はじめに
生成AIをはじめとするAI技術に興味があり、Copilot+ PCを体験してみたいと考え、2024年12月にAMD Ryzen AI 7 PRO 360 プロセッサーを搭載したAI PC ThinkPad T14s Gen 6 Strix Point を購入しました。
早速使ってみましたが、新しく搭載されたCopilotキーを押しても、オンライン版のMicrosoft Copilotが起動するのみで、ローカルのNPUを使用している様子はありませんでした。その後の操作で、「Windowsスタジオエフェクト」で自動フレーミングやアイコンタクト、背景の効果を有効にすると、NPUを使用することがわかりました。
同様の機能は、ThinkPadにプリインストールされているLenovo Viewアプリにも搭載されており、Windowsスタジオエフェクトとは独立した設定となっています。Lenovo Viewの設定でもNPUを使用していることが確認できました。MicrosoftのFAQによると、Copilot+ PCの様々な機能が一般ユーザー向けに本格的に展開されるのは2025年以降とのことです。
やや期待外れな思いを抱きながらThinkPad T14s Gen 6 Strix Pointのセットアップを進めていたところ、内蔵カメラが動作しないことに気がつきました。ZoomやGoogle Meetの画面にアクセスすると、カメラが接続されていないなどのエラーが発生しました。Windowsのカメラアプリでも同様の症状が見られたため、特定のアプリケーションの問題ではないと判断しました。
この原因を特定するのにかなりの時間を要したため、同様の問題に直面する方の参考になればと思い、記録として残すことにしました。
結論
AMDのグラフィックスとCPUドライバーを最新版にアップデートしたことが原因でした。アップデートしたドライバーをアンインストールすることで、内蔵カメラが動作しない事象はほぼ解消されました。詳細は以下に記載します。
この解決策は、筆者の端末で確認したものです。すべてのThinkPad T14s Gen 6 Strix Pointで発生している事象であるか、またAMDのドライバーが原因であるかは断定できません。Lenovoのサポートに状況を細かく伝えたところ、インストールしたAMDのドライバーが原因であろうからアンインストールしてほしい旨の回答がありました。この挙動については、社内にフィードバックするそうです。
なお、購入時のOSはWindows 11 Homeでしたが、カメラの動作確認前にWindows 11 Proへアップグレードしたため、Windows 11 Homeでの事象の有無は不明です。
Lenovoの海外フォーラムを見るとThinkPad Tシリーズでカメラが動作しないという書き込みが多数あるので、グラフィックスドライバーとカメラデバイスとの相性に問題がある気がします
実施した対応
ThinkPadにはAMD Software
というアプリケーションがプリインストールされています。
このアプリケーションを起動すると、エラーダイアログが表示されました。
ダイアログの指示に従ってAMD.comにアクセスしたところ、最適なドライバーが自動検出される仕組みになっていました。Download Windows Drivers
をクリックし、ダウンロードしたamd-software-adrenalin-edition-24.12.1-minimalsetup-241204_web.exe
を実行。その後、FULL INSTALLを選択してインストールを完了しました。
内蔵カメラの動作不良
OSを再起動し、事前にセットアップしていた顔認証でログインを試みました。顔認証でログインできたことから、この時点ではカメラは正常に動作していました。しかし、ログイン後にカメラアプリやZoomを起動すると、カメラが認識されなくなりました。特にZoomアプリでは、設定画面を開くとアプリがフリーズし、ルーム入室時の音声テストなどで動作が停止するため、入室すらできない状態となりました。
デバイスマネージャーから内蔵カメラをアンインストールすると一時的に復旧するものの、Windows Updateなど何らかのタイミングで再び動作しなくなることが確認されました。
以下のスクリーンショットのように、カメラプレビューとカメラアプリの起動に失敗します。
エラーコード 0xA00F429F (0x80070003)は、アプリケーションがカメラを認識出来ない状態を示すエラーコードのようです。
AMDドライバーのアンインストールによる改善
AMDドライバーをインストールしたあとの状態
このときのドライバーのバージョンは、32.0.12033.1030 でした。
デバイスに問題があり、起動できなかったログが記録されています。
このとき、ログイン画面の顔認証ではカメラが動作し、ログイン後に動作しなくなるという現象から、AMDのグラフィックスドライバーが問題の原因である可能性を考えました。インストールしたドライバー類とAMD Softwareをアンインストールしたところ、カメラが復旧し、Google MeetやZoomでカメラが使用できるようになりました。
これらのアンインストール後のドライバーのバージョンと状態は以下のようになりました。
このときのドライバーのバージョンは、32.0.11026.11002 でした。
Lenovoのサポートサイトで提供されているドライバーをみると、32.0.11026.8002となっておりバージョンが若干異なります。
AMD Radeon Graphicsのデバイスのアンインストール
を行いWindowsを再起動したところ、ドライバーのバージョンが32.0.11026.8002に戻りました。
しかし、Windows Updateでドライバー更新プログラムが適用され32.0.11026.11002に戻ってしまいました。
このバージョンは内蔵カメラが起動するので、問題ないようです。
クリーンインストールによる検証
AMDのグラフィックスドライバーをアップデートせずに他のセットアップを進めた場合、同様の事象が発生しないかを確認するため、Windows 11の設定 > システム > 回復 > このPCをリセットから、Windows 11 Proのクリーンインストールを実施しました。その結果、予想通り事象は発生しないことが確認できました。
Zoomアプリの残存問題
カメラの問題は概ね解決したものの、Zoomアプリでルームに入室する際のみ、依然としてアプリがフリーズする現象が続いています。一方、Webブラウザー版のZoomでは問題は解消されました。フリーズ後、数分待機するとルームに入室できる場合もありますが、動作は不安定な状態です。これについても、Lenovoのサポートに伝え、AMDドライバーの件とともに社内にフィードバックしていただけるようです。
今回の検証の範囲では、この問題がAMDのグラフィックスドライバーやRyzenプロセッサーと関連しているかについては、現時点では特定できていません。
結論 その2
ドライバーの更新は、Lenovoの公式アップデートを利用することをお勧めします。
(プリインストールされているアプリを起動して指示通りにドライバーをインストールすると不具合が発生するのは、製品として改善の余地があると考えられます)