#1 はじめに
以前に記載した研究テーマとその参画機関のネットワーク分析の方法により、埼玉県が平成26年度から実施している「先端産業創造プロジェクト」のネットワーク分析をしてみようと思います。
「先端産業創造プロジェクト」は、ナノカーボン、医療イノベーション、ロボット、新エネルギー、航空・宇宙の5分野について、大学・研究機関等と企業が連携して行う研究開発プロジェクトで、その概要はこちらです。
#2 分析の方法
こちらに掲載されている情報をもとに、各プロジェクトに対する機関の参画の状況を以下のとおり整理しました。
*表では空欄のセルがありますが、実際にcsvファイルにする時は「0」にする必要があります。
参画機関が行、プロジェクトが列に対応しており、プロジェクトに参画していれば1、参画していなければ0になっています。また、略称は以下のとおりです。
- 参画機関→企業:c、大学:u
- 研究テーマ→ナノカーボン:NC、医療イノベーション:MTI、ロボット:R、新エネルギー:NE、航空・宇宙:AS
まずはこの行列を記載した"saitama.csv"を読み込み、グラフ化してみます。
saitama <- read.csv("saitama.csv", row.names = "saitama")
saitama <- as.matrix(saitama)#行列に変換。
result <- saitama%*%t(saitama)#転置行列を乗じる。
library("igraph")
result<-graph_from_adjacency_matrix(result, mode = "undirected",weighted=TRUE,diag = FALSE)
plot(result,edge.width = abs(E(result)$weight)*2)#重複するエッジは幅の広さに比例してまとめる。
このグラフについて、中心的な機関をわかりやすくするため、ノードの大きさを媒介性に比例させます。
なお、単に比例させるとうまく表示されないので、0.1倍にします。
plot(result,edge.width = abs(E(result)$weight)*2,vertex.size=betweenness(result)*0.1,main="betweenness")
#3 まとめ
この図から、もっとも媒介性が高い機関は「u1」であることがわかります。
ただし、HP上では具体的な研究者名が確認できなかったため、もし同じ大学内の別々の研究者の方が別々のプロジェクトに参画していたとしたら、高い媒介性を有していないかもしれませんね。
Grabherの「Trading routes, bypasses, and risky intersections: mapping the travels of `networks' between economic sociology and economic geography」によれば、「ネットワーク分析は、構造とそれを定量化する方法を重視するあまり、アクターおよびその関係の実質、内容を軽視してしまう恐れはある」(水野真彦著「イノベーションの経済空間」p64)とのことですが、示唆に富んだ記述だと思います。