前回の記事
連載の構成
- この記事は、マネジメントについて一人で考える Advent Calendar 2022の連載記事です
- 1記事目から読んでいただいても良いですし、気になる記事から読んでいただいても問題ありません
- 全25回分の構成は、次の通りです
- 第1〜6回:ドラッカーの『マネジメント』を中心に解説します
- 第7〜13回:『図解人材マネジメント入門』を中心に解説します
- 第14〜22回:『エンジニアのためのマネジメントキャリアパス』を中心に解説します
- 第23〜25回:私の経験談を中心に、まとめに入ります
テクハラとは
- 前回はエンジニアのためのマネジメントキャリアパス ―テックリードからCTOまでマネジメントスキル向上ガイドを元に、有害な社員について触れていきました
- 今回は別の参考図書、ITエンジニア採用とマネジメントのすべて 「採用・定着・活躍」のポイントと内製化への道筋が1冊でわかるから、テクハラについて解説します
- こちらの本はぜひ今回の連載で紹介したかった本です
- どうしてもEM系の本は海外のものが多く、採用事情や文化が海外特有の色が強かったりします
- しかしこちらの本は日本の著者であり、かつコロナ時代を経た現代日本のITエンジニア採用に関して書かれており、唯一無二感が強いです
- 本題から逸れましたが、テクハラについて引用します
テクノロジー・ハラスメントの略称である「テクハラ」という言葉があります。世間的な定義によると「IT知識が高い人の不遜な態度や、意図的に専門用語で話し続ける行為」を指します。
引用:ITエンジニア採用とマネジメントのすべて 「採用・定着・活躍」のポイントと内製化への道筋が1冊でわかる
- 前回記事のブリリアントジャークに近い概念にも感じますね
- 知識があると、技術マウントを取ったり先輩風を吹かせたい人が出てきます
- その際、このテクハラに当てはまらないかは注意が必要でしょう
テクハラの分類:アーリーアダプター
- テクハラの1つ、アーリーアダプターです
リモートワークによるコミュニケーションツールの増加により、「先輩、会議用のZoom設定くらい1人でできないんですか。こんな簡単な操作で手間取って、よくこれまで仕事してきましたね」といったやりとりが発生しています。デジタルネイティブ時代の新入社員(部下)によるハラスメントはこれに分類されるでしょう。
引用:ITエンジニア採用とマネジメントのすべて 「採用・定着・活躍」のポイントと内製化への道筋が1冊でわかる
- アーリーアダプターはご存じの方も多いでしょうが、元はマーケティング用語のイノベーター理論による分類です
- 新技術や商品が市場に浸透する際、人々が5つのグループに分けられるという考えです
- イノベーター
- アーリーアダプター
- アーリーマジョリティ
- レイトマジョリティ
- ラガード
- 下に行くにつれて、新技術に対し反応が鈍い層を指します
- 例えばスマートフォンが世の中に出た時、イノベーターが真っ先に飛びつき、次にアーリーアダプター、アーリーマジョリティ、レイトマジョリティと徐々に浸透が進みます
- そして最後まで利用しない、保守的傾向の強い存在がラガードです
- ちょっと脱線しましたが、まさにこれに近いテクハラの一種のようです
- これはアーリーアダプター側の姿勢を改善すべきでもありますし、言われる側の受け入れる体勢も必要なのではないでしょうか
- HRTに欠ける、小馬鹿にするような態度はもちろん断固否定すべきです
- しかしITエンジニアであるなら、レイトマジョリティやラガード傾向では働く上で大変なことも増えます
- 無益な衝突を生まずに、新たなイノベーションに乗っかれる組織の方が良いのではないでしょうか
テクハラの分類:荒んだ情シス
- 2つ目のテクハラ、荒んだ情シスです
本来、「同志」であるはずの社員から罵詈雑言を受けてしまう職種の一つに社内の情シスがあります。
時に情シス担当者が罵詈雑言を受け続けて拗らせてしまい「PCが壊れたんだけど」「動かないんだけど」と相談に来た社員にまるで噛み付くかのような反応をしてしまう情シス担当が多々います。
引用:ITエンジニア採用とマネジメントのすべて 「採用・定着・活躍」のポイントと内製化への道筋が1冊でわかる
- これは情シスに限らず、ITリテラシーに格差の大きい組織では起きがちではないでしょうか
- ITエンジニアにとってはすごく簡単な技術レベルの質問で、「こんなことも分からないのか」と感じる質問を受け続けることで、神経をすり減らしてしまうことがあります
- 最初のうちは親身に対応していても、あまりにも多くの方から、初歩的な質問をされ続けることは、たしかに苦痛です
- この本では、それによって生まれている雇用があることを自覚する情シス側の意識改革も必要とされています
- 別の対策としては、そもそもその矢面に立ちづらい仕組み化が挙げられるのではないでしょうか
- 初歩的すぎる質問に工数を取られ続けるのは、生産的な活動とは言えません
- 例えば社内マニュアルを充実させたり、質問の前に、まずそちらに誘導する仕組みづくりです
テクハラの分類:クイズおじさん
- 最後の1つ、クイズおじさんです
教育や指導の一環だと信じて業務時間中にクイズを出してくるのが「クイズおじさん」です。よくあるパターンとして、突然理解度チェックのクイズが始まります。普通に会話をしているなと思ったら突如「さて、ここで問題です」と出題してくるのです。
そこで関連技術や基本となる技術などについて問われます。多くの場合、出題された側は知らない、もしくは唐突な質問に面食らって答えられません。そうなると「なんだ、そんなことも知らないのか」と説教めいた解説が始まる。出題した本人にとっては若手の教育や指導の一環でテクハラをしてしまう。これがクイズおじさんです。
(中略)
問題は伝え方でしょう。集団の前で対象者の無知を挙げつらう行為。他の社員がいる前でクイズを出し、知らないと晒し上げる。
引用:ITエンジニア採用とマネジメントのすべて 「採用・定着・活躍」のポイントと内製化への道筋が1冊でわかる
- これは悪意なくやっている場合がほとんどでしょう
- 私自身、たまにクイズのように「これってどういう意味か分かる?」と聞くことがあります
- なぜなら、自分と相手の間で知っていることに差は必ずあります
- 自分にとって当たり前に知っていることでも相手が知らなかったり、その逆も日々多いことでしょう
- そのズレを正さずに話し続けると、話したことがちゃんと理解されずに会話が終わってしまいます
- テクハラとなる『クイズおじさん』は、何より伝え方と場を見極めるべきでしょう
- 分からなかった相手を辱めるような言い方は避けるべきでしょう
- また、大勢の前で晒し上げるような形になるのは雰囲気次第でしょう
- 『無知や無能と思われる』環境だと、心理的安全性が低い状態です
- 逆にそういう環境じゃなければ、クイズ形式でダメージは負いづらいでしょう
結局はHRT
- 前回同様の結論に至ります
- HRTとは、Team Geek ―Googleのギークたちはいかにしてチームを作るのかという名著で触れられている概念です
- Humility(謙虚)
- Respect(尊敬)
- Trust(信頼)
- 人間関係トラブルはここに帰結するので、改めてHRTを浸透させていくことが重要です
終わりに
- 前回、今回と、有害な社員について解説をしてきました
- そういった社員を採用しない・対処することは大切ですが、何より影響力の大きいマネージャー自身、そういった言動をしてしまわないように注意が必要です
- 次回は時間の管理について考えます
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