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差動アンプ回路とCMOS

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画像の回路は、NMOSトランジスタM1とM2を入力とし、M3・M4で電流ミラーを構成、M5を定電流源とした差動アンプ回路です。右の表は、この回路におけるV1、V2、ソース共通点の電圧Vx、および出力Voutの測定値です。


1. 回路構成の説明

  • M1, M2: 差動対の入力トランジスタ。ゲートにそれぞれ V1、V2 が印加されます。
  • M3, M4: PMOSの電流ミラー。M3はM1のドレイン電流をミラーしてM4へコピーします。
  • M4: 出力側の負荷。M3からのミラー電流とM2の電流を比較する形で動作します。
  • M5: NMOSの定電流源。差動対M1・M2のソース共通点に接続され、回路全体に流れる電流を一定に保ちます。
  • Vx: M1・M2のソース共通点電圧(M5ドレイン電圧)。
  • Vout: 出力電圧。M4のドレイン電圧であり、M2のドレインにも接続。

2. 動作原理

  • M1とM2は、ゲート-ソース電圧 $V_{\text{GS}}$ の差によって電流分配が変わる差動増幅を行います。
  • M3とM4は電流ミラー構成で、M1の電流駆動能力をそのままM4に複製します。
  • 出力ノード(Vout)は、M4の電流(=M1の電流)とM2の電流とのバランスによって変動します。

3. 測定値と動作解釈

表のデータ:

V1 (V) V2 (V) Vx (V) Vout (V)
2.00 2.00 0.93 3.94
2.00 2.01 0.93 0.94
2.00 1.99 0.93 4.90
  • ケース1 (V1 = V2 = 2.00V)
    入力が等しいため、M1とM2の電流がほぼ半分ずつ流れる。Voutは中間電位(3.94V)となる。

  • ケース2 (V2 > V1)
    M2のVGSがM1より大きくなり、M2の電流が増加。M4(=M1のミラー電流)よりもM2の電流が優勢になり、Voutがほぼ0.94Vまで低下。

  • ケース3 (V2 < V1)
    M2のVGSが小さく、M2の電流が減少。M4の電流(M1の電流)が優勢になり、VoutはほぼVDD(4.9V)近くまで上昇。


4. 特徴

  • 高感度: V1とV2の差が0.01Vでも、Voutは大きく変化(0.94V ↔ 4.9V)。
  • 共通モード除去: V1、V2を同時に変化させても出力は差分のみに依存。
  • 定電流源M5の役割: 全体の電流を制御し、動作点を安定化。

差動アンプ回路は、電流源負荷のアンプ回路を応用したもので、NMOSトランジスタM1・M2のゲート電圧 $V_1$ と $V_2$ を比較し、その差を出力電圧 $V_{\text{out}}$ に変換します。

最初の単純な構成(M1とM2のソースをGNDに接続)では、V2 = 0Vのとき M2の電流駆動能力が小さく、VoutはVDD(高レベル)になります。逆に $V_2 > V_1$ になると M2の駆動能力がM1より大きくなり、Voutはほぼ0Vになります。しかしこの構成は、電流が数百µAと大きくなる問題があります。

改良版の構成では、M1とM2のソースを共通化し、電流源M5に接続します。この回路ではM1とM3に同じ電流が流れ、M3とM4がミラー動作するため、M1とM4の電流駆動能力は等しくなります。その結果、M2とM4の駆動能力比較に置き換えられ、電流源負荷のアンプ回路と等価な動作になります。

例として、VDD = 5V、電流源I = 2µA、V1 = V2 = 2Vのとき、SPICE DC解析では Vout = 3.94V となります。

  • V2 を 2.01V に上げると、M2の駆動能力 > M4の駆動能力となり、Voutは0.94Vに急低下します。
  • V2 を 1.99V に下げると、M2の駆動能力 < M4の駆動能力となり、Voutは4.9Vに上昇します。

このように、差動アンプはV1とV2のわずかな差を鋭敏に出力電圧の変化として表し、比較機能を果たします。


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1. 前提の測定値とパラメータ

  • $V_X = 0.92,\mathrm{V}$(M1, M2のソース共通点)
  • $V_Y = 3.91,\mathrm{V}$(M1のドレイン電圧)
  • $V_Z = 0.97,\mathrm{V}$(M5のドレイン電圧)
  • $V_{\text{inp}} = V_{\text{inm}} = 2.00,\mathrm{V}$(ボルテージフォロワ動作中)
  • NMOSしきい値電圧 $V_{\mathrm{THN}} = 0.80,\mathrm{V}$
  • PMOSしきい値電圧 $|V_{\mathrm{THP}}| = 0.90,\mathrm{V}$
  • 基板バイアス効果は無視

2. M1, M2の$V_{\mathrm{GS}}$

NMOSのゲート・ソース間電圧は

$$
V_{\mathrm{GS1}} = V_{\mathrm{inp}} - V_X
$$

$$
V_{\mathrm{GS2}} = V_{\mathrm{inm}} - V_X
$$

数値を代入すると

$$
V_{\mathrm{GS1}} = 2.00 - 0.92 = 1.08,\mathrm{V}
$$

$$
V_{\mathrm{GS2}} = 1.08,\mathrm{V}
$$


3. 入力電圧の下限の導出

条件

入力電圧の下限は、M5(NMOSの電流源)が飽和領域ギリギリになる条件で決まります。
NMOSの飽和条件は

$$
V_{\mathrm{DS}} \geq V_{\mathrm{GS}} - V_{\mathrm{THN}}
$$

ここで M5 の $V_{\mathrm{DS}}$ は $V_Z - 0 = V_Z$ です。

計算

まず M5 が飽和するためのマージン:

$$
V_Z - V_{\mathrm{THN}} = 0.97 - 0.80 = 0.17,\mathrm{V}
$$

これはソース電位 $V_X$ の最低値と、M1の $V_{\mathrm{GS}}$ を足し合わせて入力下限になります。

$$
V_{\mathrm{inp,min}} = 0.17 + V_{\mathrm{GS1}}
$$

$$
V_{\mathrm{inp,min}} = 0.17 + 1.08 = 1.25,\mathrm{V}
$$

結論:入力は 1.25 V より下げられない。


4. 入力電圧の上限の導出

条件

入力電圧の上限は、M1, M2 が飽和領域ギリギリになる条件で決まります。
NMOSの飽和条件は同様に

$$
V_{\mathrm{DS1}} \geq V_{\mathrm{GS1}} - V_{\mathrm{THN}}
$$

ここで $V_{\mathrm{DS1}} = V_Y - V_X$ ですが、釣り合い状態では $V_Y$ に $V_{\mathrm{THN}}$ を足せば上限のゲート電圧が求まります。

計算

$$
V_{\mathrm{inp,max}} = V_Y + V_{\mathrm{THN}}
$$

$$
V_{\mathrm{inp,max}} = 3.91 + 0.80 = 4.71,\mathrm{V}
$$

結論:入力は 4.71 V より上げられない。


5. 最終結果

  • 入力電圧範囲(ICMR: Input Common-Mode Range):

$$
1.25,\mathrm{V} \leq V_{\mathrm{inp}}, V_{\mathrm{inm}} \leq 4.71,\mathrm{V}
$$


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