はじめに
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上司と部下による、1対1の個人面談である1on1
- 近年は様々な書籍や記事で紹介され、一般的な手法となってきている
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この記事では主に2冊の書籍(オライリー)から引用し、そこに所感を足して、1on1について解説していく
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参考書籍
なぜやるか
- そもそも1on1をやる意味は何か?を、それぞれの本では以下のように解説されている
定期的な1-1は車のエンジンオイル交換と似ている。怠っていると、大きな道路で最悪のタイミングでエンストが起き得ると覚悟していなければならない。 マーク・ヘドルンド
引用:エンジニアのためのマネジメントキャリアパス ―テックリードからCTOまでマネジメントスキル向上ガイド
マネージャーであれば、大きなレバレッジをかけられるような機会を見つけたいと思うことでしょう。幸いなことに、スタッフとの毎週の1on1は、そのための最高の場所の1つです。
引用:エンジニアリングマネージャーのしごと ―チームが必要とするマネージャーになる方法
- 2冊で若干スタンスが異なるのが面白い
- 前者は"メンテナンス"の観点、いわば守りの観点が強め
- 後者は"レバレッジ"の観点、いわば攻めの観点が強め
- どちらが正解というわけではない
- "マネジメント"の日本語訳が管理することではなく"なんとかすること"であることを考えると、両方の側面があるのでは
- 会社組織の仕組みとして1on1が当たり前になってくると、そもそもなぜやっているのか忘れられがち
- 有意義に活用するため、明文化しておいた方が良さそうである
頻度
- 1on1をやる頻度について、どちらの本でも "週1" が推奨されている
1-1のスケジュリングの標準とも言えるのが「週1」です。当面「週1」のスケジュールでやってみて、あなたも部下も共に「こんなに頻繁にはやる必要がない」と感じた場合に限り頻度を調整すればよいでしょう。
引用:エンジニアのためのマネジメントキャリアパス ―テックリードからCTOまでマネジメントスキル向上ガイド
スタッフ一人ひとりと毎週1on1をやりたいと思うことでしょう。そう、毎週です。例外はありません。安定したリズムと規則性がこのミーティングのカギです。毎週行うことで、スタッフとの関係性に予測可能性をもたらし、毎週あなたがスタッフのために存在することを示すのです。
引用:エンジニアリングマネージャーのしごと ―チームが必要とするマネージャーになる方法
- 前提週1を基本としつつ、ここは組織次第では変えざるを得ないケースもありそう
- 例えばメンバーの人数が多すぎて、毎週やっていると1on1だけで予定が埋まってしまう場合は減らさざるを得ない
- ジェフ・ベゾスが提唱する2枚のピザ理論から言えば、8人超える組織構造に無理があるようにも思うが…
- それ以外でも、単純に部下と直属上司間だけでなく、その一つ上の上司や参画プロジェクトリーダーと行う場合
- 通常業務に支障を来すレベルで1on1が多いと困るので、その場合も頻度は調整が必要
- ただしこれも、本当に頻度を落としてでもその全員と1on1をやる必要があるのか?を考える
- 結果的に、大多数は週1に収束してくる
- 例えばメンバーの人数が多すぎて、毎週やっていると1on1だけで予定が埋まってしまう場合は減らさざるを得ない
実施場所
- どちらの本でも、 プライベートエリア で行うことが推奨されている
オフィスに物があふれてスペースが乏しく、プライバシーの守れる会議室にも数に限りがある、というのはよくある状況ですが、それでも1-1はできる限り他の人の耳や目のない場所で聞きましょう。そうすれば微妙な問題でも「誰かに聞かれているのでは」などと心配することなく自由に話し合えます。
引用:エンジニアのためのマネジメントキャリアパス ―テックリードからCTOまでマネジメントスキル向上ガイド
毎週同じ時間に、同じ場所でやるのが理想です。
(中略)
ミーティングは必ず会議室などのプライベートエリアで行うようにしてください。休憩スペースやデスクのそばなどのパブリックエリアは避けます。そうしないと、プライベートな会話が聞かれてしまうリスクがありますし、場所のせいで、暗黙のうちに、あなたがプライベートなことを聞くつもりがないと思われてしまうかもしれません。
引用:エンジニアリングマネージャーのしごと ―チームが必要とするマネージャーになる方法
- これは初期の頃は意識できていても、1on1を繰り返すうちに忘れられがち
- 本人同士でしか共有しないプライベートな相談もあるため、原則音が漏れないプライベートエリアで行う
- リモートワークの場合にやむを得ずパブリックエリアで行う場合、少なくともスピーカーではなくイヤホンを使う配慮は必要
- とはいえ周囲の話し声や環境音が入りやすいので、リモートワークであってもプライベートエリア確保を最優先とすべき
- 引用元では同じ場所でやるのが理想と書いてあるので、あらかじめ定例予定で会議室を押さえておくのがベスト
共有方法
- 会話をその場限りのやり取りに留めるのではなく、ドキュメントとして共有しておくことが書かれている
最後にもう1点、1-1の議事録は共有ドキュメントの形で作成し、管理することをお勧めします。初期は上司であるあなたが務めてください。(中略)作業の進捗状況や職場での出来事などのコンテクストを常時把握する上で有用ですし、いつ、どのようなフィードバックがなされたかを思い出そうとする際にも役立ちます。
