Sveltosの概要
Sveltosは、複数のKubernetesクラスタ(マルチクラスタ)にまたがるアドオンやアプリケーションのデプロイと管理を簡素化するオープンソースのコントローラです (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。典型的には一つの管理クラスタ(マネジメントクラスタ)上で動作し、そこから他の管理対象クラスタに対して設定やアドオンを集中管理します (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。ユーザはYAMLによって各クラスタ群の望ましい状態(desired state)を宣言し、Sveltosがそれを各クラスタに反映・維持することで、一貫性のある構成管理と自動化を実現します (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。
Sveltosはさまざまな形式のマニフェストに対応しており、Helmチャート・生のYAML/JSON・Kustomize・Carvel ytt・Jsonnetなど、多様な方法で定義されたリソースを取り扱うことができます (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。これにより既存の様々なツールやリポジトリ形式を活かして、マルチクラスタ環境全体に対してアドオンの配布・更新を行えます。また、マルチクラスタ運用で課題となる各クラスタごとの設定差異(バージョン違いやネットワーク設定など)にも柔軟に対応できるよう、テンプレート機能によりリソース定義内で変数を用いてクラスタ固有情報を埋め込むことが可能です (projectsveltos · GitHub)。Sveltosは「適切なラベルを付けて新しいクラスタを追加すれば、自動的に望ましい状態に持っていく」というモットーのもと設計されており (projectsveltos · GitHub)、複雑なマルチクラスタの運用負荷を大幅に軽減します。
Sveltosのアーキテクチャと内部構造
管理クラスタ上で動作するSveltosは、複数のKubernetesコントローラ(Custom Controller)から構成されます (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。管理対象となる各クラスタは、管理クラスタ内に専用のカスタムリソース(CR)として登録され、例えばSveltosCluster
というCRにクラスタ名や接続情報、ラベルなどが紐づけられます (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。Sveltosはこのクラスタリソースに付与されたラベルを基に、対象クラスタを選択(セレクション)して設定を適用します (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。具体的には、後述するClusterProfileというCRで「env: production」などのラベル選択を指定すると、そのラベルを持つ全クラスタ群に対し定義されたアドオンを適用する、といった動作です (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。このようにラベル駆動で構成適用範囲を動的に管理できるため、新しいクラスタが追加された場合でも適切なラベル付けさえ行えば自動で必要なリソースが展開されます (projectsveltos · GitHub)。
管理クラスタと各クラスタ間の通信には、Sveltos独自のエージェント(sveltos-agent)が用いられます。クラスタ登録時、Sveltosは管理対象クラスタ内にServiceAccountや必要なRBACを作成し、その認証情報を管理クラスタにSecretとして保存します (Sveltos: Argo CD and Flux CD are not the only GitOps Tools for Kubernetes | by Artem Lajko | ITNEXT)。さらに対象クラスタ上にSveltosエージェントPodを自動デプロイします (Sveltos: Argo CD and Flux CD are not the only GitOps Tools for Kubernetes | by Artem Lajko | ITNEXT)。このエージェントは管理クラスタのコントローラと連携し、指示されたリソース(マニフェストやHelmリリース)をクラスタ内に適用する役割を担います。またエージェントは継続的にクラスタの状態を監視し、ドリフト検知(実際の状態が期待する状態から逸れていないか)を行います (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。もし手動変更や予期せぬ事態で構成にずれが生じた場合、エージェントが管理クラスタ側にイベントを報告し、必要に応じてSveltosがそのクラスタに再同期(再適用)を行って望ましい状態に戻します (Sveltos: Argo CD and Flux CD are not the only GitOps Tools for Kubernetes | by Artem Lajko | ITNEXT)。このようなエージェントベースの同期モデルにより、従来のツールが全クラスタをポーリングして状態チェックするのに比べ、Sveltosは必要時にのみ同期を行うため大規模環境でも効率的でリソース消費が抑えられるという利点があります (Sveltos: Argo CD and Flux CD are not the only GitOps Tools for Kubernetes | by Artem Lajko | ITNEXT)。なお、Sveltosにはエージェントを各クラスタに配置しない動作モード(全エージェントを管理クラスタ内で動かし、リモートの各クラスタAPIを操作する方式)も用意されています (Sveltos: Argo CD and Flux CD are not the only GitOps Tools for Kubernetes | by Artem Lajko | ITNEXT)。これはKamajiという分散コントロールプレーンの手法に着想を得たもので、ネットワーク制約上エージェントPodを動かせない場合や管理クラスタへの集約運用をしたい場合に選択できます。
Sveltosが利用する主な**カスタムリソース(CRD)**は以下の通りです:
- ClusterProfile(クラスタプロファイル): どのクラスタ群にどのリソース(アドオンや設定)を適用するかを定義する中核のCRDです (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。ClusterProfileにはクラスタ選択子(clusterSelector)としてラベル条件を指定し、その条件に合致するクラスタすべてに対して適用すべき内容(Helmチャートやマニフェスト群)を記述します。ClusterProfileは管理クラスタ内の任意のネームスペースに作成可能で、プラットフォーム管理者が全クラスタ共通のポリシーや標準アドオンを配布する用途に向きます (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。
- Profile: ClusterProfileに似ていますが、Profileは特定のネームスペース内に限定され、そのネームスペースに対応付けられたクラスタ(例:マルチテナント環境で各チーム固有のクラスタ)にのみ設定を適用するためのCRDです (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。これによりテナントごとの独立した管理が可能となり、他のチームやテナントに影響を与えずにアドオン適用を制御できます (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。簡潔に言えば、ClusterProfileがグローバルな設定適用用であるのに対し、Profileは局所的(テナント単位)の設定適用用です (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。
-
Classifier(クラスタ分類): 各クラスタの実行時の状態に基づいて、自動的にクラスタへラベル付与するためのCRDです。たとえばClassifierに「Kubernetesのメジャーバージョンがv1.24系ならラベル
version: v1.24
