はじめに
今年(2025年)4月受験したネットワークスペシャリスト試験(以下ネスぺ)に合格したので勉強方法などを振り返りたいと思います。
受験の動機
普段はAWSを使ったシステム開発をしていますが、ルーティングプロトコルなど基礎的なネットワークの知識が必要であると感じるようになりました。単なる用語だけではなく、ネットワークの根本的な仕組みなどを体系的に理解するためにネスぺの受験を決意しました。
試験の概要
年に1回、4月に実施されています。合格率はおおよそ15%前後です。
過去には10月に実施された時期もあったようです。
試験科目 | 試験時間 | 出題形式 | 出題数/解答数 | 合格ライン(%) |
---|---|---|---|---|
午前Ⅰ | 50分 | 多肢選択式(四肢択一) | 30問/30問 | 60% |
午前Ⅱ | 40分 | 多肢選択式(四肢択一) | 25問/25問 | 60% |
午後Ⅰ | 90分 | 記述式 | 3問/2問 | 60% |
午後Ⅱ | 120分 | 記述式 | 2問/1問 | 60% |
午前Ⅰ/午前Ⅱ/午後Ⅰ/午後Ⅱがありますが、条件を満たせば午前Ⅰ試験が免除になります。免除となるのは条件を満たしてから2年以内となります。
午前Ⅰ免除の条件
- 応用情報技術者試験(AP)に合格
- 情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験のいずれかに合格
- 情報処理技術者試験の高度試験、情報処理安全確保支援士試験の午前Ⅰ試験で基準点以上の成績をとる
ネスぺ自体に受験条件はありませんが、午前Ⅰの対策を不要にするため、APや高度試験に合格しておくと良いと思います。
どんな知識や技能が要求されるかは下記シラバスを参照ください。
学習時間
私自身、応用情報(AP)や情報処理安全確保支援士(SC)を取得済みであり、基本的なIT知識はあったものの、ネットワーク関連では特にルーティングプロトコルや物理層(L1)、データリンク層(L2)あたりはかなりあやふやな状況でした。これらの分野を意識しつつ、試験の3~4ヶ月前から少しずつ対策をしていました。
時間としては、基本的に平日は30分~1時間、休日は2時間程度やっていたと思います。(合計150時間程度)
勉強時間については各々のバックグラウンドによって大きく変わると思いますので、あくまで参考値としてご理解ください。また、仕事や家庭の状況によって確保できる勉強時間が異なります。1日に勉強する時間がなかなか確保できない場合は、勉強期間を長めに取ったり、後述するように隙間時間をうまく活用する必要があります。
学習方法
午前Ⅰは免除されていたのでそれ以外の科目について紹介します。
午前Ⅱ
午前試験は大半が過去問から出題されているため、こちらのサイトを利用して対策していました。スマホからも利用できるので、通勤時間中などの隙間時間は午前対策をメインにやっていました。なお、解説を読むためにはメンバーシップ登録(月額490円)が必要になります。
網羅度は100%になるまでやりました。(令和7年分が追加されたので画像は100%になっていません。)
午後Ⅰ & 午後Ⅱ
午後対策については何冊か利用しました。
まずは言わずと知れた「ネスぺ」シリーズ。本文中にも記載がありますが、4年分を3回繰り返しやりました。試験1ヶ月ほど前になって物足りなさを感じたため、追加で1年分購入して対策しました。
試験2ヶ月前くらいに、こちらの書籍も発売されたのでざっと読んでみました。「ネスぺ」シリーズで対策していれば特別こちらは不要かもしれませんが、過去問で出ていない分野の対策もできますので必要に応じて利用すると良いかもしれません。
その他
教科書系
教科書としてはこれらの書籍を利用してました。教科書は他にも数多く出版されていますので、自身に合ったものを選ぶと良いです。おすすめは「ネスぺ」シリーズでもお馴染みの左門さんの教科書です。
インプレスの本は分厚いということもあり、教科書というよりは辞書代わりに使っていました。
ワーク系
こちらも同じく左門さんシリーズ。実際に書きながら知識を蓄えていくことができました。教科書や過去問だけでは不安・物足りないと感じる場合にはおすすめです。
副読本
元々持っていた本ではありますが、改めて読んだ本です。名著ですので、ネスぺ関係なく一度読むとネットワークに対する解像度が上がると思います。人によっては難しいと感じるかもしれません。
試験時の得意・苦手分野
全体的に対策はしましたが、ある程度「この分野が出たら選ぶ/選ばない」を決めていました。以下が大まかな分野です。
