2023/06/12に、No Person Is an Island: Unpacking the Work and After-Work Consequences of Interacting With Artificial Intelligenceという論文が発表されました。
以下、該当論文のプレスリリースを紹介してみます。
Loneliness, insomnia linked to work with AI systems
AIと頻繁に接する従業員ほど、孤独を感じやすく、不眠症や飲酒量が増える傾向がある、という研究結果がアメリカ心理学会より発表されました。
研究者はアメリカ、台湾、インドネシア、マレーシアでそれぞれ実験を行いましたが、文化圏を超えて同じような結果となりました。
この研究結果はJournal of Applied Psychologyのオンライン版に掲載されました。
研究主任であるPok Man Tang博士は、前職の投資銀行でAIを利用しており、それがこのタイムリーな研究に興味を持つきっかけになりました。
現在はジョージア大学経営学部の助教授であるTangは言います。
「AIの急速な発展は、新たな産業革命を引き起こし、多くの利益と雇用をもたらしています。しかし同時に、それは社員の精神・肉体に未知のダメージを与える可能性を孕んでいます。」
「人間は社会的動物であり、AIによって社員を孤立させることは、社員の私生活に有害な影響をもたらします。」
AIを使った仕事にはいくつかの有効な効果もありました。
研究者らは、AIをよく使う社員ほど同僚に相談する傾向が強いことを発見しました。
しかしそれは、孤独感や疎外感の裏返しによるものである可能性があります。
また、愛着不安の度合いが高い被験者ほど、他者を助けるといったポジティブな反応と、孤独感や俯瞰といったネガティブな反応の両方がより強く現れる傾向がありました。
愛着不安とは、社会と自分の繋がりに不安や焦燥を感じる性質のことです。
ある実験では、台湾のバイオメディカル企業でAIを扱うエンジニア166人を対象に、3週間の調査を行いました。
調査対象は孤独感、愛着不安、そして企業への帰属意識です。
また同僚には、被験者の行動を評価してもらい、さらに家族には被験者の睡眠や飲酒について報告してもらいました。
その結果、AIシステムの使用頻度が高い被験者ほど、孤独感や不眠、そしてアルコール摂取度合いが高くなりましたが、同時に同僚への援助行動も多く見られました。
また別の、インドネシアの不動産企業のコンサルタント126人を対象とした実験では、被験者の半分はAIの使用を3日間禁止され、もう半分はAIをできるかぎり使用するよう指示されました。
この結論は、上記の実験結果とほとんど同じようになりましたが、ただし飲酒量についてだけは関連が見られませんでした。
さらにアメリカのフルタイム労働者214人と、マレーシアのハイテク企業294人を対象とした実験も行われ、いずれも同様の結果になりました。
この研究結果は、決してAIの仕事が孤独を引き起こすことを証明したわけではなく、単にAIと孤独感に相関関係があるということを示したにすぎません。
Tang博士は、人間相手のコミュニケーションをエミュレートするために、AIシステムに声を付けるといった社会的機能を検討すべきだと主張しました。
また、雇用主はAIシステムを使う仕事の頻度を制限し、従業員に交流の機会を提供すべきだとも。
チームでの意思決定や、社会的なコネクションが重要な仕事などは人間が行うことで、AIシステムは退屈な反復作業に集中できるだろう、とTang博士は付け加えました。
「マインドフルネスやその他の積極的な介入も、孤独感を和らげるのに役立つかもしれません。」
「AIは今後も拡大し続けるから、AIに関わる人たちへの悪影響を軽減するためにも、我々は今行動しなければなりません。」
感想
ふむ、私はAIを使いこなしていないので安心だな。
論文はさすがに全部読めてはいませんが、人間はこれまで何千年も社会的相互作用をしながら生きてきたわけだから、それが突然失われたら当然心理的影響も出るだろうという極めて妥当な推測から研究が始まったようです。
そして実際に統計的に負の影響が出ていることを確認したと。
もちろん全ての人がそうではなく、中にはずっとAIと相対しているだけで幸せな人もいるでしょうが、どちらかというとそうではない人間の方が多いということがわかりました。
それはそうと実験期間が一週間と短すぎるのでたとえば離職率との関係は調べられなかったみたいなことが書いてあって、もっと期間を取れたら調べる気だったんだろうか。
また、AIに声を付けるというのは現在の技術で可能なので、実際それをやったときの調査もやってほしいですね。
可能というかボイロ(的なやつ)通すだけだから誰でもいとも簡単にできますね。
これを調査する際は、ゆかりマキ葵茜等とタカハシまろん吉田くん弓鶴くんあたりで孤独感に差があるのかも調べてみてほしいところです。