概要
マーケティングやデータサイエンスの論文を読み進めるうちに、
分析に関連する単語の数々についてまとまった日本語の文献がないことに気づきました。
イメージがしづらい概念ですので、英語ではその詳細を捉え難いです。
知見を整理するために、そのような概念を一つの記事にまとめて説明していきます。
この記事を読めば
・弁別的妥当性
・収束的妥当性
・二つの妥当性を測る指標の詳細
についてわかります。
まだ自分も完全に把握しきれていないので、訂正等あればガンガンアドバイスくださると嬉しいです!
弁別的妥当性と収束的妥当性
収束的妥当性
:ある指標が同じ構成概念の他の指標とどの程度正の相関を持つかを示すもの
- 国語力という構成概念がある場合に、漢字問題と文法問題の相関が高いとき、その変数らは収束妥当性があるといえる
(↑筆者作成)
弁別的妥当性
:ある指標が他の構成概念の指標とどの程度生の相関を持つかを示すもの
- 国語力という構成概念と、数学力という構成概念がある場合に、漢字問題と計算問題の相関が低いとき、その変数らは弁別的妥当性があるといえる
(↑筆者作成)
二つの妥当性について説明している動画
この動画の10:55~からの説明を参考にしています。妥当性を測るための指標
指標の計算式中の文字解説
以降に登場する、用語内の計算式の略語としては、
x = 観測変数
y = 構成概念の変数
l = 外部負荷
M = 構成概念の下の観測変数の総数
となっています。
(例)
上記の時、
x1=(0.23,0.13,...),x2=(0.07,0.14,...),x3=(0.28,0.82,...),
x4=(0.61,0.27,...),x5=(0.17,0.99,...),x6=(0.6,0.98,...),
y1=(0.91,0.22),y2=(0.54,0.18,...),M=6(=3+3)となります。
クロンバックのα
: 各観測変数が全体として同じ構成概念を測定したかどうかを評価する係数
- (M/(M-1)) * (1-(各観測変数の分散の総和)/(各観測変数の和の分散))
- 各観測変数の分散の総和 = 列が各観測変数に対応している場合、垂直方向に分散を算出しその総和
- 各観測変数の和の分散 = 垂直方向に和を算出し、その分散
- 0.6~0.7が望ましい、0.9だと観測変数が冗長
- 参考リンク → BellCurve 統計WEB 『クロンバックのアルファ(α)』
外部荷重(outer loading)
:構成概念によって説明される指標の分散の割合
- 構成概念の変数yと各観測変数xの相関係数
- 指標の信頼性を表す
- 同じ構成概念の下のもと、全ての指標が0.7以上であることが望まれる
- 0.4~0.7の時、その指標を削除することでCR(複合信頼性)が増加する場合のみ、削除するべきである
AVE
:収束的妥当性を評価するための指標
- 構成概念の指標と構成概念の数値の外部荷重の二乗の総和の平均
- 0.5以上が望ましく、その場合に収束的妥当性があるといえる
HTMT
:弁別的妥当性を評価するための指標
- HTMT(A,B) = 異なる構成概念の観測変数間の相関の平均 / √(構成概念A内の観測変数間の相関の平均) * (構成概念B内の観測変数間の相関の平均)
- 分子つまり異なる構成概念が低く、分母つまり構成概念内の指標の相関が高い、ことが望ましい
- 0.9以下、もしくは0.85以下が望ましく、その場合に弁別的妥当性があるといえる
:難しいので少し図解する
- このような相関行列があった時に、
- 青色の部分の平均 = 異なる構成概念の観測変数間の相関の平均(つまり分母)
- 上部の赤色の部分の平均, 下部の赤色の部分の平均 = 構成概念A内の観測変数間の相関の平均, 構成概念B内の観測変数間の相関の平均(つまり分子の構成要素)
- つまりこの時のHTMTは
- 0.3467 / (√0.743*√0.427) ≒ 0.615 となります
参考資料
-
Hair, Joseph F., et al. A Primer on Partial Least Squares Structural Equation Modeling (PLS-SEM). Sage Publications, 2016.
- p111にクロンバックのα、p115にAVE、p118にHTMTの公式が載っている
-
SmartPLS 『PLS-SEM Glossary』
- Outer loadings という部分に外部荷重の説明が載っている