はじめに
一般財団法人テクニカルコミュニケータ協会が主催する、3級テクニカルライティング試験の合格体験記です。
始めて受けて、1回目の受験でなんとか合格できました。結果は、選択式:92点、記述式:73点でした。相当、認知度の低い試験で、ネット上に試験に関する情報は殆ど出回っていなく、過去問が公開されていないということもあり、今後の参考にしてもらおうと思い、個人的な体験を記事にすることにしました。
テクニカルライティングは、日本では認知度は低いが、欧米や欧州での認知度はわりと高いようです。欧米や欧州では、テクニカルライティングの専用コースを持つ大学があり、テクニカルライティングのカンファレンスも頻繁に開催されています。日本の大学では、多くの学生が論文の書き方もろくに教えてもらえないまま、大学の授業ではレポートを書き、卒業論文を書いています。嘗ては自分もそうでした。テクニカルライティングスキルの重要性は、日本でももっと認知されるべきだと痛感しています。
試験の概要
- 試験の概要(協会の公式サイトより)
https://www.jtca.org/certificate_exam/exam_writing_b.html
協会の公式サイトにも書かれていますが、選択式50分と、記述式50分の2部構成となっています。試験は2月と7月の年2回実施されています。
- 分析データ(協会の公式サイトより)
https://www.jtca.org/certificate_exam/exam_result_01.html
2022年冬試験では、3級の受験者は260人程度で、合格者が150人程度でした。合格率は60%程度となります。一般的な資格試験と比べると合格率は高い方だと思います。自分が受験した大阪会場だけでいえば、受験者数は30名前後でした。パッと見の印象では、男女比が4:6程で、年齢層は30代前半から30代後半が主かなといった印象でした。
本試験の感想(選択式)
試験時間は50分で問題数は50問です。全て4択のマークシート式です。1分1問の時間配分で解いいかないといけないことになります。時間的にわりとシビアです。試験中に、じっくり問題文を読んで考え込んで解答する余裕はありません。問題文を1回読んだだけで、反射的に解答できるくらいになっておいた方がいいでしょう。そのためには、公式テキストを何度も繰り返し、暗記するくらいまで学習して、しっかりと対策しておく必要があります。
本番の試験では、自分の場合は1問目から順番に解き始めるのではなく、問題文をパッと見て、文字数が少なそうな問題からランダムに解答していく方法を取りました。問題文をパッと読んで分からなければ、そこで考え込まずに、後回しにして、後でまとめて回答するようにしました。そして、ラスト5分で全体の見直しを行いました。
問題文には、「正しいものを1つ選べ」と「誤ったものを1つ選べ」の2種類の問題が混在しています。どっちを回答するのか、間違えないようにしてください。試験本番中、緊張していると間違えることがあります。「誤ったものを1つ選べ」を問われているのに、選択文を読んで「えっ?これもあれも違うような気がするのだが・・・なぜ?」と思い出し始めると、焦り出します。
解答用紙に、氏名、受験番号、会場名を記述する箇所があります。試験が開始したら、先ず最初にしっかりと記述してください。ここの記述漏れががあると、試験ができていても落ちるといったことを、試験監督からの注意説明であったように記憶しています。
本試験の感想(記述式)
記述式も選択式と同じく試験時間は50分です。大問4つで構成されており、大問1つの中に、小問が1~2問程度ありました。記述式は選択式よりも更に時間がシビアです。
記述式も選択式と同じように、問題文を見て解答し易い問題から解き始めるようにしました。「恐らく、このような回答でいいだろう。だがしかし、自信がないな」などと思っても、一度、思いついた回答は、そのまま記述せざるを得ないことになります。再考している時間はありません。大問2つが終わった時点で、残り時間が15分でした。大問2つを解くのに時間をかけ過ぎてしまいました。「あかん、時間が全然足りない。もう諦めようかな」という思いが脳裏をよぎったが、「取り敢えず、解答欄は全て埋めよう」と、自分を奮い立たせ、残り2問は問題文を斜め読みして、取り敢えず全問回答したといったところです。正直、記述式はあまり自信がなかったが、合格通知を見てびっくり。「意外や、わりと取れてるやん」というのが率直な感想です。試験が終わった後、帰り道で、他の受験者の「全然時間が足りなかったわー」といった声が聞こえてきました。記述式で時間が足りないのは他の人も同じようです。
