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意外とややこしい Python のスコープを理解するためのクイズ14問

Last updated at Posted at 2019-12-01

イントロダクション

Python の変数のスコープ、参照のメカニズムは意外に直感的でない部分があり、初心者が罠にはまる可能性がある。しかし、一旦ルールを覚えればさほど複雑ではない。ここではその理解を助けるための問題を紹介する。

問題ごとに何が出力されるか、もしくはエラーが出力されるかどうかを答えよう。実行環境は Python 3 とする。難しい(というかマニアックな)問題は見出しが赤色になっている。

問題1

x = 1

if True:
    x = 2

print(x)

解答

2

Python では if 文はスコープを形成しない。そのため if 文内の x は外の x と同一の変数となる。

問題2

for i in range(10):
    x = i * 2

print(i, x)

解答

9 18

if と同様に for 文もスコープを形成しないので、ループ変数や内部で定義した変数はその for 文の後でもアクセスすることができる。

問題3

ls = [x * 2 for x in range(10)]

print(x)

解答

(print(x) のとこで)
NameError: name 'x' is not defined

リスト内包表記(list comprehension)が実行されるとき、新たにスコープが作られそこでループ変数が定義される。そのため、外側のスコープに存在する print(x) からは x にアクセスできない。

問題4

funs = []

for i in range(5):
    def f():
        print(i)
    funs.append(f)

for fun in funs:
    fun()

解答

4
4
4
4
4

関数 f の中から外側の変数 i を参照しているが、print(i) が実行される時点での i の値が使われることになる。5つの f が実行されるのはいずれも for 文の後であり、その時点では i4 であるため、すべて 4 を出力することになる。

なお、リスト内包表記についても同じことが起きる。

問題5

x = 0

def f():
    x = 1

f()
print(x)

解答

0

関数 f が形成するブロック1には x = 1 という代入文が存在するため、このブロックのスコープには x という新しい変数が作られることになる。つまり、トップレベルの xf によって変更されない。

問題6

x = 0

def f():
    print(x)
    x = 1

f()

解答

(print(x) のとこで)
UnboundLocalError: local variable 'x' referenced before assignment

1つ前の問題と同様に、関数 f が形成するブロックに x = 1 という代入文が存在するため、ブロックが実行されるにそのスコープに x という変数が作られる。しかし print(x) が実行される時点では x は値を持たない (unbound) であるため、例外が発生する。

問題7

x = 0

def f():
    x += 1

f()
print(x)

解答

(print(x) のとこで)
UnboundLocalError: local variable 'x' referenced before assignment

+= も代入文とみなされるため、1つ前の問題と同様に f が形成するブロックに変数 x が作られる。しかし、x += 1 が実行されるとき x の値は存在しないため、例外が発生する。

外側のスコープの変数の値を変更するには globalnonlocal を使う必要がある。

問題8

x = 0

def f():
    if False:
        x = 1
    print(x)

f()

解答

(print(x) のとこで)
UnboundLocalError: local variable 'x' referenced before assignment

if 文はブロックを形成しないため、これも1つ前の問題と同様に f が形成するブロックに x への代入文が存在し、変数 x が作られる。しかし実際には x に値は代入されないため例外が発生する。

問題9

x = 0

def f():
    del x

f()

解答

(del x のとこで)
UnboundLocalError: local variable 'x' referenced before assignment

実は del 文も代入文と同様に、そのブロックに変数を生成する効果がある。そのため、f が形成するブロックに変数 x が作られるが、x の値が存在しないまま del x が実行されるため例外が発生する。

このように変数を作る効果のある構文は代入文、del 文、for 文、クラス定義、関数定義、import 文、withexceptas がある。

問題10

x = 0

def f():
    def g():
        print(x)
    x = 1
    g()

f()

解答

1

g が実行される時点では、一つ外側のスコープ (f) に x が存在し値が 1 であるため 1 が出力される。

問題11

x = 0

def f():
    x = 1
    del x
    def g():
        print(x)
    g()

f()

解答

(print(x) のとこで)
NameError: free variable 'x' referenced before assignment in enclosing scope

del x が実行されても f のスコープに x は存在しつづける(値がなくなるだけ)。そのため、g 内の xf で定義された x を参照することになる。しかしその x は値を持たないので例外が発生する。

同じ理由で、以下の2つのコードでも同じ結果となる。

x = 0

def f():
    x = 1
    def g():
        print(x)
    del x
    g()

f()
x = 0

def f():
    def g():
        print(x)
    x = 1
    del x
    g()

f()

問題12

x = 1

def f():
    x = 2
    try:
        raise Exception()
    except Exception as x:
        pass

    def g():
        print(x)
    g()

f()

解答

(print(x) のとこで)
NameError: free variable 'x' referenced before assignment in enclosing scope

try 文で例外が発生し except 節が実行されると、その as で指定した変数は del と同様に値が削除される。そのため、g が実行される時点では f 内の x は存在するが値がないため例外が発生する。

なお、except 節が実行されなければ、該当する変数は削除されない。

問題13

x = 1

class C:
    x = 2
    def f():
        print(x)
    f()

解答

1

クラス定義内のコードはスコープに関して特殊であり、そこで定義された変数(クラス変数)はそのスコープからしかアクセスできず、クラス定義内の関数(つまりメソッド)からは直接アクセスできない

問題14

x = 0

def f():
    x = 1
    def g():
        print(eval("x"))
    g()

f()

解答

0

これは eval 関数の(直感に反する)振る舞いに関する問題である。eval 関数で実行したコードからアクセスできる変数は、実は**「グローバル変数」と「eval が実行されたブロックで定義された変数**」のみであり、その間で定義された変数にはアクセスできない。今のコードでは、eval 関数に渡されたコードからアクセスできる(ビルトイン以外の)変数は、1行目の xg 内で定義された変数(1つもない)である。よってトップレベルの x が参照され、0 が出力される。

なお、exec 関数も同様の振る舞いをする。

参考

  1. ブロックとはスコープ1つに対応するコードのまとまりであり、ブロックごとにスコープが形成される。ブロックを形成するのは関数、モジュール(つまりトップレベル)、クラス定義である。

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