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[ROSロボットプログラミング] ROSで使われる専門用語

Last updated at Posted at 2015-12-09

詳説 ROSロボットプログラミング

この記事は「詳説 ROSロボットプログラミング」の一部を引用したものです。詳しいROSの説明は以下のアドレスから無料公開版のPDFをダウンロードし,参考にしてください。ライセンスは「CC BY-NC」です。
http://irvs.github.io/rosbook_jp/

ROSで使われる専門用語

ROSでは多くの独特の概念や用語が使われる。本節では、頻繁に使用されるROSの用語についてまとめて解説する。ただし、ここですべて理解する必要はなく、わからない用語が出てきても、先に読み進めていただきたい。これらの用語は、実際にROSを利用していけば、自然と身につくものである。

マスター(master)

マスター(master)は、ノード間の接続とメッセージ通信の実現に必要なサーバ(ネームサーバ)である。マスターの起動にはroscoreコマンドを用いる。マスターが起動すると、マスターは各ノードの名前を登録し、ノードとの間で必要な情報を送受信する。マスターが起動していなければ、ノード間の接続やメッセージ通信を行うことができない。
マスターは、HTTPベースのプロトコルであるXMLRPCを使用してノードと通信する。XMLRPCでは、マスターとノードは常に接続を維持する必要はなく、ノードは必要な場合にのみマスターに接続して、ノード自身の情報や他のノードの情報をやり取りする。ROSの ノード間通信は、お互いの接続状態を監視していないため、大規模なシステムでも利用できる。また、XMLRPCは計算負荷が小さく、さらに様々なプログラミング言語をサポートしている。

ノード(node)

ノード(node)は、ROSの最小の構成要素であり、個々の実行プログラムである。ノードは個別の処理毎に作成され、多くのシステムで繰り返し利用できるように設計される。例えば移動ロボットの場合、センサドライバ、センサデータ処理、障害物検出、モータ駆動、エンコーダ入力、ナビゲーションなど、動作に必要な処理を細分化し、それぞれの処理を実装したノードを組み合わせてシステムを構築する。
ノードを実行する際には、配信者(publisher)、購読者(subscriber)、トピック、サービス名、メッセージの形式、URIアドレスとポートをマスターに登録する。これらの情報を基に、各ノードは、ノード間でトピックメッセージ通信とサービスメッセージ通信を利用して情報を送受信する。
ノードとマスター間の通信にはXMLRPCを利用する。また、ノード同士の通信方式には2種類あり、接続要請と接続応答にはXMLRPCを、メッセージ通信には2点間通信方式であるTCP/IP通信を改良したTCPROSを使用する。すなわち、ノード間の通信はマスターを介して行うわけではない。ノードのURIアドレスには、ノードを実行しているPCのROS_HOSTNAME変数を使用し、ポートは任意の値に設定される。

パッケージ(package)

ROSのアプリケーションはパッケージ(package)単位で開発される。ROS Indigoは2015年12月6日現在、約2,000個(http://www.ros.org/debbuild/indigo.html)のパッケージを提供しており、また、ユーザーが開発し公開したパッケージは約5,800個にもなる。

メタパッケージ(metapackage)

メタパッケージ(metapackage)は、共通の目的を持ったパッケージを集めたパッケージのセットである。

メッセージ(Message)

メッセージ(message、msg)とは、ノード間でやり取りされる情報である。メッセージは整数型、浮動小数点型、論理型などの変数で構成されている。また、この他にもユーザーが自由にメッセージの型を設定でき、例えば配列型やネスト構造(他のファイルで宣言されたメッセージ型を内包したメッセージ型)なども使用できる。メッセージを利用した通信方法には、一方向のメッセージ送受信方式であるトピック(topic)メッセージ通信と、双方向のメッセージ送受信方式であるサービス(service)メッセージ通信がある。

トピック(Topic)

トピック(topic)は一方向で非同期方式のメッセージ送受信方式である。配信者(publisher)が配信したいデータをもつとき、そのデータを変数として含むメッセージに固有のトピック名を付けてマスターに登録する。その後、このトピックの受信を希望する購読者(subscriber)は、登録されたトピック名に対応する配信者の情報をマスターから受け取る。この情報に基づいて,購読者は配信者と直接接続して、メッセージをトピックで送受信する。

配信および配信者(publish and publisher)

