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Gutenbergプラグイン開発のためのモダンJavaScript入門

Last updated at Posted at 2017-12-24

WordPress Advent Calendar 2017 23日目に空きが生じたようなので、埋め草を投下します。

本記事では、Gutenbergプラグインを開発するためにはどのような知識が必要か、概観することを目標にします。それぞれの技術については、解説記事がいくらでもあるので深掘りはしません。

本記事のターゲットは以下のような読者です。

  • WordPressプラグインを作ったことがある(または、作り方を知っている)
  • JavaScriptの基本的な知識がある
    • 変数定義にvarをつけないといけない理由がわかる
    • 現行のブラウザ(IE11含む)で動作するのはES5であることを知っている
    • ES2015(またはESNext)という仕様があることを知っている
    • React.js、Babel、webpackといったキーワードを聞いたことがある

GutenbergとモダンJavaScript

WordPressの新エディタであるGutenbergには、新しめのフロントエンド技術が使われています。

  • React.js
    • オプション:JSX
  • ESNext(ES2015+)
  • Babel
  • webpack

このうち、最低限理解する必要があるのはReact.jsで、他はオプションです。

しかし、ES5でのGutenbergプラグイン開発は、つらいと思います。簡単なブロック定義のコードを、ES5とESNext + JSXで見比べてみましょう。

// ES5
var registerBlockType = wp.blocks.registerBlockType;
var el = wp.element.createElement;

registerBlockType( 'sample/sample', {
	name: 'sample/sample',
	title: 'Sample',
	icon: 'universal-access-alt',
	category: 'common',
	edit: function() {
		return el(
			'div',
			{ className: 'container' },
			[
				el( 'h1', null, 'Header1' ),
				el( 'p', null, 'Paragraph' ),
			],
		);
	},
	save: function() {
		// 省略
	}
} );
// ESNext + JSX
const { registerBlockType } = wp.blocks;

registerBlockType( 'sample/sample', {
	name: 'sample/sample',
	title: 'Sample',
	icon: 'universal-access-alt',
	category: 'common',
	edit: () => {
		return (
			<div className="container">
				<h1>Header1</h1>
				<p>Paragraph</p>
			</div>
		);
	},
	save: () => {
		// 省略
	},
} );

注目してほしいのはedit関数です。この中では、wp.element.createElementメソッドを使っています。このメソッドはReact.jsのcreateElementメソッドのラッパーです。React.createElementは第1引数にHTML要素の名前、第2引数にclassやstyle等の属性(props)、第3引数に子要素の配列を取ります。

シンプルな要素の描画であればES5のような記法でも十分対応できますが、複雑なUIを実装する際は実装難易度が高くなり、メンテナンス性も低下する恐れがあります。React.createElementと等価で、より読みやすい記法が、下のサンプルで用いているJSXです。

また、グローバル変数を定義してしまうと、他のプラグインにも影響を与えてしまう恐れがあります(↑のES5のサンプルでは、registerBlockTypeelはグローバル変数になります)。このような問題を防ぐには、処理の全体を即時関数式で囲む、といったテクニックが必要になります。

郷に入っては郷に従えで、ESNext + JSXのようなモダンな開発環境を使った方が、Gutenbergプラグイン作成の際には効率的でしょう。

Gutenbergプラグインのプロジェクトテンプレート

最近、Gutenbergプラグインを作っては捨ててしていて面倒に感じてきたので、セットアップ済みのプロジェクトを作成しました。下記リポジトリからダウンロードできます。
https://github.com/ryo-utsunomiya/gutenberg-plugin-template

このプロジェクトでは、以下の環境をセットアップしています。

  • webpack + babel: JSX + ESNextのビルド
  • eslint: JavaScriptのコードスタイルチェック & 修正
  • PHP_CodeSniffer: PHPのコードスタイルチェック & 修正

ディレクトリとファイルの構成は以下のようになります(build, node_modules, vendorディレクトリは自動生成されるので、テンプレートには含まれません)。

.
├── .babelrc          # JSのビルド設定
├── .editorconfig     # エディタの設定(改行文字、文字コード等)の共通化用設定
├── .eslintignore     # JSのコーディングスタイルチェック対象から除外するファイルの設定
├── .eslintrc.json    # JSのコーディングスタイル設定
├── .gitignore        # git管理に含めないファイルの設定
├── README.md         # GitHub用のREADME
├── blocks            # Gutenbergのブロックを置く場所
├── build             # ビルド後のJSファイルの書き出し先
├── composer.json     # PHPライブラリの管理
├── composer.lock     # インストール済みPHPライブラリのバージョン管理
├── index.js          # JSアプリのエントリーポイント
├── index.php         # WordPressプラグインのエントリーポイント
├── node_modules      # JSライブラリの格納場所
├── package-lock.json # インストール済みJSライブラリのバージョンを管理(Node 8.x以上向け)
├── package.json      # JSライブラリの管理、ビルドスクリプトの記述
├── phpcs.xml         # PHPのコーディングスタイル設定
├── readme.txt        # WordPressプラグインとしてのreadme
├── vendor            # PHPライブラリの格納場所
├── webpack.config.js # JSのビルド設定
└── yarn.lock         # インストール済みJSライブラリのバージョンを管理(yarn向け)