勉強方法(選択式)
教材は協会が出版している「日本語スタイルガイド」、これ1冊だけになります。必ず、最新の版で勉強してください。古い版であればAmazonで中古で安く購入できるが、最新版とは内容がやや異なります。自分はケチって、安い古い版をAmazonで購入して勉強していたのですが、セミナーを受講したところ、最新版と内容が大きく異なることに初めて気づき、急いて、最新の版を購入しました。返って余計な出費となりました。
テクニカルライティングに関する書籍は沢山ありますが、「日本語スタイルガイド」以外の書籍は、ライティングのスキルを上げることには役立っても、試験対策にはなりません。「技術者のためののテクニカルライティング入門講座」(翔泳社)の本を読んだが、それなりに勉強にはなったが、試験対策にはなりませんでした。試験問題は「日本語スタイルガイド」の本から出ます。というか、この本からしか出ません。本に書かれていないことも、数問あったような記憶があるが、ほぼほぼ、この本の内容から出題されます。この本を完璧に勉強すれば、選択式においてはこと足ります。とは言っても、完璧になるまで勉強するわけにはいかないので、捨てる個所は思い切って捨ててしまうことも戦略だと思います。その代わり、得点できる個所はしっかりと解答できるようにしておきましょう。合格基準は公開されていませんが、7割取れば合格できるとセミナーの講師の方が言われていました。選択式で7割取るのはそれほど難しいことではありません。
過去問は公開されていないが、類似問題が「日本語スタイルガイド」に記載されています。テクニカルライターの仕事が未経験で、「日本語スタイルガイド」を一度も読んだことのない人であっても、類似問題を解くと、恐らく、3割程度は解答出きてしまいます。「主語、述語が不適切な文を選べ」とか、「一文一義になっていない文を選べ」などの問題は、勉強しなくてもなんとなく分かってしまうような問題です。残りの4割を確実に得点しようと思ったら「日本語スタイルガイド」でしっかりと勉強しなくてはいけないことになります。「日本語スタイルガイド」を2~3回さらっと読めば、恐らく、5割は解けるようになるかと思います。7割以上を確実に解けるようになろうとすれば、本の内容をノートや、PCに書き出だして、内容を暗記するくらいまで勉強する必要があります。
なんせ、受験料がバカ高いです。15,840円(非会員)します。更に、試験会場が主要都市にしかないため、地方に住んでいる人は、試験会場に行くまでの交通費もかかることになります。しっかりと試験対策をして、1回の試験で確実に合格できるように準備してから試験に臨んだ方が賢明です。
勉強方法(記述式)
選択式の知識が身についていることを前提にして、問題を解くことになるため、生半可な知識だけでは解答できないかと思います。「日本語スタイルガイド」に記述式のサンプル問題がついています。ほぼほぼこのような感じの問題が出題されることになります。しかし、本試験ではもう少し難易度が上がります。過去問がないため、試験対策の取りようがなかったが、自分の場合は、サンプル問題をコピーして、3回位繰り返して解き、問題文を熟読しなくても、解答できるようなトレーニングを行いました。やるとすればこれ位のことしかありませんでした。
時間をかけてじっくりと問題文を読めば、解ける問題ばかりです。難しいことは一切問いていません。ただ、短時間で問題を解かないといけないため、それなりのトレーニングはしておいた方がいいでしょう。
仕事でテクニカルライターをしている人であれば問題ないかも分かりませんが、自分のように、普段はエンジニアをしていて、ライティングにさほど慣れていない人が、ぶっつけ本番で記述式にチャレンジすれば、合格するのは難しいかも分からないというのが率直な感想です。
勉強方法(受験対策セミナー)
