定
[tool.poetry.dependencies]
python = ">=3.10,<3.11"
timesfm = { git = "https://github.com/google-research/timesfm.git" }
jax = "^0.4.26"
numpy = "^1.26.4"
pandas = "^2.2.2"
matplotlib = "^3.8.0"
Poetryを活用することで、パッケージの依存関係を管理しやすくなります。Google Colabを使う場合も、仮想環境を構築することで柔軟な設定が可能です。
3.2 推論に向けた準備
以下は、モデルのロードと推論準備の例です。
import timesfm
import torch
# モデルのロード
tfm = timesfm.TimesFm(
context_len=512,
horizon_len=96,
input_patch_len=32,
output_patch_len=128,
num_layers=20,
model_dims=1280,
backend="gpu",
)
tfm.load_from_checkpoint(repo_id="google/timesfm-1.0-200m")
4. デモンストレーション:国内企業物価指数の予測
次のセクションでは、具体的なデータセットを使ってTimesFMの予測能力をデモンストレーションします。続きは次回の記事で詳細に解説していきます。
4.1 データ準備とフォーマット化
国内企業物価指数(前年比)の月次データを例に使用します。データセットは、日本銀行の時系列データ検索サイトからダウンロードできます。
データの加工:
時系列モデルに入力するには、データを以下のように整形します。
import pandas as pd
import torch
# データ読み込み
df = pd.read_csv("domestic_corporate_price_index.csv")
# 必要な列を抽出
df = df[["date", "yoy_index"]]
df["date"] = pd.to_datetime(df["date"])
df.set_index("date", inplace=True)
# 時系列データの分割
context_length = 512
forecast_horizon = 32
train_data = df.iloc[-(context_length + forecast_horizon):-forecast_horizon]
test_data = df.iloc[-forecast_horizon:]
# PyTorchテンソルに変換
train_tensor = torch.tensor(train_data["yoy_index"].values, dtype=torch.float).unsqueeze(0)
test_tensor = torch.tensor(test_data["yoy_index"].values, dtype=torch.float).unsqueeze(0)
- データのフォーマットは、モデルの要求に合わせて正規化する必要があります。
- 特に、長期予測を行う際には過去データを十分に確保することが重要です。
4.2 モデルによる推論
TimesFMを用いて、32か月先の物価指数を予測します。
# 推論の実行
frequency_input = [0] * train_tensor.size(1)
point_forecast, _ = tfm.forecast(
train_tensor, freq=frequency_input
)
# 推論結果をテンソルに変換
forecast_tensor = torch.tensor(point_forecast)
# データ可視化
import matplotlib.pyplot as plt
plt.figure(figsize=(12, 6))
# ヒストリーデータ
plt.plot(train_data.index, train_data["yoy_index"], label="History", color="blue")
# グラウンドトゥルース
plt.plot(test_data.index, test_data["yoy_index"], label="True", color="green", linestyle="--")
# モデル予測
forecast_index = pd.date_range(start=test_data.index[0], periods=forecast_horizon, freq="M")
plt.plot(forecast_index, forecast_tensor.numpy().flatten(), label="Forecast", color="red", linestyle="--")
plt.xlabel("Date")
plt.ylabel("YoY Index")
plt.title("Domestic Corporate Price Index Forecast")
plt.legend()
plt.show()
- 上記のコードは、Google ColabやGPU環境での動作を想定しています。
- TimesFMの柔軟性により、出力長や予測精度を用途に応じて調整可能です。
5. TimesFMの性能と他手法との比較
5.1 Monash、Darts、ETTでの評価
TimesFMは以下のデータセットで評価されています:
- Monash:18種類の実世界の時系列データ。
- Darts:多くのデータ科学者が利用するオープンソースデータ。
- ETT:長期予測のベンチマークデータ。
各データセットにおける平均絶対誤差(MAE)の比較結果は次の通りです:
- TimesFMは特に長期予測タスクで優れた性能を発揮。
- DartsではARIMAが僅かに優位な場合もありましたが、モデルの簡易性でTimesFMに軍配。
5.2 他手法との比較
以下は主要な競合手法との比較です:
- PatchTST:Transformerを活用したモデル。
- ARIMA:従来の統計的アプローチ。
結果のポイント:
- TimesFMはPatchTSTより高精度で、モデルサイズも効率的。
- ARIMAに比べて、設定や計算コストの点で優位。
データセットの粒度や特性によって、TimesFMの性能が変動することもあるため、適切なタスク選択が必要です。
6. 応用例と今後の展望
6.1 金融・広告業界での活用可能性
- 金融分野:株価や金利の予測に活用可能。特に、ゼロショットでの予測が可能なため、迅速な意思決定が求められる現場で有用。
- 広告業界:Google Trendsを活用したトレンド予測により、広告の配信タイミングや内容を最適化。
6.2 マルチモーダル対応への期待
TimesFMのアーキテクチャは、画像やテキストデータと組み合わせたマルチモーダル応用にも適しています。この特性を活かせば、以下のような応用が期待されます:
- 医療データ(画像+時系列データ)を用いた診断支援。
- スマートシティでの複数センサーからのデータ統合。
単一モードではなく複数のデータソースを扱うことで、モデルの有効性をさらに拡張できる可能性があります。
7. 考察とまとめ
GoogleのTimesFMは、シンプルながら非常にパワフルな時系列予測モデルです。その特性として以下が挙げられます:
- 軽量性:200Mというモデルサイズは、実用的な環境での利用を想定。
- 柔軟性:長いホライズンの予測にも対応。
- 多用途性:金融、広告、製造業など幅広い分野で活用可能。
一方で、以下のような課題も考えられます:
- モデルのFine-tuning機能が未提供。
- 特定のデータセットでは、競合手法に劣る場合もある。
これからTimesFMを活用しようとしている方にとって、本記事がその第一歩となれば幸いです。他の基盤モデルや手法との比較も追ってご紹介予定ですので、ぜひ次回の記事もお楽しみに!
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