を付ける」と定義しておけば、クラスタがバージョンアップした際にSveltosが自動で対応するラベルを書き換えます (Conf42: Manage Kubernetes addons for multiple cluster using runtime state)。この仕組みにより、クラスタがアップグレードされた場合でも管理者が手動でラベル付与変更することなく、ラベルに基づくClusterProfile適用対象が自動更新されます (Conf42: Manage Kubernetes addons for multiple cluster using runtime state)。結果として、クラスタの状態変化(例:K8sバージョンアップや特定のアプリケーション有無)に応じて適用するアドオンセットを自動で切り替える、といった動的管理が可能です (Conf42: Manage Kubernetes addons for multiple cluster using runtime state)。 - EventSource / EventTrigger(イベントソース・イベントトリガー): Sveltosのイベント駆動フレームワークを構成するCRDです。EventSourceは監視すべきイベントの種類を定義し(例:特定のKubernetesリソースの生成/削除、または外部メッセージングシステム上のトピック)を指定します。一方EventTriggerは、どのクラスタ群で(clusterSelector使用)、どのEventSourceに対して、どのアクションを実行するかを定義します (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。アクション部分では、イベント種別に応じて「リソースを作成 or 削除」などのロジックを記述でき、場合によってはLua言語で柔軟なスクリプトを書くことも可能です (projectsveltos · GitHub)。この仕組みにより、後述するように「外部システムでユーザがログインしたイベントを受け取ったら、自動で該当クラスタに名前空間を作成する」等のイベントドリブンな制御が実現できます (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。
- その他のCRD: 上記の他、SveltosにはHealthCheck(各クラスタ内のカスタムヘルスチェック定義とモニタリング)や、クラスタのスナップショット/ロールバック用のCRD(後述)などがあります。必要に応じてこうしたCRDを用いることで、クラスタの状態監視や設定の巻き戻し等、高度な運用管理機能を利用できます。
Sveltos自体はKubernetesネイティブに実装されており、これらCRDとコントローラによって拡張されたコントロールプレーンとして振る舞います。したがってkubectlやKubernetes API経由でSveltosの各種リソースを操作でき、他のKubernetesツール(FluxやArgo CDなど)と連携させることも可能です (Sveltos: Argo CD and Flux CD are not the only GitOps Tools for Kubernetes | by Artem Lajko | ITNEXT)。実際、SveltosはGitOpsスタイルの運用を補完すべくFlux CDとの統合もサポートしており、FluxがGitリポジトリからClusterProfile/Profileを自動同期し、Sveltosがそれを解釈してクラスタ群へ展開するという構成も取れます (Sveltos: Argo CD and Flux CD are not the only GitOps Tools for Kubernetes | by Artem Lajko | ITNEXT)。このようにSveltosは既存エコシステムと協調しながら、マルチクラスタ管理に必要な要素を包括的に提供するよう設計されています。
Sveltosの主要機能
Sveltosの特徴的な機能を以下に整理します。
- マルチクラスタ一元管理: 複数クラスタのアドオンやポリシーを単一の管理クラスタから集中管理します。ラベルによるクラスタ選択と一括適用により、「Single Pane of Glass(一枚板)」的に全クラスタの構成をコントロールできます (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。新たなクラスタが追加されても、適切なラベルさえ付ければ自動で所定のアドオンが展開されるため、スケーラブルな運用が可能です (projectsveltos · GitHub)。
- 多様なデプロイ形式対応: 前述のとおり、Helm・Kustomize・YAML/JSON・Carvel・Jsonnetといった多彩な形式のリソース定義を扱えます (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。これにより、既存のHelmチャートやGitOpsレポで管理しているマニフェスト資産をそのまま活用できます。SveltosのClusterProfileではHelmチャートのリポジトリURLや値Overridesを直接指定できるほか、Gitリポジトリ上のKustomizeディレクトリ参照なども可能です (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita) (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。
-
宣言的アプローチと自動同期: Kubernetesにならい宣言的(デクレラティブ)にDesired Stateを定義し、Sveltosが実際のクラスタ群をその状態に継続的に合わせ込みます (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。**SyncMode(同期モード)**の設定により挙動を調整でき、例えば
Continuous
にすると常時監視&自動修復が行われ、ContinuousWithDriftDetection
ではエージェントによるドリフト検知時にのみ再同期する、といった動作になります (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。いずれの場合も手動でのkubectl apply
を繰り返す必要はなく、コントローラが能動的にクラスタ状態を管理してくれます。 -
テンプレート機能: Sveltosでは適用するリソースをテンプレートとして扱うことができます (projectsveltos · GitHub)。マニフェスト内にプレースホルダー(
{{ }}
で囲まれた式)を記述し、管理クラスタや各クラスタから取得した情報でそれを埋め込んだ上で配布します (projectsveltos · GitHub)。例えば名前空間リソースの名前部分に.ClusterName
やイベントの内容(.CloudEvent.subject
等)を埋め込むことで、各クラスタやイベントに応じたカスタムリソースを自動生成・適用できます (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。この機能により一つの汎用的なテンプレート定義から各環境に合わせたリソースを作成でき、マルチクラスタ運用の標準化と管理オーバーヘッド削減に寄与します (projectsveltos · GitHub) (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。 - イベントドリブン自動化: イベントフレームワークを備えており、クラスタ内外のイベントに応じた動的なアクションが可能です (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。従来は「Podが追加されたら別のDaemonSetをデプロイする」等、Kubernetes内部のイベントに限定されがちでしたが、Sveltosは外部メッセージングシステム(例:NATS)からの通知にも反応できます (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。CloudEvents形式の汎用イベントを受信し、それに対応したリソース適用や削除をトリガーできるため、Kubernetesクラスタを他システムと連携した自動化ワークフローに組み込めます (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。この機能による具体例は後述のユースケースで詳述します。
- 構成のドリフト検知と自己修復: Sveltosはデプロイ後も各クラスタの構成状態を追跡し、宣言された設定との不一致(ドリフト)が生じれば自律的に修正を試みます (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。たとえば管理者が誤ってクラスタ上の重要なアドオンを削除してしまった場合でも、Sveltosエージェントがそれを検知し、自動的に再デプロイして望ましい状態を回復します (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。この自己ヒーリング能力によりヒューマンエラーや予期せぬ変更からクラスタを守り、安定性と一貫性を高めます。
- クラスタ分類と動的ラベル付け: Classifierにより、クラスタのランタイム情報をもとに自動ラベル更新が可能です (Conf42: Manage Kubernetes addons for multiple cluster using runtime state)。これを活用すると、クラスタのKubernetesバージョンやインストール済みリソースに応じてラベルを動的に設定できます。たとえば「v1.24系クラスタにのみIngressコントローラAを適用し、v1.25以上では新バージョンBを適用する」というポリシーを、Classifier+ClusterProfileで実現できます (Conf42: Manage Kubernetes addons for multiple cluster using runtime state)。実際にクラスタをアップグレードするとClassifierが自動でラベルを書き換え、それにマッチする別のClusterProfileが適用されて新しいアドオンが展開される、という流れです (Conf42: Manage Kubernetes addons for multiple cluster using runtime state)。このように長期運用中のクラスタでも状態変化に追随した構成変更を自動化できます。