配信(publish)とは、各トピックで定義されたメッセージを送信することをいう。配信者(publisher)は、メッセージを配信するために、トピック名などの情報をマスターに登録する。トピックを購読したい購読者は、マスターから必要な情報を得て配信者と接続し、メッセージを受け取る。一つのノードは複数の配信者を利用できる。以降では、配信者を実行するノードを「配信者ノード」と呼ぶ。

購読および購読者(subscribe and subscriber)

購読(subscribe)とは、各トピックで定義されたメッセージを受信することをいう。購読者(subscriber)は、トピック名などの情報をマスターに登録し、購読しようとするトピックの配信者の情報をマスターから受ける。この情報に基づいて購読者は、配信者と直接接続してメッセージを受け取る。一つのノードで複数の購読者を利用できる。以降では、購読者を実行するノードを「購読者ノード」と呼ぶ。

サービス(service)

サービス(service)とは、メッセージ同期方式の通信方式である。上述した配信と購読に基づくトピックメッセージ通信方式は非同期方式であり、データの送受信を効率的に行うことができる。また、一度接続処理を行えば、その後は連続的にメッセージを送受信できるので、継続してメッセージを送信しなければならないセンサデータの通信処理に適している。しかし、場合によっては、リクエスト(request)とレスポンス(response)によって構成される、同期方式のメッセージ交換方式も必要となる。ROSは、これをサービスメッセージ通信と呼ぶ通信方式で提供する。サービスメッセージ通信は、リクエストを受け取ると情報を送信するサービスサーバ(service server)と、リクエストを送信し情報を受け取るサービスクライアント(service client)から構成される。サービスは、トピックとは異なり、一回限りのメッセージ通信である。サービスのリクエストとレスポンスが完了すると、二つのノードの接続は一度切断される。

サービスサーバ(service server)

サービスサーバ(service server)は、リクエストを入力として受け取り、レスポンスを出力するサービスメッセージ通信のサーバである。リクエストとレスポンスはメッセージであり、サービスサーバはリクエストを受信すると、指定されたサービスを実行し、その結果をサービスクライアントに送信する。通常、サービスサーバは、決められた命令を受けて、特定の処理を実行するノードで使用される。

サービスクライアント(service client)

サービスクライアント(service client)は、リクエストを出力し、レスポンスを受け取るサービスメッセージ通信のクライアントである。リクエストとレスポンスはメッセージであり、サービスクライアントはリクエストをサービスサーバに送信し、そのレスポンスを受信する。サービスクライアントは、ある定められたコマンドをサービスサーバへ送信し、結果を受けるノードで使用される。

catkinビルドシステム(catkin build system)

catkin(キャッキン)はROSのビルドシステムである。catkinビルドシステムは、一般的なビルドシステムであるCMake(Cross Platform Make)を拡張したものであり、CMakeと同様に、パッケージのフォルダ内のCMakeLists.txtファイルにビルド環境を記述している。catkinはROS Fuerteバージョンからアルファテストを開始して、Groovyでコアパッケージがcatkinビルドシステムに切り代わり、Hydroバージョン以降は全システムで使えるようになった。catkinビルドシステムを用いると、パッケージのビルド、パッケージ管理、依存関係パッケージの自動インストールなどが容易に行える。

ROSビルドシステム(rosbuild system)

ROSビルド(rosbuild)はcatkinビルドシステム以前に使用されたビルドシステムであり、今も一部のユーザーが使用している。しかしROSのバージョンの互換性のために残されたものであり、今後は使用されないため、本書ではrosbuildの使用は推奨しない。もし、rosbuildビルドシステムを使用した以前のパッケージを使用する必要がある場合、catkinビルドシステムへの修正を試みるべきである。

roscore

roscoreはROSマスターを実行するためのコマンドである。同じネットワークセグメントであれば、どのPCで実行してもよい。ただし、マルチROSマスターをサポートしている場合を除いては、roscoreは同じネットワーク内で1つのみ実行できる。ノードを起動する際には、ネットワーク内の1台のPCで必ずマスターを起動しておく必要がある。またユーザーは、ノードを実行するネットワーク内のすべてのPCで、マスターが実行されているPCのURIやIPアドレス、ポート番号を、「~/.bashrc」ファイルのROS_MASTER_URI変数に設定しておかなければならない。ROS_MASTER_URI変数が設定されていない場合は、ノードを実行したPCのIPアドレスと11311ポートが使用される。

パラメータ(parameter)

