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メモリ 4GB + CeleronのPCを「スペックが不十分」と判断するのは案外難しいかもしれない

3月末、アイリスオーヤマ社のノートPCや「GIGAスクール構想」の仕様書が話題になっていました。その多くが「動作に支障をきたすほどスペックが低いのではないか」という批判的なものです。

筆者もこういったPCが「ローエンド」であり、「快適ではない」ことに異論はありません。自分自身や家族のためにPCを購入するなら、より良いスペックのPCを選定します。

しかし、そもそもPCに詳しくないユーザ あるいは スペック選定にあたり明文化された根拠が必要な事業者・行政 にとって、ドキュメント上からそれを判断できるのか疑問に感じたので少し確認してみました。

TL;DR

(追記)

  • GIGAスクール構想などで示されるPCは確かにローエンドである。
  • しかし、主要アプリケーションの「性能要件」を、書類上は十分に満たしてしまっている。
  • それゆえ、PCの経験が浅い人などがローエンドPCを「これで十分」として選定してしまう状況は安易に責められないのでは。
  • ローエンドPCが跋扈する状況を改善すべきと考えるなら、IT業界がすべきことがあるかもしれない。

問題となったPCのスペック

LUCA Note PC

アイリスオーヤマ社が2021年3月に発売した端末です。この議論の発端ともいえるでしょう。
主要なスペック部分の抜粋は以下の通りです。

パーツ スペック
CPU Intel Celeron Nシリーズ (Gemini Lake, 1.1GHz, quad-core)
RAM 4GB
ストレージ 64GB eMMC

GIGAスクール構想 標準仕様

この「LUCA Note PC」が準拠していると考えられるのが、文部科学省による「GIGAスクール構想」です。
主要なスペックの部分だけ抜粋します。全文は仕様書からご覧ください。

パーツ スペック
CPU Celeron同等以上、2016年8月以降に製品化されたもの
RAM 4GB以上
ストレージ 64GB以上
その他 コンバーチブルかデタッチャブルであること。重量やバッテリ利用可能時間、LTE利用可能などの規定あり。

個人的には、その他の要件を満たすためにコスパが悪くなっている節があるのではないかと推測しています。

また、このスペックに準拠した各社のPCはマイクロソフトのサイトで紹介されています。いくつか見る限り、CPUは Celeron N4020 や N4120 が多く採用されているようです。

主要アプリケーション等のシステム要件を見る

エンジニアたるもの公式ドキュメントを読みに行くべきだろう、ということで各種アプリケーションが公式に発表しているシステム要件を見てみます。

これらは2021年4月時点における最新バージョンに関するものです。
各要件において、OSに関しては Windows 10 を使うであろうということで項目から除外しています。

Windows 10

Source: Windows 10 コンピュータの仕様とシステム要件を見つける方法

パーツ スペック
CPU 1 GHz 以上の CPU あるいは SoC
RAM 1GB 以上(32bit) / 2GB 以上(64bit)
ストレージ空き容量 16GB 以上(32bit) / 32GB 以上(64bit)

思っていたより低めです。おそらく、ソフトウェアエンジニアやパワーユーザが想定する最低ラインとかなり乖離があるのではないでしょうか。
GIGAスクール構想のPCも要件は満たしています。

Office 2019

Source: Microsoft 365 and Office Resources

パーツ スペック
CPU 1.6 GHz 以上の デュアルコア CPU
RAM 2GB 以上(32bit) / 4GB 以上(64bit)
ストレージ空き容量 4GB 以上

例としてCeleron N4020の場合考えてみると。CPUのベース動作周波数は 1.1GHZ で下回っていますが、バースト周波数(TB)が 2.8GHz であり、十分と考えることもできるでしょう。
概ね、GIGAスクール構想のPCで要件を満たしていると解釈できるでしょう。

一太郎2021

Source: 製品情報

パーツ スペック
CPU 1 GHz 以上
RAM 1GB 以上
ストレージ空き容量 3.9GB 以上(別途.NET Framework 4.6.2 が必要。3.2GB使用。)