- マルチテナンシー対応: Sveltosは設計段階からマルチテナントを意識しており、ClusterProfile(グローバル)とProfile(ネームスペース単位)による使い分けでテナントごとの分離を実現しています (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。各チームや部門が自分のNamespace内でProfileを作成し、自身が管理するクラスタ群にのみ作用させることが可能です (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。一方でプラットフォーム管理者はClusterProfileを用いて全クラスタ共通の基盤機能(ネットワーク、監視、ポリシーなど)を適用できます。この二層構造により、真の意味でのハードな分離とガバナンスを両立し、大規模組織でも安全なマルチクラスタ運用が行えます (Sveltos: Argo CD and Flux CD are not the only GitOps Tools for Kubernetes | by Artem Lajko | ITNEXT)。
-
依存関係と順序制御: 複数のアドオン適用順序や依存関係を制御する仕組みも備えています。ClusterProfileには
dependsOn
フィールドを指定でき、あるClusterProfileの適用前に別のClusterProfile(やProfile)の適用を待つ、といった順序を保証できます (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。また、単一のClusterProfile内でもマニフェスト(ConfigMap/Secret経由のリソース)やHelmチャートの定義順に従って適用が行われます (projectsveltos · GitHub)。これにより、例えば「CRDを先にデプロイしてからそのCRDを使うカスタムリソースを適用する」「Secretを配置してからそれを参照するPodを起動する」といった一般的な順序要求を満たすことができます。ブログ記事の例でも、NATSのチャートを適用した後にSveltosがNATSに接続するためのSecretを適用する必要があったため、ClusterProfileのdependsOn
でその順序を指定しています (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。 - 監視と通知(オブザーバビリティ): SveltosはSlackやMicrosoft Teams、Discord、Webexへの通知や、Kubernetes Eventとしての通知といった複数の通知エンドポイントをサポートしています (projectsveltos · GitHub)。これを利用して、クラスタへの変更結果やエラー、ヘルスチェックの失敗などをリアルタイムにチームへ共有できます。他ツールとの連携も容易で、通知をトリガーにさらなる自動処理(例えばPagerDutyでのアラート発報や、別システムでの補助タスク実行)を組み込むことも可能です (projectsveltos · GitHub)。また、Sveltos自体のダッシュボードUIも提供されており、管理クラスタ上で動作するWeb UIから登録クラスタ一覧や適用中のアドオン状況を視覚的に把握できます (How to Deploy and Manage Kubernetes Add-Ons across multiple Clusters - DEV Community) (How to Deploy and Manage Kubernetes Add-Ons across multiple Clusters - DEV Community)。
- スナップショットとロールバック: 複数クラスタにまたがる構成のスナップショットを取得し、必要に応じてロールバックできる機能も用意されています (Conf42: Manage Kubernetes addons for multiple cluster using runtime state)。スナップショットとは、各クラスタに適用されているアドオンや設定の状態を定期的に保存しておく仕組みです (Conf42: Manage Kubernetes addons for multiple cluster using runtime state)。例えば1時間ごとにスナップショットを自動取得するよう設定しておけば、任意の時点の構成状態を履歴として保持できます (Conf42: Manage Kubernetes addons for multiple cluster using runtime state)。専用CLI(「Sveltos Cuddle」ツール)を使えば、2つのスナップショット間の差分を確認したり、特定のスナップショット時点の状態にクラスタ群を巻き戻しすることも可能です (Conf42: Manage Kubernetes addons for multiple cluster using runtime state)。これにより誤った適用や予期せぬ問題発生時でも以前の安定状態に素早く戻せるため、リスク軽減と変更管理に役立ちます。
-
その他の機能: 上記以外にも、
DryRun
モードで変更をシミュレーションする機能や (Conf42: Manage Kubernetes addons for multiple cluster using runtime state)、クラスタヘルスチェック(HealthCheck CRDによるカスタムチェックと自動通知)機能など、運用を支援する様々な機能を備えています。DryRunモードでは、実際には各クラスタに適用せずに「この変更を加えたらどのクラスタに何が起こるか」という予測レポートを生成できます (Conf42: Manage Kubernetes addons for multiple cluster using runtime state)。これによって本番環境への影響を事前にレビューし、安全が確認できてから反映することができます。同様にヘルスチェック機能では、クラスタ内の任意のリソース状態を継続チェックし、条件未達の場合に通知を送ることができ、問題の早期発見と自動対応に寄与します。
以上のように、Sveltosはマルチクラスタ環境で必要となる「展開の自動化」「変更への即応」「一貫性の維持」を包括的にサポートするプラットフォームと言えます。
Kubernetes環境でのSveltosの具体的な活用方法
SveltosをKubernetes環境で活用する基本的な手順を説明します。
-
管理クラスタへのインストール: まずSveltos本体を管理クラスタ上にインストールします。Helmチャートまたはマニフェストが提供されており、例えばHelm利用の場合は次のようにチャートをインストールします (How to Deploy and Manage Kubernetes Add-Ons across multiple Clusters - DEV Community)。
helm repo add projectsveltos https://projectsveltos.github.io/sveltos-charts helm repo update helm install projectsveltos projectsveltos/projectsveltos -n projectsveltos --create-namespace
これにより、管理クラスタ上にSveltosのCRD群とコントローラ(およびダッシュボード用コンポーネントなど)がデプロイされます。インストール後、
kubectl get pods -n projectsveltos
等でSveltosコントローラが起動していることを確認します。 -
クラスタの登録(管理対象クラスタの追加): 次に、配下に管理したいKubernetesクラスタをSveltosに登録します。Cluster APIを使っている場合は管理クラスタ上で自動検出されることもありますが、手動でも
kubectl
またはSveltos CLI(sveltosctl)で登録可能です (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。例えば手動で2つのクラスタcluster1
とcluster2
を登録する場合:# 事前に各クラスタのkubeconfigを取得済みとする kubectl create ns civo # クラスタ登録用のNamespace作成(任意) sveltosctl register cluster --namespace=civo --cluster=cluster1 \ --kubeconfig=./civo-cluster1-kubeconfig --labels=env=production sveltosctl register cluster --namespace=civo --cluster=cluster2 \ --kubeconfig=./civo-cluster2-kubeconfig --labels=env=production
