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BrainPadAdvent Calendar 2024

Day 13

データサイエンスのビジネス実装を阻むニンゲンの壁を超えるには

Last updated at Posted at 2024-12-22

こちらのページはBrainPad Advent Calender 2024 13日目の記事です。
他のメンバーの記事や私の昨年の記事もご覧いただけたら嬉しいです。

データサイエンスのビジネス実装は難しい

『データサイエンスのビジネス実装は難しい』

この課題意識はデータサイエンスを社会に根付かせるべく日々奮闘する全てのデータサイエンティストが感じていることだと思う。

データ分析自体はLLMの発展などもあり技術的なハードルが下がりつつあるが、ただグラフを描画したりモデルを組んだりすることにデータサイエンスの価値があるわけではない。
分析対象のビジネス課題の本質を見極め、解決に資する”アクショナブルなインサイト”をデータの側面から導き出すことが、現代のデータサイエンティストに求められている価値である。

しかし、仮にデータサイエンティストが”アクショナブルなインサイト”まで辿り着いたとしても、その本質的な価値をクライアントのビジネスに実装し、業務変革へと繋げることは容易ではない
私自身いくつもの分析テーマを経験するなかで、その難しさを痛感している。

そこで、データサイエンスのビジネス実装が難しい理由と、その解決の糸口として私が考えている一つの切り口を提示したい。
私も明確な答えに至っているわけではないが、どこかのタイミングで言語化することに意味があると思うので、現時点での考えを述べる。

人間は有機的であり合理性に欠ける生き物

社会は人間で構成され、今のところビジネスは人間が行っている。そして、人間には変化を拒む性質がある。

『心理的ホメオスタシス』と呼ばれるように、人間は変わりたいと思っていても環境や行動の変化を無意識下で嫌うため、変革を起こすための行動には制限がかかってしまう。

皆さんも頭では”良いこと”と分かっていても、人間関係や組織構造などを理由に実践できなかった経験があると思う。

論理的で合理性の塊である”データサイエンス”と、情緒的で非科学的な”ニンゲン”とは相性が悪いのだ。

客観的なデータに支えられた説得力のある根拠を提示できるデータサイエンスによって、感覚的な判断から脱却することにこそデータサイエンスの真価があるが、その変化を阻む壁こそが人間のニンゲンらしさである。

そんな人間で構成される会社の中でデータサイエンスを実装したいと思っている私たちは何を意識したらよいだろうか。

クライアントの心を動かして味方を増やす

私が考えている解決への糸口は、クライアントの心を動かし、クライアント企業内に味方を増やすことである。

自分の生み出したアウトプットが有用であるとどんなに自信を持っていても、それをクライアントの組織内で機能させるには味方が必要になる。

一緒に分析結果を確認してくれる味方、社内のデータを集めてくれる味方、他部署と掛け合ってくれる味方、実際に業務を行ってくれる味方、進捗状況を把握してフォローしてくれる味方、などなど…

ビジネスを行うのもビジネスの恩恵を受けるのも人間である以上、結局は人間関係が大切になる。

そして、味方を増やすために必要なのは『信頼されること』である。

2つの信頼を育むべし

味方になってもらうためには”データサイエンス”と”データサイエンティスト”のそれぞれが信頼を得なくてはいけない。

①データサイエンスに対する信頼

データサイエンスは一時期大きな期待感をもって流行となったが、その時代を経て今は懐疑的な目で見られていると認識している。言うなれば“2周目”に入っている状況だと考えている。

多くのビジネスマンがこのブームの期間にデータサイエンスに触れたことで、「意外と成果が出なかった」「期待通りの結果が得られなかった」という負の経験を持っている場合が多いと感じる。だからこそ改めてデータサイエンスへの信頼感を醸成することが重要である。

信頼を得るための具体的な手立てには例えば下記がある。

  • データサイエンスに対する意識を変える
    • データサイエンスは解そのものを出すのではなく、意思決定の判断材料を提供するものであることを認識してもらうことで過度な期待感や認識の齟齬を解消する
  • 分かりやすい成果例を創出する
    • PoCや小スケールでの事例を蓄え、成功体験を得てもらう
    • 身近なテーマを題材にすることで成果を分かりやすく認知してもらう
  • 成果を社内・社外へ発信する
    • クライアント社内の事例を社内外へと発信し、自社がデータサイエンスに積極的に取り組んでいる風土である認知を拡げてもらう

②データサイエンティスト本人への信頼

データサイエンスというツールを実際にクライアント内で振るうデータサイエンティスト本人に対する信頼が大切なのは必然である。

信頼関係が深まるとアウトプットそのものの評価に加えて人情的な評価もプラスに働くため、「この人が言うなら実際に業務適用してみよう」「この人の成果ならきっと役立つから他部署へ展開しよう」という考えに確実に繋がっていく。

特に大切な要素は例えば下記が挙げられる。

  • 自社理解への信頼
    • 自社のビジネスや固有の事情を理解してくれているという信頼
    • 共感を示し寄り添う姿勢が大切
  • 価値観への信頼
    • この人の出すアウトプットならお客様のためになるだろう、という信頼
    • 常にクライアント目線、その先にあるお客様目線に立つこと
  • 能力への信頼
    • 豊富な技術知識
    • 業界のドメイン知識への興味関心
    • この人に聞けば解決しそうだという信頼
  • 人柄への信頼
    • 誠実さ、丁寧さ
      • 綿密な連絡やアフターフォローは信頼を得る基本要件
    • 自信のある姿勢
      • プロフェッショナルである自覚と自信は信頼感に繋がる
      • 自信をもった話し方や、笑顔、明るい口調を意識する
      • 過度なパフォーマンスにならないように注意
    • 泥臭さ、ラストマンシップ
      • 厳しい時もなんとかしてくれるはずだという信頼

これらは私のようなデータ分析会社に所属するデータサイエンティストのみならず、事業会社のシチズンデータサイエンティストにとっても大事な要素だと思う。

息を吸うようにデータが活用される社会

データサイエンスを社会実装する難しさや解決策については、過去に何度も議論されてきた。

最終的な解決に至るのは日本社会全体にデータ分析が浸透しきった時だと思うが、機械学習や生成AIがこれほど話題となり一般認知度が高まった2024年現在においても、データ分析が十分に浸透したとは言えない状況である。
ビジネス実装に苦労している現実がそれを物語っている。

データサイエンティストが成果のビジネス実装に悩まない社会こそが私たちが目指すべき最終的な理想状態だと私は考えている。

弊社のVisionである「息を吸うようにデータが活用される社会をつくる」は、まさにその理想的な社会をつくることだと思っている。

そのVisionに到達するためにも、まずは目の前のクライアントの心を動かすことから始めていきたい。

brainpad_philosophy

参考リンク

※本記事の内容は私個人の考えであり、会社を代表するものではありません。

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