主要アプリケーションではない気がしますが、官公庁などで使用されるイメージがあるので一応確認してみました。
要件が低めに設定されており、現在販売されているパソコンでこれを満たさないものはほとんどないでしょう。

Google Chrome

Source: Chrome ブラウザのシステム要件

パーツ スペック
CPU Intel Pentium 4 以降(SSE3 対応)
RAM 記載なし
ストレージ空き容量 記載なし

RAMを食うというイメージのあるChrome/Chromiumですが、公式の要件にはRAM容量の記載がありませんでした。

Firefox

Source: Firefox System Requirements Firefox 87.0

パーツ スペック
CPU Intel Pentium 4 以降のプロセッサ(SSE2 対応)
RAM 512MB (32bit) / 2GB (64bit)
ストレージ空き容量 200MB 以上

ChromeでRAM容量が確認できなかったので、Firefoxも確認してみました。
要件が低めに設定されており、現在販売されているパソコンでこれを満たさないものはほとんどないでしょう。

Zoom

Source: Windows、macOS、およびLinuxのシステム要件

パーツ スペック(最低) スペック(推奨)
CPU 1GHz以上(シングルコア) 2GHz 以上(デュアルコア
RAM 記載なし 4GB以上
ストレージ空き容量 記載なし 記載なし

メモリ4GBのPCでもドキュメント上は推奨を満たしているという扱いです。

(参考)Blender

Source: Hardware Requirements

パーツ スペック(最低) スペック(推奨) スペック(最適)
CPU 64bit, 2GHz以上(SSE2対応) 64bit クアッドコア以上 64bit 8コア以上
RAM 4GB 以上 16GB 以上 32GB 以上
GPU 1GB 以上のVRAM、OpenGL3.3 に対応 4GB 以上のVRAM 12GB 以上のVRAM

GIGAスクール構想のPCで使用するものではないと思いますが、比較的高い要求がありそうなアプリケーションということで参考程度に。
「推奨」以上に関してはある程度は実感と合っていると思いますが、「最低」の要件は案外低めですね。

経験がないと判断できないのでは……?

上記のシステム要件からわかる通り、「一般的な用途」とされる範囲であれば、GIGAスクール構想のローエンドPCも案外普通にクリアしています。ドキュメント上の数値から判断すれば、要求の2~4倍程度の余裕を持っている場合さえあります。

もちろん、複数アプリケーションの同時起動などを考えれば更に余裕を持つべきですし、エンジニアやパワーユーザの実感からすると「メモリ4GB+Celeronは快適ではない」は自明です。
しかし、そもそもPCを重要視していないライトユーザ、あるいは予算の根拠を示す必要がある事業者などに、公式ドキュメントを超えた「経験則」に基づく判断を求めるのは酷なのではという気がしています。
(ここに関してはかなりギリギリな「最低スペック」を示しているソフトウェアベンダーの責務かもしれません。)

ここでPC以外のケースを考えてみましょう。
白物家電、例えば洗濯機や冷蔵庫を購入するとき、家電量販店で高性能モデルを勧められても「そこまで機能は要らないよ、最低限のものでよい」となる人は多いのではないでしょうか。そこで、高性能家電を買うユーザから「性能を上げないのは愚か」のように言われても、大半の方は「別にこれで不便に感じたことはないし……」「そこまで要らないし……」となると思います。
PCも「こだわりがない」層からすると、同じなのではと推測しています。

もちろん、筆者はローエンドPCが(特に企業や教育分野で)跋扈する状況を追認するわけではありません。予算などが許す範囲でどんどん是正されるべきと思っています。

そういったPCを買うライトユーザを見て「情報弱者だ」と嘲笑うのは簡単かもしれませんが、果たしてそれでよいのだろうかという疑問を抱いています。
昨今はデジタル化、DXなどが声高に叫ばれています。それらの実効性・進捗はともかくとして、ICTに関する知識がますます重要になっていくことは世界中の誰もが認識しているはずです。"noblesse oblige"とはちょっと異なるかもしれませんが、ITに関する知識を持つユーザが、その責務として何らかの発信をすることも必要になってくるのかもしれません。

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