電界効果トランジスタについて忘れないように色々書きます。
様々な視点から横断的に捉えるので適宜読み飛ばしてください。
#半導体について
FETの構成要素と言われれば半導体です。まずここから始めましょう。
半導体の中にはn型半導体とp型半導体があります。それぞれ詳しくみていきます。
####n型半導体
ベースとなるケイ素(Si)にリン(P)が添加されたものがn型半導体です。
ここでSi同士は電子をそれぞれ4個ずつ出し合って共有結合を結んでいますがPは電子(最外殻電子)を5個持っているので一つ余ってします。これが自由電子として移動する事により電流が流れます。
ベースとなるケイ素(Si)にホウ素(B)が添加されたものがn型半導体です。
n型半導体ではPが5個の電子(最外殻電子)を持っていましたがBは3個しかありません。この電子が空いている場所を__ホール__といいます。
余剰の電子がないので自由電子が発生せず電流が流れないと思われるかもしれませんが、p型半導体にも電流は流れます。以下にそのプロセスを示します。
Siを青、Bを緑で示しています。また、電子は灰色にしました。
電子は+極に引き寄せられると、近くのホールに移動します。すると、電子の移動で空いたところが新たなホールとなり、さらにとなりの電子が移動します。これが繰り返される事により電子が流れます。
これにより、ホールは正の電荷を持つ粒子とみなすことができます。
#半導体に電流を流す
ここからは半導体に電流を流した際の電子とホールの動きをみていきます。
####n型半導体の場合
自由電子が移動する事により電流が流れます。また電流は見かけ上、電子とは反対の方向に流れます
####p型半導体の場合
移動しているのは電子ですが、ホールがマイナス極に向かって移動しているように見えます。
以上、半導体に電流を流した際の挙動を示しました。
#pn接合
二つの半導体、p型とn型を接合した時、状況によって流れたり、流れなかったりします。これらが半導体と言われる所以です。ここからは半導体の組み合わせによる挙動の変化についてみていきます。またpn接合体はダイオードと呼ばれます。
###順方向電圧をかける
pn接合にp型半導体側から電圧ををかけると接合面でホールと電子が衝突してホールが消滅します。それに続きn側では新たに電子が供給され、p側では電子が回収されホールが発生します。
###逆方向電圧をかける
pn接合にp型半導体側から電圧ををかけると接合面から互いに遠ざかるようにホールと電子が移動します。これにより接合面付近には、空乏層と呼ばれる電気的に絶縁された領域を生じます。これにより電流が流れることはありません。
#npn接合
p型半導体をn型半導体で挟んだ形であるnpn接合についてみていきます。ここで初めてFETの形になりました。
###構造
FETはnpnないしはpnp接合体の側面に絶縁層を挟み電極がある構造をしています。上記の構造図はnpn型です。まず、絶縁層に注目してみます。酸化金属でできた絶縁膜を持つものをMOS(Metal–Oxide-
Semiconductor)FETといい「もすふぇっと」と読みます。また右図でD、G、Sとありますがそれぞれドレイン、ソース、ゲートを示していて、この3つがFETの電極となります。さらにドレインとソースがn型かp型かによりそれぞれNch(npn)、Pch(pnp)が存在します。
###動作
通常時ゲートに電圧をかけていない場合、半導体はn→p→nと並びn→p間に電流は流れないため、ドレインソース間は遮断されています。しかし、ゲートに電圧をかけるとホールが電気的反発により遠ざかり、絶縁層付近の電子密度が上昇します。これにより自由電子が発生し電流が流れるようになります。見方を変えるとp型半導体がn型半導体に変化したとも考えることができます。この変化を__反転__といい、こうして電圧をかけることで反転が起こる現象を__電解効果__といいます。反転によりn→p→nがn→n→nとなることでドレインソース間に電流が流れるようになります。
また、反転が起こる場所を反転層、ないしはチャネルといい反転が起こりn型半導体となった部分の抵抗を__チャネル抵抗__といいます。これは製品によって異なるのでデータシートで確認します。
#pnp接合
次にn型半導体をp型半導体で挟んだ形であるpnp接合についてみていきます。
###構造
###動作