上記では2つの既存クラスタを
env=production
というラベル付きで登録しています (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。実行後、管理クラスタ上でkubectl get sveltoscluster -A
とすると登録されたクラスタの一覧が確認でき、READY
がtrue
なら接続が正常なことを示します (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。登録時に指定したラベル(例:env=production
)はSveltosClusterリソースに反映され、以後のアドオン適用ターゲット選択に使用されます。 -
エージェントと接続のセットアップ: クラスタ登録により、Sveltosは自動的に各管理対象クラスタにエージェントをデプロイします (Sveltos: Argo CD and Flux CD are not the only GitOps Tools for Kubernetes | by Artem Lajko | ITNEXT)。また、各クラスタ用に管理クラスタ側にNamespace(例: 上記では
civo
)と認証情報のSecretが作成され、管理クラスタからクラスタへのアクセスが可能な状態になります (Sveltos: Argo CD and Flux CD are not the only GitOps Tools for Kubernetes | by Artem Lajko | ITNEXT)。この接続設定は内部で行われるためユーザが個別にServiceAccountやKubeconfigを配布する必要はありません(裏では先述のようにServiceAccountとRBAC、Secret化が行われています)。準備が整うと、Sveltosは各クラスタの情報(K8sバージョンなど)を取得し、デフォルトのClassifierが有効であれば例えばクラスタのK8sバージョンに応じたラベル(projectsveltos.io/k8s-version=v1.xx.y
)が付与されます (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。 -
アドオン適用の定義(ClusterProfileの作成): 管理対象クラスタ群に適用したいアドオンや設定をClusterProfileリソースとして作成します。ClusterProfileには
spec.clusterSelector
で対象とするクラスタのラベル条件を指定し、spec
内に適用する内容を記述します (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。例として、すべてのenv=production
ラベルを持つクラスタにNATSサーバをデプロイしたい場合、以下のようなClusterProfileを管理クラスタ上で作成します (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。apiVersion: config.projectsveltos.io/v1beta1 kind: ClusterProfile metadata: name: nats-deployment spec: clusterSelector: matchLabels: env: production helmCharts: - chartName: nats/nats chartVersion: 1.2.9 releaseName: nats releaseNamespace: nats repositoryName: nats repositoryURL: https://nats-io.github.io/k8s/helm/charts/ values: |- config: # NATSの設定(例として全権限のシンプル認証を有効化) merge: authorization: default_permissions: publish: [">"] subscribe: [">"] users: - user: "admin" password: "my-password" syncMode: Continuous
上記のClusterProfileを
kubectl apply
すると、Sveltosは自動的に登録済みクラスタのうちenv=production
ラベルを持つもの全てに対してNATS(Helm chart version 1.2.9)をインストールします (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。Helmチャート適用なので各クラスタ上にnats
というNamespaceが作成され、Helmリリース(Deployment/Serviceなど含む)がデプロイされます。syncMode: Continuous
の指定により、NATSが動作し続けるよう常に監視され、もしPodが落ちれば自動再作成されるなど、Helmリリースの整合性も維持されます (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。ClusterProfileではHelmチャートのほかポリシー参照(
policyRefs
)によって任意のKubernetesリソースを適用できます (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。たとえばConfigMapに生のYAMLマニフェストを記述しておき、そのConfigMapをpolicyRefとしてClusterProfileに列挙すると、その中身のリソースが対象クラスタに作成されます (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。Secretを用いて機微な設定(例えばデータベースの認証情報など)を配布することも可能です (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。このように、一つのClusterProfileでHelmチャートとYAMLマニフェストの両方を組み合わせてデプロイ定義ができ、柔軟な構成管理が行えます。(必要に応じて、複数のClusterProfileを組み合わせ、
dependsOn
で適用順序を制御できます。NATSの例では、NATSチャート適用ClusterProfileに続いて、SveltosにNATS接続情報を渡すためのSecretを各クラスタに配置するClusterProfileがあり、後者は前者にdependsOn
指定しています (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。これにより、NATS本体の展開が完了してから接続設定が行われるよう保証されています。) -
適用状況の確認と管理: Sveltosは適用したアドオンやリソースの状況を可視化するためのCLIコマンドやダッシュボードを提供します。CLIツールの
sveltosctl
を使えば、各クラスタに現在適用されているアドオン一覧を表示できます(例:sveltosctl show addons
コマンドでクラスタごとのデプロイ済みHelmリリースやリソースの一覧を表形式で取得) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。また、前述のWebダッシュボードを有効化すればブラウザ上で管理対象クラスタやClusterProfile、適用結果を確認できます (How to Deploy and Manage Kubernetes Add-Ons across multiple Clusters - DEV Community)。問題が発生した場合は、管理クラスタのイベントログ(kubectl get events
)や通知(Slack等)を通じて異常を検知でき、必要ならClusterProfileの定義を更新して再適用することで対処します。Sveltosはこうした変更検出から再適用まで自動化しているため、管理者はポリシーや設定内容の更新に集中でき、展開作業そのものはSveltosに任せる形となります。 -
(オプション)クラスタ分類の活用: 環境が安定してきたら、Classifierを設定して更なる自動化を図ることもできます。例えばClusterProfileを「K8sバージョンごと」に用意し、Classifierでクラスタに
k8s-version
ラベルを自動付与するようにしておけば、クラスタをアップグレードした際に自動で適用アドオンセットが切り替わります (Conf42: Manage Kubernetes addons for multiple cluster using runtime state)。また特定のアプリケーション(例:Istioが入っているクラスタか否か)で区別したい場合、そのリソースの存在有無をClassifierで検出してラベルを付け、それに応じたClusterProfileを適用することもできます (Conf42: Manage Kubernetes addons for multiple cluster using runtime state)。このようにClassifier機能を組み合わせると、クラスタのライフサイクル全体にわたり人手を介さない自動適応が実現します。 -