パラメータ(parameter)とは、ノード内で使用され、ノード実行中に変更可能な変数である。パラメータは規定値が設定されており、ノード実行中に外部からの読み取り、または書き込みができる。例えば、外部デバイスを接続したUSBポートの番号やカメラキャリブレーション値、モータの速度やコマンドの最大値と最小値などをノード実行中に外部から確認することや、値を変更することができる。

パラメータサーバ(parameter server)

パラメータサーバ(parameter server)とは、ノードでパラメータを使用する際、パラメータの書き込みや読み込みを行うサーバである。パラメータサーバは、マスターの起動と同時に自動的に立ち上がる。エンコード形式にはXMLを採用し、伝送方式にはリクエスト/レスポンス方式のHTTPプロトコルであるXMLRPCを使用する。

rosrun

rosrunはROSにおける最も基本的な実行コマンドである。パッケージ内の1つのノードを実行する際に使用する。

roslaunch

rosrunが1つのノードを実行するコマンドであるのに対し、roslaunchは複数のノードを実行するコマンドである。さらにパッケージのパラメータやノード名の変更、ノードのNamespaceの設定、ROS_ROOTとROS_PACKAGE_PATHの設定、環境変数の変更など、多くのオプションを備えたROSコマンドである。roslaunchは「.launch」という拡張子のファイルを使用して、実行ノードの設定ができる。roslaunchの形式はXMLに基づいており、XMLタグ形式でオプションを設定する。

bag

ROSで送受信されるメッセージのデータをファイルとして保存する際の形式がbagである。「.bag」という拡張子を使う。ROSは、bagとして保存したメッセージを後に必要に応じて再生することで、実行時の状況をそのまま再現できる。たとえば、センサーを利用したロボットの走行実験を行うとき、bagを使用してセンサーのデータをメッセージの形式で保存する。その後、保存しておいたbagファイルを再生することで、実際にロボットを走行させなくても、実験時のセンサーの値を繰り返し使用できる。このbagの記録・再生の機能を活用すれば、プログラムの修正が多い複雑なアルゴリズムの開発を効率化できる。

ROS Wiki

ROSの各パッケージと機能を説明するページ(http://wiki.ros.org/)である。このページには各パッケージの簡単な説明、使用されるパラメータ、著作者、ライセンス、ホームページ、リポジトリ、チュートリアルなどが記載されている。

リポジトリ(repository)

リポジトリ(repository)は、パッケージが格納されているウェブ上のURLアドレスで、svn、hg、gitなどのソース管理システムを利用して、障害情報、開発記録、ソースコードのダウンロードなどを管理している。公開されたパッケージでは、各パッケージのWikiにリポジトリを記載している。

rqtグラフ(rqt_graph)

rqtグラフ(rqt_graph)は、ノード、トピック、配信者、購読者の関係を視覚的にわかりやすく表示するツールである。実行コマンドはrqt_graph、あるいはrosrun rqt_graph rqt_graphであり、両者に違いはない。なお、これらは実行中のトピックメッセージ通信をグラフ形式で表示するものであり、通信が一度しか行われないサービスメッセージ通信は表示できない。

名前(name)

ノード、パラメータ、トピック、サービスには、すべて固有の名前(name)が付けられている。各ノードでパラメータ、トピック、サービスを利用するときには、マスターに登録された名前に基づいて、他のノードの検索、接続、メッセージ送受信を行う。また、名前は起動時に変更でき、同じノード、パラメータ、トピック、サービスであっても別の名前で登録すれば重複して使用できるなど、極めて柔軟である。

クライアントライブラリ(client library)

ROSは、特定のプログラミング言語にできるだけ依存しないように、クライアントライブラリ(client library)として、各種の言語による開発環境を提供している。主な言語には、C ++、Python、Lispなどがあり、さらにjava、lua、.NET、EusLisp、Rなどの言語も使用できる。クライアントライブラリは、これまでroscpp、rospy、roslisp、rosjava、roslua、roscs、roseus、PhaROS、rosRなどが開発されている。

TCPROS

メッセージとサービスで使用されるTCP/IPベースのメッセージ伝送方式である。

UDPROS

メッセージとサービスで使用されるUDPベースのメッセージ伝送方式である。あまり使用されない。

CMakeLists.txt

ROSのビルドシステムであるcatkinはCMakeを拡張したものである。パッケージフォルダ内のCMakeLists.txtファイルにビルド環境を記述している。

package.xml

パッケージの情報を記載したXMLファイルである。パッケージの名前、著作者、ライセンス、依存性パッケージなどが記載されている。

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