はじめに
デジタル回路設計において、Dフリップフロップ(DFF)は一般的なデータラッチとして広く使用されています。しかし、特定のアナログ・ミックスドシグナル(AMS)回路やADコンバータのフロントエンドなどでは、DFFの代わりにサンプリングホールド(Sample and Hold, S/H)ブロックを利用することが有効です。本記事では、DFFの代わりにS/Hブロックを使用する利点、動作原理、および具体的な設計について解説します。
DFFとサンプリングホールドブロックの違い
Dフリップフロップ(DFF)
DFFは、クロック信号に同期して入力データをラッチし、次のクロックエッジまで保持するデジタル回路です。
- 用途: データのレジスタ保持、同期回路、シフトレジスタなど。
- 特性: クロックが変化するたびにデータを更新。
- 長所: デジタル信号の正確なタイミング保持が可能。
- 短所: アナログ信号を直接扱えない。
サンプリングホールド(S/H)ブロック
S/Hブロックは、アナログ信号を一定時間サンプリングし、保持する回路です。
- 用途: ADコンバータの入力、アナログ信号の時間離散化。
- 特性: サンプリングタイミングに従ってアナログ値を保持。
- 長所: アナログ信号の保持が可能で、AD変換やアナログ処理に適用可能。
- 短所: 高速動作時にホールド容量のリークやチャージインジェクションの影響を受ける可能性。