(オプション)イベントハンドリングの設定: Sveltosを使えば外部イベントに連動したリソース操作も可能です。必要に応じて、EventSourceとEventTriggerを作成することで、指定したイベント受信時に自動アクションを定義できます (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。たとえば「ClusterRoleが削除されたら自動で再作成する」「外部のメッセージブローカーから特定メッセージを受け取ったらPodをスケールアウトする」などのシナリオを実装できます。これらは高度なユースケースとなるため、詳細は次項の具体例で紹介します。
以上が基本的なSveltosの利用フローです。Sveltosは導入後も容易にスケールできます。クラスタの追加時は単に登録コマンドを実行し、適切なラベルを付けるだけで、そのクラスタにも既存のClusterProfile群が即座に適用されます (projectsveltos · GitHub)。逆にクラスタ削除時も、対応するSveltosClusterリソースを削除すれば自動的に管理対象から外れます。運用者は各種ClusterProfile/Classifier/イベント設定をGit管理しておくことで、GitOps的な運用も可能です(Flux CDを使えばそれらCR変更の自動適用もできます (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita))。このようにSveltosは日常のマルチクラスタ管理の手間を減らし、変化に強い自律的なシステムを構築する下支えとなります。
ブログ記事に基づいたユースケースの詳細: Kubernetesを「自動運転」するイベント駆動オートメーション
公式ブログ記事「Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters」では、Sveltosを用いたイベント駆動の自動化シナリオが紹介されています (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。ここではその内容に沿って、マルチクラスタ環境での具体的な活用例を解説します。
ユースケース概要:
外部システムからのイベント(ユーザのログイン/ログアウト)をトリガーに、複数のKubernetesクラスタ上で自動的にリソースを作成・削除する仕組みを構築します。例えば開発者がシステムにログインしたら各クラスタにそのユーザ専用のNamespaceを自動生成し、ログアウトしたら不要になったNamespaceを削除する、といった動きをKubernetes側で自律的に行います (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。これにより、管理者が逐一手作業でNamespaceを準備したりクリーンアップしたりすることなく、ユーザの操作に合わせてクラスタリソースがオンデマンドに調整されます。まさに“Kubernetesの自動運転(Autopilot)”とも言える仕組みです (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。
シナリオ環境:
- 管理クラスタ: Kind(ローカルのKubernetes)クラスタ1つを管理クラスタとして使用。ここにSveltosをインストールして全体をコントロールします (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。
- 管理対象クラスタ: クラウドKubernetesサービスであるCivo上に構築した2つのクラスタ(cluster1とcluster2)を用意。それぞれ3ノードからなるK3sクラスタで、ラベル
env=production
を付与済みとします (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。これら2クラスタが「本番環境クラスタ」という想定です。 - 外部イベントソース: 軽量なメッセージングシステムNATSを使用します (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。NATSはPub/Sub型のメッセージブローカーで、JetStreamという拡張によりメッセージ永続化も可能なため、外部イベントの伝達に適しています (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。ここではユーザログイン/ログアウトイベントをNATS経由で配信し、Sveltosがそれを受け取る形にします。
手順と実装:
-
NATSのデプロイ: まず、管理対象クラスタ(production環境クラスタ)すべてにNATSサーバをデプロイします。これは前節の手順4と同様、ClusterProfileを使って行います。記事では以下のようなClusterProfile (
name: nats
) を作成しています (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。apiVersion: config.projectsveltos.io/v1beta1 kind: ClusterProfile metadata: name: nats spec: clusterSelector: matchLabels: env: production # productionラベルのクラスタ全対象 helmCharts: - chartName: nats/nats chartVersion: 1.2.9 releaseName: nats releaseNamespace: nats repositoryName: nats repositoryURL: https://nats-io.github.io/k8s/helm/charts/ values: |- config: # 認証ユーザ設定(簡易な全権限ユーザadmin) merge: authorization: default_permissions: publish: [">"] subscribe: [">"] users: - user: "admin" password: "my-password" syncMode: Continuous
これにより、2つのproductionクラスタ(cluster1, cluster2)それぞれにNATS(バージョン1.2.9)がインストールされます (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。全クラスタで同一のユーザ名/パスワード(admin / my-password)による認証が有効化され、どのクラスターのNATSでも共通の資格情報でPub/Subが可能になります。
-
SveltosからNATSへの接続設定: 次に、Sveltos(管理クラスタ上のコントローラ)がNATSからのイベントを受け取れるように接続情報を設定します。記事では別のClusterProfile (
name: deploy-deploy-sveltos-nats-secret
)を用い、各クラスタに対してNATS接続用のSecretを配置しています (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。このSecretにはSveltosがNATSに接続するための設定(サーバURLや認証情報)がエンコードされて含まれています (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。重要なのは、このClusterProfileが先ほどのNATSデプロイClusterProfileにdependsOn: nats
で依存している点です (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。これにより、NATS本体がデプロイされて各クラスタで稼働するまで、このSecret適用が遅延され順序が保証されます。結果として、各productionクラスタにはprojectsveltos
というNamespaceにsveltos-nats
というSecretが作成され(Base64エンコードされた内容)、Sveltosコントローラはそれを参照してNATSサーバ(クラスタ内のNATS)への接続を初期化します (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。Sveltosは以後この接続を通じてNATS上の特定トピックを購読し、メッセージ(CloudEvent)を受信できるようになります (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。 -
イベントソースとトリガーの定義: 続いて、Sveltosのイベントフレームワークを使い「どのイベントを待ち受けて、何を実行するか」を定義します。記事では以下の3つのリソースを作成しています (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。
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EventSource (
