本記事は,著者の @minorun365 さんよりご恵贈いただき,発売前の書籍レビューをするものです.
はじめに
こんにちは, @ren8k です.
幸運なことに,来週 6/26 発売予定の書籍『Amazon Bedrock 生成 AI アプリ開発入門』を @minorun365 さんからご恵贈賜りました.本記事では,学んだ点や特徴をまとめようと思います.

Amazon Bedrock 生成 AI アプリ開発入門
- 御田 稔 (著), 熊田 寛 (著), 森田 和明 (著)
- SB Creative より 2024/6/26 発売予定
対象読者と所感
書名には "入門" とありますが,あらゆるレベルの方が手に取ってみる価値があると思います.特に,各章の Column には応用的な Tips が散りばめられており,初学者から上級者まで幅広く楽しめる構成となっています.
また,どの章も初学者に親切な解説(用語の説明,全ページフルカラーでコンソールのスクリーンショットの添付)がなされており,スムーズに学習ができる内容となっております.
個人的に良いと思った点としては,以下が挙げられます.
- なぜ Amazon Bedrock を選ぶのか?という点にしっかり言及している
- 先進的で実践的な内容を幅広く学べる(chat app のサーバーレス化,RAG,Agent, Step Functions を利用したローコード開発...)
なぜ Amazon Bedrock を選ぶのか?
本書では,Bedrock を選定する理由として,複数の会社が提供する最先端モデルを幅広く利用可能である点や,アプリケーション開発との親和性,本番利用に耐えうる高いセキュリティ・ガバナンスを挙げております.
以下に,Chatbot Arena Leaderboard のデータを基にした,直近リリースされた代表的な LLM の性能とリリース日を示します.縦軸が Chatbot Arena の Elo Rate (人間による相対的な評価),横軸がリリース日です.また,赤色のプロットは,Amazon Bedrock で利用可能なモデルです.
図から,昨今,様々な企業から GPT-3.5 を凌駕するモデルが短スパンでリリースされていることがわかります.Amazon Bedrock は提携社数が多く,様々な最先端の LLM を利用可能であり,ユースケースに応じて柔軟にモデルを使い分けることができます.加え,文章生成以外にも,画像生成やベクトル変換用のモデルも提供されております.また,Bedrock ではモデルのデプロイが不要のため,各社の多様な LLM をクイックかつ手軽に導入することが可能です.
GPT-4 などの特定の LLM に依存した生成 AI のサービス運用は,少なからずリスクが伴います.その他,AWS 外への接続が制限されており,AWS 環境外にデータを出せない場合,GPT-4 などのモデルは利用できません.これらの点も考慮すると,Amazon Bedrock を利用するメリットは大きいのではないでしょうか.
上記の散布図は,執筆時点(2024/06/22)のデータを基に作成しております.また,Claude3.5 Sonnet については,リリース直後のため Chatbot Arena のリーダーボードには表示されておりませんが,複数の指標において GPT-4o を超える精度を達成したと報告されているため,スコアは筆者による推定値となっている点,ご了承下さい.
上記の散布図において,Mistral-8x22b は Bedrock では利用できないように示しておりますが,SageMaker JumpStart 経由で利用が可能です.その他の OSS モデルについても,Amazon SageMaker 上にデプロイすることで利用が可能です.
先進的で実践的な内容
RAG アプリの実装方法や RAG の精度改善方法/評価などが解説されており,これ 1 冊で基礎〜最新情報をキャッチアップできる内容となっております.また,Agents for Amazon Bedrock も丁寧に解説されており,Column には最近のアップデートに関する情報もまとめられております.
その他には,DynamoDB による会話履歴の永続化,Lambda によるサーバーレス化という内容や,CloudWatch,CloudTrail,PrivateLink,他の AWS サービスと Bedrock との連携,Step Functions を利用したローコード開発など,実践的な内容が多く含まれています.(アーキテクチャー図やスクリーンショットが豊富で非常にわかりやすいです.)
初学者でも PoC などでそのまま流用できそうな内容が多く含まれております!
その他特徴
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サンプルコードが Github 上で公開
- 初学者にもわかりやすいように,コード中に丁寧なコメントがあります.また,LangChain を学ぶのに最適な教材でもあります.
- 刊行後のアップデートもリポジトリ内のコードに反映する予定とのことです!
- https://github.com/minorun365/bedrock-book
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情報の鮮度
- Converse API や Tool Use にも触れており,2024/6/7 までの情報が網羅されてます.(著者陣の熱量が凄まじいですね..!)
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Bedrock 以外の AWS サービスや生成 AI ツールの紹介
- Amazon Q Business や Dify などの最新ツールのキャッチアップも可能です.
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お勧めの最新情報のキャッチアップ方法の紹介
- 惜しげもなく紹介されており,非常に参考になります.
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どの章から読んでも問題ない設計
- 好きな分野・苦手分野から読む等も可能です.
おわりに
非常に変化の早い時代です.生成 AI は知識の鮮度が重要な分野でもあるため,本書籍を購入された際は,積読せずに,即座に読み進めることをお勧めします!(私もあと 2, 3 周くらい読もうと思います!笑)