インターネットブラウザ自体はたくさんありますが、その本体であるブラウザエンジンは現在3種類しかありません。
すなわちGoogleのChromium、MozillaのGecko、AppleのWebKitです。
かつては独自の実装を持っていたMicrosoftもOperaも、あまりに巨大になったコードベースに自力開発を諦めました。
ブラウザエンジンの減少による弊害は様々なところで論じられているのでここでは省略して、以下は新たに登場した第四のブラウザエンジンLadybirdについて、開発者Chris Wanstrathによる紹介記事、Why we need Ladybirdの紹介です。
Why we need Ladybird
Webは現代の最も重要な発明のひとつす。
インターネットの成長に必要不可欠であり、そして我々の生活、仕事、学習、遊びを大きく変えつつあります。
Webは、それが可能にすること全て、そしてその技術が共同で、オープンに構築されてきた方法のいずれについても、驚異的なものです。
現在のWebは、オープンスタンダードとオープンソースの力の証明です。
Webを2000年の暗黒時代から脱却させたのはオープンソース・オープンスタンダードのFirefoxであり、その影響を色濃く植えたChromeであり、2010年代の主役へはばたいたのです。
現在、主要なブラウザエンジンは全てオープンソースです。
これは素晴らしいことですが、しかし問題がひとつ存在します。
それらには全てGoogleの息がかかっているということです。
Chrome・Edge・Brave・Arc・OperaにはGoogleのChromiumが使われています。
またSafariのデフォルト検索エンジンをGoogleにするためにGoogleはAppleに数十億ドルを支払っており、Firefoxとも同様な契約を結んでいます。
Webはたったひとつの資金源に依存するような構造であるべきではなく、さらにその資金源が広告であるとするならなおさらです。
新しいブラウザを作ることは不可能であり、Google Chromeの座を奪うことなど絶対にできないという人もたくさんいます。
しかし、変化をもたらすためにChromeを打ち負かす必要があるわけではありません。
Firefoxがその証拠です。
Firefoxは決して最も人気のあるブラウザではありませんが、全ての主要ブラウザに大きな影響を与え、Webをより良い場所に導いてきました。
新しいブラウザを開発できるかどうか、それはここにあります。
完全にゼロから開発された新しいブラウザであるLadybirdと、Ladybirdブラウザの開発だけが目的であり寄付金のみで運営される非営利団体Ladybird Browser Initiativeこそが、Webに変化をもたらすことができると信じています。
世界に必要なのは、ユーザを第一に考え、オープンスタンダードに貢献し、そして広告の影響を受けないブラウザです。
これこそが、私がAndreasといっしょにLadybird Browser Initiativeを設立し、開発支援のために100万ドルを寄付した理由です。
私はLadybirdの将来を信じており、Andreasのビジョンを信じています。
皆さまをサポートするオープンで独立したブラウザのために、皆さまのサポートをお願いします。
感想
Chris Wanstrathは、GitHubの共同創始者CEOです。
他にもテキストエディタATOM、テンプレートエンジンmustache、RubyのジョブキューResqueなど様々なソフトウェアの主要開発者でした。
さらにNull Gamesというのも作ったみたいですが、こちらはあまり情報が出てこないのでよくわかりません。
とまあ、GitHubだけでも非常に大きな実績のある人物なので、新しいブラウザを作り上げるという途方もないプロジェクトですが、よくあるベーパーウェアにはそうそうならないのではないかと思います。
ただGitHubアカウントを見てみると、ソースコード的に活躍していたのは2013年あたりまでなんですよね。
それ以降はマネジメント方面に向かったかんじなのでしょうかね。
また公式サイトのニュースが全く更新されておらず、公式サイトだけでは進捗状況やインタビューなどがさっぱりわからないのは困りものです。
公式が静かだと進捗が無いようにも見えてしまうので、もう少し更新はしてほしいですよね。
実際ソースコードは熱心に更新されているのですが、これが表からぱっと見てわからないのは惜しいところです。
なお、最初のアルファ版リリースが2026年の予定だそうです。
現代のブラウザはあまりに巨大になりすぎているので仕方のない面もありますが、それにしてもやはり先過ぎますね。
出たころには忘れ去られていそう。