name: user-operation
): これはNATSの**「user-operation」というサブジェクト(トピック)**に流れてくるCloudEventsをソースとして定義しています (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。さらにcloudEventSource: "auth.example.com"
という条件も含まれており、イベント内のsource
フィールドがこの値に一致する場合に有効となります (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。要するに、「認証システム(auth.example.com)から発行されたuser-operation系イベント」がこのEventSourceにマッチするトリガー対象となります。 -
EventTrigger (
name: manage-namespace
): こちらが実際のアクション定義です (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。sourceClusterSelector
でenv: production
ラベルのクラスタを対象とし、上記EventSource「user-operation」を紐づけています (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。さらにcloudEventAction
としてテンプレート式が記述されており、受信したイベントのタイプがauth.example.com.logout
(ログアウト)ならDelete
、それ以外(すなわちログインの場合)はCreate
をアクションとする条件分岐になっています (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。policyRefs
にはnamespace
という名前のConfigMap(後述)を指定しており、このConfigMapに定義されたリソースを上述のCreate/Deleteアクション対象として扱います (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。 -
ConfigMap (
name: namespace
): 上記で参照されたConfigMapで、projectsveltos.io/instantiate: ok
というアノテーションが付与されています (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。このアノテーションは「テンプレートをインスタンス化せよ」というSveltos向けの指示で、ConfigMap内のデータがリソース定義テンプレートであることを示します (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。実際data.namespace.yaml
キーに格納されたYAMLを見ると、KindがNamespace
で名前が{{ .CloudEvent.subject }}
となっています (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。つまりこのテンプレートは、「CloudEventのsubjectフィールドの値を名前とするNamespace」リソースを表しています。
以上の設定により、「auth.example.com(認証サービス)からのユーザ操作イベント」を受け取った際に、イベントsubject(ユーザ名)に対応するNamespaceリソースをCreateまたはDeleteする、というSveltos上のルールが出来上がりました (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。対象クラスタはenv=productionの2クラスタで、Create/Deleteの具体的リソース内容はConfigMapテンプレートで定義されています。
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EventSource (
-
イベントの発行と検証(ログイン時): 準備が整ったところで、実際にイベントを発生させてみます。ユーザ「mgianluc」がログインしたケースをシミュレートするため、以下のようなCloudEvent JSONを組み立てます (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。
{ "specversion": "1.0", "type": "auth.example.com.login", "source": "auth.example.com", "id": "10001", "subject": "mgianluc", "datacontenttype": "application/json", "data": { "message": "User mgianluc login" } }
重要なのは
type
がauth.example.com.login
、source
がauth.example.com
、subject
がmgianluc
となっている点です。これが先ほど定義したEventSource/Triggerの条件にマッチします(loginなのでTrigger側のcloudEventActionではCreateが選択される)。このJSONを、クラスタ内で稼働中のNATSに対してpublishします。記事では各クラスタにデプロイされたnats-box
というNATSクライアントPodを利用し、以下のようにpublishしています (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。# cluster1に対して発行する場合(cluster2も同様) KUBECONFIG=civo-cluster1-kubeconfig kubectl exec -it deployment/nats-box -n nats -- \ nats pub user-operation "$CLOUDEVENT_JSON" --user=admin --password=my-password
user-operation
というサブジェクトに先ほどのJSONを送り、NATS経由でSveltos(管理クラスタ)がそれを受信します (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。するとEventTriggerのロジックが走り、各productionクラスタでNamespace作成が行われます。結果として、cluster1およびcluster2のそれぞれにmgianluc
という名前のNamespaceが新規作成されます (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。実際に記事では、sveltosctl show addons
コマンドでNamespaceが作成されたことを確認しています (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)(該当出力に:Namespace ... mgianluc ... ClusterProfile/...
と記録されている)。このように、ユーザログインイベントにより自動で複数クラスタにNamespaceがプロビジョニングされたことが確認できます。 -
イベントの発行と検証(ログアウト時): 次に、同じユーザがログアウトしたイベントを発行します。JSONの
type
をauth.example.com.logout
に変え、subjectは同じくmgianluc
としたCloudEventを再度NATSへpublishします (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。Sveltosはこれを受信すると、EventTrigger設定に基づきNamespace削除アクションを実行します (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。その結果、先ほど作成されたmgianluc
Namespaceがcluster1およびcluster2から削除されます (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。記事では再度sveltosctl show addons
を実行し、Namespaceが一覧から消えていること(削除されたこと)を確認しています (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。
以上のシナリオにより、外部認証システムのイベント -> Kubernetesリソース操作という自動化パイプラインが構築できました。Sveltosのイベントフレームワークとマルチクラスタ適用機能を組み合わせることで、このケースではユーザごとの作業環境(Namespace)のオンデマンドな作成・破棄が可能となっています (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community) (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。ブログ記事の結論でも触れられているように、これはマルチクラスタ管理における非常に強力なアプローチであり、人手を介さずリアルタイムに環境を変化させることで運用の効率と俊敏性を大幅に向上させます (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。
