前回の記事
連載の構成
- この記事は、マネジメントについて一人で考える Advent Calendar 2022の連載記事です
- 1記事目から読んでいただいても良いですし、気になる記事から読んでいただいても問題ありません
- 全25回分の構成は、次の通りです
- 第1〜6回:ドラッカーの『マネジメント』を中心に解説します
- 第7〜13回:『図解人材マネジメント入門』を中心に解説します
- 第14〜22回:『エンジニアのためのマネジメントキャリアパス』を中心に解説します
- 第23〜25回:私の経験談を中心に、まとめに入ります
キャリアパスは選ばなければならないのか
- 前回の記事で、ITエンジニアのキャリアパスは大きく分けて"マネジメント"と"スペシャリスト"に分かれると解説しました
- これらキャリアパスのどちらを目指すか、必ず選ばなければならないのでしょうか?
- 若手エンジニアから、「将来どういうエンジニアになりたいとか無いんですよね」と言われた時、どうすればいいのでしょうか?
筏下りと山登り
- キャリアを考える時に、筏下り(川下り)と山登りに例えられることがあるので引用します
私はキャリア形成について考えるときに、よく「いかだ下り」と「山登り」に例えます。
ある程度の職業経験ができるまでは、上から降ってくる仕事をあれこれ選ばないで、がむしゃらに業務に取り組みスキルを磨くことが必要です。いかだ下りをするときは、とにかく目の前の状況に集中して、あれこれ考えず前に進むことが求められますよね。あの感覚に似ています。
ただ、いつまでもいかだ下りをしているだけでは、ダメです。ある程度、いかだ下りの経験をしたら、自分で目標を定めてプロフェッショナルとしてキャリアを形成していかなければいけません。これを「山登り」と呼んでいます。
個人差はありますが、私の感覚では35歳からは「山決め」の時期だと思います。「このジャンルの仕事は私に任せて!」「この仕事なら社内の誰よりも詳しい!」――そんなあなたなりの専門性が40歳くらいまでに定まってくるといいですね。
- この考えはあくまでも1つの考えなので、盲信する必要は無いでしょう
- 35歳で登るべき山を決めていない方も多いでしょうし、生涯筏下り人生に生きがいを感じる方もいらっしゃるでしょう
- ただ、自分のキャリアについて漠然とした不安があったり、それによって日々の行動がどっちつかずでくすぶってしまうよりは、信じてみるのも良いのではないでしょうか
- そもそもキャリアが明確な社員は少なく、「コードを書くのが好きだからこの仕事を続けたい」といった回答も出がちです
- その際、筏下りと山登りの話を持ち出してみてはいかがでしょうか
自分の経験に依存していないか?
- 「キャリアビジョンが無い」に対して、マネージャーとしてどう返答していますか?
- 「いや、一生に関わることだからしっかり将来のビジョン考えようよ」と言うのか
- それとも「そうだよね、いろいろ体験してゆっくりキャリアビジョン考えていこうか」と言うか
- だいたい上記二択になってしまうのではないでしょうか
- そしてこの二択は合理性や根拠があるわけではなく、自分がどちらでキャリアを築いてきたかに依ってしまうのではないでしょうか
- ビジョンを掲げて成長してきた方は「ビジョンが大切」と言いがち
- 目の前のことをがむしゃらに取り組んで成長してきた方は「目の前のことに集中して取り組めば、後から付いてくる」と言いがち
- そこで、筏下りと山登りの考え方は1つの回答になるでしょう
- そしてこの二択は合理性や根拠があるわけではなく、自分がどちらでキャリアを築いてきたかに依ってしまうのではないでしょうか
- もちろん一種のフレームワークのため、全員無理に型にはめる必要はありません
キャリアビジョンが決まっていれば問題ないのか
- では逆に、「将来こうなりたい」というビジョンが決まっていればそれで問題ないのでしょうか?
- それは理由にもよるでしょう
- 例えば「将来マネージャーになりたい」と言われたケースです
- 後継者候補の存在は嬉しいでしょうが、理由の深堀りをしましょう
- 給料を上げたい、偉ぶりたいといった、自分よがりの理由ばかり出てくる場合は危険です
- マネージャーの資質は連載第4回で書いたように"真摯さ"です
- また、真摯さの欠如も記載しているため参考にしてください
- 逆に「将来スペシャリストになりたい」と言われたケースも考えてみます
- ありがちなのが、「コミュニケーション力に自信無く、マネージャーは向かないためスペシャリスト目指します」というケースです
- 確かに、自分に不得意なことを無理に克服する必要は無いです
- ですが、そもそもマネージャーはコミュニケーション力に自信が無いと無理なのでしょうか?
