特性関数ってなに?
統計学が専門でなくとも使い所がありそうな特性関数の出番を2つ紹介します。
まず定義
Def.(特性関数)
確率変数$X$に対し,
$$\phi(t) = E[e^{itX}]\ (t\in \mathbb{R})$$
を**特性関数(characteristic function)**と呼ぶ。
(補足)
- $X$の密度関数$f(x)$が存在するときは$\phi(t) = \int e^{itx}f(x)dx$で計算できる.
- 意味的には元の密度関数$f(x)$の(逆)Fourier変換.
- ちゃんと書くと$\phi(t) = E[\cos{tX}]+iE[\sin{tX}]$. $\cos$も$\sin$も可積分なので期待値はいつもちゃんと存在する. これはデカい.
- $X$が$\mathcal{H}$-valuedでも同様に拡張できる. すなわち$\phi(t) = E[e^{i}]\ (t \in \mathcal{H})$.
- 特性関数と分布は1対1対応. これもありがたい. (証明はFourier変換の一意性とかで)
性質① k次モーメントの計算
$$\phi^{(k)}(0) = i^k E[X^k], (k)は連続微分回数 $$
(ポイント)微分と期待値(積分)の交換を使っている. そのための条件として可積分な関数で導関数が一様に上から抑えられることが必要. そこで$|X|^k$の可積分性は仮定しておく.
モーメントが楽に計算できるから, 平均とか分散とか歪度とか尖度とか・・・も楽々計算できますね.
(例)正規分布$N(\mu,\sigma^2)$の特性関数の導出
確率密度函数は$f(x;\mu,\sigma^2) = \frac{1}{\sqrt{2\pi \sigma^2}}\exp{-\frac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}}$. 定義どおり計算して
$\phi(t)
= \int_{-\infty}^\infty e^{itx}\frac{1}{\sqrt{2\pi \sigma^2}}\exp{\left(-\frac{(x-\mu)^2}{2\sigma^2}\right)} dx
= \frac{1}{\sqrt{2\pi \sigma^2}}\int dx \exp{\left(-\frac{x^2-2\sigma^2 itx-2\mu x+\mu^2}{2\sigma^2}\right)}
= \frac{1}{\sqrt{2\pi \sigma^2}}\exp{(it\mu -\frac{\sigma^2t^2}{2})}\int dx \exp{\left(-\frac{(x-(\mu+\sigma^2it))^2}{2\sigma^2}\right)}
= \frac{1}{\sqrt{2\pi \sigma^2}}\exp{(it\mu -\frac{\sigma^2t^2}{2})}\times \sqrt{\frac{\pi}{1/2\sigma^2}}
= \exp{(it\mu -\frac{\sigma^2t^2}{2})}
$
(ガウス積分を用いる)
性質② 独立な確率変数の和
$S_n=X_1+X_2+\cdots+X_n$の特性関数は
$$\phi(t) = E[e^{itS_n}] = \Pi_{i=t}^n \phi_i(t)$$
のようにそれぞれの特性関数の積となる.
よくある間違え
Xの分布がP, Yの分布がQであるとき
- (×) X+Yの分布はP+Qにしたがう.
- (○) X+Yの分布は P*Q(畳み込み分布)にしたがう.
畳み込み分布の積分計算は若干大変なので、こういうときに特性関数が役に立ちます. 積を計算すればよいので.