逆三角関数とその微分
はじめに, 逆三角関数とはなにかご存知だろうか?
\begin{align}
y &= {\sin}^{-1}{x}\qquad (-1 \leq x \leq 1,\quad -\frac{\pi}{2}\leq y \leq \frac{\pi}{2})\tag{1}\\
y &= {\cos}^{-1}{x}\qquad (-1 \leq x \leq 1,\quad 0\leq y \leq \pi)\tag{2}\\
y &= {\tan}^{-1}{x}\qquad (-\infty<x<\infty,\quad -\frac{\pi}{2} < y < \frac{\pi}{2})\tag{3}
\end{align}
このように表すことができ、それぞれ「アークサイン」「アークコサイン」「アークタンジェント」と呼ぶ. 今回はこれらの微分について紹介する. また, これらの性質については理解している前提で資料を作成しているため, 逆三角関数の使い方などについては各自調べてほしい.
(1) $y = \sin^{-1}x$の微分
ここからは主に数式を使って説明する.
\begin{align}
y &= \sin^{-1}x\notag\\
x &= \sin y\quad\text{とおいて,}\notag\\
\frac{d}{dx}x &= \frac{d}{dx}\sin y\notag\\
1 &= \frac{d}{dy}\sin y\frac{dy}{dx}\notag\\
&= \cos y\cdot y'\notag\\
y' &= \frac{1}{\cos y}
\end{align}
ここで, 三角関数の相互関係より, $\sin^2 y + \cos^2 y = 1$を式変形すると,
\cos^2 y = 1 - \sin^2 y \quad\leftrightarrow\quad \cos y = \sqrt{1-\sin^2 y} \quad\leftrightarrow\quad \cos y = \sqrt{1-x^2}
と変形することができる. これを利用して(1)式に代入すると,
\begin{align}
y' &= \frac{1}{\sqrt{1-x^2}}\notag
\end{align}
を得られるので, $y = \sin^{-1}x$の微分は, $y' = \frac{1}{\sqrt{1-x^2}}$であるとわかる.
(2) $y = \cos^{-1}x$の微分
こちらも解き方としては$\sin^{-1}x$の微分と同じである.
\begin{align}
y &= \cos^{-1}x\notag\\
x &= \cos y\quad\text{とおいて,}\notag\\
\frac{d}{dx}x &= \frac{d}{dx}\cos y\notag\\
1 &= \frac{d}{dy}\cos y\frac{dy}{dx}\notag\\
&= -\sin y\cdot y'\notag\\
y' &= -\frac{1}{\sin y}
\end{align}
ここで, 三角関数の相互関係より, $\sin^2 y + \cos^2 y = 1$を式変形すると,
\sin^2 y = 1 - \cos^2 y \quad\leftrightarrow\quad \sin y = \sqrt{1-\cos^2 y} \quad\leftrightarrow\quad \sin y = \sqrt{1-x^2}
と変形することができる. これを利用して(2)式に代入すると,
\begin{align}
y' &= -\frac{1}{\sqrt{1-x^2}}\notag
\end{align}
を得られるので, $y = \cos^{-1}x$の微分は, $y' = -\frac{1}{\sqrt{1-x^2}}$であるとわかる.
(3) $y = \tan^{-1}x$の微分
こちらも解き方としては$\sin^{-1}x,;\cos^{-1}x$の微分と同じである.
\begin{align}
y &= \tan^{-1}x\notag\\
x &= \tan y\quad\text{とおいて,}\notag\\
\frac{d}{dx}x &= \frac{d}{dx}\tan y\notag\\
1 &= \frac{d}{dy}\tan y\frac{dy}{dx}\notag\\
&= \frac{1}{\cos^2 y} \cdot y'\notag\\
y' &= \cos^2 y
\end{align}
ここで, 三角関数の相互関係より, $\sin^2 y + \cos^2 y = 1$を両辺$\cos^2 y$で割ると,
\tan^2 y + 1 = \frac{1}{\cos^2 y} \quad\leftrightarrow\quad \cos^2 y = \frac{1}{\tan^2 y + 1} \quad\leftrightarrow\quad \cos^2 y = \frac{1}{1+x^2}
と変形することができる. これを利用して(3)式に代入すると,
\begin{align}
y' &= \frac{1}{1 + x^2}\notag
\end{align}
を得られるので, $y = \tan^{-1}x$の微分は, $y' = \frac{1}{1 + x^2}$であるとわかる.