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あなたのチームが Snowflake、Amazon Redshift、Google BigQuery のようなプラットフォームを使って大量の履歴データを管理しているのであれば、データエンジニアリングの世界で起きている変化に気付いているかもしれません。現在、オープン性、相互運用性、コスト効率 を重視した新しい世代のデータ基盤が形成されつつあります。そしてその中心にあるのが Apache Iceberg です。
Iceberg は静かに モダンデータレイクハウスの基盤 となりつつあります。多くのエンジニアリングチームが、クラウドストレージ(Amazon S3、Google Cloud Storage、Azure Data Lake Storage など)上で分析データを保存・管理するために Iceberg を採用し、クローズドなシステムの制約から解放され始めています。
もしあなたのチームがこの流れに乗るべきか悩んでいるなら、このガイドは上司との会話の組み立て方を助けてくれるはずです。
Apache Icebergを導入するべき理由
まずは基本から説明しましょう。Apache Iceberg は、S3 や GCS のようなクラウドオブジェクトストレージ上で、高パフォーマンスかつペタバイト級の分析を可能にするオープンなテーブルフォーマットです。従来、テーブルフォーマットはバックエンドチームだけが気にするものでした。
しかし、それはもはや過去の話です。
Iceberg の選定は単なる技術的判断ではなく、戦略的判断 でもあります。それはエンジニアリングチームだけでなく、組織全体に影響を及ぼします。その理由を以下に示します。
ベンダーロックインがない
Iceberg は ストレージとコンピュートを分離 します。つまり、データが特定の独自システムに閉じ込められることはありません。データは Apache Parquet のようなオープンなファイルフォーマットに保存され、Apache Iceberg によって管理されるオープンでベンダー中立的なメタデータレイヤーによって制御されます。
今日 Snowflake を使っていて、明日 Trino に切り替えたい?小規模なタスクに DuckDB のような無償ツールを試したい?Iceberg はすべてをサポートします。
過去には、プラットフォームの移行は大掛かりなエンジニアリング作業を伴うものでした。データの複製や再処理、長期的なロックインが避けられませんでした。Iceberg を使えば、コンピュートエンジンの切り替えは構成の変更だけで済み、何ヶ月もかかる移行プロジェクトは不要 になります。
これは、クラウドコストが増加し、ワークロードが多様化する今、企業にとって非常に重要な 戦略的柔軟性 を意味します。
コンピュートエンジンの自由な組み合わせ
異なるワークロードには異なるツールが必要です。
- アナリティクスチームは、BIツールとの統合性が高い Snowflake を好むかもしれません。
- データサイエンティストは、DuckDB や Spark を用いた Python ノートブックを使いたいかもしれません。
- リアルタイムパイプラインは、RisingWave や Apache Kafka を必要とすることもあります。
Iceberg は、複数のエンジンから同一のテーブルへの読み書き を可能にし、完全なアイソレーションとトランザクション保証を提供します。ユースケースごとに最適なツールを導入しても、データの重複は発生しません。
たとえば、あるユーザーは依然として Snowflake 上で主要なダッシュボードを運用していますが、DuckDB を使って過去データのスナップショットを軽量分析 しています。これにより、時間とコストの両方が節約でき、DuckDB はインフラのオーバーヘッドなしでローカルで実行できます。
Iceberg はお気に入りのエンジンを置き換えるものではなく、それらの能力を拡張するもの なのです。
強力な言語間の相互運用性
従来のデータウェアハウスでは、通常使用できるのは SQL に限られています。これはダッシュボード用途には問題ありませんが、機械学習やデータサイエンス のワークフローには不向きです。これらの分野では Python や pandas のようなツールが重視されます。
Iceberg はこの問題を解決します。同じデータセットに対して 複数の言語からアクセス することが可能です。分析エンジニアは Trino や Spark SQL を使って Iceberg をクエリできますし、機械学習エンジニアは Python ライブラリを用いて同じテーブルを Jupyter Notebook 内で利用できます。
これにより、チーム間の摩擦が減り、壊れやすいデータエクスポートや複製の必要もなくなります。どの言語やツールを使っていても、すべてのメンバーが必要なデータへ一貫した統制下のアクセスを得られるのです。
既に Iceberg を導入しているチームのタイプとは?
