はじめに
私は2023年3月にエンジニアリングマネージャーに就任した新米EMです。プロジェクトマネージメントの経験はありますが、ピープルマネジメントはエンジニアとして仕事をしてきて初めてのことです。そんな新米EMがメンバーの育成のために取り組んできたことを紹介しようと思います。
※ 本記事は外部登壇したときに作成した下記資料をもとに、登壇時には話せなかったことを追記したものになります。
ゲシュタルトの円
まずメンバーと接するときに気をつけておきたいことは、人はどうしても弱みに目が行きがちだということです。その証拠にこちらの画像をご覧ください。
おそらく右上の欠けた部分に目が行くと思います。これはゲシュタルトの円といって、人が欠陥部分に注目してしまうという性質を説明するときに使われるものになります。
メンバーと会話をするときには、この辺を注意する必要があります。
「〇〇ができてないよね」
と弱みだけを伝えるのではなく
「〇〇は素晴らしいので、△△を改善すればもっと良くなるね」
といった感じで、強みをベースにしつつ弱みをフォローする形で会話をしていく必要があります。この考え方が私のピープルマネジメントとしてのポリシーになっています。
強みの見つけ方
弱みに目が向きがちな人間が強みに目を向けるにはどうすればよいのでしょうか。こちらについては『世界一やさしい「才能」の見つけ方』という書籍がとても参考になりました。
この本によると強みというのは「つい、やってしまうこと」から把握することができるとあります。そして「つい、やってしまうこと」を知るためには、次の5つの質問に答えると良いと書かれていました。
1. 他人にイラッとすることは?
2. 親や先生によく注意されたことは?
3. やっちゃダメと禁止されると辛いことは?
4. あなたの短所を「だからこそ」で言い換えるとどうなりますか?
5. 他の人は嫌がるのに、自分には楽しいと思えることは?
例えば、私の場合だとこんな回答になります。
1. 「時間がない」「できない」と言われる(自分は代替案を出すのが得意)
2. 心配性で繊細(人の悩みをキャッチアップできる)
3. 本音で話し合うこと(やりたくないことも聞き、相手の価値観を深掘りできる)
4. 悩みやすいからこそ、人の悩みが理解できる
5. 人前で発表する
このことから、私はメンタリングをして新たな気づきを与えたり、ナレッジを共有したりするのが強みであるということがわかります。こんな感じでメンバーの強みも分析をしました。
本の執筆者である八木仁平氏はYouTubeでもこういった話を発信されているので、キャリアに悩んでいる方は参考にしてみるとよいのではないでしょうか。
1on1
強みを見つけ、それを目標設定に反映できたら、1on1で日々の様子を見ていきます。1on1のやり方は『エンジニアリングマネージャーのしごと』を参考にしました。
EMをやるにあたって、この本には大変お世話になりました。これからEMをやる予定の方にはオススメの一冊です。
コントラクティング
初回の1on1ではコントラクティングとして下記の質問事項をまとめてもらいました。
- いちばんサポートが必要な分野はどこか?
- どんな形でフィードバックやサポートを受けたいか?
- 一緒に働く上での問題は何か?
- 私のサポートがうまくいっていないことはどうすればわかるか?
- ミーティングの内容の機密性はどれくらいか?
メンバーからすると、EMにネガティブな話をすると誰かに告げ口されるんじゃないかとか評価に影響するんじゃないかという不安を抱く人も少なくないと思います。少なくとも私はそうです。そういう不安を抱かせないように情報共有の仕方についてはしっかりと確認するようにしました。
4つのP
2回目以降の1on1は「4つのP」を使って日々の状況を確認するようにしました。
- 進捗(Progress):前回の記録から何が起こったか?
- 問題(Problems):どんな問題が起こったか、対処が必要なものは何か?
- 計画(Plans):問題に対してどのように取り組む予定か?
- 人(People):チームの人はどうか。 全員良い状態か? 辛い状態の人はいないか? 何を改善できるか?
人によって分量やどの項目を詳しくまとめてくるかの違いが特徴として現れてきます。そこを観察して「この人は報連相が苦手そうだな」とか「人のことをよく見ているな」といった分析をしていました。
特に人について詳しくまとめてくれる人はリーダーとしての素養があるなぁという実感があり、そういった指向性を探るためにも4つのPは役に立ちました。
ニコニコカレンダー
1on1ではメンバーのヘルスチェックとしてニコニコカレンダーを管理しました。ニコニコカレンダーとはその日の体調を絵文字で表現したものです。合わせてファイブフィンガー(その日の気分を5段階で表現)も管理しました。
私自身もニコニコカレンダーを管理していましたが、数カ月分のファイブフィンガーをグラフにまとめて、どんなときに気分の浮き沈みが起こるのかを上司に報告してストレスマネジメントを行っていました。(ファイブフィンガーを付けるようになったのが1on1の途中からだったため、グラフも途中からになっています。)
まとめ
個人的に1on1はもう少しうまくやれそうな感じがしており、やり方を学んでいきたいなと思っています。例えば、どの程度フォローをしたほうがいいのかはメンバーの経験値によって変わってくるため、ジュニアメンバーとシニアメンバーで接し方の濃淡はもう少し付けても良さそうだなと思っています。
また1on1だけじゃなく、複数人で会話をする機会も作ったほうが360度評価のようなフィードバックが得られやすい気がしており、メンバーとのコミュニーケーションの取り方を模索しているところです。
改めて目標設定は難しいなと思いました。ただコツが掴めてきたので、今後の目標設定はもう少しうまくできそうな気がします。
以上、私がEMとして取り組んできたことでした。少しでもEMの皆様の参考になれば幸いです。