日本ではあまり目立っていませんが、freeCodeCampというオンライン学習サイトとして世界最大規模のコミュニティが存在します。
規模をわかりやすく言うとGitHubのスター数がトップです。
そしてここはブログ機能があるのですが、記事を自前で持ってるわけではなくMediumを使っていました。
しかし先日2019/05/27に、自ら運営する準備ができたようで、記事をMediumからfreeCodeCamp Newsに移行するという発表を行いました。
以下はそのことについてBen Halpernが書いたI'm concerned with the move that FreeCodeCamp just pulled by leaving Mediumという記事の日本語訳です。
I'm concerned with the move that FreeCodeCamp just pulled by leaving Medium
FreeCodeCampは素晴らしい組織であり、関係者達はみんな崇高な志を持っていると考えています。
しかし彼らが昨日発表したアナウンスと彼らの意図に、私は戸惑い、心配しています。
What they did
FreeCodeCampは、多くの適切な理由により、Mediumから移行したことを発表しました。
開発者コミュニティに伝えたいことを何でも書くことができる、独自のオープンソースパブリッシュプラットフォームがあります。
訪問者はこれまで以上に多くなります。
もうサインインを求めるポップアップで邪魔されることはありません。訪問者は自由にあなたの記事を閲覧することができます。
この移行計画は長期にわたる予定で、まだかなりの数のバグが存在します。
私はかつて、MediumのビジネスモデルやインセンティブとfreeCodeCampのそれのずれについて、懸念を表明したことがあります。
それがdev.toの存在する大きな理由です。
しかし、今回は別の話です。
私の考える最大の懸念は、FreeCodeCampが、Mediumや著作者が暗黙的または明示的に表明している合意条項に違反している可能性のある方法で、この移行をやってしまったのではないかと思われることです。
What I can tell
Mediumに投稿されたFreeCodeCampの全ての記事は、著者の項目がこのように表示されています。
"Visit author's page"を押しても、本来の著者は何処にも表示されません。
実のところ私は、それらの記事の作者がそのコンテンツをMediumから移動させることに同意していないことを知っています。
例えば、以下の記事はまずdev.toに投稿され、Mediumにクロスポストし、FreeCodeCampに公開されました。
Mediumの記事においては、canonical URLはオリジナルであるdev.toの投稿へとリンクされています。
ところが、FreeCodeCampへの移行においてはこの意思が尊重されませんでした。
著者たちに記事の配布場所を提供するサービスの創設者として、このことは極めて深刻な問題であると考えています。
我々は利用規約、そしてFAQにおいて、その姿勢を表明しています。
あなたは、あなたが作成してdev.toに投稿するコンテンツに対する権利を所有し、あなたが適切と考えるように投稿・編集・削除する完全な権限を持っています。
Mediumの規約にも同じようなことが書かれています。
あなたは、あなたが作成してMediumに投稿するコンテンツに対する権利を所有する。
Hackernoonは現在、Mediumからの長期にわたる脱出計画を画策していますが、上記のような問題は全て考慮に入れているようです。
実際、HackerNoonについてMediumは以下のように述べています。
Mediumに関する出版物はMediumの規約によって制限されており、明示的に許可しないかぎり、彼ら(HackerNoon)にはあなたのコンテンツに対する権利はありません。
これには、Medium以外のWebサイトへのコンテンツのエクスポート、コピー、転載などが含まれます。
あなたのコンテンツをMediumから新しいHackernoon.comへ移動したくない場合は、メールに同意しないでください。
あなたの投稿は引き続きMediumで利用可能です。
FreeCodeCampは、全員のMediumのコンテンツを全て抜き取り、正規のURLを削除し、著者から記事の編集・削除・管理能力を奪い取りました。
私が何か間違っているようであれば、コメントで教えてください。
コメント欄
Ali Spittel
私はdev.toで働く前は、自分のブログからdev.toとMediumの両方にクロスポストしていました。
視聴者層の異なる3カ所に投稿することが私の戦略であり、それは非常にうまく行っていました。
そして、そのCanonical URLは私のブログを成長させるために本当に重要でした。
私がFreeCodeCampにクロスポストした投稿のいくつかは、あるキーワードで1位になっています。
もしCanonical URLがなかったら、Gooleはそれをスパムや盗用と考え、コンテンツにペナルティを科すでしょう。
私のコンテンツを読んだ人は、私がコンテンツ作成にどれくらい時間を費やしているか知っているかと思います。
おおむね8から10時間かけて(主に日曜日のレストランで)、そしてそして私はコンテンツをマネタイズしたことは一度もありません。
私の書いた記事がこの新しいサイトに置かれており、私の名前が非常に見つけにくいところにあり、そしてcanonical URLが正しいdev.ioを示していないことに、私は本当にがっかりしました。
壮大な計画の前では、私のキャリアなどたいして重要なことでもないかもしれませんが、しかし、プラットフォームはコンテンツ制作者のことを第一に考える必要があると私は思います。
私はこの新しいサイトが公開されるかどうか、フォーマットがどうなるのか、それともコンテンツを削除するのか、ということも何も知りませんでした。
新しいサイトへの移動の許可を求めるメールを見逃していないか確認するため、受信トレイを何度も検索しましたが、何も見つかりませんでした。
そして、おそらく他の著者に対しても同じことをやっているのでしょう。
HackerNoonがMediumをやめたときにも同じような経験をしましたが、それは非常に異なっていました。
