不特定多数が操作する業務システム的なものを構築することになったので、自分へのルールとして UX/UI について色々再整理しているところです。
不特定多数が利用するものの最たる例といえば公共交通機関。
良い UI も悪い UI も沢山存在していますし、画面"外"で起きる UX についても想起しやすく、UI/UX について考える題材として適切だと思います。
東急 大井町線から学ぶ失敗例
東急電鉄に田園都市線と大井町線という路線があります。大井町線の一部の列車は田園都市線に乗り入れています。
以下の路線図において 緑色■ で示されている路線が田園都市線、オレンジ色■ で示されている路線が大井町線です。
画像の出典:東急電鉄公式サイト
現状の説明
問題点を示す前に、この路線特有の状況を説明します。
2種類ある「各駅停車」
この大井町線には「各駅停車」が2種類あります。緑 と 青 で色分けされています。
緑の各駅停車は高津駅・二子新地駅を通過し、青の各駅停車は全駅に停車する、という風にアナウンスされています。
やや複雑な運行形態
大井町線の列車が田園都市線に一部乗り入れる形を取っているために少しややこしい事態が起きています。
溝の口~二子玉川駅の路線図だけに注目してもらえば大丈夫です。拡大してみました。大井町線には高津・二子新地の駅が描かれていませんね。
具体的に線路の様子を見てみるともう少し分かりやすくなります。
大井町線の線路も高津・二子新地を通っていることには通っているのですが、そもそもホームがないわけです。
つまり、「高津・二子新地に停車しない列車は大井町線の線路を走る」「高津・二子新地に停車する列車は、田園都市線の線路を走る」ということになります。
問題点:不必要な詳細情報というノイズ
やっと本題ですが、2種類の普通列車が存在することは利用者にとって重要です。
そのため、行先表示や発車案内表示、時刻表では色分けが行われています。
(下の写真は大井町線・自由が丘駅(溝の口方面)での表示)
しかし、この区別は全区間で必要なのでしょうか?
もしあなたが溝の口駅以外から大井町方面の列車に乗るとすれば、その列車はすでに高津・二子新地を通過しています。それらの駅に停車したかどうかはさほど重要な情報ではありません。
実際、案内表示でも全く同じ解説が書いてあります。
(下の写真は大井町線・自由が丘駅(大井町方面)での表示)
むしろ、初見であれば「なんか区別されているけれどどう違うか分からない」というノイズになるでしょう。
りんかい線から学ぶ成功事例
東京の臨海部にある、コミケの時に話題になるあの路線です。
以下の路線図において「りんかい線」と示されている部分です。JRの埼京線・川越線と相互乗り入れしています。
画像の出典:東京臨海高速鉄道りんかい線公式サイト
直通先の埼京線内では快速・通勤快速となる列車もりんかい線内では全駅に停車します。
不必要な情報を削った表示
りんかい線内にある国際展示場駅における表示です。
黄色の四角で囲った部分をご覧ください。埼京線に直通する大崎方面には種別が表示され、どの列車に乗ろうとも各駅に停まる新木場方面では種別が省かれているのがわかると思います。
アプリケーション開発において学ぶべき点
どの情報をユーザに見せるか取捨選択する
情報が多く表示されている方が開発者としては安心しますし、安心するしない以前の問題として開発中はなるべく多くの情報を確認すべきものでしょう。
しかし、その情報はユーザにとっても必要なのでしょうか?「ユーザが知っていても問題ないから」という理由でとりあえず見せておく、というのは逆効果になりそうです。
今回の例から学べることは
- 内部処理的には別モノであっても、ユーザから見て同じなら同一のものとして扱う。
- そもそもユーザが知らなくていい情報もある。公開できる(機密ではない)からといって見せる必要はない。
- Webサービスなら、詳細な情報はAPIのみで提供すればよさそう。
- 過度な情報提供は混乱を招く。何事もシンプルに。
- とはいえシンプルすぎると情報不足になる。バランスが難しいところなので、初見の人やそのアプリケーションに詳しくない人にレビューしてもらうなどして、最適解を見つけていくべき。