通常時ゲートに電圧をかけていない場合、半導体はp→n→pと並びn→p間に電流は流れないため、ドレインソース間は遮断されています。しかし、ゲートに電圧をかけるとホールが電気的反発により遠ざかり、絶縁層付近の電子密度が上昇します。ここで注意しなければならないのは反転層がn型なのでゲートにマイナスの電圧をかけなければならないことです。マイナス電圧をかけるとホールがゲート付近に移動してホール密度が高まります。これにより、n型半導体がp型に反転します。反転によりp→n→pがp→p→pとなることでドレインソース間に電流が流れるようになります。
#ボディダイオード(寄生ダイオード)について
FETは内部にボディダイオードと呼ばれるダイオードを含んでいます。以上に示したFETの図は略図なので実際の構造図を示します。これによりボディダイオードの存在が明確になると思います。実際、FETには下部に__ボディ(バックゲート)__が存在しこのバックゲートがソース、ドレイン間にそれぞれpn接合を形成しこれがダイオードとして働きます。3端子パッケージのFETの多くの場合バックゲートとソースがショートし接続されるのでバックゲートドレイン間のpn接合だけがダイオードとしての意味を持ちます。さらにバックゲートとソースは接続されていることからダイオードはドレインソース間に存在するとみなすことができます。これがボディダイオードの正体です。
この構造であればnpn接合を内部に含みかつpn接合がバックゲートドレイン間にあることがわかります。3端子FETの場合バックゲートはソースと接続されるのでこれでドレインソース間にボディダイオードが存在しているとみなします。
#FETの使い方
###Nch MOSFET
MOSFETを実際に使うとなればNchを使うことが多いように感じます。
スイッチをオンにするとゲートソース間に電圧がかかり、ドレインソース間に電流が流れるようになります。ここで、ある疑問が生じました。ドレインソース間はあくまでスイッチのように開通するだけなので以下のようにドレインとソースにつなぐ電源のプラスマイナスが逆でも動くのではないかと。実際に以下の回路で試してみました。
実際に電源を入れるとスイッチを押していなくてもLEDが点灯しました。これでボディダイオードを通り電流が流れたことが確認できます。ここでスイッチを押すとLEDがより明るくなります。これはドレインソース間の抵抗値が十分に低くなったため、電流がドレインソース間を流れたためです。明るさが変わったのはボディダイオードを通る時、電圧降下により電圧が下がっていたのが、ダイオードを経由しなくなったことで電圧が下がらなくなったからです。
#####結果
これらのことからFETにおいて、ドレインソース間には抵抗があり、この抵抗値がゲートソース間電圧によってコントロールされていると考えられることがわかりました。またドレインとソースに構造的な違いはなく電流はD→S、S→Dどちらへも流れることがわかりました。
###Pch MOSFET
Nch MOSFETと異なり、ゲートソース間に負の電圧をかけます。負の電圧というのはソースを基準電位とした時に相対してゲートの電位が負であることを指します。ゲートソース間に十分な電位差ができるとドレインソース間の抵抗値が減少し電流が流れるようになります。ここでFETではドレインとソースに構造的な違いがないのでゲートドレイン間に電圧をかけたらどのような動作をするのか検証してみました。
スイッチがオフの状態でもドレインソース間ボディダイオードが存在するので、電流が流れLEDは光ります。ここでスイッチをオンにするとゲートドレイン間に電圧がかかり電解効果が生じる為ドレインソースが開通しLEDがより明るく光りました。ゲートソースを使わなくても電解効果が起きることが確認できました。さらに以下の回路でドレインソース間の電流の方向を変えてみます。
これでスイッチがオフの時はLEDが消えている。つまりドレインソース間は開通していない状態にすることができました。しかし、この回路、左側の電池がなくても動作します。これは右側の電池の電圧がゲートソース間にかかるからだと考察します。(もちろんスイッチはオンの状態)
つまり、オレンジで囲った回路により、ゲートソース間に負電圧が印加されるということです。__ただし動作は非常に不安定__なのでゲートソース間に別電源を用意しFETをドライブすることを推奨します。
#####結果
FETではドレインとソースに構造的な差がないことからゲートソース間だけでなくゲートドレイン間に電圧を印加しても電解効果が発生しドレインソース間の抵抗値を下げ開通させられることがわかりました。ただし動作は安定しないので基本動作回路のようにゲートソース間に安定して電圧を印加できる電源を用いるのが実際だと思います。
お疲れ様でした!