- また、"目指したくないからこっちしかない"という選び方は大丈夫でしょうか
- ありがちなのが、「コミュニケーション力に自信無く、マネージャーは向かないためスペシャリスト目指します」というケースです
ネガティブ感情回避ばかりだと大変
- 前述の「コミュニケーション力に自信無く、マネージャーは向かないためスペシャリスト目指します」というケースをもう少し考えてみます
- "やりたくないこと、苦手なこと"を回避したい→だから"その逆しか選択肢が無い"という消極的な選択が真っ先に理由として挙がるなら、少し心配です
- マネージャーが向かないからスペシャリスト
- スペシャリストが向かないからマネージャー
- どちらの役割も、それだけで全うできるほど楽な役割ではないです
- ネガティブ感情を一切持ってはいけないと言うつもりはありません
- 得意不得意があることは当然ですし、より適正がある方を目指すのは自然な選択です
- しかし、"やりたいこと、得意なこと"→だから"やりたい"というロジックの方が、苦労が少ないです
- ネガティブ感情から考えるのも駄目ではないですが、少なくとも選んだ選択肢にポジティブな感情を持てていないなら、仮に役割を担うことになったら苦労が多くなります
それぞれのキャリアで経験する苦労とは
- 実際私はマネジメントとスペシャリスト両方経験しましたが、どちらも異なる大変さがあります
- マネジメントは心労が多いです
- メンバーの目標や事業目標のプレッシャー、人間関係トラブル対応等
- スペシャリストは技術の追従が大変です
- 名ばかりスペシャリストは恥ずかしいので追従を試みるものの、技術トレンドの移り変わりが激しく範囲も広い
- マネジメントは心労が多いです
- こういった苦労を経験した時、「そもそもやりたくてやっている役割じゃないし…」となると、役割を全うするのが相当しんどくなります
- やりたくないことから回避するための選択は自己決定感が薄く、モチベーション維持に繋がりづらいです
実は思い込みが多い
- ここまで散々マネジメントとスペシャリストの苦労を書いてきてしまいました
- ですが実際経験すると、苦労以上に楽しみも多いです
- 経験するまでは推測・憶測でしか無いので、実は思い込みが非常に多いです
- この記事で触れた「コミュニケーション力に自信無く、マネージャーは向かないためスペシャリスト目指します」は典型的な例です
- マネージャーにコミュニケーション力が重要であるという思い込み
- スペシャリストにコミュニケーション力が対して重要ではないという思い込み
- そもそもコミュニケーション力に自信のある人間は稀有ですし、エンジニアともなると絶滅危惧種です
- 無関係とは言わないけれど、重く捉えすぎなケースがほとんどです
- 他にも、キャリアパスは一度選んだら変えられないという思い込みも多いように感じます
- 全然途中で変えても大丈夫です
- 不確実性の高い現代において、キャリアを1つに絞るほうが危険ではないでしょうか
- 2・3年ごとに交代できるのであれば、マネージャーの技術力不足や属人化、組織の停滞感も解消できるのではないでしょうか
- この記事で触れた「コミュニケーション力に自信無く、マネージャーは向かないためスペシャリスト目指します」は典型的な例です
結局"目指したい"と思ってもらえるか
- 何より大事なのは前述の通り、経験したことは推測・憶測でしかないです
- それに対してポジティブ方向に解像度を高めるのかネガティブ方向に高めるのか、大きな影響を与えるのは何より先輩社員です
- 先輩社員であるマネージャーやスペシャリストが、
- 魅力的な働き方をしているか?
- 働いていて楽しそうか?
- 先輩社員であるマネージャーやスペシャリストが、
- 日々の言動や勤務時間、業務内容が魅力的に見えるなら、自然とポジティブ感情に向かっていくのではないでしょうか
終わりに
- 今回はキャリア形成における筏下り型と山登り型について解説しました
- 次回はスペシャリストって実際どうなの?という点について考えていきます
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