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【図解】コールスタックとクロージャーを理解する

Last updated at Posted at 2019-10-25

スコープ

ある変数のスコープとは、その変数にアクセスできるコード上の範囲を意味する。

var で宣言された変数は function scope であるのに対し、letconst で宣言された変数は block scope と呼ばれるスコープを持っている。

function scope の変数は、自分を含む一番内側の関数がスコープとなる。一方 block scope の変数は、自分が属する一番内側の関数orブロックがスコープとなる。ブロックとは { 処理;処理;... } のことである。

var let scope

Lexical Environment (LE)

JavaScript の実行環境はプログラムを実行する上で「どの変数が何の値を持っているか」というテーブルのようなものを保持しながらコードを一行一行実行する。ただし、変数はスコープというものがあり、スコープの外からはアクセスすることはできない。また、変数を参照するとき、同じ名前の変数が複数あればより内側のスコープに存在するものが優先される(シャドウイング)。また、後で説明するがJavaScriptの関数はクロージャーという機能を持っている。

このような性質を実現するために、JavaScript ではテーブルのチェーン構造によって変数を管理している。このテーブル一つ一つを Lexical Environment と呼び、変数の名前と値のペアを格納する。

仕様での定義

Execution Context Stack

Call Stack とも呼ばれるが、これは「今実行中の関数はどの関数から呼び出されて、その関数はどの関数から呼び出されて...」という履歴のようなものを格納するスタック構造である。そしてこのスタックに詰め込まれるのは Lexical Environment である1

仕様での定義

実行の流れ

例えば以下のコードを考えよう。

const x = 1

if (true) {
  const y = x + 1
  const z = f(y)
}

function f(x) {
  return x * 2
}

まずは、トップレベル(一番外側のスコープ)の変数のための LE が作られる。画像右の白い四角が LE を表す。この時点では通常の変数に値は入っていない(初期化されていない)。しかし、関数宣言は hoisting (巻き上げ) が起こるので、既に変数 f の値(関数)は入っている。

context1.png

1行目の右辺が計算され、x に代入される。

context2.png

if の条件式が true なのでブロックの中に入り、新しい LE が作られる

context3.png

y の値が計算される。

context4.png

次に、f 関数が呼ばれる。関数の中に入るときも LE が作られる

緑の LE が 青の LE ではなく赤の LE につながっているが、これは関数 f の外側のスコープが赤の LE だからである。

実引数として渡した y の値 2 が、f の仮引数 x の値となる。

context5.png

x * 2 を計算するときに x が参照されるが、このとき赤の x ではなく緑の x の値が使われることになる。どのように x を見つけているかというと、Call Stack の先頭(図では一番下)の LE からスタートして、矢印でつながったチェーンをたどって一番最初に見つかった変数が選ばれるのである。そのため、緑の LE をまず探して、そこになければ赤の LE を探すことになるが、今の場合緑の LE に x があるのでそれが選ばれる。変数のシャドーイングはこのようにして発生するのである。

よって x の値は 2 なので 4return される。

context6.png

関数を抜け、緑の LE は Execution Stack から削除される。

戻り値 4z に代入される。

context7.png

ブロックを抜け、赤の LE は Execution Stack から削除され、このまま実行が終了する。

context8.png

クロージャー

クロージャーとは外側のスコープに存在する変数を参照する関数のことである。例えば下のコードでは increment 関数がクロージャーである。

const c1 = counter()
const c2 = counter()

console.log(c1())
console.log(c1())
console.log(c1())

console.log(c2())
console.log(c2())

function counter() {
  let x = 0

  function increment() {
    x += 1
    return x
  }

  return increment
}

実行すると以下が出力される。

1
2
3
1
2

counter 関数を呼び出すたびに、別々のカウンターが作成されていることが分かるだろう。つまり、c1c2 は別々の変数 x を持っている。これも、LE で説明することができる。

c1c2 が代入された時点では、LE と Call Stack は次のようになっている。c1c2 はどちらも increment 関数の関数オブジェクトだが、別々の LE(緑) を指していることが分かる。これは、関数が呼び出されるたびに LE が作られるからである。

closure1

c1 が実行されると、その関数オブジェクトが指している LE (左の緑の LE) の下に新しい LE が作られ、そこで increment 関数が実行される。

closure2.png

ここで x += 1 が実行されるわけだが、最初の例で説明したとおり、当然この x は左の緑の LE の x を指すことになる。これにより左の緑の LE の x1 になり、右の緑の LE は影響を受けない。つまり、独立した2つの状態変数となっている。

ところで、この2つの x は対応する increment 関数からしかアクセスできない、いわば「隠れた変数」となっている。最近になって JavaScript にプライベートメンバー変数の構文が追加されたが、それまではプライベート変数はクロージャーでしか実現できなかった。


  1. 仕様では Execution Context Stack に詰め込まれるのは Execution Context であるが、ここでは Execution Context と Lexical Environment を同一視している。 

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