私たちは Iceberg 導入の旅路において、数多くの組織と協力してきました。大半のチームは、以下の4つのカテゴリのいずれかに該当します。
1. コスト削減を目指す Snowflake ユーザー
最も一般的な動機の一つがこれです。Snowflake は強力なプラットフォームですが、特に長期保存データやコールドデータへの頻繁なクエリがある場合、コストが急増する可能性があります。
こうしたチームの中には、コールド・履歴データを Iceberg テーブルに移行し、クラウドストレージに保存。そのうえで DuckDB や Trino を使って低コストでクエリ するようになった例もあります。これは Snowflake を完全に置き換えるものではなく、むしろ補完する形で利用し、使用量を抑えて予算達成を支援します。
大企業の場合、Iceberg の導入は 戦略的な交渉材料 にもなります。契約更改のタイミングで「Iceberg に移行する選択肢がある」と言えることで、契約交渉時の強みとなるのです。
2. Hive ユーザーによるモダナイゼーション
Hadoop 時代に Apache Hive 上にデータレイクを構築してきた組織は、今まさに重要な判断を迫られています。Hive はもはや古く、遅くて柔軟性に欠け、管理も困難です。そこで Iceberg が滑らかな移行パスを提供します。
Iceberg を選ぶ理由:
- ACIDトランザクション により、壊れやすいジョブのオーケストレーションが不要に
- タイムトラベル とバージョン管理による高度な監査とデバッグ
- スキーマ進化 によりダウンタイムなしでデータモデルを変更可能
- GDPR対応 がトランザクション削除で容易に
Hive を終了し、モダンでクラウドネイティブなアーキテクチャへ移行したいチームにとって、Iceberg は自然な後継技術です。
3. ゼロからプラットフォームを構築する企業
一部の企業は、既存の仕組みからの移行ではなく、完全に新しいものを構築 しています。こうした先進的なチームは、データ戦略のために 将来性がありオープンな基盤 を求めています。
他のワークロードで Snowflake や Redshift、BigQuery を使っている場合でも、次世代プラットフォームには Iceberg を選びます。その理由は次の通りです:
- ストレージに対する完全なコントロール
- 複数のコンピュートレイヤーとの容易な統合
- 将来的にすべてを書き換えることなくスケーリング可能な自由
これらの企業は、データメッシュアーキテクチャ、リアルタイムパイプライン、マルチクラウド戦略 に投資しており、Iceberg のオープン性が大きなメリットとなるのです。
4. Icebergを初のデータウェアハウスとして選ぶスタートアップ
小規模なチームであっても、すでにこの流れに乗り始めています。
スタートアップはしばしば困難な選択に直面します。SnowflakeのようなDWHに多額の投資をするか、それともS3とSQLエンジンを組み合わせて自前でシステムを構築するか。Iceberg はその中間の道を提供します — モダンでスケーラブル、かつオープンソースとクラウドのエコシステムから支援を受けられるフォーマットです。
これらのスタートアップは:
- Iceberg テーブルへのシンプルな取り込みパイプラインから開始し
- 分析には DuckDB や Trino を使用
- データ量の増加に応じて Spark にスケール
- 初期段階からベンダーロックインを回避
その結果、スリムかつ柔軟なアーキテクチャ が構築され、ビジネスの成長に応じてスケール可能。しかも高額なコストは発生しません。
上司に Iceberg を提案する方法
あなた自身は Iceberg に納得しているとしても、チームや上司をどうやって説得すればよいのでしょうか?
その鍵は、彼らが重視する成果に沿って説明することです:
-
CFO(最高財務責任者)向け:
「コールドデータをS3に移動し、DuckDBやTrinoでクエリすることでSnowflakeのコストを削減できます」 -
CTO(最高技術責任者)向け:
「Icebergはアーキテクチャの柔軟性を提供します。データを再処理することなくスタックを進化させられます」 -
データサイエンス部門長向け:
「BIで使用しているテーブルにPythonからもアクセスできるので、面倒なエクスポートや不整合は発生しません」 -
プラットフォームチーム向け:
「Icebergは既存ツールと連携可能です。大きな再構築なしで小さく始めて段階的にスケールできます」
まとめ
Apache Iceberg の導入は単なる技術的決定ではなく、柔軟性・効率性・将来性を兼ね備えたデータ基盤への戦略的な一歩です。
Iceberg を導入することで、複数エンジンによる分析、コスト最適化、AI対応の準備が整います。クローズドなプラットフォームに対して交渉の余地が生まれ、変化の激しいデータの世界でもチームは機動力を保てます。
次に誰かがこう聞いてきたとき — 「なぜ Iceberg を使うのか?」
もう、あなたは自信を持って答えることができるでしょう。