引用:エンジニアのためのマネジメントキャリアパス ―テックリードからCTOまでマネジメントスキル向上ガイド
1on1の間、共有ドキュメントにメモを取ったり、アクションをアサインしたりすると役に立ちます。ミーティングの最後に、アクションを見直しましょう。通常、私はノートPCを使って、直接共有ドキュメントに書き込んでいます。
引用:エンジニアリングマネージャーのしごと ―チームが必要とするマネージャーになる方法
- 1on1でTODOが出てくることも多いので、その項目は太字にすることも推奨されている
- これをしないと、1on1で話しっぱなしになり行動が途切れたり、忘れ去られることも多い
- お互い何を喋ったかは、記憶からすぐに無くなっていきがち
- 先週何を喋ったか思い出すツールとしても役に立つ
- 共有先は本人同士に絞ること。共有フォルダに配置してしまうと、プライベートな相談がしづらくなってしまう
アンチパターン
上司が喋ってばかりにしない
1on1は、毎週スタッフに良い影響を与える最高の機会ですが、あなたのものではなく相手のものであると、逆説的に考えなければいけません。
(中略)
全体の70%の時間は部下に話してもらうようにしてください。相手の変わりに問題を解決したいと思っても、それはしないでください。別の質問をして、相手が自分自身で結論にたどり着くようにしてください。
引用:エンジニアリングマネージャーのしごと ―チームが必要とするマネージャーになる方法
- これもあるある
- ずっと上司が喋り続けてしまうパターン
- 部下から指摘はしづらいので改善もされづらい
- そもそも部下は答えを求めているのか、ただ傾聴してほしいだけなのか
- 答えを求めていたとしても、それを全て上司から提示されてしまうとどうなるか
- 自分で考える機会が奪われ、成長のチャンスを逃してしまう
- だからといって、全て部下に丸投げが正解とも限らない
- お互いに何を求めているのかすり合わせる必要がある
- 答えを求めていたとしても、それを全て上司から提示されてしまうとどうなるか
状況報告の場にしない
1on1は、状況報告のミーティングではありません。スタッフが取り組んでいるタスクを繰り返し確認することを主目的にはしないでください。(中略)仕事に関する問題やパーソナルデベロップメントについて話せるように、時間の大部分は空けておきましょう。
引用:エンジニアリングマネージャーのしごと ―チームが必要とするマネージャーになる方法
- 日頃コミュニケーション機会が少ない上司と1on1をすると、このパターンにはまりがち
- プライベートであったことの状況報告であればまだ良いが、仕事における状況報告の場になってしまわないように
- それらは本来、口頭やテキストコミュニケーションで都度されているべき
- 1on1で状況報告が当たり前になると
- 1on1の場でしか状況報告されない=意思決定や行動のスピード感が落ちる
- 1on1における状況報告以外の時間が無くなる=1on1本来の目的を果たせない
- プライベートであったことの状況報告であればまだ良いが、仕事における状況報告の場になってしまわないように
- 状況報告ばかりになる1on1があった場合、まずは状況報告はリアルタイムにしてほしい旨を伝える
- その上で、関係性やコミュニケーション手段が乏しいことでそういった状況に陥っている可能性がある
- その改善も同時に考え、実行していく
- その上で、関係性やコミュニケーション手段が乏しいことでそういった状況に陥っている可能性がある
セラピーにならない
勤勉で思いやりがあり、話を聞くのがうまいマネージャーの場合、1on1が、スタッフのセラピーセッションになってしまうことがあります。これはこれで役に立つかもしれませんが、あなたはそのトレーニングを受けているわけでもなければ、セラピーセッションで扱う問題を1on1で扱うのがふさわしいとも限りません。
(中略)
スタッフのことが心配になってきた場合には、心配していることを伝え、適切な第三者と話してはどうかと聞いてみるのがいちばんです。それなりの規模の会社であれば、助けてくれるHR部門もあるでしょう。また、上司にも何をすべきか助けを求めましょう。
引用:エンジニアリングマネージャーのしごと ―チームが必要とするマネージャーになる方法
- 心身に支障を来している場合
- それを解決できる人、専門家への相談を促す
- 専門外の領域まで、全て上司が解決しようとしない
まとめ
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なぜやるか
- メンテナンスとレバレッジ
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頻度
- 原則週1
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実施場所
- プライベートエリア
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共有方法
- 共有ドキュメント
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アンチパターン
- 上司が喋ってばかりにしない
- 状況報告の場にしない
- セラピーにならない
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今回はエンジニアリングマネジメントに関する2冊の書籍を引用した
- が、基本的には職種問わずに共通して使える知識である
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こういった取り組みをしている等のご意見があれば、ぜひコメントを