この開発環境は、Gutenberg公式の開発環境にできるだけ揃える、という方針で構築しています。

たとえば、ビルド後のJSファイルの書き出し先は、Gutenbergではbuildディレクトリになっているため、それに倣っています。

ライブラリ管理: npmとyarn

JavaScriptライブラリの管理には、npmを使うのが一般的です。Node.jsをインストールするとついてくるので、JavaScriptエンジニアには馴染み深いツールといえるでしょう。package.jsonという設定ファイルにライブラリ名とバージョンを書いてnpm installコマンドを実行すれば、指定したライブラリをnode_modulesディレクトリにインストールしてくれます。

ちなみに、Gutenbergのテンプレートでは、以下のライブラリを指定しています。

{
  "dependencies": {},
  "devDependencies": {
    "babel-core": "^6.26.0",
    "babel-eslint": "^8.0.3",
    "babel-loader": "^7.1.2",
    "babel-plugin-transform-object-rest-spread": "^6.26.0",
    "babel-plugin-transform-react-jsx": "^6.24.1",
    "babel-plugin-transform-runtime": "^6.23.0",
    "babel-preset-env": "^1.6.1",
    "cross-env": "^5.1.3",
    "eslint": "^4.13.1",
    "eslint-config-wordpress": "^2.0.0",
    "eslint-plugin-jest": "^21.5.0",
    "eslint-plugin-jsx-a11y": "^6.0.3",
    "eslint-plugin-react": "^7.5.1",
    "webpack": "^3.10.0"
  },
}

dependenciesはアプリケーションとして動作するのに必要なライブラリ、devDependenciesは開発時にのみ必要なライブラリです。GutenbergのAPIは、グローバルに定義されているwpオブジェクトからアクセスできます。また、React、jQuery、moment.js、lodash、TinyMCEといったGutenberg自身が使用しているライブラリは、グローバルに露出しています。そのため、簡単なUIを作るだけならdependenciesは空でOKです。devDependenciesには、ビルドとコードスタイルチェック用のライブラリを指定しています。

package.jsonにはライブラリの管理の他に、もう一つ役割があります。それが簡単なスクリプトの定義です。Gutenbergテンプレートでは以下のコマンドを定義しています(testは未実装)。

{
  "scripts": {
    "build": "cross-env BABEL_ENV=default NODE_ENV=production webpack",
    "dev": "cross-env BABEL_ENV=default webpack --watch",
    "lint": "eslint .",
    "test": "echo \"Error: no test specified\" && exit 1"
  },
}

ここで定義したbuildスクリプトは、npm run buildというコマンドで呼び出せます。開発時に頻繁に呼び出すコマンドはpackage.jsonに書いておくと便利です。

Babelによるトランスパイル

ES5 => ESNextのように、同じJavaScript言語の範囲内で変換を行うことをトランスパイルと呼びます。BabelはJavaScriptのトランスパイラで、ESNext => ES5の変換によく用いられます。また、Babelはプラグイン機構を有しており、JSXを通常のJavaScriptに変換するプラグインが存在します。

Babelを使うと、以下のような変換を行えます。

// ESNext + JSX
const hw = <h1>Hello World</h1>;
// ES5
var hw = wp.element.createElement("h1", null, "Hello World");

const => var はES5 => ESNext、<h1>Hello World</h1> => wp.element.createElement("h1", null, "Hello World")はJSX => JavaScriptの変換です。

Babelのビルド設定は.babelrcというファイルにJSON形式で記述します。Gutenbergライブラリとして最小限の設定は以下のようになります。

{
  "presets": [
    [
      "env",
      {
        "modules": false
      }
    ]
  ],
  "plugins": [
    [
      "transform-react-jsx",
      {
        "pragma": "wp.element.createElement"
      }
    ]
  ]
}

Babelにはpresetと呼ばれる「プラグインのセット」が存在します。その中で、JavaScriptのバージョンアップに合わせて内容が更新されるのがbabel-preset-envです。古い記事だとbabel-preset-es2015を使ってたりしますが、どうせESNextを使うならその時々の最新バージョン(=env)を使った方が良いです。

"modules": false はBabelによるモジュール機構のトランスパイルを無効化します。これは、import 'react';require('react')に変換するようなトランスパイルのことです。Node.jsで動作させるコードをトランスパイルする際に使用しますが、この開発環境では不要です(モジュールローダーは後述するwebpackが担います)。