このユースケースは一例ですが、Sveltosのイベント機能は他にも応用可能です。例えばCI/CDパイプラインからの通知で自動デプロイをトリガーしたり、監視システムのアラートに応じてコンテナを再スケジュールしたりといった、イベント駆動インフラを実現できます (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。SveltosはKubernetesの枠を超えて外部システムと連携できるため、クラウド全体の自動化ハブとして機能しうるのです。
他の類似ツールとの比較
Sveltosと役割が一部重なるツールやフレームワークについて、その特徴を比較します。必要に応じて使い分けや統合の検討材料としてください。
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Argo CD / Flux CD(GitOps系ツール):
Argo CDやFluxはGitOpsに基づく継続的デプロイ(CD)ツールで、Git上の設定をKubernetesクラスタに同期する用途で広く利用されています。Sveltosも宣言的管理という点では共通しますが、大きな違いはマルチクラスタ対応とイベントドリブンの部分です。Argo CDは基本的に1つのArgoインスタンスで1クラスタ(またはリモートクラスタにアクセス可)を管理し、複数クラスタの扱いにはApplicationSetなどを用いて間接的に対応します。一方Sveltosは初めから複数クラスタ管理を目的に設計されており、単一のSveltosでフリート(複数クラスタ群)全体を統合的に制御できます (Sveltos: Argo CD and Flux CD are not the only GitOps Tools for Kubernetes | by Artem Lajko | ITNEXT)。またArgo CD/FluxはいずれもGitリポジトリを唯一の情報源とし、定期的(例: 3分毎)にリポジトリとクラスタの差分をチェックして同期します。一方Sveltosは、エージェントからの通知に基づくプル型同期を採用しており、差分が発生した時点で都度必要な処理を行うため遅延が少なく効率的です (Sveltos: Argo CD and Flux CD are not the only GitOps Tools for Kubernetes | by Artem Lajko | ITNEXT)。特に大規模環境では、Argoのような頻繁な全体チェックはAPI負荷が高くなる傾向がありますが、Sveltosはドリフトが起きた所だけ再調整するためスケーラビリティに優れます (Sveltos: Argo CD and Flux CD are not the only GitOps Tools for Kubernetes | by Artem Lajko | ITNEXT)。さらに、SveltosはArgo/Fluxにはないイベントハンドリングやクラスタ分類といった機能も持ち、純粋なGitOpsに留まらない柔軟な自動化を実現できます (projectsveltos · GitHub)。もっとも、SveltosはGitリポジトリから直接マニフェストを同期する仕組み(いわゆるGitウォッチャー)は内蔵していないため、Flux CDとの統合によりそこを補完できます (Sveltos: Argo CD and Flux CD are not the only GitOps Tools for Kubernetes | by Artem Lajko | ITNEXT)。実際にFluxを用いてClusterProfile/Policy定義をGit管理しつつ、Sveltosでマルチクラスタ展開するという構成が公式にも推奨されています。このように、Argo CD/FluxはシングルクラスタのGitOpsデプロイに強みがあり、Sveltosはマルチクラスタの包括管理やイベント対応に強みがあるため、競合というより補完関係にあります。特に既存のGitOpsフローをマルチクラスタに拡張したい場合、Flux+Sveltosの組み合わせが有効です (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。 -
Karmada:
KarmadaはCNCFサンドボックスプロジェクトの一つで、複数のKubernetesクラスタをまるで一つのクラスタであるかのように扱うことを目指したマルチクラスタ管理基盤です。Karmadaは統一コントロールプレーンを提供し、ユーザはそのVirtual Clusterに対してDeployment等のリソースを適用すると、裏でKarmadaがMember Clusterと呼ばれる各クラスタにPodをスケジューリングします (Karmada and Open Cluster Management: two new approaches to ...)。いわばKubernetesの上にもう一層のスケジューラを載せたイメージです。対してSveltosは、各クラスタを独立した対象として扱いながら、それらに共通の追加コンポーネントを配布・管理するアプローチです。アプリケーションワークロードそのもののスケジューリングは行わず(そこは各クラスタのスケジューラに任せる)、アドオン(コントローラやポリシー)や設定にフォーカスしている点が異なります (projectsveltos · GitHub) (projectsveltos · GitHub)。Karmadaはマルチクラスタでの負荷分散やフェイルオーバー、クロスクラスタのDeploymentなどに強みがありますが、導入が比較的ヘビーでクラスタ間の強いつながりを要求します。一方Sveltosは既存クラスタ群にエージェントを追加してゆるやかに統制する形で、よりシンプルかつ段階的に導入できる利点があります。両者は目的が異なる部分もありますが、マルチクラスタ環境の管理という広義では類似領域です。Karmadaはワークロードのスケジューリング、Sveltosはアドオンのライフサイクル管理と捉えると分かりやすいでしょう。 -
Rancher Fleet:
Rancherが開発したFleetは、多数のクラスタに対するGitOps型のリソース配布を行うツールです。Fleetもまたエージェント(Fleet Agent)を各クラスタに配置し、Gitリポジトリ内のマニフェストを適用するという仕組みを取ります。アーキテクチャ的にはFluxやArgoよりSveltosに近く、集中管理+各クラスタにデーモンという構造です。FleetはGitOps(Gitドリブン)専用ですが、Sveltosは前述のようにイベントドリブンや動的分類など、Gitに限らないトリガーで動作できる点で差別化されています。また、SveltosはネイティブにHelmやKustomizeに対応しつつ、Fleetと同様に大規模クラスタ向けの設計がなされており、どちらも「大規模分散環境における構成管理」を目指しています。既にRancher環境を使っている場合はFleetが統合されていますが、そうでなければSveltos単体で同等以上のことが可能です。さらにSveltosはマルチテナントの分離や**きめ細かな条件制御(Luaによるイベント処理など)**が可能で、柔軟性の面で優れています。 -
Cluster API + ClusterResourceSet:
Cluster API (CAPI)はKubernetesクラスタそのもののライフサイクル管理を宣言的に行うフレームワークですが、付随機能としてClusterResourceSetという仕組みでクラスタ作成時にマニフェストを自動適用できます。これは限定的にはマルチクラスタのアドオン初期化に使えますが、あくまでクラスタ作成直後の静的適用であり、Sveltosのような継続的な管理やイベント駆動には対応していません。むしろSveltosはCAPIと補完関係にあり、CAPIでクラスタを作ったらSveltosが自動でアドオンを投入する、といった連携が可能です (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita) (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。CAPIでインフラ~クラスタレベルを管理し、Sveltosでアプリケーション~ポリシーレベルを管理することで、フルスタックなIaCを実現できます (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita) (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。
以上のように、Sveltosは既存のGitOps/マルチクラスタツールとは一部重複しつつも独自のポジションと強みを持っています。特にイベント対応やクラスタ状態に応じた自動適用などは現状Sveltosならではの機能です。既存ツールとの組み合わせも視野に入れ、自社の要件に合わせた最適なアーキテクチャを選定すると良いでしょう。
実装の際のベストプラクティスと考慮点
