この記事は何?
イギリス政府デザインシステム(以下、 GOV.UK DS)に興味を持って読んでみることにしたので、気が向いたときにゆるゆる内容を書いてみようと思いました。
今回は[Government Design Principles]について考えることにします。
Government Design Principle とは
日本政府がよく使う言葉に訳すと「デザインの考え方」でしょうか。
2012年に初版が作られた後、2019年に微修正が入ったのみでほぼ原案のまま運用されています。
10個のシンプルな原則にまとめられています。
10の原則
1. Start with user needs
「サービスデザインはユーザーのニーズを特定するところから始まる」とし、「ユーザーのニーズを知らなければ、正しいものを作ることはできない」と断じています。
リサーチを行い、データ分析をおこない、ユーザーと対話する必要があるとし、憶測をせず、ユーザーに寄り添い、ユーザーが求めるものは本当に必要としているものとは限らないことに注意すべきだとしています。
2. Do less
政府は政府しかできないことのみをすべきとの立場を表明した上で、政府は使えるものを作ったらそれを再利用、再頒布可能なものにすべきで、車輪の再発明を防ぐべき」だとしています。後段では、具体例として他社が利用できるプラットフォームの構築やAPI、それに政府外の成果物へのリンクを行うべきとしています。
3. Design with Data
「サービスがどのように使われているかをみることで現実世界の様子がわかる」とし、推測ではなくデータに基づいた意思決定をすべきとしています。サービスをリリースしたあとにはプロトタイピングとユーザーを巻き込んだテストを経たイテレーションを行っていくべきとしています。
4. Do the hard work to make it simple
「シンプルに見せること」は簡単だが、シンプルにするのは難しいとしながらも、それがやるべきことだとしています。「そんなもんだ」を答えにせず、シンプルを追求すべきだとしています。
5. Iterate. Then iterate again
良いサービスを作る最良の方法は「小さくはじめて大胆にイテレーションする」であるとし、MVPを素早くリリースしてユーザーにテストしてもらい、アルファとベータを経て本番環境に新機能をリリースし、フィードバックを通して役に立っていないと判断したものは削除すべきだとしています。
6. This is for everyone
アクセシビリティに配慮したデザインは優秀であるとして、政府が構築するものはインクルーシブで、legibleで あり、 読み上げ可能(readable) であるべきとしています。これはエレガンスよりも優先されるべきであるとしています。
7. Understand context
スクリーンではなく、人間のためにデザインしているとして、contextを考慮すべきだとしています。例として、図書館にいるのか、電話を使っているのか、Facebookに慣れているのか、そもそもWebを使ったことがないのではないか…を挙げています。
8. Build digital services, not websites
サービスは「人々が何かをするのを助けるもの」と定義づけ、政府デザインチームの仕事はユーザーのニーズを明らかにし、それに見合うサービスを構築することと位置づけています。その手段としてWebサイトの作成であることは認める一方で、 Webサイトを作ることが存在意義ではない としています。そのために、サービスの全側面を考慮して、ユーザーのニーズに合致したものを作るべきだとしています。
9. Be consistent, not uniform
可能な限り同じ言い回しとデザインパターン を使い、人々がサービスに慣れるようにすべきとしています。
初期にはこの原則が適用できないことを認めつつも、パターンを決めたらそのことを共有して、なぜそうしたかを説明すべきとしています。ただ、それに固執することなく、より良い方法を見つけたりユーザーのニーズが変化したときには対応すべきとしています。
10. Make things open: it makes things better
自分たちがしていることを可能な限り同僚やユーザー、そして世界中に共有すべきとしています。コードやデザインのみならず、アイデア、意図、そして失敗までも共有し、 見る目が増えるほどサービスはよくなる としています。
考察
デザインシステムについての原則について宣言した文章であるにもかかわらず、サービスとはなにか、イテレーションはかくあるべきだ、など出発点から現実の運用の指針まで幅広く、しかしコンパクトに方向性を纏めている点が極めて興味深いです。
加えて、初版が2012年であることを踏まえると、相当に時代の先を読んだドキュメントと言えるのではないでしょうか。
参考資料
備考
- この記事はOpen Government License (https://www.nationalarchives.gov.uk/doc/open-government-licence/version/3/) に基づき、資料の出どころを明示したうえで作成しています。