得意分野
- DNS周り
昔サーバ証明書関連でDNSの勉強をしていたこともあり、今では好きな技術です。 - クラウド関係
クラウドは専門ということもあり、ここが出たらラッキーだなと思ってました。 - HTTP関連
HTTP/2を実務で使ったことがあったので得意でした。そろそろHTTP/3が出そうかなと思って、概要だけは追加でチェックしてました。
苦手分野
- マルチキャスト
どうしてもIGMPやPIMといったプロトコルが自分の中で整理しきれず、問題で出たら回避する方針でした。
当日
会場は以前情報処理安全確保支援士試験を受けた会場と同じでした。試験に集中したかったのでコンビニでラムネを買って行きました。
午前Ⅱ
過去問で対策済みだったので困ることはなかったです。強いて言えば初見の問題が少し難しかったと感じました。初見の問題でも消去法で選択肢を選ぶことで何問かは正解していました。
午後Ⅰ
「ルータの更改」「ネットワークの改善」「セキュアWebゲートウェイの導入」の3問でした。ざっと問題を確認し、問2の「ネットワークの改善」は真っ先に解くことを決め、もう1問は問3の「セキュアWebゲートウェイの導入」を選択しました。元々ルーティングプロトコル系が出たら回避しようと思っていました。もちろん対策はしていましたが、選択の優先度は低くしていました。
午後Ⅱ
「IPv6」と「IoT」が出題されました。どちらもネスぺではいつか出るとずっと言われていた分野です。実はIoTシステム技術検定[中級]という資格も持っており、IoTに関する基礎知識はありましたので苦手意識はありませんでした。IPv6は若干苦手意識もありましたので迷わずに問2の「IoT」を選びました。
試験後の所感としては全体的には難易度は優しめに感じました。午後ⅡについてはIPv6、IoTどちらも分からないといった人もいましたが、基本的なネットワーク知識を持っていれば比較的解きやすい問題であったと思います。事実、午後Ⅱは2時間の試験ですが、1時間くらいで退席する人も多かったです。
特にIoTの問題ではCoAPというIoTでよく使われるプロトコルが出てきましたが、読み進めるとHTTPのようなプロトコルであると分かります。HTTPはネスぺを受ける上では必須級に押さえておく分野ではありますので、意外と簡単だったと感じる人も多かった印象です。
ただ、IPA試験特有の国語問題と感じる設問も多い印象でしたので、やはり過去問による対策は必要かなと思いました。
午後Ⅱ問2の設問4は記述問題ラッシュでした。
(1) 本文中の下線⑥について、測定データの送信をランダムの時間控えること
による効果を、35字以内で答えよ。
(2) 本文中の下線⑦について、スリープ状態になることによる効果を、25字以
内で答えよ。
(3) 本文中の下線⑧について、HTTP バージョン 1.1を利用した場合、やり取りするIP パケットの数が多くなる理由を、35字以内で答えよ。
(4) 本文中の下線⑨について、DTLSを利用しなくてもセキュリティが確保され
ると判断した理由を、30字以内で答えよ。
(5) 本文中の下線⑩について、時刻の誤差によって発生する問題を、30字以内で答えよ。
(6) 本文中の下線11について、時刻の誤差を抑えるために考えられる、CoAP 通信を利用した処理の内容を、40字以内で答えよ。
結果
無事合格!大体7割くらいの感覚でしたので、概ね予想通りの結果でした。
余談ですが今回午後Ⅱ試験ではいわゆる、かさ下げ・逆下駄(合格率が高くなりすぎないように採点を厳しくする)があったのではないかという声もあります。今回の得点分布を見るといつもは数名~10数名いる「90~100点」の人が1人もいなかったことは事実ですが、設問ごとの採点結果が公開されない以上、真偽の確かめようがないものです。簡単と感じる問題ほど丁寧に解答し、逆に難しいと感じる問題でも可能な限り良い解答をすることで部分点を確保していくことが大事であると思います。
【参考】統計情報 得点(評価ランク)分布(2025年ネスぺ)
合格のポイント
- 隙間時間を利用して午前対策
- 午後の過去問題は「書いて」解いてみる
- 繰り返し、継続して勉強に取り組む
- 最悪、苦手な分野は諦める
感想
年1回しかない試験のため、プレッシャーもありましたが時間をかけた分得られたものを多かったです。本試験を通してネットワークに対する解像度が高くなりました。これまで受けた試験の中ではトップクラスでスキルアップになったと感じます。
次の試験を受けたい、という方に向けて本記事が参考になれば幸いです。