最後に、Sveltosを実環境に導入・運用する際のベストプラクティスや留意事項をまとめます。
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クラスタラベル設計: 適切なラベリングはSveltos運用の鍵です。クラスタに付与するラベルは、環境種別(例:
env=prod
,env=dev
)、用途(team=alpha
、region=us-east
など)を明確に表すよう計画しましょう (How to Deploy and Manage Kubernetes Add-Ons across multiple Clusters - DEV Community)。ラベル命名を組織で統一し、ターゲット選択が一意かつ分かりやすくなるよう工夫します。ラベルを戦略的に設計することで、ClusterProfileの記述が簡潔になり、意図しないクラスタへ設定が適用されるリスクも減ります。 -
ClusterProfileの分割と命名: 一つのClusterProfileに盛り込みすぎず、役割や機能ごとに分割することを検討してください (How to Deploy and Manage Kubernetes Add-Ons across multiple Clusters - DEV Community)。例えば「監視基盤デプロイ用」「セキュリティポリシー適用用」など用途別にClusterProfileを作成し、それぞれに明確な名前を付けます (How to Deploy and Manage Kubernetes Add-Ons across multiple Clusters - DEV Community)。こうすることで変更管理やトラブルシューティングが容易になり、他の管理者とも認識を共有しやすくなります。
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依存関係の明示: 複数のClusterProfile間に順序や依存関係がある場合は、
dependsOn
フィールドを活用して明示的に制御しましょう (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。例えばCRDを提供するアドオンとそれを使う別のコンポーネントは別Profileに分け、後者に前者をdependsOn指定する、といった形です。この指定によりSveltosが適用順序を保証し、初回適用時の不整合エラーを防ぎます。依存関係が複雑になる場合は、ドキュメント化やDiagramで視覚化しておくと管理しやすくなります。 -
マルチテナント運用: 複数チーム・プロジェクトでSveltosを共有する場合は、基本的にClusterProfileはプラットフォームチーム専用とし、各テナントには自分のNamespaceでProfileを作らせるルールにすると良いでしょう (Sveltosによるシンプルで柔軟なKubernetesクラスタ運用 #kubernetes - Qiita)。RBAC設定で一般ユーザには自分のNamespace下でのProfile作成権限のみ与え、ClusterProfile(全体影響を及ぼす操作)は限定された管理者だけが触れるようにします。これによりチーム間の干渉を防ぎ、意図しない設定変更から環境を保護できます。また、各テナントが使えるラベルもホワイトリスト制にするなど、ポリシーを明文化しておくことを推奨します。
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監視と可視性の確保: Sveltos導入後は、その動作自体も監視の目を届かせましょう。幸いSveltosはSlackやTeams通知、Kubernetesイベント連携が容易にできるため、重要なイベント(例: アドオン適用失敗、ヘルスチェック異常)を確実に拾えるよう設定します (projectsveltos · GitHub)。またGrafanaダッシュボードやPrometheusメトリクスと組み合わせ、各クラスタの状態や適用履歴を可視化するとトラブルシュートに役立ちます。Sveltos専用のダッシュボードUIも活用して、クラスタ一覧や適用中のProfileなどを定期的にレビューしてください (How to Deploy and Manage Kubernetes Add-Ons across multiple Clusters - DEV Community)。
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段階的な導入と検証: いきなり本番全クラスタに適用せず、まずは検証環境でSveltosの挙動を確認しましょう (How to Deploy and Manage Kubernetes Add-Ons across multiple Clusters - DEV Community)。KindやK3sを使ったテストクラスタで、主要なClusterProfileを適用し想定通り動くか検証します (How to Deploy and Manage Kubernetes Add-Ons across multiple Clusters - DEV Community)。ドリフト検知の動作やイベントトリガーのシナリオも事前に試し、Sveltosの挙動に慣れておくことが重要です。本番導入時も、まずは限定的なクラスタ群から徐々に適用範囲を広げることで、万一の問題発生時の影響を抑えられます。
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Sveltos管理クラスタの堅牢性: 管理クラスタはSveltosの中枢となるため、可用性と健全性に注意を払います。可能であれば管理クラスタ自体を冗長化(HA構成)し、定期的なバックアップを取得します。SveltosのSnapshot機能も活用し、重要な変更前後でスナップショットを取っておくと安心です (Conf42: Manage Kubernetes addons for multiple cluster using runtime state)。また管理クラスタのKubernetesバージョンはSveltosがサポートする最新安定版を保ち、互換性問題を避けます (How to Deploy and Manage Kubernetes Add-Ons across multiple Clusters - DEV Community)。Sveltosアップグレード時はリリースノートを確認し、必要に応じてCRDのアップデートやエージェント更新も忘れずに行います。
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変更のプレビューと慎重な適用: 大きな変更を行う際は、すぐに適用モードにせずDryRunモードで影響を確認することを推奨します (Conf42: Manage Kubernetes addons for multiple cluster using runtime state)。DryRunに設定すると実際のクラスタには触れず、Sveltosが内部的に「この変更でどのクラスタに何を変更するか」をシミュレートし結果をまとめてくれます (Conf42: Manage Kubernetes addons for multiple cluster using runtime state)。それをレビューし、期待通りであることを確認してから通常モード(Continuous)に戻して反映することで、安全性を高められます。特に多数のクラスタにまたがる変更や、デリケートなリソース(ネットワークや権限系)の変更時には有効な手段です。
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外部イベント活用時の注意: Sveltosのイベント機能を使う場合、イベントソース側(例えばNATSなどメッセージング基盤)の信頼性とセキュリティにも留意してください。イベントが届かなかった場合のリトライ戦略や、悪意あるイベントをフィルタリングする仕組みが必要か検討します。SveltosのEventTriggerには
oneForEvent
というオプションがあり、同一イベントIDに対して一度だけ処理を行う設定ができます (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。冪等性を保つためにもこれを有効にしておくと、重複イベントによる二重処理を防げます。また、イベントドリブンで作成したリソースの命名規則や競合対策も考慮しましょう。例えば本例では「ユーザ名」をNamespace名にしましたが、万一同名ユーザが複数存在すると衝突します。その場合はsubjectにユニークなIDを使う、プレフィックスを付ける等の運用ルールを決めておくと良いでしょう。
以上のベストプラクティスを念頭に置くことで、Sveltosをより安全かつ効果的に活用できます。Sveltosは強力なツールですが、運用次第でその効果は大きく変わります。中央集権的な管理を実現しつつも柔軟性を保つバランスを取り、組織のポリシーやカルチャーに沿った使い方を模索してください。適切に導入すれば、SveltosはまさにKubernetesを自動操縦するパイロットとして、日々のマルチクラスタ運用を支えてくれるでしょう (Kubernetes on Autopilot: Event-Driven Automation Across Clusters - DEV Community)。