※2019年7月8日公開
N-Village CTOの林田です。
「ブロックチェーンを超える技術」と話題のHedera Hashgraphが、新しいAPIサービスHedera Consensus Serviceを発表しましたので、簡単に概要を確認したいと思います。
Hedera Consensus Serviceとは何か
まずは おさらい になりますが、Hedera Hashgraphの特徴は以下のとおりです。
Hedera Hashgraphとは
Hedera Hashgraph(ヘデラ ハッシュグラフ)とは、新しいコンセンサスアルゴリズムを採用した分散台帳技術(DLT)です。既存の分散台帳技術とは、次の点が異なるとされています。
- 性能
1つのシャードで1秒あたり数十万回のトランザクションを捌くことができます。コンセンサスの待ち時間は数秒程度です。
- セキュリティ
aBFT=非同期ビザンチンフォルトトラレントであり、コンセンサスアルゴリズムにおいて数学的にセキュリティ上の脆弱性が無いことが証明されています。ただし、他の分散台帳技術と同様、悪意を持ったメンバーがコミュニティの1/3を超えないことが前提です。
- ガバナンスと安定性
世界中から各業界の専門知識を持つ企業が集まり、Hedera Hashgraphを統制するための委員会を組織しています。2019年7月8日の時点では、「ドイツテレコム(Deutsche Telekom)」、「DLA Piper」、「マガジネ・ルイーザ社(Magazine Luiza)」、「野村ホールディングス株式会社」、「Swisscom Blockchain AG」の5社が公表されています。この強力なガバナンスによって、安定したプラットフォーム運営が可能です。
- 公平性
PoWなど、他のコンセンサスアルゴリズムと異なり、特定のトランザクションの処理順を優先する余地がありません。いずれのトランザクションも発生順(厳密には、ネットワーク全体のノードの2/3が取引を受け取ったタイムスタンプの中央値)で処理されるため、公平性のある取引が可能です。
- 規制の遵守
多くの政府が求める、KYCやマネーロンダリング防止(AML)のチェックが可能です。
ここでいう「公平性」、すなわち処理順が保証されるということが、今回のHedera Consensus Serviceのキーになります。
(「公平性」が担保される仕組みについては、こちらをご確認ください。)
既存の中央集権型システムであれば、中央サーバが処理順を保証していました。しかし、それでは中央サーバの管理者が処理順を操作できてしまいます。これは公平であるとはいえません。
また、他のブロックチェーン(コンセンサスアルゴリズム)では処理順が保証されません。これも公平であるとはいえません。
すなわち、Hedera Hashgraphの特徴の一つである「公平性」の部分を切り出して、他のアプリケーションから使えるようにサービス化(API化)したものが、今回発表された「Hedera Consensus Service」です。
公平性の価値
例えば、株のトレーディング系のシステムだと、1つでも早い取引順番を確保するために莫大なコストを支払っています(専用線の確保や地理的に近い位置にサーバを置くなど)。
それくらい、公平性=取引の処理順番、というのは大切なのです。これは株式市場だけでなく、オークションやゲーム等にも当てはまります。
これまでは公平性が不透明だったこれらの中央集権型システムが、機密性やパフォーマンスを担保する中央集権の部分と、取引順の公平性を担保するHedera Consensus Serviceを使い分けることで、両方のいいとこ取りができるメリットを享受できるようになります。
例えば、Hyperledger Fabricで作ったアプリ(プライベート台帳、中央集権)において、取引順の公平性を担保したい部分をHedera Consensus Serviceを使って非中央集権化することにより、プライベート台帳の良さであるプライバシーと、公開台帳の良さである公平性を両方得られるというイメージです。
Hedera Consensus Serviceの所感
確かに、タイムスタンプサービスは中央集権型より分散型の方が、公平性という点では明らかに優れていると思います。必要機能に応じて、中央集権型と分散型、ハイブリッドな構成を検討する価値は十分にあるな、と感じました。
内容に間違いがあればご指摘いただけますと幸いです。よろしくお願いいたします。