試験の一か月程前に、一般財団法人テクニカルコミュニケータ協会で受験対策セミナーが開催されます。オンラインでの参加となります。受講料が、8,800円(非会員)と高くつくが、このセミナーの受講は必須です。選択式と記述式のサンプル問題を提供してくれるので、コピーして3回位、繰り返し解くトレーニングをしました。
講師の方が「サービス問題が5問程出る」と言っていました。「サービス問題って何だろう」と思っていたが、遠まわしに、同じ問題が本試験でも出るよということでした。確かに、セミナーでもらった問題と同じ問題が本試験でも出ていました。ただし、あまり嬉しい程の得点源にはなっていません。
勉強方法(日本語スタイルガイド)
日本語スタイルガイドは細かい部分までよく読んで覚えておくことが重要です。初学者であれば、2~3回ざっと読んだだけでは、試験に合格するのは難しいと思います。2~3回ざっと読んだ後に、問題文を読んで「あれ?そんなこと本のどこに書かれていたっけ?」と思って読み返してみると、ちゃんと書かれてあることを再発見することがあります。本の内容を丸暗記するところまでやる必要はありませんが、「ここはポイントだろうな」とか、「ここは問題になるかも知れない」と、自分なりに目星をつけて、特定の文節やキーワードはしっかりと暗記しておく必要があります。そのため、2~3回ざっと読んだ後、ノートやPCに要点を書きだしながら更に2~3回繰り返し、熟読して勉強しました。要点を書きだしたノートは出勤中の電車の中で、期末試験直前の高校生達と並んで覚えていました。
付録1「漢字とひらがねの使い分け」の表からも出題されると思います。この表全て覚えてたら大変です。ある程度は覚え出しましたが、自分は途中で捨てました。出題されたとしても恐らく、1~2問だと思います。形式名詞を選びなさいという問題も「こんな問題どうでもええやん」と思ったら捨ててもいいんじゃないかと思います(あくまで個人的な意見です)。形式名詞を選ぶ問題も、出題されても恐らく1問程度だと思います。因みに、2022年冬の問題には形式名詞を問う問題は出題されませんでした。その代わり、自動詞と他動詞の違い、補助動詞を選ぶ問題は、確実に得点できるようにしておくべきでしょう。
記述式ではどんな問題が出題されるのか?
過去問は一切公開されていないので、どんな問題が出題されるのか、初めて受験する人にとってみれば不安だろう。自分もそうでした。2022年冬試験の記述式ではどんな問題が出題されたのか、記憶にある範囲でコッソリ紹介してみよう。ズバリの問題文までは覚えていないし、覚えていたとしても、公開してしまってはそれはそれで問題だろう。どのような問題だったのか、概要だけをそっと紹介してみよう。
【大問1】
オンラインの料理教室をやっている会社が題材となっていました。オンラインで料理教室の講習を受講する場合の手順が15項目程度バラバラに記述されています。各項目は予約の取り方、事前準備、その他と大きく3つのグループの大別されています。15項目の手順の中から、予約の取り方や、事前準備について記述されている手順を選んで、リライトした上で、正しい手順に並び替えて記述するという問題でした。リライトのポイントは、である調や使役体をですます調に書き直すといった部分がポイントだったかなと思います。
【大問2】
リサイクルショップで中古品の買い取りができる条件と、買い取りができない条件とが15項目程度ランダムに記述されています。買い取りができる条件と、買い取りができない条件の中に矛盾した記述があるためそれを選びなさいという問題と、買い取り条件の注意事項の文書に誤った記述があるのでそれを選んでリライトする問題だったと記憶している。解答のポイントは、以上、未満などの意味の解釈、場合、ときの使い方、合成名詞あたりかなと思います。
【大問3】
銭湯における禁止事項、マナーについて、20項目位の文が箇条書きでランダムに書かれている。それと、銭湯のオーナーからの要望文が10項目位ある。各項目の文を読んで、禁止事項の一覧と、マナーの一覧に振り分けるといった問題。単に、振り分けて記述すればいいだけでなく、ルールに従って、文章を書き換えて回答する必要がある。ルールとは、ですます調にする、句読点の有無などとなる。
この程度の紹介であればセーフかな?