また、"transform-react-jsx"の設定で、"pragma": "wp.element.createElement"を設定しています。JSX => JavaScriptのトランスパイルはデフォルトではReact.createElementを使いますが、pragmaの設定を行うことでGutenbergのcreateElementメソッドを使うようにしています。

webpackによるバンドルとモジュール

webpackを使うことで、以下のような仕組みが実現できます。

  • トランスパイル後のJSをひとまとめにする
  • ESNextのモジュール機構を使えるようにする

ソースコードをひとまとめにすることを「バンドル」と呼び、パフォーマンス上の恩恵が得られる等のメリットがあります。

それ以上に重要なのが、webpackを使うことでブラウザでもモジュール機構が実現できることです。ブラウザにおけるモジュール機構はChrome等の最新版でもまだ実装完了していない機能ですが、webpackはソースをひとまとめにするため、依存関係の解決もwebpackのレイヤーで行うことができます。

大規模なプロジェクトではwebpackの設定は複雑化していく傾向にあり、実際Gutenbergのwebpack.config.jsはかなり複雑です。

しかし、最小限のwebpack.config.jsはそれほど複雑ではありません。

webpack.config.js
module.exports = {
	entry: './index.js',
	output: {
		path: __dirname,
		filename: 'build/index.js',
	},
	module: {
		loaders: [
			{
				test: /.jsx?$/,
				loader: 'babel-loader',
				exclude: /node_modules/,
			},
		],
	},
};

ビルドの起点となるファイル(entry)と出力先(output)、そして使用するローダーを指定するだけです(webpackでは、JavaScriptソースコードの変換を行うプラグインのことをローダーと呼びます)。

"loaders"では、/.jsx?$/という正規表現にマッチするファイル名のファイルに対してbabel-loaderというwebpack向けのBabelプラグインで処理を行う設定を行っています。注意が必要なのはnode_modulesを除外することくらいでしょうか。

ESLint

コーディングスタイルを統一しておくと、長期的にコードの品質が保ちやすくなります。

コーディング規約は何でも良いですが、Gutenbergと揃えておくのが無難かなと思います。しかし、GutenbergのJavaScriptコーディング規約は、WordPress本体がそうであるように、スペースの空け方などが独特です。自分で覚えるのは大変なので、プログラムの助けを借りましょう。

Gutenbergはコードスタイルのチェックと修正にESLintというライブラリを使っています。

これを使うと、以下のようなコードのコーディングスタイル違反をすぐに検知できます。

registerBlockType = wp.blocks.registerBlockType;

registerBlockType('sample/sample', {
	title: 'Sample',
});

このコードに対してnpm run lintコマンドでチェックを行うと、以下のようにエラーが表示されます。

  1:1   error  'registerBlockType' is not defined       no-undef
  3:1   error  'registerBlockType' is not defined       no-undef
  3:18  error  There must be a space inside this paren  space-in-parens
  5:2   error  There must be a space inside this paren  space-in-parens

✖ 4 problems (4 errors, 0 warnings)
  2 errors, 0 warnings potentially fixable with the `--fix` option.

内容としては、(1) registerBlockTypeが未定義である (2) スペースの空け方がダメ の2点です。このうち、スペースの方はnpm run lint -- --fixコマンドを使うと自動的に修正できます。未定義変数の方は機械的には直せないので、constをつけてローカル変数にしましょう。

const registerBlockType = wp.blocks.registerBlockType;

registerBlockType( 'sample/sample', {
	title: 'Sample',
} );

これでGutenbergプロジェクトのコーディング規約に則したコードになりました。

Block Typeの定義

ここまで開発環境がどうなっているか解説しました。ここまでを理解していれば、Gutenbergテンプレートで開発を始めることができるでしょう。最後に、複数のブロックを含む場合の書き方のパターンの提案をします。

具体的に言うと、ブロックの定義は各ファイルに分割しておき、index.jsでプラグインのブロックをまとめてregisterBlockTypeするのがおすすめです(Gutenberg本体もこのようなスタイルです。)。

以下のように、ブロックの定義は単一ファイルで完結させます。

blocks/sample.js
export default {
	name: 'sample/sample',
	title: 'Sample',
	icon: 'universal-access-alt',
	category: 'common',
	edit: () => <h1>Edit mode</h1>,
	save: () => <h1>Saved content</h1>,
};

index.jsでは、ブロックの登録を行うだけで、それ以外のことはしません。

index.js
import Sample from './blocks/sample.js';

const { registerBlockType } = wp.blocks;

registerBlockType( Sample.name, Sample );

このようにしておくと、ブロックの数が増えたり、複雑な機能を持ったブロックを開発する際にも、メンテナンス性を保つことができます。

まとめ

Gutenbergプラグインには、従来のWordPress開発にはない様々な技術が必要になります。変化をチャンスだと捉えて、色々とチャレンジしていきたいと思います。

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