彼らは私のコンテンツを移動する前に、私に許可を求めました。
幸いなことに私の読者はSNS、dev.toと来てSEOは3番目なので、影響はそこまで大きくありませんが、しかし、多くの新人コンテンツ制作者にとってSEOは本当に重要な要素です。
SEOは彼らのブログに注目を集める能力に多大な影響を与えます。
SEOの重要性についてはここで読めます。
Quincy Larson
我々は、既にDan Abramovが述べた理由によってMediumから脱出しなければなりませんでした。
freeCodeCamp NewsはGhostオープンソースプラットフォーム上にあり、非常にパワフルです。
記事へのフルアクセス権を与えるため、全ての著者へとアクセスします。
とりわけ、彼らはcanonical URLを更新し、記事を完全に分析できるでしょう。
これについてもう少し詳しく書きました。https://www.freecodecamp.org/forum/t/279929
我々はオープンウェブの支持者であり、そしてまたdev.toの大ファンです。
我々は、開発者が個人のブログに投稿した記事をクロスポストするもうひとつの場所がfreeCodeCamp Newsになることを願っています。
Ben Halpern
Mediumを辞める理由は知っていて、それについては立派だと思います。
しかし、透明性や同意無しに全員のデータを取り込んでコンテンツを再配布することが最大の問題です。
私は弁護士ではありませんが、膨大なコンテンツを抱える立場にしては、非常に不安定な足場だと思います。
その他
「いや、元のcanonical URLをそのまま使えよ。いちいち著者に変更させるのはどうなんだ。」「Mediumがcanonical URLを設定させませんでした。」「なわけねー。Mediumツールでインポートしたらcanonical URLはちゃんと指定される。」「そのような記事はありますか?」「この記事のAliの投稿がまさにこれ。Mediumではcanonical URLがdev.toになってる。freeCodeCampはなってない。」
「あなたが間違っているとは思わない。」
「私はコンテンツ制作で生計を立てていないが、そうしている人にとって、投稿からcanonical URLが消されたことは気の毒だ。」
「これはひどい・・・何かバグでもないかぎり、あなたが見逃したことがあるとは思えない。」
「この記事を読むまで、canonical URLが何のために存在するのか、本当には理解できていませんでした。」
「Wow!私はfreeCodeCampにたくさん記事を投稿しましたが、まさかこんなことをするとは思ってなかったよ。」
「これは、Quincyに記事をdev.toにクロスポストするよう説得するチャンス!」
「canonical URLを変更できることに驚いた。本人以外はできないと思ってた。」「Mediumに残ってる記事のcanonical URLはそのまま。新サイトにコピペされた記事のcanonical URLが書き換えられてる。」
解説
最初の記事は、元々外部サービスを使っていたところを、自分のところで運用することにした、という発表です。
これ自体はまあ、それまでYoutubeを使っていたニコニコ動画が自社でストレージを持つようにした、みたいなものでたいした話ではありません。
問題は、それに伴って『記事をMediumからfreeCodeCampにコピペした』『canonical URLを自サイトに書き換えた』『しかも著作者に無断で行った』というところです。
ニコ動の例で言うなら『Youtubeに上がっていた動画をニコ動にコピーした』『著作者表示を自分の名前に書き換えた』『しかもアップロード者に無断で行った』みたいなものです。
どうしてそれで問題が起こらないと思ったのか。
まず記事の表記名として、MediumのfreeCodeCampページでは各投稿者が投稿している記事が、freeCodeCamp上では全てFREECODECAMP.ORGが投稿したように見えています。
さすがに問題がありすぎたためか、この表示は早々に修正されました。
修正する前に、コメント欄でそのうち修正するとか言ってたんだけど、どう考えても公開前にやっておくべきことだったことだろ。
さらに問題なのはCanonical URLを勝手に書き換えていることであり、これは出自を奪い取るだけではなく、SEO的にも問題になります。
freeCodeCampは元々検索に強いこともあり、freeCodeCampの記事が優先され、元記事であるはずの本人のブログのほうが盗用扱いされてランキングが下がってしまう可能性が高いでしょう。
これらの問題について、本人が記事を修正できるようにすると言っていますが、修正するにはfreeCodeCampアカウントを作れとか巫山戯たことが書いてあってこりゃひでえ。
最初からオプトインにしておけば何の問題もなかったのに、オプトアウトにしたせいで問題噴出ってことですね。
感想
コメント欄にいるAli Spittelは、dev.toの中の人であり、本文中の例で出てくる"The most important non-programming skills for programmers"の記事を投稿した人です。
Quincy LarsonはfreeCodeCampを作った人です。
そして、この記事の著者Ben Halpernってのは誰なのかというと、dev.toを作った人です。
そりゃ懸念も示すわってかんじですね。
あとQuincy Larsonのコメントはなんか全体的にピント外れで、大丈夫なのかこの人?
やってる人と取り上げてる人からいって、もっと騒動になってもおかしくなさそうなのに、今のところだいぶ全体的に静かです。
現状これについて取り上げているメディアは、英語圏含め存在しないようです。
しかし今後の舵取り次第では激しく燃えそうな気配です。
果たしてどうなるでしょうか。
ちなみに途中で出てくるHackerNoonはこのあたりの話です。
ざっくり言うと、HackerNoonも同じようにMediumからの脱出を図っているけど、オプトインを選んだから同意しないかぎり記事が勝手に移動されることはないよ、というものです。
なお、個人的には、clap数表示がなくなった時点で魅力9割減。
Qiitaもですが、なんで一覧ページから評価を消すんですかね?